訪問介護のモニタリングとは誰の仕事?【訪問介護Q&A利用者編】
訪問介護サービスを利用していると、月ごとに「モニタリング」が実施されます。
モニタリングは、利用者のサービス計画を作るための重要な調査です。サービス担当者は通常業務のひとつですが、利用者にとっては耳馴染みのない言葉ではないでしょうか。
今回、「みーつけあ」では訪問介護を利用する人に向けて、「訪問介護のモニタリング」について解説します。
利用者としてモニタリングの「概要」や「目的」を把握しておけば、要望を伝えるときに役立ちます。
何を伝えるべきかを整理するときの、参考にしてください。
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1.訪問介護のモニタリングとは?
モニタリングとは、「介護サービスの実施状況を把握する」ための調査です。
モニタリングは、ケアマネジャーの仕事でもありますが、訪問介護の事業所も個別でモニタリングを実施します。
訪問介護は利用者の状況に合わせて、必要な介護をおこなうサービスです。そのサービスは事前に計画されていなければいけません。
事前に計画した「ケアプランと訪問介護計画書に従う」のが、原則だからです。
そこで、プランを定期的に見直すために、「サービスの実施状況」や「利用者の変化」といった情報を集めるのがモニタリングです。
さらに、モニタリングでは「利用者・家族の声」が重要になります。
つまり、モニタリングは「サービス実施状況の把握」に加え、「利用者・家族の思い・満足度を知る」ためにおこなう調査だといえます。
2.訪問介護でモニタリングを実施する目的
モニタリングの目的は、以下の内容にまとめられます。
- サービスの利用状況を把握する
- 利用者の満足度を調査する
- 目標の達成度合いを評価する
- サービス提供者に対する信頼度を確認する
- サービス変更の必要性を検討する
上記は、「訪問介護計画」とケアマネジャーが作成する「ケアプラン」の貴重な情報です。
これらの情報をもとに、訪問介護のプラン継続・変更がおこなわれます。
上記の項目について、その内容を詳しく確認しましょう。
(1)ケアプランに沿ってサービスが実施されているか
介護保険サービスは、「ケアプランに沿ったサービスの提供」が原則です。
ケアプランは、ケアマネジャーが作成する利用者ごとの介護計画のことで、利用者の支援に必要なサービスのベースになるものです。
ケアプランの目的に「利用者の自立」とあれば、訪問介護は「利用者の自立を支援する訪問介護」のプランニングが必要となります。
たとえば、ケアプランのなかに「洗濯はヘルパーと一緒におこなう」との計画があるとしましょう。
ところが実際の訪問介護では、「ヘルパーがすべてやっている」という状況はNGです。
これでは「ケアプランに沿っている」とはいえず、目標も達成できていません。
「ケアプランの目的に沿った訪問介護ができているか」を把握するのは、モニタリングの大切な役割です。
参考:社会保障審議会『ケアマネジメントのあり方』
(2)ニーズ対する充足度や必要なサービスに変化はないか
訪問介護のモニタリングは、「利用者ニーズの充足度と変化」を把握する目的があります。
そもそも介護サービスは、利用者のニーズに応えるための支援です。
たくさんのサービスを整えて実施したとしても、利用者のニーズが満たせないプランでは意味がありません。
訪問介護も同じく、利用者のニーズを満たすサービスです。
ただし利用者のニーズは、本人の心身状態・環境の変化によっても変化します。
加齢や病気などで困難さが増えれば、訪問介護の内容や提供頻度も増やす必要があるでしょう。
家族の家庭環境が変わり、家族の援助が受けられなくなる可能性もあります。
このときも、訪問介護計画の変更が必要です。
訪問介護計画の変更が必要かどうかを判断するときには、モニタリングで集めた情報が不可欠です。
(3)目標を達成具合はどうかか
モニタリングは、「利用者の目標を達成できているか」を評価する目的があります。
目標は利用者ごとに異なり、訪問介護のプランも目標を達成するためのものです。
たとえば、「家事全般をこなすのが体力的に難しい」という利用者がいるとしましょう。
ここで、「掃除支援があれば自立した生活が送れる」というとき、訪問介護では掃除の援助を計画します。
