訪問介護員の平均年収とは?収入を高める方法はどのくらいあるか知ろう
「現在の年収に満足できない」
「平均年収と比較してどの位置にあるのか知りたい」
このように感じている人が多いのではないでしょうか。
訪問介護員という仕事は、自らの行動で年収を高められる仕事です。しかし、実際に働いてみると思うように稼げない人もいます。
そこで今回「みーつけあ」では、訪問介護員が受け取っている年収の平均を紹介します。
また、年収をさらに高めていくための方法まで知っておきましょう。
利用者さんと前向きに向き合うためにも、本記事を参考に年収の増加を目指していただけると幸いです。
1.訪問介護員の平均年収や給料は安い?
厚生労働省が発行した「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、常勤の訪問介護員の平均給与は「306,760円」です。
この数字はあくまで「平均」であるため、もらっている年収より少ないと感じる人もいるでしょう。
また、扶養から外れていれば各種税金の支払いが発生しますので、手取り金額はもっと少なくなります。
ほかにも、年齢や所属している事業所、資格の取得状況といった「さまざまな要素」によって年収は変動します。
転職を視野に入れている場合は、資格手当支給の有無を事前に確認しておきましょう。
(1)訪問介護員の年齢別年収
こちらでは、訪問介護員の年収を年齢別に確認していきます。
厚生労働省が発行した「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果 第102表」に掲載されている月額の平均給与をベースにして、年収として再計算したうえで表にまとめました。
・男性の場合
年齢 | 平均月給 | 年収(平均月給×12ヶ月) |
〜29歳以下 | 280,770円 | 3,369,240円 |
30〜39歳以下 | 323,940円 | 3,887,280円 |
40〜49歳以下 | 330,360円 | 3,964,320円 |
50〜59歳以下 | 290,060円 | 3,480,720円 |
60歳以上 | 307,670円 | 3,692,040円 |
全体の平均月給は「314,840円」で、年収に換算すると「3,778,080円」となります。
・女性の場合
年齢 | 平均月給 | 年収(平均月給×12ヶ月) |
〜29歳以下 | 269,220円 | 3,230,640円 |
30〜39歳以下 | 279,810円 | 3,357,720円 |
40〜49歳以下 | 312,890円 | 3,754,680円 |
50〜59歳以下 | 313,350円 | 3,760,200円 |
60歳以上 | 292,920円 | 3,515,040円 |
全体の平均月給は「304,810円」で、年収に換算すると「3,657,720円」です。
男女ともに、月給や年収を平均で見てみると、年齢を重ねても大きく収入が増えるタイミングは見当たりません。
(2)訪問介護員の給料は高い?稼げないのは本当?
実際に調査をおこなった結果、数字だけみると給料は高く感じますよね。
しかし、あまり伸び代を感じられないうえに、訪問介護員として働く場合、「移動時間」を労働時間として扱わない事業所の存在が問題として挙げられます。
一日で利用者さんの自宅を何件も回る場合、移動時間だけでもかなりのロスとなるためです。
そして、移動時間には給与が発生しないとなると、たとえ時給は高くても実働時間が減ります。
結果として、収入が少ない状態になってしまうわけです。
こうした問題に関しては、「移動時間が訪問介護に従事するために必要な時間であれば労働時間に値する」というように厚生労働省も声明を出しています。
さらに、「労働時間には賃金を支払うように」と介護保険最新情報Vol.911にも掲載されています。
そのため、賃金の支払いについて不信感を覚えるようであれば、転職を視野に入れたほうがよいかもしれません。
2.訪問介護員が年収をアップさせるには?
