訪問介護のプライバシーと個人情報漏洩7事例!保護するための解決策とは
「訪問介護でプライバシー保護すべき事例を知りたい」と、気になっていませんか。
利用者さんの介護度や状況によって、プライバシーに踏み込むべき領域は変わります。そのため、判断基準がわからずに不安を抱えながら仕事をしている人もいるかもしれません。
プライバシー保護の考え方は、利用者さんの尊厳を守り、情報を漏洩させないことです。
今回「みーつけあ」では、プライバシーを侵害した事例と、情報漏洩の原因を紹介します。
利用者さんのプライバシーを保護する方法も紹介するので、参考にしてください。
訪問介護におけるプライバシー侵害の事例を把握して、利用者さんの尊厳や個人情報を守りましょう。
1.訪問介護はプライバシー保護も個人情報漏洩防止も大切
訪問介護に従事する人は、利用者さんのプライバシーと個人情報の、どちらも保護しなくてはいけません。
なぜなら、プライバシーと個人情報は、他者に干渉されない権利を持っているからです。
あらためて、プライバシー保護に関する基本的な知識をおさらいしましょう。
- プライバシーと個人情報の違い
- 秘密保持義務とは
それぞれについて、詳しく解説します。
知識1.プライバシーと個人情報の違い
プライバシーと個人情報は、まとめて議論されることも多く混同されやすいですが、厳密には違います。
まず、プライバシーとは個人の秘密や私生活のことです。
介護状況や身体的な特徴など、私的な情報をむやみに拡散されない権利も含まれます。
一方、個人情報は特定の個人を識別できるデータのことです。
例をあげると、住所や生年月日、病歴や介護度が個人情報に含まれます。
知識2.秘密保持義務とは
秘密保持義務とは、訪問介護で知った利用者さんの秘密を在職中だけではなく、退職後も漏らしてはいけない定めのことです。
訪問介護従事者は、適正なサービスの提供のために利用者さんの身体的事情から家庭の状況までを把握します。したがって、目的外のことに利用する権利はありません。
介護福祉士(ヘルパー)は、「社会福祉士及び介護福祉士法46条」より秘密保持義務が課されています。
秘密保持義務に違反した場合は、同法50条により1年以下の懲役、又は30万円以下の罰金に処され、事業所からも厳しい処分がくだされるでしょう。
訪問介護に従事する人は、プライバシーと個人情報のどちらも保護しなければなりません。
2.訪問介護でプライバシー侵害や情報漏洩になる身近な事例7選
「どのような事例が秘密保持義務違反にあたるのか知りたい」と、気になる人もいると思います。
プライバシー侵害や情報漏洩になる事例は、以下の7つです。
- インターネット上に書き込んだ
- 雑談の延長で他の利用者に喋ってしまった
- 利用者や家族に施設の愚痴や悩みを喋った
- 利用者の引き出しやPCを勝手に確認した
- 職員同士の情報共有を他の利用者に聞かれてしまった
- 個人情報データの盗難・紛失してしまった
- 目的外のことに利用者の個人情報を利用した
順番にみていきましょう。
ケース1.インターネット上に書き込んだ
訪問介護で起きたできごとをインターネット上に書き込むと、秘密保持義務違反に該当します。
なぜなら、知らないところで不特定多数の人に情報がさらされるからです。
仮に、第三者に見られないプライベートなSNSに書き込んだとしても、公開範囲の設定ミスがあれば全世界に情報が流失します。
利用者さんの名前や住所が特定できるほど詳細な内容であれば、個人情報の漏洩にも該当しかねません。
インターネット上に書き込んで拡散されれば、利用者さんや家族の信用を失い、事業所に大きな損害をもたらします。
ケース2.雑談の延長で他の利用者に喋ってしまった
介助中の相手に対して、ほかの利用者さんの話をする行為は、悪意がなくてもプライバシーの侵害に該当します。
話題に出された利用者さんは、自分が知らないところで雑談のネタにされているとは思ってもいません。
介護の状況や身体的な事情といった、人に知られたくない私的な情報が広まれば、ヘルパーに不信感を抱く人もいるでしょう。
ヘルパーにとっては、なにげない雑談のつもりだとしても、ほかの利用者さんの情報を許可なく他人に伝えれば、プライバシーの侵害にあたります。
ケース3.利用者や家族に施設の愚痴や悩みを喋った
利用者さんに事業所の愚痴や悩みを喋ったことが発端で、ヘルパーによる情報漏洩が発覚する事例もあります。