掃除援助を実施した結果、「家事の負担が減って自分でできることが増えた」場合は、訪問介護の目標は達成できていると評価できます。
目標の達成具合を見て、訪問介護計画やサービス内容を評価するわけです。
(4)サービス提供者との信頼関係を築けているか
モニタリングには、サービス提供者との信頼関係を確認する目的もあります。
訪問介護は、つまるところ「人と人との関わり」です。サービスをおこなうヘルパーや事業所との信頼関係は、サービスの実施にも影響します。
利用者の家のなかで、利用者の身近な場所で介護をするのが訪問介護です。信頼関係がなければ、サービスは居心地のわるいものとなります。
また、サービス内容や担当者の業務に不満が生じたとき、根本は「人間関係の問題」である場合も少なくありません。
信頼関係を把握することも、モニタリングの重要な目的のひとつです。
3.訪問介護で実施するモニタリングの流れ
モニタリングは、以下の流れで実施されます。
- 月ごとに実施
- 訪問調査による満足度の評価
- 計画書の見直し
- ケアプランの変更
ここで、訪問介護のモニタリング結果が、「最終的にはケアプラン全体に影響する」という点を押さえておいてください。
モニタリングの情報は、ケアマネジャーに必ず報告しなければいけません。
ケアマネジャーは、訪問介護で実施されたモニタリング結果を見て、次に全体の介護プランを調整します。
ステップ1.モニタリングは原則として月に1回の実施
モニタリングは、原則として月に1回の頻度でおこなわれます。
モニタリングを担当するのは、訪問介護事業所のサービス責任者です。
サービス責任者が利用者の家に訪問し、現状のサービスが適しているかを確認します。
事業所によっても若干異なりますが、以下はモニタリングの基本的な項目です。
- 訪問介護サービスの実施状況
- 本人の満足度(家族の満足度を含む場合もある)
- 利用者の心身・家族環境などの変化
- 利用者・家族のニーズの変化
- 目標の達成状況
- 将来的な目標の確認
厳密にいうと、モニタリングは「ひと月に一度だけ」ではありません。
日々の業務のなかでも担当者が気づいた点は、適宜記録をしています。
形式的には月に一度とされますが、実質のモニタリングは日々の業務を通じておこなわれるものです。
ステップ2.訪問調査による満足度評価
モニタリングでは、「評価」がおこなわれます。
評価とは、サービスの適合度合いを判断して「サービスの価値を見定めること」です。
サービスの実施状況や利用者の満足度、目標の達成具合を把握し、最終的に現状のサービスの価値を判断します。この価値判断が、「評価」です。
参考までに、モニタリングシートの一例を以下に記載しておきます。
項目 | 記載欄 |
記載者の氏名 | |
利用者の氏名 | |
目標 | 例:家事負担を軽減し、自立した生活を維持する |
サービス内容 | 例:寝室・居室の掃除をヘルパーと共同しておこなう |
評価 | 例:掃除の負担が軽減し、調理を自分でおこなえるようになった。配食サービスを止め、自分でも調理に取り組んでいる。 |
課題 | 例:腰の痛みにより、長時間の掃除が難しい。 |
※複数のサイトを参考に算出
このように、サービス内容や利用者の声を総合・現状分析したものが評価です。評価した結果を再計画に活用します。
ステップ3.計画書の見直しが実施される
モニタリングの評価にもとづき、ケアプランと訪問計画書の見直しがおこなわれます。
計画書の見直しは、以下の2つが重要です。
- 現状のサービスの結果を踏まえていること
- 計画の妥当性が検証されていること
上記の項目を満たすためには、評価が適切に実施されていることが前提です。
現状のサービス結果とは、サービスの実施による目標の達成度合いです。
計画の妥当性とは、利用者の目標やニーズに対して「訪問介護のサービスにズレがないこと」を意味します。
サービスの結果と妥当性が曖昧だと、適切な再計画ができません。
上記2つのポイントを踏まえたうえで、計画を調整します。
ステップ4.ケアマネジャーによるケアプランの変更
モニタリングの結果はケアマネジャーに報告されます。
サービス責任者・ケアマネジャー・利用者が連絡を取り合い、訪問介護サービスの「継続」「追加サービス」などが検討されます。
検討された結果、出来上がった計画書には「利用者と家族への説明と同意」が必要です。
計画書のなかで納得できない点があれば、必ず担当者に質問してください。
