訪問介護で嫌な利用者さんと感じたときの解決策
「訪問介護先の利用者さんとの関係に苦手意識を抱いてしまった」
「嫌な利用者さんの担当になってしまったときの対処法を知りたい」
訪問介護サービスは、利用者さんの日常生活をサポートする重要な業務です。
しかし、「対人関係」である以上、介護者側にとって嫌な利用者さんにあたることも少なくはありません。
そこで今回「みーつけあ」では、訪問介護サービスで嫌な利用者さんの担当になったときの対処法について解説します。
もちろん、訪問介護サービスという大切な仕事に従事する以上、一定のコミュニケーションスキルが求められるのは仕方がないことです。
ただ、「サービスを提供する側」だからといって、どのようなことにも耐えなければいけないというわけではありません。
訪問介護員が、利用者さんとの関係で抱くよくある悩みや疑問も一緒に紹介するので、今後のお仕事にお役立てください。
1.訪問介護で嫌な利用者さんと感じるとき
まず、どのようなタイミングで「嫌な利用者さんだ」と感じるのかを紹介します。
実際の訪問介護の現場では、さまざまなシチュエーションが発生しますが、大別すると以下3種類に分類できます。
- 利用者さんがわがままに思える
- 利用者さんの言動が偉そうに感じる
- 利用者さんと性格が合わない
それでは、各ケースを参考に、あなたが抱いている不満はどれに当てはまるのかを確認しましょう。
自分と同じ悩みを抱えている人がいると分かるだけで、気持ちが落ち着くはずです。
ケース1.利用者さんがわがままに思える
利用者さんのわがままな言動や行為に触れたとき、「嫌な利用者さんだ」と感じることがあります。
たとえば、訪問介護員から見て「利用者さんのわがままだ」と受け取ってしまいやすい事例は次のとおりです。
- 自宅に訪問しても介護自体を拒絶される
- 訪問介護サービス外の用事を頼まれる(家政婦扱される)
事例1.自宅に訪問しても介護自体を拒絶される
まず、訪問介護契約を締結したにもかかわらず、訪問介護員が自宅を訪問してもサービスの提供を拒絶されるケースがあります。
拒否される訪問介護員からすると、「自分のことが気に入らないのかも」と感じてしまうのは当然です。
ただし、利用者さんにもいろいろと抱える事情があって、「気持ちのやり場が見つからないから訪問介護員に甘えているだけ」という可能性も否定できません。
そのため、訪問介護を拒否されたからといって全否定されたかのように捉えるのではなく、利用者さんとの丁寧な対話を、時間をかけて重ねるのがポイントです。
事例2.訪問介護サービス外の用事を頼まれる
次によくある事例が、訪問介護契約の範囲外の用事を頼まれるというものです。
自分の身の回りをお世話してくれる訪問介護員のことを、家政婦のように勘違いされてしまうことはよくあります。
たとえば、利用者さん家族の食事作り・庭の草むしり・ペットの散歩などを指示されることもあるのです。
このようなケースでは、利用者さん側が「訪問介護員ができること・できないこと」をしっかりと把握できていない可能性があります。
そこで、訪問介護員ができないこと・訪問介護契約の範囲外のことを頼まれたときには、以下の返答で利用者さん側の誤解を解くようにしてください。
- 「訪問介護契約では〇〇はできないことになっています」
- 「ご家族の方に頼んでみてはいかがですか」
訪問介護員と利用者さんの付き合いが長くなるほど、甘えの気持ちからいろいろなことを頼んでしまいたくなるものです。
「訪問介護サービス外のことを頼まれたから嫌な利用者さんだ」と即断するのではなく、立場を明確にしながら利用者さんをサポートできる環境を整えましょう。
▼訪問介護にできること・できないことに関しては、以下の記事が参考になります。
>>訪問介護ヘルパーに頼めることって?できること・できないことを紹介
ケース2.利用者さんの言動が偉そうに感じる