利用者さんと信頼関係が構築されると、気が緩んでプライベートな話や悩みを聞いてもらいたくなる人もいるかもしれません。
しかし、話を聞いた利用者さんは、普段からお世話になっているヘルパーを助けたいという正義感から、行動に移すことがあります。
たとえば、訪問介護施設へ苦情を申し立てたり、特定ヘルパーの行動に対し責任者へ通告したりといった行為です。
「聞いてくれるだけで満足」と軽い気持ちで喋ったとしても、のちに大きな問題に発展するリスクがあります。
ケース4.利用者の引き出しやPCを勝手に確認した
独断で利用者さんの引き出しやPCを勝手に確認する行為は、プライバシーの侵害です。
善意でおこなったことだとしても、正式な許可を得ていない時点でヘルパー業務から逸脱した行為であるとみなされます。
勝手に利用者さんの所持品を確認する行為は、プライバシーの侵害だけでなく、以下のトラブルに発展する危険性が高いです。
- 窃盗犯だと疑われる
- 利用者さんの家族からクレームが入る
独断で利用者さんの所持品を確認する行為は、プライバシーの侵害のほかにトラブルの原因にもなります。
ケース5.職員同士の情報共有を第三者に聞かれてしまった
職員同士の情報共有を関係のない人が聞いていて、情報漏洩につながった事例も見られます。
なぜなら、情報を得た人が家族や友人に話をして、噂話として情報が広まるからです。
また、内容がネガティブだと事業所の悪評につながるおそれもあります。
そもそも、第三者の前で機密性の高い情報交換をする行為は、「秘密保持義務違反」です。
ケース6.個人情報データの盗難・紛失してしまった
電車内に書類を忘れたケースや、車上荒らしによって個人情報の入ったデバイスや書類を盗まれたケースも、漏洩事故を起こしたとみなされます。
流失した個人情報は、悪用されたり業者へ売却されたりする危険性が高いため、大きな問題に発展しやすいです。
また、データの多くは複数の利用者さんの情報を記録しているため、漏洩被害が広範囲に及びます。
訪問介護で記録された個人情報は、利用者さんの介護状況や身体的な問題も記録されているため、個人情報漏洩だけでなくプライバシーの侵害にもあたります。
ケース7.目的外のことに利用者の個人情報を利用した
介護以外の目的で個人情報を利用したり、新たに情報を得ようとしたりする行為は、利用者さんのプライバシーを尊重していません。
たとえば、「この家のお孫さんは〇〇商事勤務らしいよ」といった会話も、業務上必要なければ、プライバシーの侵害であり個人情報の漏洩です。
また、利用者さんが答えたくないそぶりを見せているのにもかかわらず、業務に関係のない質問を何度も投げかけるのは、土足でプライバシーに踏み込んでいるといえます。
利用者さんの個人情報を、興味本位で聞いたり喋ったりする行為は、訪問介護の目的外の利用とみなされ、秘密保持義務違反です。
3.個人情報やプライバシー保護すべき話が漏れる事例の原因
保護すべき個人情報や、プライバシーが漏洩する原因を確認して、問題点を洗い出しましょう。
プライバシーや個人情報などの、秘密保持すべき話が漏れる原因は以下の4つです。
- 在籍または退職した職員から
- 利用者同士の情報交換から
- 置き引きやハッキングから
- 職員による不注意から
原因を知ることで、情報の漏洩防止につながります。
原因1.在籍または退職した職員から
情報漏洩する原因のひとつに、在籍もしくは退職した職員の言動があげられます。
なぜなら、業務で知り得た情報を漏洩したという、自覚のない人もいるからです。
問題意識が低いと、お酒の勢いやその場を盛り上げるためなどのさまざまな理由で、情報を漏洩させてしまいます。
また、退職したことをきっかけに、利用者さんのプライバシーや個人情報について話し出す人がいますが、これはれっきとした秘密保持義務違反です。
在職中はもちろん、退職しても秘密保持義務は消えません。訪問介護で得た情報は、話題に出さないようにしましょう。
原因2.利用者同士の情報交換から
利用者さん同士の情報交換から、保護すべき情報が漏れることがあります。
地域で顔の広い人ならば、利用者さん同士で交流する機会もあるでしょう。
その場合、雑談しているうちに訪問介護についての話題に発展する可能性は否めません。
利用者さんに関係のない業務についての報告や連絡、相談は事業所でおこないましょう。
原因3.置き引きやハッキングから
情報セキュリティ意識の低さによる、置き引きやハッキングも情報漏洩の原因のひとつです。
