訪問介護のボーナス(賞与)はいくら?|収入事情を詳しく解説
訪問介護で「ボーナス(賞与)を楽しみに仕事をしている」という人は多くいます。
年間2回のボーナスが一般的ですが、必ずもらえるわけではありません。
また、ボーナスは事業所や地域によっても幅がありますので、自分が受け取った額が相場より低い(あるいは高い)場合もありえます。
そのため、「いまの職場でもらっているボーナス額は妥当なのか」と考えるときがあるのではないでしょうか。
今回「みーつけあ」では、「訪問介護のボーナス事情」について詳しく紹介します<
さらに、訪問介護スタッフの「年収」や「収入アップのポイント」も合わせて解説しますので、年収やボーナスを検討するときの参考にしてください。
1.訪問介護のボーナスはどのくらい?
まず、訪問介護のボーナス(賞与)額を確認しましょう。
ボーナスについては、以下の2点に注意してください。
- ボーナスの支給は事業所ごとに違う
- ボーナス額は年度により変動する可能性がある
賃金は労働基準法に定められていますが、ボーナスの支払いに義務はありません。
「支給する・しない」「支給額」「支払日」については、会社の判断に委ねられます。
さらに、ボーナスは「勤務成績に応じて支給されるもの」というのが原則です。また、従業員ごとに金額が異なる場合もあります。
そのため、就職後に「求人に記載されていたボーナス額と違う」と、感じるケースがあるかもしれません。
多くの求人では、ボーナス額の後ろに「かっこ書き」で「前年度実績」と記載があります。
インターネットや求人情報で見かけるボーナス額は、約束された金額ではなく「一応の目安額」として把握しておきましょう。
参照:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)
参照:厚生労働省『労働基準法の施行に関する件』 労働基準法法第二四条関係
調査結果1.平均額はおよそ42万円
訪問介護員のボーナスは、2019年(令和元年)の調査で「428,909円」となります(事業所における介護労働実態調査 結果報告書、⑩賞与)。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」のデータでは、ボーナス額は事業所の規模や年齢によって変わります。
事業所規模ごとのボーナス額は、以下のとおりです。
事業規模 | 訪問介護従事者(年間) |
10~99人 | 434,100円 |
100~999人 | 470,800円 |
1,000人以上 | 367,500円 |
参照:令和2年賃金構造基本統計調(職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計))
大規模の事業所は、対象人数が多いためボーナス額は低い結果となっています。
ボーナス額は、事業所の規模だけでなく「経験年数」や「年齢などといった要素も考慮しなければいけません。
経験年数では、以下のとおりです。
0年 | ¥34,000 |
1~4年 | ¥451,300 |
5~9年 | ¥386,100 |
10~14年 | ¥493,000 |
15年以上 | ¥605,100 |
全体平均値 | ¥470,800 |
参照:令和2年賃金構造基本統計調(職種(小分類)、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計))
年齢では、以下のとおりになります。
訪問介護従事者 | 賞与額(年間) |
~19歳 | ¥86,900 |
20 ~ 24歳 | ¥553,900 |
25 ~ 29歳 | ¥380,700 |
30 ~ 34歳 | ¥426,000 |
35 ~ 39歳 | ¥425,200 |
40 ~ 44歳 | ¥482,100 |
45 ~ 49歳 | ¥436,900 |
50 ~ 54歳 | ¥504,600 |
55 ~ 59歳 | ¥491,900 |
60 ~ 64歳 | ¥465,100 |
65 ~ 69歳 | ¥264,900 |
70歳~ | ¥218,100 |
参照:令和2年賃金構造基本統計調(職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計))
一概にはいえないものの、ボーナス額は経験年数に応じて支払われる傾向があります。
以上を考慮した結果、訪問介護のボーナス額平均は「40万〜55万円」となります。
調査結果2.介護職の相場と比べて低い傾向
訪問介護のボーナスは、その他の介護職の相場と比べて「やや低い」傾向があります。
事業規模 | 10~99人 | 100~999人 | 1,000人以上 |
訪問介護従事者 | 434,100円 | 470,800円 | 367,500円 |
介護職員(医療・福祉施設等) | 454,800円 | 562,200円 | 257,900円 |
介護支援専門員(ケアマネジャー) | 576,600円 | 713,200円 | 278,000円 |
参照:令和2年賃金構造基本統計調(職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計))
訪問介護員と、施設勤務やケアマネジャーを比較すると規模が小さくなるほど、ボーナスは低くなります。
その反面、大規模の場合は訪問介護員のボーナス額が多い傾向がありました。
結果として、大規模な事業所に勤務しない場合は、他の介護職と比べるとボーナス額は「やや低い」といえるでしょう。
補足:パートでもボーナスはでる?
