訪問介護のポータブルトイレ掃除|サービスの違いや掃除方法を解説
訪問介護サービスで、依頼される頻度の高いものに「トイレ掃除」があります。なかでも、ポータブルトイレは普段目にするものとは違い、掃除のやり方が異なります。
また、ポータブルトイレを使う場合は、移乗動作と掃除がセットになることも多いので迷う人もいるでしょう。
そこで、今回「みーつけあ」では、ポータブルトイレの「掃除」と「区分の考え方」について詳しく解説します。
さらに、ポータブルトイレの掃除方法や汚れ・臭いの防止策もまとめました。
一般のトイレとは扱いが変わるので、ぜひ参考にしてください。
1.訪問介護で取り扱うポータブルトイレの「掃除区分」
まず、訪問介護で取り扱うポータブルトイレの「掃除区分」について紹介します。
たとえば、「利用者さんの移乗をお手伝いして、排泄が終わったあとにヘルパーがポータブルトイレの掃除をする」としましょう。
そうすると、移乗のお手伝いは「身体介護」ですし、トイレの掃除は「生活援助」にあたるため、どちらに算定されるか迷ってしまいますよね。
このような場合は、以下のように覚えるとわかりやすくなります。
- 移乗から掃除に移行するときの介助は「身体介護」
- ポータブルトイレを掃除するだけなら「生活援助」
もう少しわかりやすく説明するので、それぞれ確認しましょう。
考え方1.移乗から掃除に移行するときの介助は「身体介護」
身体介護は、移乗のお手伝いとポータブルトイレ掃除がセットになったときに該当します。
たとえば、身体に不自由がある利用者さんがベッドから起き上がって、それからポータブルトイレに移って排泄する場面はよくあります。
このとき、ヘルパーは安全に動作するよう体を支えなければなりません。
また、排泄後のトイレ掃除をヘルパーが行った場合、「移乗とセットになった動作」と考えて身体介護となります。
上記のケースではトイレ掃除より、「移乗の介助」に着目して考えるわけです。
そのため、利用者さんをポータブルトイレへ移乗して、掃除した場合は身体介護として算定します。
補足:身体介護とは
ここで、身体介護の基本について確認しておきましょう。
身体介護の定義は、厚生労働省により次の3つに定められています。
- 利用者さんの身体に触れて介助するサービス
- 利用者さんの自立を促す目的で行われるサービス
- 専門的な知識・技術を使って利用者さんの日常生活を支えるサービス
参考:「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について
押さえておきたいのは、1つ目の「利用者さんの身体に直接触れる」という箇所です。
利用者さんに直接触れて介助をする場合、ほとんどのサービスが身体介護となります。
以下、身体介護の内容を合わせて確認しておきましょう。
身体介護の内容と具体例 | |
内容 | 具体例 |
食事の介助 | 例:調理・摂食・口腔ケア(歯磨き)など |
入浴の介助 | 例:入浴の準備、入浴(全身浴・部分浴)、入浴後の後処理など |
身体の整容に関わる介助 | 例:歯磨き、洗顔、髭剃り、髪を整える、着替えのときの清拭など ※ただし髭剃りは自治体により不可の場合もあるのでで要確認 |
更衣の介助 | 衣服の着脱、ボタンの開け閉めなど |
外出の介助 | 例:通院などで外出するときの車までの移動、車の乗り降りなど 体位の変換 |
体位の変換 | 例:ベッド上での寝返り/td> |
排泄の介助 | 例:トイレの介助、おむつ交換・着脱・始末、トイレの後処理など 歩行の介助 |
歩行の介助 | 例:歩行(車いすでの移動を含む)介助 |
清拭 | 入浴ができな場合に体を清潔に保つために必要な支援 |
参考1:09 厚生労働省 特区・地域再生(非予算)最終回答
運営上の留意事項について
参考2:厚生労働省「各介護サービスについて」
ポータブルトイレを使用したときは、その度に掃除をするのが基本です。
しかし、体が不自由な利用者さんにとってはトイレの掃除や後処理が難しく、代わりにヘルパーが掃除を行うことになります。
このときに移乗した場合は、ポータブルトイレの掃除が身体介護と解釈されます。
考え方2.ポータブルトイレを掃除するだけなら「生活援助」
ポータブルトイレの掃除だけをおこなう場合は、生活援助として扱います。
生活援助は、身体介護よりも該当する範囲が広いため、利用者さんによってサービス内容が変わります。
ポータブルトイレの掃除に関しては、「移乗動作の補助などがない」かつ「トイレ掃除のみを行った場合」が生活援助です。
生活援助の内容と具体例 | |
