訪問介護の苦情事例を確認してトラブルを避けよう
日常生活に寄り添って支えてくれる訪問介護サービスは、利用者さんにとって安心感があるサービスです。
訪問介護サービスは、人対人のサービスで成り立ちます。
そのため、サービスに対する苦情はつきものです。
今回「みーつけあ」では、訪問介護で実際にあった苦情事例から、対処法について解説します。
理不尽に思える苦情でも、利用者さんの気持ちを汲み取ると意外な発見があるかもしれません。
真摯な対応をできるように、事例を確認しましょう。
1.訪問介護の苦情とクレームは一緒にしない
訪問介護の場合のクレームとは、「ヘルパーや事業所への不満や怒りを伴う、なんらかの要求や主張」という意味です。
苦情には、利用者さんの不平や不満といった心理や感情の要素があります。
現代社会においては、苦情とクレームは同じ意味として扱われることが多いです。
しかし、訪問介護の場面においては、利用者さんからの訴えを苦情なのかクレームなのか識別し、対応する必要があります。
「単なるクレーム、苦情だから」と一緒くたにしてしまえば、サービス改善の本質を見失うかもしれません。
対応に追われるヘルパーや事業所にとって、クレームや苦情は負担が大きいモノです。
もちろん、苦情に対してなんらかの改善を行うことは、サービス向上といった面では重要になってきます。
サービスを改善できないか検討できるように、利用者さんの怒りや訴えたかったことにスポットをあて対応しましょう。
2.訪問介護でよくある苦情の事例
訪問介護での苦情は、年々数が減っています。
東京都国民健康保険団体連合会が行った調査によると、2015年の苦情件数は191件でした。
2013年の214件、2014年の206件を下回っており、年々苦情件数は減少傾向にあることが分かります。
そのなかでも多い苦情の内容は、「サービスの質が悪い」で、34%でした。
次点で、訪問介護員の対応、管理者等の対応があげられています。
ここからは、実際に東京都国民健康保険団体連合会で確認された5つの苦情を、具体例として確認します。
- 勝手に家電の購入が進んでいた
- 作業時間が少ない
- モノを壊された
- モノが盗まれた
- 介護報酬を支払いたくない
利用者さん目線に立って、「何が原因になっているか」考えてみましょう。
ケース1.勝手に家電の購入が進んでいた
利用者さんのご家族からあった、苦情内容です。
訪問介護員は、利用者さんに家電製品や家庭の設備の改修を進めていました。
利用者さんは、ご家族に相談することなく、電気店で家電を予約したそうです。
支払いはまだ確定していなかったため、ご家族は急いで購入をキャンセルしました。
もし勝手に購入が進んでいたら、ご家族は不安を覚えたでしょう。
今回のケースでは、利用者さんから事業所の管理者に相談があったうえで、納得して購入に至ったことが判明しました。
何かトラブルや相談すべきことがある場合は、ご家族への報告を速やかに行いましょう。
ケース2.作業時間が少ない
利用者さん本人から、「最初に説明があった内容と違い、作業時間が少ない」と苦情が入ったケースです。
「ヘルパーが慌てた様に作業して帰っていくので、作業時間を見直せないか」と、事業所に対して連絡がありました。
このようなケースでは、契約内容を今一度、利用者さんと共に確認する必要があるでしょう。
利用者さんの介護度は、日々変化していきます。
「支援の時間がより必要」と考えられる場合は、介護認定の見直しが必要かもしれません。
ケース3.モノを壊された
訪問介護では、故意ではなくてもモノを壊してしまう場合もあります。
利用者さんやご家族が、壊されたモノに対して弁償を要求するケースがありました。
訪問介護員に明らかな過失があれば、事業所から弁償する可能性が高いです。
損失保険等に加入していれば、保険から支払われることになります。
利用者さんと訪問介護員の双方に事実確認をして、適切に対応する必要があります。
ケース4.モノが盗まれた
訪問介護の利用者さんが、「私物がなくなった」と主張するケースです。
私物がなくなった事実を事務所の責任者に伝えたところ、一方的に「コンプライアンスは徹底している」と怒られたケースもあります。
上記のケースでは、利用者さんが管理者の態度や怒鳴られたことに不信感を持ち、事業所の変更を申し出ました。
訪問介護では、認知症を抱えた利用者さんもいます。
そのため、事業所としては、「利用者さんが盗まれたと妄想している」と判断する場合もあるでしょう。
しかし、利用者さんの訴えをしっかり聞くことが最優先です。
そのうえで、担当の訪問介護員に事実確認しましょう。
実際に盗難がある場合は、警察に届け出なければいけません。
ケース5.介護報酬を支払いたくない
「サービスの内容に納得できないため介護報酬を支払いたくない」といったケースもあります。
利用者さんと事業所間では、解決が難しい内容です。
サービス利用中は、対面で請求・受領を完了させる場合が多いでしょう。
未払いのまま、利用を辞めてしまった場合は、内容証明郵便での請求が有効です。
書面として残るため、内容はしっかりと確認してから送付してください。
場合によっては、事務所側が不利になる可能性があります。
3.訪問介護で苦情を受けたときはどうする?