「ボーナスは正社員にのみ支給される」と解釈している人もいるのではないでしょうか。
訪問介護の場合、パートであってもボーナスが支給される場合がありますが、事業所によりけりです。
介護業界では、正社員より経験年数の豊富なパート職員がたくさんいます。
また、人材不足であるため「雇用形態に関わらずボーナスを支給している」事業所は少なくありません。
介護労働安定センターの調べによると、「正社員であるか否かに関わらずボーナスを支給」している事業所が半数を占める結果となっています。
調査結果は、以下のとおりです。
定期的にボーナスを支給している | ボーナス制度はあるが経営状況によって不支給の場合がある | ボーナス制度はないが、経営状況により支給する場合がある | ボーナス制度はなく、不支給 | |
無期雇用 | 58.9% | 12.0% | 9.9% | 7.9% |
有期雇用 | 28.0% | 7.4% | 8.7% | 11.2% |
参照:介護労働安定センター『事業所における介護労働実態調査』p72〜
※無回答のデータは割愛
ちなみに、無期雇用とは期間の定めがない職員=「正社員」のことです。
一方、有期雇用とは期間が決められた職員で、「契約社員」「パート」などが含まれます。
パートの場合は、正社員に比べてボーナス支給率は低いですが、5割近くの事業所ではボーナスを支給しているようです。
ただし、定期的なボーナス支給がある事業所は3割ほどです。
2.訪問介護でボーナスなしの平均年収は?
訪問介護でボーナスなしの平均年収は、およそ300万円です。
ボーナスは、事業所の営業実績の影響を受けますので、金額が毎年同じとは限りません。
経営状況がよければ、支給額が増える可能性もあります。
一方、年度によっては大幅な減額・不支給といった状況も考えておく必要があります。
ライフプランを立てるときに「ボーナスありき」で考えるのは危険です。ローンや生活費の勘案は、ボーナス抜きを前提に考えておくのが得策です。
ここで、ボーナスが出ないと見越した場合の年収額を確認しましょう。
以下、令和2年賃金構造基本統計調査の結果をまとめました。
10~99人 | 100~999人 | 100~999人 | |
訪問介護従事者 | 3,199,200円 | 3,024,000円 | 3,138,000円 |
参照:令和2年賃金構造基本統計調(職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計))
※算出方法「きまって支給する現金給与額×12」
事業所の規模により平均年収は上下しますが、およそ300万円となります。
調査結果1.介護職の相場と比べて低い?
介護業界の全体と、訪問介護の年収額を比較してみます。
「ボーナスの支給なし」を前提とした結果は以下のとおりです。
10~99人 | 100~999人 | 100~999人 | |
訪問介護従事者 | 3,199,200円 | 3,024,000円 | 3,138,000円 |
介護職員(医療・福祉施設等) | 2,707,200円 | 2,954,400円 | 3,094,800円 |
介護支援専門員(ケアマネージャー) | 3,286,800円 | 3,320,400円 | 3,336,000円 |
参照:令和2年賃金構造基本統計調(職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計))
※算出方法「きまって支給する現金給与額×12」
事業所の規模にもよりますが、全体として見た場合の訪問介護・年収(ボーナスなし)は、介護業界の相場とほぼ同水準です。
調査結果2.正社員とパートで給与に違いがある
正社員とパートの給与を比較したとき、パートのほうが時給額が高いと感じる場合があります。
求人情報によっては「パート時給額が2,000〜3,000円」と、掲載されている求人は少数ではありません。
訪問介護・正社員の平均年収をおよそ300万円と仮定して、週40時間ほど働いた場合の時給は概算で1,500円ほどです。
ただしパート勤務の場合は、登録ヘルパーや派遣などの雇用形態があり「直行直帰」を原則としている事業所もあります。
つまり、時給が発生するのは「利用者さん宅で業務している実働時間のみ」というわけです。
正社員の場合は拘束時間が考慮され、移動時間や雑務の時間も賃金に含まれます。
また、残業時間に応じた残業代も給料の支給対象です。
勤務形態を広く考慮して見れば、一概にパート勤務の時給が高いとはいい切れません。
訪問介護の求人を探すときは、時給だけでなく給与の内訳や勤務体系なども把握する必要があります。
3.給与・ボーナスをアップするポイントは?
