訪問介護契約書の説明の仕方まとめ!重要事項説明書の順番まで知ろう
利用者さんとの間で訪問介護契約を締結する際には、事前に訪問介護契約書及び重要事項説明書の内容を説明する必要があります。
もっとも、訪問介護説明書・重要事項説明書の記載内容は多岐に渡り、また、利用者さんが正しく知っておくべき項目ばかりです。
そのため、事業者側が説明する際にはポイントを押さえなければいけません。
そこで今回「みーつけあ」では、訪問介護契約書の内容を利用者さんに対して説明する際の方法・注意事項について解説します。
あわせて、重要事項説明書の重要性についても紹介するので、最後までご一読ください。
1.訪問介護の契約で説明の仕方が不安
訪問介護とは、自分自身や家族だけでは日常生活を送るのが難しい利用者さんに対して、訪問介護員が直接自宅を訪問するサービスです。主に、「身体介護」や「生活援助」をおこないます。
そして訪問介護の契約は、利用者さんごとに要介護認定・要支援認定それぞれの等級によって異なります。
また、ホームヘルパーのサポートが求められる生活援助・身体介護サービスの中身も、個々の事情を考慮して内容が決められなければいけません。
つまり、「訪問介護をお願いしたいです」「はい、分かりました」というように、簡単に契約を結べないということです。
そのため、利用者さんと事業者との間で訪問介護契約を締結する際には、訪問介護契約書及び重要事項説明書について、「丁寧な説明」が求められます。
もっとも、訪問介護契約書・重要事項説明書の記載量は多く、内容も複雑です。
さらに、利用者さん側が内容を理解するためには、事業者側が書面の中身を順序立てて分かりやすく解説しなければいけません。
そこで、「訪問介護の契約の説明に不安がある」という人は、訪問介護契約書・重要事項説明書にどのような内容が記載されているのか、事前に整理しておくことがポイントです。
補足:契約を説明するときは「契約書」から
訪問介護契約を締結する際に必要な書類は、主に「訪問介護契約書・重要事項説明書」の2種類です。
訪問介護契約の核となるのが「訪問介護契約書」、細かい条件・内容が記載されているのが「重要事項説明書」と分類できます。
ですから、これから訪問介護契約を締結しようという利用者さんに対しては、「①訪問介護契約書、②重要事項説明書」の順番で説明します。
こうした順番まで考慮して、訪問介護サービス・契約内容について理解してもらうのがスムーズです。
さらに、重要事項説明書の内容を伝えた後に訪問介護契約書をもう一度説明すると、利用者さん側の理解度も深まりやすいでしょう。
2.訪問介護の契約で説明が必要なのは2種類
訪問介護サービスを開始するためには、利用者さんと事業者との間で訪問介護保険サービスについての契約を締結しなければいけません。
契約の締結を要するということは、当事者双方が契約内容について熟知している必要があります。
そのため、訪問介護の契約では、以下2種類の書面について事業者側の丁寧な説明が不可欠です。
- 訪問介護契約書
- 重要事項説明書
それでは、訪問介護の契約で説明が必要な2種類の書面について、詳しく見ていきましょう。
書類1.訪問介護契約書
訪問介護契約書とは、訪問介護サービス契約の根幹となる書面のことです。
分かりやすく説明すると、訪問介護契約書に記載されるのは「訪問介護サービス全体に共通するような基本項目」です。
「訪問介護サービスを提供して欲しい」という利用者さん側と、「〇〇という条件で訪問介護サービスを提供する」という事業者側それぞれの希望があるとします。
双方の意見が合致して、利用者さん・事業者間で訪問介護サービスについて合意が形成されていることを証明する効力を有します。
たとえば、訪問介護契約書の記載内容は次のようなイメージです。
〇〇様(以下、「利用者さん」と略す。)と△△(以下、「事業者」と略す。)は、事業者の提供する訪問介護サービスについて、以下の内容で契約を締結します。(契約の目的)
第1条 事業者は、介護保険法、関係法令及び当該契約書に基づき、利用者が自立した日常生活を営むことができるように、次の訪問介護サービスを提供します。
①~~
②~~(契約の期間)