利用者さんの偉そうな言動に触れると、「嫌な利用者さんだ」と感じてしまうことがあります。
たとえば、「利用者さんの言動が偉そうに感じる」事例は次のとおりです。
- 命令口調で指示される
- 訪問介護員の行為に難癖をつける
- 自慢話を聞かされる
- 暴言をはかれる
もちろん、なかには利用者さん側に問題があって、訪問介護員に対して嫌がらせをするケースも存在します。
もっとも、すべての利用者さんの言動が「悪意によるもの」というわけではありません。
たとえば、自分の希望を素直に伝えるのが苦手な人、普段から言葉遣いが乱雑な人など、利用者さんの性格はいろいろあります。
つまり、「偉そうな言動」だけを切り取って「嫌な利用者さんだ」と決めつけてしまうのではなく、以下のように原因を考えるのがポイントです。
- 「なぜ〇〇な言葉を使うのだろう?」
- 「なぜ△△のようなことをされるのだろう?」
時間をかけて利用者さんとの関係性を築いていくなかで、少しずつ性格や抱える事情などを理解していきます。
すると、不思議と最初は偉そうに感じていた言動が、一切気にならなくなることも少なくはありません。
あなたの気持ちに余裕があるのなら、利用者さん側の気持ちや考えとゆっくり向き合ってみるのもよいでしょう。
ケース3.利用者さんと性格が合わない
利用者さんと性格が合わないと感じた場合、訪問介護サービスの提供に支障が生じることがあります。
訪問介護員は、どうしても利用者さんと二人きりで過ごす時間が長いです。
そのなかで、「性格が合わない」と感じる場面が多いと、サービスの提供が嫌になるのは当然でしょう。
ただし、利用者さんと訪問介護員との間には、年齢差があるケースがほとんどです。
利用者さんにとっては、訪問介護員が孫や子どもと同世代だということも少なくはありません。
たとえば、訪問介護員からすると「小言が多い人だな」と感じる機会があったとしても、利用者さんにとってはポジティブな気持ちから発した言葉の可能性もあります。
- 「子どもみたいで可愛らしい」
- 「年下の人にアドバイスしてあげたい」
「訪問介護員と利用者さん」という立場だけで関係性を図るのではなく、年齢の差・男女差・育った環境の違いなどにも目を向けてみましょう。
それだけでも、性格の違いが気にならなくなるはずです。
2.訪問介護員の嫌な態度は利用者さんにも伝わる
「嫌な利用者さんだな」と感じたとき、何の解決法も試さずに自分が我慢し続けるのは止めるようにしてください。
なぜなら、訪問介護員の我慢や内に抱えた感情は利用者さんにも伝わってしまうからです。
そもそも、訪問介護サービスは、「身体介護・生活援助」などの身の回りのケアが中心です。
必然的に、訪問介護員と利用者さんの距離は近くなります。
訪問介護員が抱く「嫌な利用者さんだな」という気持ちは、サービス内容にも反映されてしまう可能性があります。
また、利用者さんがそれを感じ取ると、訪問介護員に対する態度・言動がさらに酷くなるおそれがあるでしょう。
つまり、訪問介護員が我慢をするだけでは、負のスパイラルを招くだけだということです。
「訪問介護員と利用者さん」という1対1の関係に亀裂が入ってしまうと、利用者さんからきつく当たられる訪問介護員も辛いものです。
さらに、気持ちよく訪問介護サービスを受けられない利用者さんも、支援を頼んでいる意味がなくなります。
こうした背景を考えても、両者が気持ちよく訪問介護を通して円満な時間を過ごせるためには、「嫌な利用者さんだな」と感じている訪問介護員側から、解決に向けて動き出すべきでしょう。
次の項目で紹介する対処法をご参照のうえ、あなたがいま抱えているトラブル解決にお役立てください。
3.訪問介護で行きたくない利用者さんとの関係を解決する方法
嫌な利用者さんの担当になったとき、「自分ひとりだけが我慢する」という解決法では意味がありません。
せっかく「利用者さんの役に立ちたい」という気持ちを抱いて就いたはずの訪問介護の仕事を、気持ちよく続けられないリスクが生まれるからです。
