訪問介護で作り置きはできる?食事量や保存のポイントを解説
「訪問介護の利用者さんに食事の作り置きを頼まれたけど、対応してもよいのかな?」とお調べではないでしょうか。
先に結論をお伝えすると、作り置きはケアプランに含まれている場合は対応できます。
しかし作り置きは、量や保存方法など注意するべき点が多いのも実情です。
そこで今回「みーつけあ」では、訪問介護で対応する作り置きや、保存について詳しく紹介します。
訪問介護でやってもよいことは決められており、頼まれた内容によっては断らなければなりません。
ぜひ本記事を参考にして、作り置きの対応について詳しくなりましょう。
1.訪問介護で作り置きの対応はできる?
訪問介護で作り置きに対応するには、ケアプランに含まれている必要があります。
ヘルパーがおこなえるサービスは、ケアマネジャーが事前に計画したケアプランで具体的に決まっているからです。
いくら利用者さんからお願いを受けても、ケアプランにないサービスを勝手におこなうことは禁止されています。
「いまから食べる料理のついでに簡単な作り置きもしておいてあげたい」と思うかもしれませんが、トラブル防止のためにもおこなわないようにしてください。
ケアプランに作り置きが定められていない状況で利用者さんにお願いされた場合には、その場で一旦断ってケアマネジャーに相談しましょう。
ケアプランは、利用者さんの状況や要望によって変更します。
必要だと認められた場合は、作り置きをケアプランに含めてもらえます。
2.訪問介護で対応する作り置きの量
作り置きがケアプランにある場合には、対応後に作り置きの量で悩むヘルパーが多くいます。
作り置きの量はケースによって変わってくるので、絶対の正解はありません。
一般的に、ヘルパーが訪問介護の1回の料理で作る食事の量は、「一人暮らしの利用者さんで2食〜3食分」です。
ご家族と同居している場合は、「1食〜2食分」が平均的な量となります。
一気に作り置きしすぎると、食べるまでに劣化して食中毒の原因になる可能性がありますので、作り置きの量は気をつけてください。
また、金額にすると「1食あたり500円程度が費用の相場」です。
利用者さんの状況によって適切な量が変わってくるので、ケアマネジャーとも相談しながら作り置きに取り組むようにしましょう。
3.訪問介護の作り置きで知っておきたい項目
訪問介護で作り置きに対応する際には、知っておきたいポイントが3つあります。
以下の3つを確認しておけば、安心して作り置きに対応できるはずです。
- 保存方法
- 作り置き料理の管理
- レトルト介護食
これらをおろそかにすると、利用者さんの健康状態に悪影響を及ぼし、大きなトラブルになる可能性もあるので注意しなければなりません。
それぞれの項目について、順番にみていきましょう。
確認1.保存方法
まずは、作り置きした料理の保存方法について、適切なやり方を確認しましょう。
介護職の研修を思い出して、衛生面には細心の注意を払わなければなりません。
普段から衛生面に気を使っている人でも、利用者さんの料理を作るときはより注意を払うべきでしょう。
一般的に若者と異なり、高齢者は免疫力が落ちている可能性があるためです。
厚生労働省は「料理の衛生管理」について、食肉は10℃以下、液卵は8℃以下を基準にしています。
しかし、可能であればそれぞれさらに2℃以上低くしておくと安心です。
また、料理を保存する際に手を洗ったり、髪の毛や唾が入らないように帽子を被ったりしましょう。
「食べるときに加熱すれば大丈夫だろう」とお考えの人もいるかもしれませんが、黄色ブドウ球菌のように加熱しても毒素が消えないケースも多いです。
料理や保存の段階から料理に細菌をつけないように意識してください。
確認2.作り置き料理の管理
次に、保存している作り置き料理は、箸をつけたのであれば次の食事に持ち越さないようにします。
一度箸をつけてしまった料理を、また口にするのは衛生面で問題があります。
たとえば、「今日の夜に食べ切れなかったし、置いておいて明日の朝に食べよう」とならないような配慮が大切です。
作り置き料理は利用者さんが一回で食べ切れる量を決めて、小分けに保存します。
ちなみに、保存容器に料理を入れるときには、清潔な箸やスプーンを使ってください。
料理中に使った箸や、他の料理に触れた箸を使い回さず、種類ごとに洗ってから利用するのがよいです。
確認3.レトルト介護食
レトルト介護食は、ケアプランにある場合にのみ使うようにしましょう。
レトルト介護食とは、温めるだけで簡単に食べられる製品です。
食べる人の噛む力や飲み込む力によって、さまざまな商品が用意されています。
料理が苦手な人は、作り置きの代わりにレトルト介護食を利用したくなるかもしれません。
ケアプランに入っていない場合は、ケアマネジャーと相談してください。
4.訪問介護の作り置きで対応に困るケース
訪問介護で作り置きに慣れていないと、利用者さんの対応に悩むことも少なくないでしょう。
ここでは、以下3つのよくある事例について、適切な対応を紹介します。
