訪問介護ではクリーニングに対応できない!その理由や依頼への対処法は?
訪問介護の利用者さんから「クリーニング取ってきて」と頼まれたとき、あなたならどうしますか。
食材の買い出しに出かけるタイミングで、クリーニングへ受け取りに行ける状況でも、訪問介護員は原則として対応できません。
今回「みーつけあ」では、訪問介護とクリーニングの対応について詳しく解説します。
訪問介護員としてできること・できないことを覚えておくと、利用者さんのサポートがよりスムーズにおこなえるでしょう。
1.訪問介護でクリーニングに対応できる?
食材の買い物やその他のサービス提供のときに、「クリーニングに出した衣類を取ってきてほしい」と依頼される場合があります。
しかし、原則として訪問介護員はクリーニングの受け取りに対応できません。
以下の決められたルールがあるからです。
- 原則として受け取りや持ち込みは不可
- 対応可能な事業所はある
それぞれ確認しましょう。
例1.原則として受け取りや持ち込みは不可
原則として、クリーニングの受け取りや持ち込みは、訪問介護員ができることに含まれていません。
社会保障の観点から考えると、「最低限保障されている生活基準」の「最低限」の部分には該当しないからです。
しかし、「サービス提供に含まれていないので、クリーニング対応はできません」と伝えても、「気が利かないね!」「ついでなのに」と言う利用者さんもおられます。
介護保険制度によって決められているルールがあるため、対応できないことを明確に伝えましょう。
例2.対応可能な事業所はある
原則としてクリーニングに対応はできませんが、対応している訪問介護事業所も存在します。
なぜなら、介護保険適用外のサービスとして提供できるからです。
介護保険適用外のサービスであれば、提供するサービスの内容に制約を受けません。
利用者さんが必要としているサービスを、10割負担(実費)で提供できます。
できるだけ幅広い要望に答えられる訪問介護員になりたい人は、介護保険適用外サービスまで提供できる事業所を探してみてください。
2.訪問介護でクリーニングの対応が難しい理由
訪問介護でクリーニングの対応が難しい理由として、以下の点が挙げられます。
- 自立した生活に必要なことのみしか対応できないから
- 最低限保障されている生活基準よりも上回っていることだから
一般的に、クリーニングの受け取りや持ち込みは、自立した生活に不要と判断されます。
クリーニングがなくとも問題なく生活できるため、介護保険を適用したサービスの提供はできません。
さらに、最低限保障されている生活基準ではなく、生活の豊かさを追求する依頼の内容と考えられます
最低限の枠を超えている「クリーニング」は、訪問介護で提供できないサービスとして覚えておきましょう。
補足:クリーニングの受け渡しが日常的に行えない
より分かりやすい考え方として、補足します。
利用者さんが毎日のように利用しない支援は、ケアプランに含まれません。
クリーニングも繰り返し利用しないため、受け渡しが日常的におこなえないためです。
自宅に洗濯機がなかったり、破損や故障によって必要となったりしない限りは、ケアプランに準じてサービスを提供します。
もし、やむを得ない事情がある場合は、上司またはケアマネジャーへ連絡して判断を仰ぎましょう。
3.訪問介護でクリーニング対応に困ったときの対処法
訪問介護の仕事中にクリーニングの受け渡しを依頼されて、対応に困ったときはどうしたらよいのでしょうか。
具体的に、クリーニングの依頼を断る対処法を以下の3つに分けて紹介します。
- 介護保険の原則に基づいて考える
- 利用者の自立支援に繋がっているかを考える
- ケアマネジャーに相談する
急なクリーニングの対応や、その他の判別がつきにくい対応を依頼された場合で、スムーズに対処できるため覚えておきましょう。
その1.介護保険の原則に基づいて考える
クリーニングやその他の判別しにくい支援を依頼されたときは、介護保険の原則に基づいて考えてください。
訪問介護員は、介護保険制度のなかで「身体介護・生活支援」に分類されている支援に限り提供できます。
依頼されたクリーニングやその他の支援は、日常生活を営むうえで必要とする範囲かを考えてみましょう。
たとえば、利用者さんが普段からクリーニングを利用していた場合には、対応可能なケースがあります。
利用者さんにとってクリーニングに出すという行為が日常的であり、当たり前のことであった場合には、事業所に対応の可否について聞いてみてください。