第2条 当該訪問介護契約の期間は〇年△月〜〇年△月までです。ただし、契約期間満了期間前に利用者の要介護状態区分・要支援状態区分に変更があった場合には、変更後の認定有効期間満了日までとします。(個別サービス契約の作成及び変更)
第3条 事業者は、利用者さんの日常生活全般の状況・心身の状況・希望を踏まえて、利用者さんの居宅サービス計画の内容に沿って、サービスの目標及び当該目標を達成するための具体的サービス内容等を記載した個別サービス計画を作成します。
(提供するサービスの内容及びその変更)
第4条 事業者が提供するサービスの内容・利用回数・利用料は重要事項説明書に記載する通りです。なお、利用者はサービスの内容変更をいつでも申し立てることができます。
(利用料について)
第5条 利用者は、事業者からサービスの提供を受けたときは、重要事項説明書の記載にしたがって、事業者に対して利用者負担金を支払います。なお、介護保険法等関係法令の改正により利用者負担金に変更が生じた場合には、変更後の利用者負担金を支払うことになります(変更に同意できない場合には、本契約を解除することができます)。
(利用料の滞納)
第6条 略
(利用者さんの解約権)
第7条 略
(事業者の解約権)
第8条 略
(契約の終了)
第9条 略
(損害賠償)
第10条 略
(守秘義務)
第11条 略
(苦情処理について)
第12条 略
(サービス内容等の記録の作成及び保存)
第13条 略
(契約外条項)
第14条 略
参考:(11)「契約書」「重要事項説明書」 記載例 – 新潟県ホームページ
※事業所・自治体ごとに雛型・ガイドラインが用意されているのでご参照ください。
このように、訪問介護契約書は、契約に関する一般条項について定められるものです。
これに対して、「実際にどのようなサービスがいかなる条件で提供されるか」といった個別的・具体的な詳細については、次に紹介する「重要事項説明書」に記載されます。
書類2.重要事項説明書
訪問介護契約における重要事項説明書とは、利用者さんが細かい契約内容について深く理解できるように細かな内容を定めた書面のことです。
訪問介護契約書は、すべての利用者さんに当てはまるような一般条項を定めています。
しかし重要事項説明書では、各利用者さんが実際に受けるサービス内容や利用料金についての詳細な取り決めが記載されます。
- 「誰から訪問介護サービスを受けるのか」
- 「どのような訪問介護サービスが実施されるのか」
- 「訪問介護サービスにいくらお金がかかるのか」
これらについて把握できなければ、利用者さんは納得して契約を締結できません。
つまり、利用者さんが受ける訪問介護サービスについて「深く理解する助け」となるために、重要事項説明書が用意されることになります。
訪問介護契約書と同じように重要事項説明書に決まった書式はありませんが、次のような記載例・記載内容がとられるのが一般的です。
1.事業者の概要
事業者の名称、主たる事業所の所在地、代表者氏名、設立年月日、電話番号など
2.ご利用事業所の概要
ご利用事業所の名称、サービスの種類、事業所の所在地、電話番号、指定年月日、事業所番号、管理者の氏名、通常の事業の実施地域など
3.事業の目的と運営の方針
4.提供するサービスの内容
身体介護、生活援助、通院のための乗車・降車の介助などの具体的なサービス内容
5.営業日時
営業日や営業時間帯について
6.事業所の職員体制
介護福祉士の常勤・非常勤が何人ずつ配置されているのかなど
7.サービス提供の責任者
実際の担当者の氏名
8.利用料金
各サービスの時間当たりの基本利用料金、キャンセル料、支払い方法など
9.緊急時における対応方法
利用者さんの主治医の連絡先、家族等の緊急連絡先など
10.事故発生時の対応方法
11.苦情相談窓口
12.第三者による評価の実施状況
13.サービスの利用にあたっての留意事項
事業者の署名・押印欄
利用者さんの署名・押印欄
年月日記載欄
参考:(11)「契約書」「重要事項説明書」 記載例 – 新潟県ホームページ
※事業所・自治体ごとに雛型・ガイドラインが用意されているのでご参照ください。
