訪問介護でプランにないサービスとは?範囲外の介助を受ける方法
「訪問介護のプランにないサービスとは、どういったものだろう」「プランにないサービスを受けるにはどうすればよいの」と、困っていませんか。
訪問介護の利用を検討している人は、どこまでヘルパーに頼めるのか気になりますよね。
結論からいうと、日常生活の手助けの範囲なら、訪問介護のサービスを受けられます。
訪問介護で提供されない部分をカバーするなら、民間や行政サービスも併用しましょう。
今回「みーつけあ」では、訪問介護で受けられるサービスと、プランにないサービスを受ける方法を紹介します。
訪問介護で受けられるサービスを確認して、快適に過ごせる環境を整えましょう。
1.訪問介護プランで知っておきたい基礎知識
訪問介護とは、自立した生活を送ることを目標に、ヘルパーが訪問して介護や生活支援をおこなうサービスのことです。
プランにないサービスを確認する前に、訪問介護について確認しましょう。
知っておきたい基礎知識は、以下の3つです。
- 訪問介護サービスを受けられる人
- 訪問介護サービスを提供する体制
- 訪問介護はケアプランに沿ってサービスをおこなう
それぞれ確認して、訪問介護の全体像を把握しましょう。
基礎知識1.訪問介護サービスを受けられる人
訪問介護は、要介護1~5の認定を受けた人に向けたサービスです。
要介護認定の基準は、介護をする時間や内容の重さの観点から決定されます。
要支援1~2の認定を受けた人は、介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)による、訪問型サービスを利用できます。
要介護や要支援の認定を受けるには、各市区町村の介護保険窓口で要介護認定の申請が必要です。
▼要介護認定の申請については、以下の記事をご参考ください。
>>訪問ヘルパーのサービス開始までの流れについて|費用やサービス内容も紹介します!
基礎知識2.訪問介護サービスを提供する体制
訪問介護の事業所は、以下の人員体制で運営されています。
- ヘルパー
- サービス提供責任者
- 常勤管理者
ヘルパーは訪問介護員ともいわれ、利用者さんの日常生活のサポートをおこないます。
サービス提供責任者とは、ケアマネジャーやヘルパーとの連絡や、調整をする人のことです。
サービス提供責任者のなかには、ヘルパー業務を兼任しているスタッフもいます。
常勤管理者は、訪問介護事業所を統括する責任者のことです。
基礎知識3.訪問介護はケアプランに沿ってサービスをおこなう
ケアプランをもとに介護内容が決まるため、訪問介護サービスを受ける前にケアマネージャーとの面談が必要になります。
ケアプランとは、要介護者が自宅で快適に暮らすために必要なサービスの方針や内容、目標などを設定した計画書のことです。
ケアマネージャーが、利用者さん一人ひとりの課題を分析して、その人に最適なサービスや目標を作成します。
ケアプランは、利用者さんの状況にあわせておよそ半年に一度見直され、それに伴ってヘルパーによる介助方法や目標も変化します。
2.訪問介護のプランでできるサービス
「訪問介護で受けられるサービスはなに?」と、気になっている人もいると思います。
日常生活の手助けをする訪問介護で受けられるサービスは限られているので、しっかり確認しましょう。
訪問介護で受けられるサービスは、大きく以下の3つに分類できます。
- 身体介護
- 生活援助
- 医療関連行為
それぞれ詳しく確認して、訪問介護のサービス内容を把握しましょう。
サービス1.身体介護
身体介護とは、食事や排せつ、入浴などの、利用者さんの身体に触れる介護のことです。
具体的な身体介護の内容を、以下の表にまとめました。
介助項目 | 介助内容 |
---|---|
排せつ | ・トイレへの移動の介助や見守り ・失禁の後片付け ・オムツ交換 |
食事 | ・食事の介助や見守り ・流動食など医師の指示をもとにおこなう調理 ・配膳や後片付け ・口腔ケア |
入浴 | ・入浴準備 ・全身清拭や全身浴 |
身体整容 | ・洗顔や整髪 ・衣服の着脱 |
通院または外出 | ・乗車、降車の介助 ・車椅子での移動や歩行の介助 ・付き添い |
服薬 | ・服薬介助 ・飲み忘れ防止の声がけ |
介助だけでなく、利用者さんの状況に応じて自立援助を目的とした見守りや、付き添いもおこないます。
サービス2.生活援助
生活援助とは、掃除や洗濯、炊飯といった、日々の生活に必要な家事ができない利用者さんを手助けするサービスのことです。
具体的な、生活援助の内容を確認しましょう。
介助項目 | 介助内容 |
---|---|
掃除 | ・利用者さんが利用する部屋の掃除 (リビング・寝室・トイレ・浴室・キッチン) |
洗濯 | ・洗濯 ・洗濯物の片付け |
就寝前の準備 | ・シーツの交換 ・布団の上げ下げ |
調理 | ・一般的な調理 ・準備や後片付け ・献立作り |
