訪問介護に残業はある?勤務時間の休憩や労働基準法を解説
「訪問介護にも残業はあるのかな?」と、お調べではないでしょうか。
介護業界について、労働状況がよくないイメージをお持ちの方も珍しくありません。
しかし、訪問介護はサービスを提供する時間が決まっているので、残業が多すぎて悩むヘルパーは少ないです。
今回「みーつけあ」では、訪問介護の残業事情や、残業について事前に確認しておきたいポイントなどについて紹介します。
残業について理解を深めて、安心して訪問介護の仕事に取り組みましょう。
1.訪問介護の残業はある?
そのほかの介護職を含めて、訪問介護でも残業が発生する場合はあります。
「1回あたりのサービス時間が決まっているなら、残業にならないのでは?」と、思った人もいるかもしれません。
しかし、利用者さんのお宅でおこなうサービス以外の部分で、残業が発生するケースは多いです。
たとえば、以下のような理由で訪問介護では残業が発生します。
- サービス提供記録が書き終わらない
- 移動時間が長い
- ミーティングに参加しなければならない
訪問介護でも規定の勤務時間内にやるべきことが終わらない場合は、ゼロではありません。
しかし、原則としてはケアプランのとおりに業務は進みますので、残業が多すぎて悩まされることはあまりないでしょう。
2.訪問介護員の残業状況を調査結果から確認
訪問介護のヘルパーの残業状況について、調査結果を確認しましょう。
以下の2つの状況について、詳しく説明します。
- 訪問介護は残業時間が少ない
- 介護業界全体で残業は改善傾向
訪問介護では、ヘルパーの残業は多くありません。
それぞれの状況について、見ていきましょう。
状況1.訪問介護は残業時間が少ない
訪問介護の仕事は、残業時間が少ないです。
公益財団法人 介護労働安定センターの「令和2年度介護労働実態調査」の結果をみてみましょう。
1週間の残業時間について、「残業なし」と回答したのが無期雇用の訪問介護ヘルパーは68.5%、有期雇用の訪問介護員は「71.2%」でした。
介護職員や介護支援専門員のような訪問介護ヘルパー以外も含めた無期雇用全体だと58.3%、有期雇用全体だと65.8%が「残業なし」と答えています。
つまり、訪問介護のヘルパーは介護業界のなかでも残業がない人が多いです。
残業がある場合でも、1週間に5時間未満の人が多数を占めています。
ただし、サービス提供責任者であれば、「残業なし」と回答したのが無期雇用で51.0%、有期雇用で46.5%と、訪問介護ヘルパーよりもやや少ないです。
理由としては、サービス提供責任者は、就業時間中に訪問介護ヘルパーとして働き、残業時間で責任者としての仕事に取り組む人が多いからでしょう。
状況2.介護業界全体で残業は改善傾向
介護業界全体で、残業時間については改善傾向にあります。
公益財団法人 介護労働安定センターの「令和2年度介護労働実態調査」では、「突然の残業がほとんどない」と答えた人が「34.5%」です。
前年よりも3.5%増えており、状況が改善がされていることがわかります。
改善された理由としては、人材不足の改善や離職率の低下が挙げられるでしょう。
他にも、休んだときに自分の代わりに仕事を担当してくれる人がいたり、日頃から有給が取りやすかったりと、休暇制度の面も前年に比べて改善しています。
3.訪問介護の残業代はいくら?
