訪問介護でプライバシー保護にあたる事例と基本的な考え方とは?
「訪問介護でプライバシーを保護するにはどうしたらよいのだろう」
「訪問介護でのプライバシー侵害とはどのような行為なのだろう」
このように、悩んではいませんか。
訪問介護自体がプライバシーに踏み込む行為のため、プライバシーを侵害する線引きがわからずに、手探りのまま対応している人も少なくないと思います。
プライバシー保護で重要なポイントは、利用者さんをひとりの人間として尊重することです。
今回、「みーつけあ」では、訪問介護のプライバシー侵害にあたる事例と、プライバシーを保護するために必要な考え方を紹介します。
利用者さんや家族のプライバシーを保護しながら、満足度の高いサービスを提供しましょう。
1.訪問介護でのプライバシー保護の基本的な考え方
訪問介護でプライバシーを保護するときの基本的な考え方は、利用者さんをひとりの人間として対応し、尊厳を損なわないことです。
ヘルパーが利用者さんの尊厳を傷つけない意識を持てば、必要以上に私的な領域に踏み込むことを避けられます。
少なくとも、雑談やSNSのネタにするなど、自分がされて嫌だと感じる行為はおこなわないようにしましょう。
雑談やSNSのネタにする行為は、プライバシーの侵害だけでなく個人情報の漏洩にも当てはまります。
たしかに、十分な介助をおこなおうとすると、利用者さんの私的領域に立ち入らなければいけません。しかし、ヘルパー側の工夫でプライバシーを保護できる事例は多々あります。
たとえば、第三者に利用者さんの情報が漏れないための情報管理や、介護度に合わせたヘルパーの対応などです。
プライバシーを保護すれば、「軽く扱われた」と自尊心を傷つけずに済みますし、利用者さんや家族とのトラブル回避にもつながります。
2.訪問介護でプライバシー侵害にあたる事例とは
プライバシーの侵害とは、具体的にどのような事例なのか気になる人も多いと思います。
訪問介護をおこなう際に、プライバシーの侵害にあたるケースを確認しましょう。
プライバシーの侵害にあたるケースは、以下の7つです。
- 立ち入りすぎたヒアリングをする
- 訪問介護で起きたことをSNSに書き込む
- 家族や親戚からの問い合わせに安易に答える
- 許可がないのに備品や手紙の内容を見る
- 個人情報が第三者に見える状態になっている
- 近所の人と雑談中に利用者さんの話をする
- 一律な入浴・排泄の対応で配慮しない
プライバシーの侵害になるケースを確認して、トラブルを回避しましょう。
ケース1.立ち入りすぎたヒアリングをする
利用者さんや家族が不快に感じるような立ち入りすぎたヒアリングは、プライバシーの侵害にあたります。
業務につながらない質問は、利用者さんや家族の利益にならないからです。
立ち入りすぎた質問により家族や利用者さんに不信感を与えると、介護サービスを提供するときに支障が出ます。
ヒアリングは、利用者さんや家族の困りごとを聞くための聞き取り調査にとどめておきましょう。
興味本位のヒアリングや、業務につながらない質問は、プライバシーの侵害になるため控えるべきです。
ケース2.訪問介護で起きたことをSNSに書き込む
訪問介護で起きた出来事をSNSに書き込む行為は、プライバシーの侵害です。
利用者さんや家族は、インターネット上に自分たちの情報が許可なく掲載されることを想定していません。
自分たちのことだとわかるエピソードが、知らない間にSNS上で拡散されていたら、利用者さんや家族がどう感じるか想像しましょう。
仮に、第三者に見られないようSNSに鍵をかけていても悪意のあるフォロワーがコピーしたり、スクリーンショットを撮ったりして流出させることも考えられます。
最悪の場合、利用者さんや家族から訴えられる可能性もあるので、第三者が閲覧できない状況でもSNSに書き込むのは控えましょう。
ケース3.家族や親戚からの問い合わせに安易に答える
意外に感じるかもしれませんが、関係性の薄い家族や親戚からの問い合わせに答える行為はプライバシーの侵害に該当します。
なぜなら、関係性上「この人には自分の現在の状況を伝えて欲しくない」と希望する、利用者さんや家族もいるからです。
親族間でのもめごとは決して珍しいものではなく、ヘルパー側の対応次第でトラブルに巻き込まれるリスクがあります。
関係性の薄い家族や親族からの問い合わせがあったときは、その場で答えずに施設の規則に沿ったアクションを挟んでから対応しましょう。
ケース4.許可がないのに備品や手紙の内容を見る
利用者さんや訪問介護施設の許可がないのにもかかわらず、備品や手紙の内容を見るのはやめましょう。
備品の中身や手紙はプライバシーにかかわるので、私的領域に土足で入り込んできたと思われます。
備品チェックや手紙の整理をしたとしても、不愉快だと思う人は多いです。
また、物が無くなったときに窃盗の疑いをかけられる可能性もあります。
トラブルを回避するためにも、ヘルパーの独断で備品の整理や手紙の確認はすべきではありません。
備品や手紙の内容を確認するときは、利用者さんや家族、訪問介護施設の許可を得てからにしましょう。
ケース5.個人情報が第三者に見える状態になっている
ヒアリングシートやカルテといった個人情報が第三者に見える状態は、プライバシーの侵害行為といえます。
なぜなら、まったく関係のない人に利用者さんの個人情報が漏れるからです。
第三者に利用者さんの情報が筒抜けの状態だと、プライバシーの侵害だけでなく個人情報の漏えいにもつながります。