そこで、訪問介護で行きたくない利用者さんとの関係を解決するためには、次の3つの方法を検討してみましょう。
- 担当を代えてもらう
- 仕事仲間に相談する
- 認知症介護の勉強をする
それぞれ、具体的に説明するので参考にしてください。
方法1.どうしても辛い場合は担当を代えてもらう
訪問介護サービスの利用者さんとの関わりが、どうしても嫌なときには「担当を代えてもらう」という選択肢を検討してください。
事業所の上司や主任、サービス提供責任者(サ責)に現状の問題点を伝えて、改善が不可能であることを説明すれば担当者を変更してくれるでしょう。
また、事業所側には労働環境整備について「善管注意義務」が課されているので、かならず対応してくれるはずです。
ただし、担当者の変更を希望するのは「次のような限定的な場面だけ」であることには注意しなければいけません。
なぜなら、何度も担当の変更を申し出るようでは、「訪問介護員自身に問題があるのでは?」と評価されるリスクがあるからです。
- 自分なりに他の解決策を検討したが改善するのは難しい
- 利用者さんから暴力行為やセクハラ行為を受けている
- 部屋が汚過ぎて体力がもたない
- 利用者さんとの関係がストレスで訪問介護員自身が心身に不調をきたした
このような事情を抱えるケース以外では、まずは次項で紹介する2つの方法を試してみることをおすすめします。
方法2.仕事仲間に相談する
訪問介護サービスで「嫌な利用者さんだな」と感じたときには、仕事仲間に相談するのが簡単で有効な解決法です。
たとえば、訪問介護歴が長い先輩スタッフなら、身をもっていろいろなトラブルに対応してきた経験があるでしょう。
- 利用者さんと円滑にコミュニケーションを取る方法
- 嫌な言葉を投げかけられたときの気持ちのやり場
- 利用者さんとの接し方を見直す考え方
こうした経験から、自分ひとりだけでは思いつかなかった解決方法を提案してくれます。
また、仕事の内容をよく分かってくれている身近な人に悩みを打ち明けるだけで、気持ちが楽になることもあるはずです。
さらに、誰かと悩みを共有できただけでも仕事に前向きな姿勢を取り戻せる可能性も高いです。
事態が負のスパイラルに陥って深刻な状況になる前に、仕事仲間に相談してみることを強くおすすめします。
方法3.認知症介護の勉強をする
訪問介護の利用者さんとの関係性にトラブルを抱えつつも、今後さらに介護業界でキャリアアップを目指したいと意欲をもつ人もいるはずです。
こうした場合におすすめの方法が、「認知症介護の勉強をする」というものです。
認知症介護分野の勉強を重ねて知識を身に付ければ、「嫌な利用者さんだな」と感じる相手を、別の角度から理解して割り切る気持ちを持てます。
また、将来的なスキルアップにも役立つでしょう。
たとえば、次のような資格・研修を受けるだけでも理解度・仕事の選択肢が増えるので、余力のある人はぜひ挑戦してください。
認知症介護分野の資格 | ・認知症介助士 ・認知症ライフパートナー ・認知症ケア指導管理士(初級・上級) ・認知症ケア准専門士、認知症ケア専門士、認知症ケア上級専門士 |
認知症介護分野の研修 | ・認知症介護基礎研修 ・認知症介護実践者研修 ・認知症介護実践リーダー研修 ・認知症対応型サービス事業開設者研修 |
なお、各資格には実務経験や研修履歴を要するケースがあるので、詳細は直接お問い合わせください。
訪問介護で嫌な利用者さんに関するよくある質問
最後に、訪問介護員と利用者さんに関するよくある質問を集めました。
今回、紹介する質問は次の3つです。
- 嫌な利用者さんではないけど対応が難しいときの解決策を知りたい
- 訪問ヘルパーあるあるが知りたい
- 登録ヘルパーで利用者さんへの対応が難しいときの対処法を知りたい
あなたがいま抱いている悩みは、あなた自身に問題があるわけではなく、訪問介護業界ではよくある疑問・悩みの可能性も高いです。