- 食べきれないから持ち帰るようにお願いされる
- おいしくないと食べてくれない
- 同じ料理ばかり頼まれる
どのケースも利用者さんに悪意があるわけではないので、対応のコツを知らなければ悩んでしまうはずです。
それぞれのケースの対応を順番に確認していきます。
ケース1.食べきれないから持ち帰るようにお願いされる
作り置きをしていると、利用者さんから「食べきれない分を持って帰って」と言われることがあります。
この場合は、必ず断るようにしましょう。作り置きの料理は、ケアプランで決められている利用者さんのための料理です。
利用者さんは、ご厚意でいってくれているので断るのは心苦しいですが、持ち帰ると問題になってしまいます。
ただし、断り方には注意が必要です。断りきれなくて忘れたフリをして利用者さんの家に置いていくと、「厚意を無下にされた」と思われてしまうかもしれません。
「ありがとうございます。ただ、最近はルールがとても厳しくて持ち帰ったことが知られるともうこちらに来れなくなってしまうので、お気持ちだけいただきます」
「これから他のお宅にも伺わなければならず、せっかくいただいたお料理が傷んでしまうので、お気持ちだけいただきます」
このように、利用者さんの気持ちに感謝しながら理由を伝えて断りましょう。
ケース2.おいしくないと食べてくれない
料理が苦手な人がよく悩むのが、「おいしくない」と言われて食べてもらえないケースです。
せっかく作ったのに食べてもらえないのは残念ですが、利用者さんの好みを知ることで解決できます。
利用者さんの食事の好みや、噛む力や飲み込む力はどれくらいかを確認してみましょう。
よくあるのが、すべての料理を柔らかくしすぎているという失敗があります。
噛む力や飲み込む力が十分にある利用者さんだと、歯応えがないとおいしさを感じないことも多いので、事前に確認するのがよいです。
また、濃い味付けが好きな利用者さんの場合は、ダシをしっかり取って塩分に気をつけながら味を調整してください。
ケース3.同じ料理ばかり頼まれる
毎回のように同じ料理ばかり頼まれることに、不安を感じるヘルパーも多いです。
食べてくれないよりはよいですが、栄養について考えるとベストではありません。
栄養面を考えると、似ている料理で材料を変えるというような工夫をするのが無難です。
しかし、工夫したことによって、利用者さんが食事を嫌がるかもしれません。
ケアマネジャーとも相談しながら、どのように対応するのかを決めてください。
訪問介護の作り置きと合わせて知りたいQ&A
最後に、訪問介護の作り置きと合わせて知っておきたいQ&Aを紹介します。
今回取り上げるのは、以下の3つです。
- 訪問介護の一般的な調理とは?
- 訪問介護で朝食の依頼は対応できる?
- 訪問介護ヘルパーの調理献立が知りたい!
作り置きに対応する際に、気になりやすい質問ばかりです。
事前に理解して、安心して作り置きしましょう。
Q1.訪問介護の一般的な調理とは?
A. そもそも訪問介護の仕事で料理をした経験がない人は、どういった調理をおこなうのかイメージがわきにくいです。
訪問介護では、食材の買い出しから調理までを利用者さんの希望に合うようにおこないます。
料理が得意でない人も心配いりません。
利用者さんの状況に合うように、栄養バランスを意識した料理を作ろうという意思さえあれば、働くなかで力がついていくからです。
訪問介護と調理については、詳しくは、「訪問ヘルパーに必要な料理スキルとは?食事を作る際の注意点を紹介」で紹介しています。
Q2.訪問介護で朝食の依頼は対応できる?
A. 訪問介護をしていると、朝食の調理を依頼されることもあります。
しかし、同居家族がいる場合は、対応できない可能性があります。
同居家族が朝食を作れないやむを得ない事情がある場合には、対応できるかもしれません。
個々の状況によって答えが変わってくるので、まずはケアマネジャーと相談しましょう。
Q3.訪問介護ヘルパーの調理献立が知りたい!
A. 訪問介護の際にヘルパーが作る料理は、豆腐ステーキや茶碗蒸し、オムレツ、酢の物など多岐に渡ります。
しかし、「レパートリーが増えず、いつも似たような料理になってしまう」とお悩みのヘルパーも少なくありません。
訪問介護での料理のコツは、食材から献立を考えることです。
たとえば、以下の食材それぞれで調理方法を変えるとレパートリーが広がっていきます。
- 卵
- 豆腐
- 野菜
- 肉
- 魚
いつもは焼いている食材を煮込んでみるなど、アプローチを変えてみましょう。
まとめ:訪問介護の作り置きはコミュニケーションから考えよう
訪問介護での作り置きは、ただ作るだけだと考えないようにしましょう。
利用者さんとコミュニケーションを取ることが非常に重要だからです。
作り置きを成功させるには、利用者さんの状況や食事の好みなど、いろいろなことを知る必要があります。
常に傾聴の姿勢を忘れないで、利用者さんの思いを汲み取っていくのがポイントです。
作り置きについては、家族やケアマネジャーにも積極的に相談して取り組むようにしてください。