※参考:大阪府健康福祉部高齢介護室『訪問介護計画の作成について』
4.訪問介護のモニタリングで伝えるべき内容
モニタリングを受ける利用者として、「何を」「どのように」伝えるべきか悩むかもしれません。
そもそも、モニタリングの主役は利用者です。利用者として「訪問介護に普段感じていること」を素直に話してかまいません。
そうはいっても、思いをうまく言葉にするのが難しいときもあります。
口頭で伝えるのが難しいときは、伝えたいことを確認して「書き出しておく」のも有効です。
書面は相手にも記録として手元に残るため、後々の確認にも活用できます。
モニタリングでは、以下の項目を整理して伝えるとよいでしょう。
- 訪問介護に満足している点・満足していない点
- 満足している理由・満足していない理由
- 現状のサービスに不足しているもの・余分なもの
- 利用者本人の立場から見た長期・短期目標の達成度
- 家族の立場から見た長期・短期目標の達成度
- 家族として見る利用者の状況変化
その後、最終的に「現状の計画を見直してもらう必要があるか・ないか」を伝えてください。
5.訪問介護のモニタリングと評価の違い
「モニタリング」と「評価」という表現は、現場でもしばしば混同されています。
両者は似ているようで非なるものです。これらの違いを、整理しておきましょう。
モニタリングは、実施状況や満足度を踏まえ、評価をおこなうことです。
評価は、モニタリング中の調査結果をもとに、サービスの価値を判断します。
つまり、評価とはモニタリングを構成する要素のひとつと解釈できます。
訪問介護のモニタリングに関するQ&A
この項目では、訪問介護のモニタリングにまつわる、以下のQ&Aをピックアップしました。
- モニタリングの書き方について
- モニタリングの実施者について
- サービス責任者とは
書き方や実施者、モニタリングの話でよく出る名前の「サービス責任者」についてを、補足知識として参考にしてください。
Q1.モニタリングの書き方や用紙の例はある?
A.決まった書き方や様式はありません。モニタリングのフォーマットは事業所ごとに異なります。
【補足】
決められた書式はありませんが、参考例はインターネットや書籍で紹介されています。
一方、一定の書き方を決めている自治体もあります。指定の書き方がある市町村では、その書式にしたがってください。
参考:大阪府泉佐野市『各種記録モデル様式』
Q2.訪問介護のモニタリングは誰の仕事?
A.訪問介護のモニタリングは、サービス責任者がおこないます。
【補足】
モニタリングは、担当者が日々の業務ごとに記載する記録も含まれます。
そのため、厳密には「サービス責任者がおこなうもの」と「担当者がおこなうもの」とも言えるでしょう。
ただし、いわゆる「月ごとのモニタリング」の担当者は、サービス責任者です。
Q3.モニタリングをするサービス責任者って何をする人?
A.サービス責任者は、訪問介護の「サービス質向上」に関わる全般的な業務を担います。
サービス責任者の仕事は広範囲に及びますが、大きくは「サービス全般」と「人事」のマネジメントです。
参考までに、サービス責任者が担う業務の一例を下記に記載しておきます。
- 訪問介護計画の作成
- 訪問介護の管理・運営
- 利用者・ケアマネジャーとの連絡調整
- 人材管理(ヘルパーの配置・人材教育)
- モニタリング
さまざまな業務に携わるのが、サービス責任者といえます。
参考:全国介護事業者協議会『訪問介護におけるサービス提供責任者の抱える課題に対する対応策 および評価・育成・配置のあり方に関する調査研究事業』p17〜
まとめ:モニタリングでは正直に本人・家族の意向を伝えよう
訪問介護の、モニタリングについて見てきました。
モニタリングは、「利用者にとってサービスが適切かどうか」を知るための調査です。
調査の主役は、あくまで利用者と家族となります。
- 「日頃からサービスに対して感じているもの」
- 「訪問介護に抱いている要望や不満」
- 「担当者との関わりで気になること」
日々、訪問介護を受けていて生じる気持ちを率直に伝えてください。
介護サービスは、担当者と利用者の双方で作り上げていくものです。利用者の声が、結局はサービスの質の向上につながります。
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