また、個人情報が他人の目に触れる状況だと「同じような扱いを受けるのかな」と不安を抱かせるため、利用者さんや家族が疑心暗鬼になることも考えられます。
複数の家庭に続けて訪問するときは、チャックのあるカバンに資料を入れるといった工夫をして、情報の漏漏洩に気を付けましょう。
ケース6.近所の人と雑談中に利用者さんの話をする
近所の人と雑談中に利用者さんの話をするだけでも、プライバシーは侵害されます。
なぜなら、利用者さんや家族の意志で、自身の状況を近所の人に伝えているわけではないからです。
「ここだけの話」として近所の人と話をしても、いつのまにか近所の人たち全員が知っている状況になることも考えられます。
また、悪意のある人が利用者さんの現在の状況を把握して嫌がらせ行為をする可能性もあるので、訪問介護で関係のある人の話はすべきでありません。
雑談中に「〇〇さんの調子はどう?」と聞かれても、答えないようにしましょう。
ケース7.一律な入浴・排泄の対応で配慮しない
入浴や排泄といったデリケートゾーンをさらす介助において、配慮のない介助は身体的なプライバシーの侵害です。
介助を必要としている人にも羞恥心や自尊心はあるので、「ヘルパーさんに見られたくない」や「音を聞かれたくない」と思う人は少なくありません。
そのため、一律の入浴や排泄の対応だと、自分をないがしろにされたと感じる人がいても不思議ではないです。
安全確保や効率の良さも重要ですが、利用者さんの気持ちに配慮したひと手間をプラスするだけで、「恥ずかしい」や「早く終わってほしい」という苦痛を軽減できます。
利用者さんの自尊心を傷つけないためにも、できるだけ希望に沿った対応で入浴や排泄の介助をおこないましょう。
3.訪問介護で保護すべきプライバシーを侵害したときの罰則
訪問介護でプライバシーを侵害すると、どのような罰則を課されるのか気になる人もいるでしょう。
介護福祉士の秘密保持義務は、社会福祉士及び介護福祉士法46条で定められています。
秘密保持義務とは、業務で知った利用者さんや家族の秘密を守らなくてはならない責務のことです。
業務で知った情報を漏えいすると、社会福祉士及び介護福祉士法50条により1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます。
また、秘密保持義務に違反した結果、利用者さんや家族から訴えられて裁判沙汰になるケースも珍しくありません。
利用者さんの家でサポートする訪問介護だと、信頼関係の構築が大切です。
保護すべきプライバシーを侵害した事実が判明すれば、大きく信用を失います。
故意でなくてもプライバシーを侵害し個人情報を漏洩すると、訴えられたり罰金を課せられたりするので、日頃から言動に注意しましょう。
参考:
社会福祉士及び介護福祉士法
介護保険法|条文|法令リード
4.訪問介護でプライバシーを保護するために大切なこと
訪問介護でプライバシーを保護するために、どのようなことに気を配ればよいのか気になる人もいると思います。
プライバシーを保護するために大切なポイントは、以下の3つです。
- 情報収集の目的を伝える
- 一人ひとりに合わせた対応
- 情報漏洩に対する意識改革
それぞれ詳しく確認して、プライバシーの保護につとめましょう。
保護1.情報収集の目的を伝える
利用者さんや家族に立ち入った質問をする前に、目的を伝えましょう。
質問をする理由が、得た情報をもとに利用者さんに最適なサービスを提供するためだとわかれば、利用者さんや家族は安心します。
逆に、目的をしっかり伝えずに踏み込んだ質問を投げ続けると、利用者さんや家族に不快感を与えかねません。
根掘り葉掘り質問される不安感や不信感を抱かせないために、あらかじめ質問する目的を伝えて安心してもらいましょう。
保護2.一人ひとりに合わせた対応
一人ひとりに合わせた対応をおこなうことで、利用者さんのプライバシーを守れます。
それぞれに合わせた介助をおこなえば、必要以上にプライバシーを侵害しません。
たしかに、全員一律で同じ介助をおこなえば効率良く物事が進みますが、利用者さんは雑に扱われてプライバシーを侵害されたと感じるでしょう。
とくに、介護されることに慣れていない人だと、入浴や排泄時のサポートを受けるだけでも自尊心が傷つきます。
利用者さんの安全に配慮しつつも、なるべく快適に過ごしてもらえる方法でサポートしましょう。
保護3.情報漏洩に対する意識改革
ヘルパーのプライバシー保護や情報漏えいに対する意識を高めましょう。
なぜなら、ヘルパー自身の意識が変わらないと、利用者さんの尊厳は守られないからです。
定期的にプライバシーを保護すべき理由や個人情報の漏えいリスクを学ぶことで、ヘルパーの意識は変わります。
一人ひとりの意識を高めれば、プライバシー保護や個人情報漏えいに関するトラブルも回避できるはずです。
しかし、利用者さんのプライバシー保護や情報漏えいに対する意識は、一度の研修だけでは定着しません。
定期的に勉強会や研修へ参加して、プライバシー保護や個人情報の漏えいのリスクについて理解を深めましょう。
まとめ:自分が不快に感じることは行わない
訪問介護でプライバシーを保護するときは、少なくとも自分が不快に感じる行為をおこなわないように心がけましょう。
自分が不快に感じることは、相手も嫌悪感を抱きます。
訪問介護は、プライバシーに踏み込まないと成り立たない仕事です。
だからこそ、利用者さんや家族の詳細を口外しない、第三者に把握される状況にしないといった、人としての基本が問われます。
プライバシーの侵害で尊厳を損なわないようなサービスを提供して、利用者さんに気持ちよく過ごしてもらいましょう。