では、訪問介護員が年収をアップさせるために何ができるのでしょうか。
ここからは、訪問介護員として働きながら、年収アップを目指せる方法を5つ紹介していきます。
- 介護職員初任者研修
- 介護福祉士実務者研修
- 介護福祉士
- サービス提供責任者への転身
- より高い給与の施設に転職する
スキルアップと並行して年収を高めていく方法を中心に紹介しているので、ぜひ積極的に取り組んでみてください。
(1)介護職員初任者研修(元ホームヘルパー2級)は給料アップへの第一歩
訪問介護員の年収をアップさせる1つ目の方法は、介護職員初任者研修の取得です。2013年にホームヘルパー2級が廃止されて、現在の資格に統一されました。
介護職員初任者研修は、介護職をおこなうにあたり必要とされる最低限の知識や技術を取得できます。
また、入浴や排泄など利用者さんの身体に直接触れておこなう「身体介護」は、介護職員初任者研修以上の資格を取得していないとおこなえません。
基本の介護業務をおこなえるようになれる、まさに介護職のスタートラインに立つための資格ともいえるでしょう。
主な研修内容は、以下のとおりです。
ご覧のように、130時間の研修を経て取得できるのが「介護職員初任者研修」です。
訪問介護員として働くには、資格を取得していることが必須です。そのため、資格を持っていることを前提に募集をおこなっている事業所も少なくありません。
(新型コロナウイルス蔓延による特例あり)
そうとはいっても、無資格の人も対象に含んで募集をおこなっている場合もあれば、資格取得の支援制度を設けている事業所も存在します。
無資格だからといって、訪問介護員になれないわけではありません。
現在勤めている事業所の制度も活用しながら、年収アップを狙ってみてください。
(2)介護福祉士実務者研修を修了すると将来性がより広がっていく
訪問介護員の年収をアップさせる2つ目の方法は、「介護福祉士実務者研修」の取得です。
こちらは、先ほど紹介した「介護職員初任者研修」の上位に値し、「介護福祉士」の受験資格としても必要な資格です。
コミュニケーションの方法や認知症への理解など、介護についてより専門的な学びを得られます。
研修時間数は「450時間」で、介護職員初任者研修の「130時間」と比較しても、学びの時間がかなり多く設定されています。
その分、おこなえることも増えるのが特徴です。
たとえば、事業所でも中心的な存在である「サービス提供責任者」は、介護福祉士実務者研修の修了が必須となっています。
資格を取得することで、利用者さんとそのご家族、介護士たちをつなぐ役割を務める業務にも就けるようになるわけです。
(3)介護福祉士になって訪問介護員以外の選択肢も?
訪問介護員が年収をアップさせる3つ目の方法は、介護福祉士になることです。
介護分野では唯一の国家資格である「介護福祉士」は、どの事業所も求めている人材といえます。
3年以上の実務経験に加え、先ほど紹介した「介護福祉士実務者研修」の修了が受験資格となるため、取得までのハードルは高めです。
しかし、資格手当なども受けやすくなることで年収がアップしたり、これまで以上にキャリアアップを目指しやすくなります。
受験資格を得た場合は、ぜひ取得を検討してみるとよいでしょう。
(4)サービス提供責任者への転身
訪問介護員が年収をアップさせる4つ目の方法は、サービス提供責任者への転身をすることです。
ケアマネージャーと計画して訪問介護計画書を作成したり、介護員の育成や管理をおこなうなど、事業所で管理役を務めます。
もちろん給与の増加も見込めるため、キャリアアップの方法として人気な役職です。
サービス提供責任者に挑戦できる資格を持っておけば、介護への携わり方の選択肢を増やすこともできます。
さらに、自分の身体のことを考えながら仕事を続けることも、選択肢として増やせるでしょう。
(5)より高い給与の施設に転職する
訪問介護員が年収をアップさせる5つ目の方法は、より高い給与の施設に転職することです。
同じ介護職とはいえ、事業所によって給料に差はあります。
そのため、現在の環境に不満がある場合は、他の事業所へ移ることも選択肢の1つとして考えられるでしょう。
しかし、「給与が高いから」という理由だけで、勢い任せに転職してしまうのはリスキーな行為です。
自分が希望する条件をしっかり書き出して、双方が求めている条件が合致するか見極めたうえで慎重に転職をおこなうようにしましょう。
劣悪な環境で働き続けることは、あなた自身の精神状態をよくない方向へ導いていきます。
利用者さんに辛く当たってしまい自己嫌悪を繰り返してしまうのは、介護業界で働く方々がよく抱えがちな悩みの1つです。
よい精神状態で長く働き続けることは、給与以上に大切なポイントともいえます。
できるだけストレスを抱えずに日々を過ごすためにも、転職は慎重におこないましょう。
3.訪問介護の平均年収が上がっていく条件とは?
「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」に基づき、給与の引き上げ要因となっている上位3つの条件について紹介します。
- 資格の保有
- 勤続年数
- 人事評価によるもの
1つの目安として知っておくことは、間違った方向に進まないためにも大切です。
訪問介護員を続けていくなかで、ぜひ参考にしてみてください。
(1)資格の保有
1つ目の給与の引き上げ要因となっているのは、「資格の保有」です。
調査対象となった249の訪問介護事業所のうち、「55.4%」の事業所がこの条件で給与の引き上げをおこなっています。
半分以上の事業所が、資格の保有状況によって給与を決めています。
現在資格を取得していない人は「介護職員初任者研修」からでも取得を目指すことが、給与アップへの第一歩といえることは間違いありません。
逆に、初任者研修を修了されている人は、さらに上の資格取得を検討することが、よい条件で働き続けるための必須事項ともいえるのかもしれませんね。
(2)勤続年数
2つ目の給与の引き上げ要因となっているのが、「勤続年数」です。
こちらは、「52.3%」の事業所が「勤続年数」を参考に給与を引き上げていると回答しています。
無理をしてまで、同じ事業所で働き続けるのがよいとはいえません。
しかし、事業所からすれば、信頼度に比例して給与を上げていくことも必然であるとはいえますよね。
この要因については、所属している事業所がどのような形で給与の引き上げをおこなっているのかをしっかり確認して、中長期的な視点でビジョンを立てていく必要があります。
(3)人事評価によるもの
3つ目の給与の引き上げ要因となっているのが、「人事評価によるもの」です。
「人事評価」を給与の引き上げ要因としているのは、「37.7%」の事業所でした。
第3位の引き上げ要因で、すでに50%を切ってしまっていますが、人事評価による給与アップがまったくないわけではありません。
少しでも給与を高めるためには、個人としての成長度合いの向上や、勤怠なども管理することが大切といえます。
番外編:こんな条件でも給与の引き上げが!