料理 | 例:一般的な日常の料理を作る ※配膳や後片付けなど一連の作業も含まれる ※おせち、イベント料理など特別な料理は不可 |
洗濯 | 例:洗濯機・手洗いによる洗濯、洗濯物の乾燥(物干し)、アイロンがけ、洗濯物の取り入れと収納など |
掃除 | 例:居室内、トイレ、テーブルなどの清掃 ※掃除は利用者本人のスペースのみ。家族との共用部分は不可 |
買い物 | 日用品、薬の受け取りなど |
ベッドメイク | 例:シーツ交換、布団の上げ下げなど |
ゴミ出し | 例:ゴミ出し ※必要に応じて収集場所の掃除も含む |
2.ポータブルトイレの掃除方法を流れで解説
ポータブルトイレの掃除は、どのタイプを利用していても、基本的には同じ方法でおこなえます。
掃除のコツを覚えられると掃除は簡単ですので、ポータブルトイレ掃除の流れとポイントを確認しましょう。
- ポータブルトイレにお湯を張る
- 汚れた箇所に多めの重曹をふる
- 内側にトイレットペーパーを敷き、その後に拭き取る
基本として、便器のなかに排泄物をためる「バケツ」があり、排泄が終わったら取り出して掃除をしたあと、便器周辺の汚れをとれば完了です。
流れ1.ポータブルトイレにお湯を張る
まず、ポータブルトイレにお湯を張りましょう。
こびりついた汚れは冷たい水よりお湯の方が落ちやすいです。汚れが落ちないからといって、ブラシでこすりすぎると便器が傷んでしまいます。
そのため、ポータブルトイレのバケツにお湯をはってしばらく放置してください。このとき、熱湯を使うとバケツが変形するので「ぬるま湯(38〜40度ほど)」を使います。
お湯を放置する時間が長いほど汚れは落ちやすいですが、サービスの範囲内に合わせて調整します。その間にゴミ出しや洗濯など、別の業務をこなしてください。
流れ2.汚れた箇所に多めの重曹をふる
続いて、汚れた箇所に、重曹を振りかけましょう。今回は重曹を用いていますが、食器用洗剤や、専用の洗浄薬でもかまいません。
何もない場合は、そのままお湯で浮いた汚れを落とすだけでも十分です。
汚れがある程度まで落とせたら、バケツのお湯をトイレに流して処分します。
重曹は、臭いが気になる場合に効果的です。
「目立つ汚れはないのに臭いが気になる」という場合は、重曹を使って掃除してみるとよいでしょう。
重曹の使い方は、以下のとおりです。
【用意するもの】
- 重曹
- 水
- スプレーボトル
【重曹水の作り方】
- スプレーボトルに「重曹(大さじ1)」と「ぬる湯(1リットル)」を入れる
- 重曹が溶けるまで、よくふり混ぜる
【重曹水の使い方】
- 汚れのある箇所に重曹をふる(全体的にまんべんなくふれば消臭効果もあり)
- 数分〜20分ほど放置
- 水で流す、もしくはブラシで優しくこすりながら洗う
重曹はドラッグストア等で手に入れやすく、価格も安いため重宝します。また、余った重曹水は別の箇所の掃除にも使えますので、覚えておきましょう。
流れ3.内側にトイレットペーパーを敷き、その後に拭き取る
頑固な汚れには、トイレットペーパーを使います。汚れのある箇所にトイレットペーパーを敷き、少し水をかけて湿らせてください。水の代わりに、重曹水やお湯を使うとより効果的です。
そのまま少し時間をおいて、ブラシで優しくこすると汚れが落とせます。
このとき、強くこすりすぎないことがポイントです。一般的なトイレと違って、ポータブルトイレのバケツは樹脂やプラスチックを用いて作られているためです。
このように、ポータブルトイレ掃除のコツは少しの手間と工夫をかけることで、掃除がとても楽になりますので試してください。
3.ポータブルトイレの臭い対策3選
ポータブルトイレは在宅介護の強い味方ですが、一方で常に臭いの問題があります。
使う度にきちんと掃除できれば、臭いの問題は起こりにくいですが、毎回の後片付けは使う人にとって身体的にも精神的にも大変な作業です。
トイレは夜間にも使用するので、その都度、後片付けをするのは現実的ではありません。
そこで以下、3つの防臭対策について紹介します。
- トイレのバケツ内に水とトイレットペーパーを入れておく
- 消臭剤を使う
- 空気清浄機を併用する
それでは、詳しく確認しましょう。
対策1.トイレのバケツ内に水とトイレットペーパーを入れておく
バケツに水とトイレットペーパーを入れておくと、汚れと臭いを軽減できます。
ポータブルトイレの素材はさまざまですが、一般的にバケツの多くがプラスチック製です。プラスチックは一見ツルツルして見えますが、表面には細かい凹凸がたくさんあります。
そのため、凹凸の隙間には汚れや臭いの成分が付着しやすく、少し洗ったくらいではとれません。