頻出項目に対する解決法は意外と多く用意されているので、訪問介護員が抱くよくある質問を参考に、今後の業務に役立てていきましょう。
Q1.嫌な利用者さんではないけど対応が難しい
A.利用者さんの抱える事情によって、訪問介護の難易度は異なります。
なかには、特別負担が重いわけではないが、対応が難しいという人もいるでしょう。
この場合には、訪問介護員側の知識・経験・ノウハウが不足している可能性があります。
そのため、認知症介護基礎研修や認知症介助士などの資格取得を通じて、あなた自身がスキルアップを目指すのがおすすめです。
もちろん、訪問介護員さんにも生活スタイルがあり、研修や資格取得が難しいこともあるはずです。
そのようなケースでは、仕事仲間に解決法を指南してもらったり、事業所に担当者の変更を申し出たりする手段が有効でしょう。
Q2.訪問ヘルパーあるあるが知りたい
A.訪問ヘルパーが抱えやすいトラブルは、利用者さんの数だけあります。
具体例としては、次のとおりです。
- 家政婦と勘違いされて業務外のことを頼まれる
- 利用者さんの自宅が汚い
- 利用者さんの暴言で傷つく
- 利用者さん家族が口うるさい
- 理不尽なクレームを入れられる
- 暴力やセクハラ被害を受けている
- 仕事量に比べて給料が安い
- シフトが不安定で稼ぎが安定しない
- 充分な交通費をもらえない
利用者さんとの関係性だけではなく、利用者さん家族との間のトラブルや給与面の問題などもあります。
また、訪問ヘルパーあるあるにはいろいろなジャンルの内容があります。
こちらについては、「訪問ヘルパーの悩みあるある3選!解決策についても紹介」で詳しく解説しているので、あわせてご一読ください。
Q3.登録ヘルパーで利用者さんへの対応が難しいときは?
A.登録ヘルパーとして働いている人のなかには、利用者さんへの対応の難しさから仕事を辞めてしまいたいと感じている人も少なくはありません。
たしかに、登録ヘルパーを辞めて施設や老健などに転職すれば安定した収入を得られるでしょう。
また、マネジメント業務に移行して肉体労働から解放されるといったメリットも得られます。
しかし同時に、登録ヘルパー業のメリットを手放さなければいけない点に注意が必要です。
たとえば、登録ヘルパーとして働くことには次の3つのメリットがあることをもう一度冷静に捉え直して、本当に登録ヘルパーを辞めてもよいのかを考えてみてください。
- 自分の希望どおりのシフトを通しやすい
- 労働時間が固定されないので家事・育児と両立しやすい
- ダブルワークに適した環境
利用者さんへの対応の難しさは登録ヘルパー・訪問介護員特有の課題であることは間違いありません。
ただ、だからといって仕事を辞めてしまったらそれまでです。
嫌だと感じる利用者さん・対応が難しい利用者さんへの対処法は「登録ヘルパーを辞めたいと考える主な理由とは?辞め方やその後のキャリアパスも解説」で詳しく解説しています。
登録ヘルパーを辞める前に、「いまできること」を模索してみましょう。
まとめ:利用者さんの対応は初心に戻るよい機会になる
訪問介護員として働いていると、嫌な利用者さんを担当しなければいけないことがあります。
肉体的・精神的に大変な業務をこなすなかで、利用者さんとの関係性を円滑に築けないと「仕事を辞めたくなる」のも当然です。
ただ、利用者さんごとに事情はさまざまです。あなたに対する言動が、悪意以外のところから来ている可能性もあります。
もし、まだ「嫌な利用者さんだ」という気持ちがあなた自身を押しつぶすほどのストレス要因になっていないのなら、訪問介護の仕事を初心から見直してみてはいかがでしょうか?
仕事を辞めることは簡単ですが、辞める前にできることもたくさん残されているはずです。
この記事で紹介した解決法を参考にしながら、利用者さんへの向き合い方やコミュニケーションの取り方などをもう一度考え直して、今後のキャリア形成にお役立てください。