先ほど紹介した3つの要因以外にも、給与の引き上げ要因となる条件は存在しています。
たとえば「経験年数」による給与の引き上げは「29.5%」の事業所がおこなっていると回答しています。
また、常勤か非常勤かというような勤務形態や、正規か非正規かといった雇用形態も給与の引き上げ要因となっているようです。
ただし、事業所によって査定は変動します。
確かなキャリアを積むという意味でも、今回紹介した要因を埋められるよう働いていくことが、将来の安定を掴み取るためにも必要といえるでしょう。
4.訪問介護の平均年収や給料は上がる?
訪問介護員の給与が引き上げられる要因は、介護業界に限らず多くの企業が査定として取り入れているものが多数でした。
しかし、超高齢化社会に突入し、介護業界のニーズが高まっているにも関わらず、給料について不満の声を挙げている介護職員が多いのが現状です。
そういった背景もあり、2021年には政府によって、介護職員の賃上げについて議論がなされました。
このように議論が始まることが、訪問介護員を含めた介護職の給与向上の第一歩となるのでしょうか。
訪問介護の平均年収に関するQ&A
最後に、訪問介護の平均年収でよくある質問をまとめました。
- 訪問介護事業所の経営者の年収は?
- 登録ヘルパーの時給表について
- 訪問介護は稼げないといわれる理由とは?
時給に関してや稼げない要因について解説していくので、気になる項目があったら確認しておきましょう。
Q1.訪問介護事業所の経営者の年収は?
A.訪問介護事業所の経営者の年収は、明確なデータがありませんでした。
しかし、一般的にサービス提供責任者と管理者は兼務できるため、経営者(管理者)としての目安なら「 320,510円」です(令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果 厚生労働省老健局老人保健課調べ)
サービス提供責任者よりも高い立場にいる場合、上記よりも多くもらえる可能性があるでしょう。
Q2.登録ヘルパーの時給表について
A.登録ヘルパーは、正社員やパートと異なり曜日を指定して自由に働ける雇用形態のことです。
時給表に示された給与の計算は事業所によって異なりますが、以下のような時給が参考になります。
介護職員(非常勤) | 1,110 |
訪問介護(非常勤) | 1,260 |
出典:令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果 厚生労働省老健局老人保健課
厚生労働省の調査によると、「1,100〜1,300円ほど」が登録ヘルパーの時給目安です。また、生活援助は安く・身体介助は高いなどの違いもあります。
登録ヘルパーとして働く場合は、事業所の時給表を確認しておくとよいでしょう。
▼登録ヘルパーの給料に関しては、以下の記事をご参考ください。
>>登録ヘルパーの給料相場はいくら?他業種とも比較してみました
Q3.訪問介護は稼げないといわれる理由とは?
A.訪問介護は稼げないといわれる理由は、以下の4つです。
- 移動時間が給料に含まれない事業所が多い
- 生活援助がメインで時給が安くなりやすい
- 天候によってキャンセルのリスクがある
- パートタイマーはシフトに入りにくい
移動時間が給料に含まれなかったり、生活援助がメインだと稼ぎにくい状態となります。
また、天候によるキャンセルやシフトの制限など事業所や利用者さんに影響される部分も加味しなくてはなりません。
詳しくは、以下の記事で紹介していますので、参考にしてください。
>>訪問介護は稼げない?高時給を活かして稼げるようになる方法
まとめ:資格取得で平均年収を高めよう
今回は、訪問介護員の平均年収を中心に解説をおこないました。
訪問介護員の給料は決して低すぎるともいえませんが、移動時間が労働時間として認められないことで、最終的にもらえる額が少なくなってしまうことは大きな問題点です。
現在低収入で困っている場合には、資格取得やキャリアアップによる収入の増加を図ることを第一に行動することが大切といえるでしょう。
今後は自らのスキルを高めていくことに加え、賃金の条件など、介護業界が抱えるさまざまな課題が解決されるよう声を挙げていくことも必要となっていくかもしれません。