その2.利用者さんの自立支援に繋がっているかを考える
次に、利用者さんの自立支援に繋がっているかを考えてみてください。
ケアプランにない要望が発生した場合は、利用者さんの生活もしくは体に変化が表れているという意味でもあります。
クリーニングの受け渡しをしてほしいという依頼があった場合、もしかするとクリーニングに出した洋服を着て、自分で外出してみようとされているのかもしれません。
頭ごなしに、「これはできないことだからダメです」と、ケアマネジャーや事業所に相談なしに断ってしまうと、利用者さんの自立が妨げられる可能性があります。
まずは、どうしてクリーニングの受け渡しが必要なのか、理由を探ることも大切です。
その3.ケアマネジャーに相談する
判断に迷ったときは、ケアマネジャーに相談してみてください。
ケアプランを作成するケアマネジャーは、現場の利用者さんと一番近いところで関わっている訪問介護員の意見を、しっかりと聞いてくれます。
訪問介護員の考えを受けて、ケアプランの内容は見直しされます。
クリーニングに出すことが、どのように利用者さんに影響を与えるのかを説明できれば、対応できる可能性もゼロではありません。
4.訪問介護でのクリーニングにまつわる疑問
訪問介護のクリーニング対応について、疑問に感じていることがある人もいると思います。
疑問を抱えたまま利用者さんにサービスを提供しても、とっさのときにスムーズに対応できず、無駄な時間を使ってしまう可能性があります。
訪問介護で疑問に感じやすい、クリーニングにまつわるQ&Aを確認しておきましょう。
- コインランドリーの待ち時間は時給に含まれる?
- 訪問介護員ができないことを一覧で教えてほしい!
これらの疑問を解決すれば、対応の可否判断がよりスムーズになります。
Q1.コインランドリーの待ち時間は時給に含まれる?
A. コインランドリーの待ち時間は、時給に含まれるケースとそうでないケースがあるため注意が必要です。
訪問介護事業所によってさまざまな対応がとられているため、事業所に聞いてみることをおすすめします。
また、コインランドリーへの洗濯物の持ち運びや回収自体を受け付けていない事業所もあります。
気になる場合には、契約書を確認したり、事業所に質問したりしてください。
Q2.訪問介護員ができないことを一覧で教えてほしい!
A. 訪問介護員ができないことを一覧で知りたい人のために、以下に表でまとめました。
主に「生活援助」の項目でまとめています。
項目 | できないこと |
---|---|
調理や配ぜん、片付け | ・利用者さん以外のご飯を作ったり配膳したりすること ※家族の分など ・日常的でないご飯を作ること ※おせちやバレンタインのチョコレートなど |
整理整頓 | ・利用者さん以外の人が使う部屋の掃除をすること ・家具や家電の移動、模様替えをすること |
洗濯する、干す、取り込む | ・普段着以外のものを洗ったり取り込んだりすること ・クリーニングの受け渡しをすること |
買い物 | ・利用者以外の人が食べる料理の食材を買うこと ・デパートに付き添うこと |
会話 | ・ただの話し相手になること |
付き添い | ・車の運転を代行すること ・預貯金の引き出しを代行すること ・ペットの散歩やお世話をすること |
その他 | ・金銭、貴重品を管理すること |
上記を見て分かるように、利用者さん以外の人に関する支援はできません。
家族の人から「ついでだから」と買い物を依頼されることもあるかもしれませんが、対応不可です。
対応できないことを依頼された場合には、「介護保険制度で決まっていることだから対応できない」という旨を、はっきり伝えるようにしましょう。
流されて支援してしまっては、「この前はやってくれたのに」と後々のトラブルに発展する可能性があります。
利用者さんに対しても家族の人に対しても、できないことはしっかり伝えられるようにしておくことが大切です。
まとめ:訪問介護のクリーニング対応は事業所で異なる
訪問介護事業所によって対応の可否は異なりますが、訪問介護のクリーニング対応について説明しました。
- 利用者さんの自立支援に繋がるか
- 日常的な支援か
このような点を重視すれば、対応の可否を判断しやすくなります。
訪問介護員ができること・できないことは、介護保険制度によって定められているため、勝手な判断ではサービスを提供できません。
できないと伝えることを意識し、適切なサービス提供ができるようにしておきましょう。