訪問介護のデイサービス等への送り出しはどのような業務?対処法も紹介
訪問介護員として働くと、意外に経験するのがデイサービス等への送り出し業務です。
利用者さんの家族が働いていて送り出しできない場合や、利用者さんが一人では外出が困難であるなどの理由から、その需要は高くなっています。
しかし、デイサービスの送迎担当者との業務内容とも被る部分があり、どこまでが訪問介護員の仕事なのか、悩んだことはないでしょうか。
そこで今回「みーつけあ」では、デイサービスへの送り出し業務の内容と範囲について、具体的な業務内容や、公的な取り決めを参考に解説していきます。
送り出し業務の内容について悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。
1.訪問介護からデイサービスへの送り出しとは
それでは、訪問介護におけるデイサービスへの送り出しとは、どのような業務内容なのかを確認しましょう。
まず、訪問介護員が利用者さんの居宅へ訪問します。その後、出かけるための更衣介助や、荷物の準備等の手伝いをします。
そして、戸締りや火元の見守りや声かけをおこない、玄関までの移動を手伝って送迎車へと送り出す流れです。
ただし、利用者さんの状況によっては、排泄介助や食事介助が追加される場合もあるかもしれません。
訪問介護でデイサービスへ送り出しをする場合は、利用者さんごとに決められた流れがあります。事前に確認してから、業務を進めましょう。
2.デイサービスへの送り出しに対応できる範囲
デイサービスの送り出しにおいて、訪問介護員が対応できる範囲はどこまでなのでしょうか。
じつは、訪問介護員とデイサービスの送迎担当者が、それぞれのサービスを「どこまでおこなえるのか」についての区分けは曖昧です。
そこで、対応できる区分についてわかりやすく、以下にわけて説明します。
- どこまで対応できるのか
- 迷ったときの対処法とは?
「介護保険法の第一章第八条の2」によると、訪問介護とは要介護者が居宅で受ける入浴、食事、排泄等の介護や身の回りの世話を、厚生労働省令が定めたものとされています。
そのため、「訪問介護とは利用者さんの居宅内でおこなわれるものである」という基本を、忘れずに確認してください。
その1.どこまで対応できるか
訪問介護でデイサービスの送り出しは、どこまで対応できるのでしょうか。
結論からいうと、都道府県や市の判断によって異なるため、所属する事業所へ確認が必要です。
たとえば、訪問介護が居宅内でおこなわれるものといっても、送り出しの際に玄関を出て送迎を行う場合もあるでしょう。
また、利用者さんがマンションやアパートなどに住んでいる場合は、以下で悩んでしまうかもしれません。
- 部屋の玄関まで送ればよいのか
- マンションの入り口まで送ればよいのか
また、デイサービスの送迎担当者も、どこまで迎えをおこなってよいのか曖昧です。
こうした背景から、平成25年に下関市が厚生労働省に照会したところ、「最終的には指定権者判断」という回答がなされています。
つまり、訪問介護でデイサービスへ送り出しする場合、都道府県や市の判断によって異なるわけです。
その2.迷ったときの対処
では、事業所に確認した範囲と異なる部分を依頼されたり、その判断に迷ったりしたときにはどうすればよいのでしょうか。
対処法としては、上司またはケアマネジャーに相談することをおすすめします。
居宅内サービスは、ケアプランに具体的な内容が記載されています。
そして、訪問介護員はケアプランに記載された内容に限り、サービスを提供できます。
そのため、判断に迷ったり、新たにケアを追加したりしなければならない場合、上司やケアマネジャーに相談してケアプランに盛り込む必要があるわけです。
働く前に確認したい場合は、都道府県や市に確認をとりましょう。
3.デイサービスの準備は送迎者に依頼できる
訪問介護員は、ケアプランで決められたサービスを、利用者の居宅に訪問して提供するのが基本です。
しかし、場合によってはデイサービスの送り出しに関する準備を、送迎者に依頼できるケースがあります。
どこまでの範囲を依頼できるのか、以下にわけて解説します。
- 送迎者も居宅内介助をおこなえる
- 送迎者が居宅内介助をおこなえる条件
困ったときの判断基準として、ぜひ参考にしてください。
内容1.送迎者も居宅内介助をおこなえる
まず、送迎者は平成27年度の介護報酬改定で、居宅内介護が可能となりました。
簡単に説明すると、送迎者は居宅まで迎えにいくことが原則です。
しかし、送迎のために介助が必要であったり、居宅まで送迎車が入れなかったりします。
こうした場合、妥当性があると考えられて、あらかじめ定められた適切な方法で介助できます。
しかし、必ず送迎担当者が準備をおこなうというわけではありません。
軽く触れましたが、送迎担当者が居宅内介護を実施するには条件があります。
内容2.送迎者が居宅内介助をおこなえる条件
デイサービスの送迎者が、居宅内介護をおこなえる条件は以下のとおりです。
1.1日30分以内を限度とする
2.居宅サービス及び、個別通所介護計画に位置付けた上で実施する場合