買い物 | ・食料品や日用品の買い出し ・必要な家電の買い出し ・薬の受け取り |
手続き・外出支援 | ・病院への同行 ・公共サービス手続きのための市役所への同行 ・生活資金をおろすための金融機関への同行 |
利用者さんのライフスタイルに沿ったケアプランをもとに、ヘルパーは生活の手助けをおこないます。
サービス3.医療関連行為
医療従事者以外の医療行為は禁止されているため、ヘルパーによる医療行為はできません。
しかし、日常生活の延長にある軽微なケアは医療関連行為としてサービスを受けられます。
介助項目 | 介助内容 |
---|---|
測定 | ・体温測定 ・自動血圧測定器の血圧測定 ・パルスオキシメーターの測定 |
外傷の処置 | ・軽微な切り傷の処置 ・擦り傷、やけど等の処置 ・汚れたガーゼの処置 |
薬による処置 | ・軟膏の塗布(床ずれの処置を除く) ・湿布の貼付 ・点眼 ・一包化した内用薬の内服(舌下錠の使用も含む) ・坐薬挿入 ・鼻腔粘膜への薬剤噴霧 |
身体のお手入れ | ・爪切り ・耳垢の除去 ・歯ブラシや綿棒などを用いた口腔ケア |
排せつの介助 | ・ストーマ装具にたまった排せつ物の処理 ・自己尿道の準備や体勢の介助 ・市販の浣腸器を用いた浣腸 |
ヘルパーによる医薬品を使った処置は、医師の処方と薬剤師の服薬指導を受けたうえで、看護師の保健指導・助言に沿った内容でおこないます。
その他の専門知識を要する医療行為は、訪問医師や看護師の仕事です。
▼訪問介護ヘルパーの医療行為に関する記事はこちらから。
>>介護ヘルパーの医療行為は禁止?実態やできること・できないことについて
3.訪問介護は市区町村によるルールが適用される
介護保険制度による訪問介護だと、住む地域により解釈が異なるため、自治体ごとの独自の判断基準で細かなルールが適用されます。
なぜなら、介護保険の最終決定者である保険者は、自治体(市町村)だからです。
そのため、ケアマネジャーがケアプラン作成時に、自治体へ判断を仰ぐことも珍しくありません。
たとえば、高齢の夫婦でそれぞれケアプランを組むときに、トイレや浴室などの共用部分の清掃管理をどうするべきか、判断の難しいケースは自治体に相談します。
また、同居人のいる家庭が生活援助認定を受ける場合、自治体の定めた書類を提出しなくてはいけません。
「想像していた内容と違う」と慌てないためにも、ケアマネジャーとの打ち合わせのときに、受けられるプランや問題点の確認をしましょう。
4.訪問介護でプランにないサービス
「訪問介護でプランにないサービスはどのような内容なのだろう」と、具体的に知りたい人が多いと思います。
訪問介護の考え方として、日常生活に必要ないと認められる行為は、サービスに含まれません。
利用できないサービスを、以下の3つのケースにわけて確認します。
- 身体介護の場合
- 生活援助の場合
- 医療行為の場合
プランにないサービスを、訪問介護で求めても提供されません。
詳しく見ていきましょう。
注意1.身体介護の場合
身体介護で受けられないサービスは、以下の行為です。
- 散髪
- カミソリを使ったひげそり
- 美術館訪問や友人との再会のような娯楽の付き添い
- 家族行事の付き添い
- 利用者さんの話し相手
散髪は、国家資格が必要で対応できず、訪問介護の身体介護に含まれません。
また、娯楽と認められる付き添いや、話し相手としての利用も出来ないので覚えておきましょう。
注意2.生活援助の場合
生活援助で受けられないサービスは多岐にわたるので、提供されないサービスの基準を確認しましょう。
提供されないサービスの基準は、以下のとおりです。
- 利用者さんの家族の生活援助
- 日常生活に支障のない家事
- 普段の家事の範囲を超えるサービス
訪問介護で受けられない具体的な内容を、以下の表にまとめたので確認しましょう。
介助項目 | 介助内容 |
---|---|
掃除 | ・草むしり ・植木の剪定 ・ベランダや窓の掃除 ・ペットの世話 ・使っていない部屋の掃除 |
買い物 | ・タバコや酒などの嗜好品の買い出し ・デパートへの高級品の買い出し ・プレゼントの購入 |
手続き・外出支援 | ・ATMでの引き出し代行 ・お金の管理 |
メンテナンス行為 | ・家具の修理や電球の交換 ・部屋の模様替え ・年末の大掃除 |
その他 | ・利用者さん家族に関する掃除、洗濯、炊飯など全般 ・来客時のお茶だしや食事の手配 ・クリスマスやおせちなどの行事用の炊飯 |
生活資金の引き出しといった金銭にまつわる手続きの代行は、トラブルの原因につながるので、生活に必要でもサービス提供されません。
必要があればケアマネジャーに相談しましょう。
注意3.医療行為の場合
ヘルパーは医療行為をおこなえないため、訪問介護のサービスに含まれません。
以下の行為は医療行為にあたるので、医師や看護師がおこないます。
- 摘便