このように、訪問介護サービスの具体的な内容は、重要事項説明書に記載されていることが分かります。
そのため、利用者さんに訪問介護サービスについて説明をするときには、訪問介護契約書・重要事項説明書をセットで、丁寧に解説するのがポイントだといえるでしょう。
3.訪問介護契約書の説明の仕方・流れ
それでは、訪問介護契約を締結する際の説明の方法・流れについて具体的に見ていきましょう。
具体的な説明の流れは、以下の3ステップです。
- 重要事項説明書の内容を伝える
- 契約書の内容を伝える
- 契約書と重要事項説明書を渡す
記載されている事項の読み上げに加えて、質疑応答の時間を用意すると失敗を減らせます。
また、重要事項説明書・契約書ごとに説明すべきポイントが異なる点に注意が必要です。
流れ1.重要事項説明書の内容を伝える
まず、重要事項説明書の内容について説明します。
重要事項説明書に記載される内容は事業者ごとに異なりますが、一般的には次の項目が挙げられます。
重要事項説明書の記載項目 | 内容 |
---|---|
事業所の情報 | ・事業所の管理者名 ・介護保険指定番号 ・サービス提供区域 |
職員の配置体制 | ・事業管理者 ・サービス提供責任者 ・訪問介護員(常勤・非常勤ごと) |
事業目的 | ・法人の事業目的や運営方針 |
事業所の連絡窓口 | ・苦情やサービス内容の問い合わせ担当窓口を記載 ・担当部署や直通の電話番号があれば便利 |
契約期間 | 要介護(要支援)認定の有効期間に合わせた契約期間 |
利用料金 | ・地域や要介護認定等級ごとの利用表を作成 ・利用者さんの自己負担割合に該当する項目を指摘 ・介護保険外の実費負担(介護関連用品の購入・複写費用など) ・特定事業所加算、生活機能向上連携加算などに該当するならその旨及び理由 ・利用料金の支払い方法や支払い期限に関する項目 ・利用中止の際に発生するキャンセル料の取り決め |
サービスの利用方法 | ・利用するサービスの内容 ・利用するサービスの回数や頻度、ペース ・要介護(要支援)認定の有効期間内のサービス提供 |
トラブル発生時の連絡先 | ・緊急時対応の連絡先(かかりつけ医師や同居家族など) ・苦情相談窓口の連絡先(サービスの不満や疑問解消のため) |
参考:
契約をかわす際に注意するポイント | 初めての方へ
訪問介護重要事項説明書の記入例と雛形。契約書との違いは?
重要事項説明書について丁寧な説明が求められる理由は、利用者さんの訪問介護サービス契約に対する疑問・不安をなくすためです。
そのため、利用者さんに伝えるときは、次のポイントを意識しましょう。
- 誰から訪問介護サービスを受けるのか
- いつからいつまで訪問介護サービスを提供されるのか
- どのような頻度・ペースで訪問介護サービスが実施されるのか
- 訪問介護サービスにはいくらの費用が発生するのか
- 訪問介護サービス契約をやめたいときにはどうすればよいのか
- 訪問介護サービスに不満があるときにはどうすればよいのか
重要事項説明書の内容を説明する際には、原則として書面に記載されている事項すべてについて、「書面を提示しながら口頭で読み上げ、不明箇所については分かりやすく解説する」という作業が求められます。
記載項目について漏れなく説明しつつも、利用者さん側が知りたいと考える項目を中心に重点的な解説を意識しましょう。
流れ2.契約書の内容を伝える
次に、訪問介護契約書の内容についてです。
先ほど紹介したように、訪問介護契約書には「契約に関する一般条項」が記載されています。そのため、契約関係に不慣れな利用者さんにとっては理解が難しい可能性があります。
そこで、各条項の具体的なイメージがわきやすいように、重要事項説明書の内容に触れながら解説するのがポイントです。
たとえば、訪問介護契約書の【提供するサービスの内容及びその変更】の条項には、「事業所が全利用者さんに提供するサービス内容」が列挙されています。
しかし、内容だけでは分かりにくいので、重要事項説明書の【提供するサービス内容】の項目と合わせて説明します。そうすると、利用者さん側の理解が深まるでしょう。