3.送迎時に居宅内の介助等を行う者が、介護福祉士、実務者研 修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、一級課程修了者、介 護職員初任者研修修了者(二級課程修了者を含む。)、看護職員、 機能訓練指導員又は当該事業所における勤続年数と同一法人の 経営する他の介護サービス事業所、医療機関、社会福祉施設等 においてサービスを利用者さんに直接提供する職員としての勤続年 数の合計が3年以上の介護職員である場合
このように、デイサービスの送迎担当者は条件を満たした場合だけ、介助に従事できます。
また、食事介助や排せつ介助等が含まれる場合には、30分以内にとどまらない場合もあります。
その他には、ほかの利用者さんを車内で待たせた状態で、居宅内介助の提供は認められていません。
このように、デイサービスの送迎担当者が居宅内介助をおこなう場合には、さまざまな条件が揃わなければなりません。
送迎担当者に居宅内介助をお願いしたい場合には、デイサービス側やケアマネージャーに確認をとりましょう。
4.訪問介護のデイサービスの送り出し事例
ここからは、実際に訪問介護のデイサービスで送り出しに対応した事例を確認しましょう。
以下に、下関市の事例をまとめた表を作成しました。
利用者さんの居宅の形態 | 訪問介護における「通所介護の 送り出し(迎え入れ)」サービ ス提供可能範囲 | 通所介護における送迎の範囲 |
一戸建て住宅 | 住宅内(玄関まで) | 玄関~事業所 |
マンション、アパ ート等 | 各室内(各室の玄関まで) | 各室の玄関~事業所 |
養護老人ホーム、 軽費老人ホーム、 有料老人ホーム、 サービス付き高齢 者向け住宅等 | 建物の玄関(入口)まで | 建物の玄関(入口)~事業所 |
参考:総企第237号
下関市の例を参考にすると、訪問介護員の業務範囲は玄関まで、通所介護の送迎担当者の業務範囲は玄関からとなっています。
そのため、訪問介護は居宅内でおこなわれるものであるという原則に基づいて定められているルールがあります。
あくまで一例ですので、詳しくは従事している都道府県や市に確認をとりましょう。
訪問介護とデイサービスの送り出しでよくある質問
最後に、訪問介護とデイサービスの送り出しでよくある質問に回答します。
- デイサービスの送り出しは大変?
- デイサービスへの送り出しはマンションでもある?
- 訪問介護で送り出しはどのように算定される?
送り出しは慣れるまで大変ですが、ある程度パターンが組まれているので、慣れてからはすぐに対応できます。
ただし、こちらで紹介している質問は意外と見落としやすい部分です。ぜひ参考にしてください。
Q1.デイサービスへの送り出しは大変?
A. 訪問介護は一般的に「しんどい」「きつい」といった声が多い仕事です。
デイサービスへの送り出し業務は、利用者さんの状況によって「大変さ」が変わってきます。
たとえば、排泄介助や食事介助の有無によって、準備に時間がかかるといった大変さは変動するでしょう。
また、利用者さんがデイサービスに行きたがらないといった問題も、場合によっては発生する可能性があります。
そのため、大変かどうかは利用者さんの状況によると考えられます。
Q2.デイサービスへの送り出しはマンションでもある?
A. デイサービスへの送り出しは、マンションや老人ホームでもおこなう場合があります。
このとき、部屋や建物の玄関のどこまで送り出せばよいのか、迷ってしまうこともあるでしょう。
このようなときには、上司やケアマネージャー、従事している都道府県や市に「どこまで対応したらよいのか」を確認しましょう。
Q3.訪問介護で送り出しはどのように算定される?
A. 訪問介護の送り出し業務の算定方法について解説します。
訪問介護の送り出しは、身体介護の以下に当たる場合が多いです。
- 排泄・食事介助
- 身体整容・排泄介助
- 自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助
参考:各介護サービスについて
具体的には、サービスの提供時間によって変わってきます。
以下の表にまとめましたので、参考にしてみてください。
時間 | 単位 |
20分未満 | 167単位 |
20分以上30分未満 | 250単位 |
30分以上1時間未満 | 396単位 |
1時間以上 | 579単位に30分を増すごとに+84単位 |
※20分未満以外は所要時間が20分から起算して25分を増すごとに+67単位(201単位を限度)
参考:第199回社会保障審議会介護給付費分科会 介護報酬の算定構造
まとめ:訪問介護のデイサービスの送り出しは確認が重要!
訪問介護におけるデイサービスへの送り出しは、実際に対応する回数の多い業務です。
しかし、その範囲は曖昧で、どこまでサービスをおこなってよいのか悩むことも多いでしょう。
そのようなときには、ケアマネージャーや指定権者(上司や市区町村)に確認をすることが重要です。
本記事が、疑問を解決して気持ちよく働くための参考になれば幸いです。