- 床ずれ(褥瘡)の処置
- 爪に異常のある人の爪切り
- インスリン注射
医療行為にあたる行為を依頼するなら、訪問医師や看護師にお願いしましょう。
5.訪問介護でプランにないサービスを受ける方法
「訪問介護にないプランを受けたい場合はどうすればよいの?」と困ってしまった人もいるかもしれません。
訪問介護のサービスで解決できない問題は、民間や行政のサービスを利用しましょう。
プランにないサービスを受ける方法は、以下の4つです。
- 家事代行サービス
- 訪問理美容サービス
- 配食サービス
- 行政の生活援助事業
順番に確認しましょう。
方法1.家事代行サービス
民間の家事代行サービスや、訪問介護施設のプライベートケアサービスを利用しましょう。
介護保険は適用されないので自費になりますが、介護保険を使った訪問介護では提供されないサービスも受けられます。
日々の清掃が負担になっているトイレやキッチンなどの掃除や、未使用の部屋の整理整頓などの要望にも対応可能です。
訪問介護施設のプライベートケアサービスなら、冠婚葬祭の付き添いや話し相手といったサービスも受けられるため、状況に応じて頼むことも検討しましょう。
方法2.訪問理美容サービス
民間の訪問理容サービスを使って、髪型を整えましょう。
美容師や理容師が自宅まできてくれるので、外出が厳しい人でも定期的に髪型を整えられます。
お店によりますが、用意しておくアイテムはタオル程度なので、大がかりな準備は必要ありません。
寝たきりでも、カットやシャンプーに対応してくれるお店もあるので、介護度にあわせた方法で髪型を整えられます。
方法3.配食サービス
日々の食事の準備に負担を感じているなら、配食サービスを利用しましょう。
民間の配食サービスのほかに、行政による配食サービスを提供する自治体もあります。
配食サービスを使えば、栄養面や咀嚼力を考慮した食事をとれるので、「自炊が面倒」や「調理が面倒で食材を腐らせた」といった悩みから解放されるでしょう。
方法4.行政の生活援助事業
住んでいる自治体が提供している、生活援助事業を活用しましょう。
たとえば、粗大ごみを自力で出せない人やゴミ集積場が遠い人向けに、回収サービスを提供している自治体があります。
自治体ごとに独自の生活援助事業を設けているので、居住地の行政サービスを確認して活用しましょう。
6.訪問介護プランにないサービスでトラブルにならないための心得
訪問介護のサービスでトラブルに発展させないためには、どのような心得が必要なのでしょうか。
トラブルに発展させない心得は、以下の3つです。
- ケアプランにないサービスは受けられない
- 必要なら代替案をもらう
- 対応できないサービス内容を書面でもらう
順番に確認して、気持ちよく訪問介護サービスを利用しましょう。
心得1.ケアプランにないサービスは受けられない
介護保険による訪問介護だと、ケアプランに組み込まれていないサービスは受けられません。
なぜなら、ヘルパーはケアプランで定められた内容で介護をおこなうからです。
利用者さんとヘルパーの信頼関係が構築されると「ちょっとくらいいいでしょ」とお願いしたくなる人もいるでしょう。
しかし、ケアプランに組み込まれていない介護行為を、ヘルパーの独断で提供できません。
あくまでもヘルパーは、日常生活の範ちゅうで利用者さんのサポートをおこなう立場の人です。
ケアプラン以上のサービスは、期待しないようにしましょう。
心得2.必要なら代替案をもらう
もし、必要な介護サービスがケアプランに組み込まれずに困っているなら、ケアマネジャーに相談して代替案をもらいましょう。
困りごとは、ケアマネジャーと共有して解決方法を探るべきです。
訪問介護は自立支援を目的としているので、日常生活の範疇を超えた家事手伝いのお願いの場合だと、適切な相談先の紹介をします。
身体変化による困りごとなら、ケアプランの見直しをおこないます。
問題点をケアマネジャーと共有して解決方法を探りましょう。
心得3.対応できないサービス内容を書面でもらう
トラブル回避のために、対応できないサービス内容を書面にしてもらいましょう。
訪問介護で提供できないサービスは多岐にわたるので、把握しきれない人もいると思います。
対応できないサービスを利用者さん自身で確認できれば、断られてショックを受けることもありません。
また、利用者さんの家族も対応できないサービスを把握できるので、トラブルに発展しづらいです。
まとめ:訪問介護はあくまでも日常生活の手助け
訪問介護でプランにないサービスを受けたいなら、民間のサービスを検討しましょう。
あくまでも訪問介護は、日常生活の手助けであって、かゆい所に手が届くサービスではありません。
ヘルパーとの信頼関係ができてくると、なんでも頼りたくなってしまいますが、しっかり線引きするとトラブルを回避できます。
訪問介護と民間のサービスをうまく使って、利用者さんが過ごしやすい環境を整えましょう。