苦情を受けたときは、サービス管理担当者へ連絡しましょう。
苦情内容は、忘れないうちにメモして記録を残してください。
記憶では曖昧になってしまう部分でも、きちんと記録を残しておけば証拠にもなり、報告する際もスムーズに対応できます。
利用者さんによっては、理不尽な苦情やクレームであるかもしれません。
曖昧になってしまうと、利用者さんに正しく対応できずに、さらに苦情が膨らむ可能性もあります。
また、苦情では、初期対応がとても重要です。
対応次第で、苦情の解決に時間を要してしまう可能性もあります。
自分に非がなかったとしても、利用者さんに言い返すようなことはあってはなりません。
相手の訴えを傾聴したうえで、事業所に持ち帰って確認する旨を伝えるようにしましょう。
訪問介護の苦情事例と合わせて知りたいQ&A
最後に、苦情事例と合わせて知っておきたい内容をQ&A形式で紹介します。
- ヘルパー交代を告げられたらどうする?
- ケアマネジャーに対する苦情はどこに伝える?
- 訪問先が苦手なときはどうすべき?
訪問介護で、苦情から発展して担当交代する場合もあります。
また、ケアマネジャーに対して自分が苦情を伝えたいといったケースも紹介します。
利用者さんに苦手意識を持ったままのサービス提供では、苦情に発展する場合もあるでしょう。
それぞれ、どのような対応が適切かを解説します。
Q1.ヘルパー交代を告げられたらどうする?
A.ヘルパーの交代は、珍しいことではありません。
自分に非がなくても、人間同士なので価値観のズレだったりが生じてしまうものです。
利用者さんは急にヘルパーが交代してしまい、ショックを受けることもあります。
▼ヘルパーの交代基準を知りたい人は、以下の記事が参考になります。
>>訪問ヘルパーが心得ておきたい基本マニュアルや質問まとめ
Q2.ケアマネジャーに対する苦情はどこに伝える?
A.ケアマネジャーへの苦情は、地域包括支援センターに伝えてください。
利用者さんから聞かれた場合を想定しておき、頭に入れておきましょう。
スタッフが苦情を入れたい場合は、角が立たないように、サービス管理責任者を経由して伝えることをおすすめします。
Q3.訪問先が苦手なときはどうすべき?
A.関係を修復すると、苦手意識がなくなる場合もあります。
もう一度、一から信頼関係作りを頑張ってみてはいかがでしょうか。
どうしても無理なら、担当を変えてもらうのもよいでしょう。
人間誰しも、苦手な人は必ずいます。気負いせずに、一度上司に相談してみてください。
▼以下の記事もご参考ください。
>>訪問介護で嫌な利用者さんと感じたときの解決策
まとめ:苦情に合わせた対応を頭に入れておこう
苦情やクレームを言われた際は、それぞれの内容に合わせた対応をしていく必要があります。
また、初期対応がうまくいかないと、後々大きなトラブルにつながる可能性があります。
きちんとした対応を心がければ、大きなトラブルになく解決に導けるはずです。
今回紹介した事例を参考にして、苦情に合わせた対応ができるようにしておきましょう。