訪問介護ヘルパーの残業代について、計算方法を見ておきましょう。
残業時間は、「1週間に40時間・1日8時間」を超えて働いた分です。
そして残業時間の分の賃金は、1時間あたり25%増となります。
ここで、1ヶ月に10時間の残業をしたときに残業代がどれくらいになるのか計算してみましょう。
1時間あたりの賃金は、月給を「1日の所定労働時間×1ヶ月の勤務日数」で割れば計算できます。
もしも1時間あたりの賃金が2,000円だとすれば、残業代は「2,000円×1.25×10時間=25,000円」です。
自分の月給や残業時間が知りたいなら、タイムカードや勤怠管理システムをチェックしてください。
4.訪問介護のサービス残業で確認したいポイント
「訪問介護ではサービス残業はないのかな?」と、心配になっている人もいるかもしれません。
訪問介護のサービス残業については、以下の3つのポイントを事前に確認しておくとよいです。
- 休憩時間
- 移動時間
- 勉強会
これらの時間は、賃金が発生する労働時間となる可能性があります。
しかし、労働時間に入らないと思い、残業代を受け取れていない人も少なくありません。
データであとから振り返られないのが、サービス残業です。
上に挙げた3つの項目が労働時間として扱われていない場合には、上司に確認してください。
それぞれの内容について、詳しく見ていきます。
ポイント1.休憩時間
休憩時間は、労働時間に含まれないのが一般的です。
ただし、電話がかかってきたら対応しなければならない場合や、書類仕事をしながら座っている時間は、労働時間になります。
また、最低限必要な休憩時間が労働基準法で定められています。
労働時間が6時間を超えるなら最低45分、8時間を超えるなら最低1時間の休憩時間が必要です。
「8時間働いているのに30分しか休憩できていない」という場合は、上司に相談しましょう。
ポイント2.移動時間
「移動時間」はケースによって、労働時間になる場合とならない場合があります。
事業所から利用者さんのお宅に移動するときと、利用者さんのお宅から事業所に移動するときは労働時間です。
一方で、自宅から事業所に出勤するときや、事業所から自宅に帰宅するときは労働時間に含まれません。
そして、自宅から利用者さんのお宅に直行し、利用者さんのお宅から自宅に直帰する場合も労働時間には含まれないので注意しましょう。
ポイント3.勉強会
事業所がおこなう勉強会に参加している時間は、労働時間です。
「上司や事業所の指示で参加する場合や、参加しなければ参加者よりも悪い待遇になる場合には労働時間となる」と、厚生労働省労働基準局が発表しています。
勉強会ではなく、研修という名目でも同様です。
また、ミーティングや申し送りの時間も労働時間なので、覚えておきましょう。
5.訪問介護員は知っておきたい変形労働時間制
訪問介護の仕事は、季節や時期によって忙しさが大きく変わります。
そのような状況に臨機応変に対応するために、変形労働時間制が存在するので押さえておきましょう。
変形労働時間制は、事業所ごとに1週間や1ヶ月、1年間の労働時間の枠の中で、多忙なときと暇なときで所定労働時間を変えられます。
つまり、忙しいときは1週間に40時間、暇なときは1週間に37.5時間というように定めておけるわけです。
変形労働時間制の場合でも、法律で決められた以下の労働時間を超えている分は残業時間となります。
- 1日あたりの所定の時間か1日8時間を超える分
- 1週間あたり所定の時間か1週間40時間を超える分
- 変形期間において法定労働時間の枠を超えて労働した分
変形している労働時間でも、規定を越えれば残業代は発生します。
知らないうちにサービス残業をしていないか不安な人は、労働契約を確認しましょう。
訪問介護の残業に関するQ&A
訪問介護職員の残業について、働いているうちにいろいろな疑問が出てくるでしょう。
ここで、訪問介護の残業に関するQ&Aを紹介します。
- 訪問介護の有給条件は?
- 登録ヘルパーの仕事がないときはどうすればよい?
- 訪問介護で給料をさらにあげるためには?
よくある疑問について事前に理解しておけば、安心して働けます。
それぞれのQ&Aを順番に見ていきましょう。
Q1.訪問介護の有給条件は?
A. 正社員なら、以下の条件を満たすことで、訪問介護ヘルパーも有給を取得できます。
- 6ヶ月継続して勤務している
- すべての労働日の8割以上勤務している
また、パートタイム労働者なら以下の条件を満たすことで有給を取得できます。
- 所定労働日数が4日以下
- 1週間の所定労働日数が30時間未満
- 1年間の所定労働日数が48日〜216日
そして、登録ヘルパーでも同様に条件を満たせば、有給を取得できます。
詳しくは、「登録ヘルパーの有給はいくらもらえる?取得条件や賃金について」で説明しています。
Q2.登録ヘルパーの仕事がないときはどうすればよい?
A. 登録ヘルパーの仕事がないときは、複数の事業所を掛け持ちするのもよいです。
1つの事業所だけだと、そこでの仕事がなくなったときに完全に収入がなくなってしまいます。
また、キャリアアップを狙うのも有効な方法です。
登録ヘルパーの仕事の増やし方については、「登録ヘルパーの仕事がないのは本当?その原因や仕事の増やし方について紹介します」で説明しています。
Q3.訪問介護で給料をさらにあげるためには?
A. 訪問介護の仕事で給料をあげるために、以下の3つの方法を押さえておきましょう。
- 資格を取得する
- サービス提供責任者になる
- 訪問介護施設を立ち上げる
さらに訪問介護職員の給料について知りたいなら、「訪問介護ヘルパーは年収が低い!?給料の相場や給料アップの方法を紹介」を読んでみてください。
まとめ:訪問介護では残業が少なく働きやすい!
介護業界に残業が多いイメージをお持ちの人も多いですが、訪問介護職員は残業が少ない職業です。
休みやすさや有給の取得しやすさも改善傾向にあるので、今後さらに働きやすくなることが予想されています。
ただし、無意識のうちにサービス残業をしているケースもあるので、注意が必要です。
労働時間にカウントされるのはどのような時間かを知り、適正な賃金を受け取りましょう。