以下の状況を作ってしまうと、悪意を持った人から狙われやすくなります。
- 公共の場で書類を入れたバッグから目を離した
- 車内に個人情報の入ったUSBを置いてきた
- ウイルス感染していた私物のUSBを利用した
- セキュリティ対策が万全でないPCを使い続けていた
利用者さんの個人情報が狙われないように、情報セキュリティ対策をしましょう。
原因4.職員による不注意から
職員による不注意から、情報漏洩事故に発展するケースもあります。
たとえば、以下のケースは職員による不注意です。
- 親戚を名乗る人からの電話を信じ込んで対応した
- メールやファックスを誤送信した
- 関係のない人の書類を利用者さんに見せてしまった
- 個人情報ファイルのアクセス権の設定を間違えた
個人情報を守る意識を高めて、不注意によるミスを減らす努力が必要です。
4.訪問介護で個人情報やプライバシーを保護するポイント
利用者さんのプライバシーや個人情報を漏洩させないために、どのような行動をとるべきなのか確認しましょう。
個人情報やプライバシーを保護するためのポイントは、以下の5つです。
- インターネット上に業務内容を書き込まない
- 雑談時にハッキリと言えないと伝える
- 外部で施設内の情報は言わない
- 家の中を勝手にあさらない
- 個人情報の入ったデバイス・ファイルの扱いを決める
詳しく見ていきましょう。
保護1.インターネット上に業務内容を書き込まない
業務内容や介護中に起きたできごとを、ブログやSNS、掲示板に書き込まないようにしましょう。
友人だけに公開設定をした場合でも、誰かがスクリーンショットで画像を保存すれば簡単に外部に流失します。
業務中の面白いできごとや、憤りを感じた事件があったとしても、インターネットに書き込むことは控えましょう。
保護2.雑談時にハッキリと言えないと伝える
雑談時に、ほかの利用者さんについて質問されたら、ハッキリと「言えません」と伝えましょう。
あいまいに流してしまうと、「通じていないのかしら」と何度も質問されることも考えられます。
「ほかの利用者さんの話は、プライバシーの関係でできません」と明確な意思表示をして、よその家の事情や個人情報は伝えないようにしましょう。
保護3.外で施設内の情報は言わない
事業所を出たら、職員同士での報告・連絡・相談は控えましょう。
なぜなら、気付かないところで誰かが話を聞いている可能性があるからです。
とくに、利用者さんの自宅へ上がるまえの立ち話や、介助中の雑談に注意しましょう。
また、職員同士の飲み会で、仕事の話を大声でおこなうのも危険です。
外で業務の具体的な話をするのは、情報漏洩のリスクが高まります。
保護4.家の中を勝手にあさらない
貴重品の整理や、手紙の内容のチェックといったプライバシーに踏み込む行為は、必ず事業所の規定に沿って行動してください。
利用者さんに頼まれた場合は、「トラブルの原因になるので正式な許可が必要」と、理由を伝えつつ丁重に断りましょう。
「ちょっとだけなら大丈夫」と軽い気持ちでおこなうと、トラブルを引き起こしかねません。
プライバシーにかかわる所持品を確認する必要があるなら、利用者さんの正式な許可を得てから行動すべきです。
保護5.個人情報の入ったデバイス・ファイルの扱いを決める
事業所で話し合って、個人情報の入ったデバイスや書類の取扱い方法を決めましょう。
個々の裁量に任せた運用だと、管理方法がバラバラなので情報漏洩のリスクが高まります。
書類やUSBなど、持ち出し可能なデータの扱いは、以下を参考にしてください。
- 持ち出すときは申請をする
- 車に放置せず、肌身離さず持ち歩く
- 事業所で認めたUSB以外は使用しない
デバイスやファイルの管理方法については、あらかじめ事業所のルールを決めることで、事業所全体の情報セキュリティ意識を高められます。
まとめ:プライバシー保護が利用者の満足度向上につながる
訪問介護でプライバシーを保護すべき事例を確認して、利用者さんの満足度向上につなげましょう。
情報セキュリティ意識が高いと認識されれば、利用者さんの信頼を得られます。
訪問介護は、利用者さんの個人情報だけでなく、身体的事情や家庭環境を詳しく知る立場になります。
その分、プライバシーの侵害や個人情報漏洩事故の防止に努めなくてはいけません。
プライバシーの侵害事例や原因について理解を深めて、利用者さんが安心してサービスを受けられる環境を作りましょう。