繰り返しになりますが、訪問介護契約書の内容を説明する趣旨は、「利用者さんと事業所との間で訪問介護契約を締結した」という事実の証明です。
「問題なく契約を締結した」と証明するためには、利用者さんが契約書に記載されている内容を正しく理解していなければいけません。
ですから、訪問介護契約書の説明をする際には、かならず重要事項説明書を併用して理解の助けになるように努めましょう。
流れ3.契約書と重要事項説明書を渡す
訪問介護契約書と重要事項説明書についての説明が終わると、所定欄に利用者さん・事業所代表者が署名・押印を行います。
そして、契約書・重要事項説明書は事業所で一定期間(最低2年)保管を要すると同時に、利用者さん側に渡すことを忘れてはいけません。
なぜなら、利用者さん側が契約書類等を手元に保管していなければ、訪問介護契約関係で困ったことが発生したときにスムーズに対処できないおそれがあるからです。
そのため、訪問介護契約書・重要事項説明書の説明・作成手続きが終了したときには、かならず利用者さん側に書類を渡し、訪問介護サービスが終了するまでの保管をお願いしましょう。
4.訪問介護の契約を説明する際の注意点
訪問介護契約を締結する際の説明は、利用者さんにとって重要なものです。
「適切な訪問介護を受けられるか」は、利用者さんの今後の生活を大きく左右するものだからです。
説明を怠ってしまうと、サービス内容や利用料金などを事前に把握できず、適切なサービスを受けられません。
そのため、訪問介護契約について説明する際には、次の3つの注意点を踏まえておこないましょう。
- 説明前に不備がないか確認する
- 内容・回数・金額は細かく説明する
- 契約書類は必ず渡す
それでは、訪問介護の契約を説明する際の3つの注意点について、具体的に説明します。
注意点1.説明前に不備がないか確認する
訪問介護契約書・重要事項説明書の内容を説明する際には、書類の内容に誤植・不備などが存在しないかを確認しましょう。
たとえば、書面内の不備に気付かずに当事者が署名・押印してしまうと、誤った内容について契約が成立したことになってしまいます。
そうすると、利用者さんは適切なサービスを受けられません。
また、書類の説明の際に不備に気付いたとすると、「この事業者は契約書も満足に用意できないのか」と、不信感を抱かれることもあります。
利用者さんが不安を生じることなく、円滑に訪問介護サービスを提供するために、かならず説明前に不備がないかを確認しましょう。
注意点2.内容・回数・金額は細かく説明する
訪問介護契約書・重要事項説明書を説明する際には、サービスの内容・回数・金額について細かい説明を意識してください。
記載されているサービスの概要・回数・金額の内容は、訪問介護契約の中核です。
とくに、訪問介護サービスは介護・支援の認定レベルに応じて次のように区分支給限度額・自己負担額が異なります。
参考:区分支給限度基準額について
※限度額より負担額を算出
身体介護・生活援助・通院等乗降介助などをどのようなペースで利用するか次第で、利用者さん側の費用負担に違いが生まれます。
不安にさせてしまわないように、あらかじめ細かく説明しましょう。
注意点3.契約書類は必ず渡す
訪問介護契約書・重要事項説明書の内容を説明してサインを終えた後は、利用者さんに契約書類を渡し忘れないようにしてください。
なぜなら、訪問介護契約書・重要事項説明書には緊急時の連絡先等の重要事項が記載されているからです。
契約書類を渡し忘れたことが原因で利用者さんに損害が発生した場合には、事業者側に賠償責任が発生するリスクが生じます。
そのため、「契約書類の説明・サイン・引渡し」の手続きは、セットだと覚えておきましょう。
まとめ:契約内容は丁寧にゆっくり説明しよう
訪問介護サービスは利用者さんの日常生活をサポートする大切な業務です。
そして、利用者さんが満足できる訪問介護サービスを提供するためには、適切なプロセスで訪問介護契約を締結する必要があります。
そのためには、訪問介護サービスの内容について、利用者さんに正しく理解してもらうことが重要です。
訪問介護契約・重要事項説明書の内容をゆっくり丁寧に説明して、充実した訪問介護サービスを提供できるように心がけましょう。