そこで、トイレのバケツ内に水とトイレットペーパーを入れておくと、汚れのこびりつきや臭いのしみつきをある程度予防できます。
ただし、注意点として「こまめな掃除を心がける」ことが大切です。バケツ内に湿度が多い状態が長くつづくと、雑菌の繁殖となって不衛生ですので気をつけましょう。
対策2.消臭剤を使って臭いを消す
消臭剤を使って、トイレの臭いを消すのも効果的な対策です。
消臭剤の種類は豊富なので、目的や用途に合わせて選んでください。なかでも、洗剤と消臭剤を兼ねたものは、掃除のときに活躍してくれます。
また、泡状のスプレータイプのものは放置用ですので、泡状の消臭剤が汚れや臭いの付着を防いでくれます。持続時間も長いため、夜間時にトイレを使うことが多い場合は利便性の高い消臭剤といえるでしょう。
消臭剤を選ぶときに気をつけたいのは、「ポータブルトイレ専用のものを選ぶ」ことです。
消臭剤は、トイレに使われている材質や場所の違いに合わせて作られており、ポータブルトイレは専用の消臭剤を使うほうが、一般的に高い効果を期待できます。
対策3.空気清浄機を使うのも有効
空気清浄機は、防臭・消臭対策の補助として使えます。空気清浄機だけで臭いを防いだり少なくするのは難しいので、消臭剤や普段の掃除と併用するとよいでしょう。
また、できるだけ効率的に臭いを減らしたいなら換気も重要です。少し窓を開けて空気を入れ替えるだけでも、トイレから広がる臭いを低減できます。
空調を使用している季節は、窓を締め切っていることが多いものです。とくに、冬場は冷え込みを避けるため、ほとんど窓を開けない人もいます。
こうした環境によって、室内に臭いがこもりやすいため、こまめな換気をして臭い対策を心がけましょう。
訪問介護でポータブルトイレの掃除に関するQ&A
ここではポータブルトイレの掃除にまつわる疑問・質問、それに対するアドバイスをまとめておきます。
- ポータブルトイレのバケツにできる汚れ対策は?
- ポータブルトイレには水を入れる?
- 訪問介護でポータブルトイレはどこで洗う?
汚れの対策や洗う場所についてなど、理解しておくと迷わず掃除ができる事柄を紹介します。
ぜひ参考にして、訪問介護でポータブルトイレまで綺麗にできるようになりましょう。
Q1.ポータブルトイレのバケツにできる汚れ対策は?
A.汚れ対策はさまざまなやり方がありますが、代表的な方法は以下の3つです。
- お湯をはってしばらく放置したあとで洗う
- 重曹水を使って洗浄する
- 湿らせたトイレットペーパーを敷き、その後でブラッシングする
お湯はぬるま湯を使い、重曹水が利用できるなら臭い対策として活用します。
時間がなかったり、手持ちによい掃除用具がなかったりするなら、湿らせたトイレットペーパーが役立ちます。
訪問介護に限らず、ポータブルトイレの掃除ならどこでも使えるため、覚えておきましょう。
Q2.ポータブルトイレには水を入れる?
A.ポータブルトイレに水を入れておくことは、汚れや臭いの軽減策として有効です。
事前に水とトイレットペーパーを入れておくことで、汚れのこびりつきや臭いのしみつきを予防できます。
ただし、綺麗な状態を維持するためには「こまめな掃除を心がける」ことが重要です。
湿らせたペーパーを長期間放置すると、こびりつきますので注意してください。
Q3.訪問介護でポータブルトイレはどこで洗う?
A.ポータブルトイレのバケツは、一般に「トイレ」もしくは「浴室」で洗うことが多いです。
まずはトイレが終わったあとにバケツを取り出し、排泄物を処理します。排泄物は、トイレに流してから、バケツを洗う方法が一般的です。
ただし、浴室で洗うのを好まない利用者さんもいるので、その場合は利用者さんの要望に沿って掃除してください。
浴室以外のトイレや居室で掃除するのであれば、水を入れたペットボトルを使ってバケツを洗浄します。
その後、汚物はまとめてトイレに流すというやり方も多く見られます。
まとめ:ポータブルトイレの掃除は区分に注意
今回は、訪問介護でのポータブルトイレ掃除にまつわる内容を大きく2つ紹介しました。
1つはポータブルトイレ掃除の区分的な扱い方について、2つめは掃除方法についてです。
移乗介助の流れでトイレ掃除するなら、身体介護となりますし、トイレ掃除単独のサービスなら生活援助となります。
トイレ掃除は訪問介護への依頼も多く、ヘルパーであれば必ず関わるといっても過言ではありません。
ヘルパーとして、「ポータブルトイレまでの移乗と掃除を一連して介助する」という機会は多いでしょう。
掃除方法や汚れ・臭いの対応についても知っておけば、いざというときに役立ちます。ぜひ、挑戦してください。