訪問介護で「給与・ボーナスをあげたい」と思ったとき、考えるべきは、以下の3つです。
- 資格を取得する
- 職位をあげる
- 転職を検討する
介護業界は、さまざまな職種で活躍できる仕事です。ただし、職種によって保有する資格も異なります。
訪問介護にも資格があり、とくに国家資格をもつ場合は資格手当が別に付与される場合もあるほどです。
また、給料は「責任の重さ」に応じてアップします。職場でのポジションも給与やボーナスアップの決め手です。
そのほか、転職を考えるのもひとつの方法として検討しましょう。
ポイント1.資格を取得する
訪問介護の仕事に直接関わる資格として以下の3つがあります。
- 介護職員初任者研修 (旧ヘルパー2級)
- 介護福祉士実務者研修(旧ヘルパー1級)
- 介護福祉士
介護職員初任者研修は、介護職全般に必要な資格です。
取得には「130時間の講義を修了する」、さらに「試験に合格する」という2つのハードルをクリアしなければいけません。
実務経験があれば、さらに上位の資格である「介護福祉士実務者研修」を目指せます。
介護現場での実務経験が必要で、加えて専門講義の修了が必須となります。
講義時間は、介護職員初任者研修を修了した人で320時間、そうでなければ450時間です。
介護福祉士は国家資格であり、多くの場合は病院や老人施設などに勤務しています。そして、訪問介護にも携われる資格です。
国家資格には職務手当をつける事業所もあり、給与やボーナスのアップが見込めます。
訪問介護で働くには、上記3つの資格のいずれかが必須です。
上位の資格を取得すれば、高度な知識・技術が修得できて、給料やボーナスのアップが期待できます。
ポイント2.職位をあげる
職位があがれば、給与やボーナスもアップします。
責任あるポジションに所属する人に対しては、「役職手当」として賃金を支給する事業所もあります。
たとえば、部長や課長、さらに訪問介護の場合は「サービス責任者」も上位職の1つです。
サービス責任者は、サービスの管理や計画書の作成・取りまとめ、ケアマネや利用者との連絡など、多岐にわたる業務を担います。
しかし、その分だけ給与やボーナスアップの機会となります。
ポイント3.転職する
転職が、給与・ボーナスアップの転機となる場合もあります。
訪問介護の給与は事業所により変わり、またボーナスに関しては支給の有無や支給額もそれぞれです。
現状の給与やボーナス額と比較して、さらに待遇面のよい職場に転職するのも収入アップのポイントといえます。
ただし、経験年数より勤続年数を重視する事業所もありますし、職員や利用者さんとの関わりもゼロからのスタートです。
収入面は大切ですが、職場の働きやすさも含めて検討しましょう。
まとめ:収入面はボーナスよりも年収で検討!
本記事では、訪問介護のボーナス事情を中心に解説しました。
ボーナスは月ごとの給料より金額が大きい場合もあり、働く側にとっては「やりがい」の1つです。
しかし、ボーナスは固定された賃金ではありませんし、不安定な側面があるため過度な期待は避けたほうが無難です。
訪問介護では、携われる業務が増えるほど、給与も改善する傾向があります。
まずは、キャリアアップとして上位にあたる資格の取得を目指してみるとよいでしょう。