訪問介護のヘルパーは早く帰っても大丈夫!根拠や注意点について解説
「訪問介護で時間が余ったら、どうすればいいの?」
「早く帰ることで、本当に問題にならないかを知りたい」
訪問介護で規定時間より早く業務が終わったとき、どうするべきかお悩みではないでしょうか。
早く帰るか、規定外のサービスを提供するか、どちらが正しいか迷ってしまうこともあるでしょう。しかし、実はケアプランのとおりに支援を終えて、なお時間が余っている場合、ヘルパーは早く帰ることができるのです。
今回「みーつけあ」では、ヘルパーが早く帰ることが認められる場合と、認められない場合、早く帰る際の注意点についてご紹介します。
サービス利用者が尊厳ある生活を送れるように、適切なサービスを知って実行してくださいね。
1.訪問介護の所要時間とは
介護保険サービスとしての訪問介護は、所要時間が定められています。ここでいう所要時間とは、訪問介護計画に記載されているサービスを提供するために必要な時間のことです。
利用者の心身の状況をふまえて、ケアマネジャーはケアプランを作成します。利用者との話し合いをもとに、サービスの種類やヘルパーの滞在時間を調整しているのです。
サービス提供時間と費用については、下記の図のように区分されています。
出典:第176回社会保障審議会介護給付費分科会(ペーパーレス)資料|厚生労働省
訪問介護の際には、この所要時間を守るよう意識することが重要です。
2.訪問介護のヘルパーは早く帰ることが認められている
訪問介護の所要時間は、ヘルパーが利用者の元に滞在して支援をする時間のことでした。しかし、ケアプランどおりのサービスを提供しても時間が余る場合は、どうすればよいのでしょうか。
結論からいうと、下記の2つの条件を両方とも満たしていれば、早く帰ることができます。
- ケアプランに記載されたサービスをこなしている
- 設定されている所要時間の最短の時間は過ぎている
また、ケアプランで設定されている所用時間が20分以上30分未満なら、最低でも20分間は滞在しなくてはいけません。あくまでも、規定通りの勤務をこなしている場合のみ、規定の範囲内で早く帰ることが認められているだけなのです。
早く帰ると問題になるケースについては、のちに詳しく説明します。帰ってよい状況と、帰るべきでない場合の違いを正確に理解して、いろいろな人に迷惑をかけないよう注意してください。
余った時間でプラン以上の支援はすべきでない
訪問介護で提供すべきサービス内容は、ケアプランに基づいたものです。もし時間が余ったとしても、プラン以上の支援をすべきではありません。サービス内容に含まれていなければ、仏壇の花の水を替える程度のことでも、原則的にはしてはいけないのです。
また、プランにない支援をしてしまうと、悪評につながる場合もあります。たとえば、ひとりの利用者を複数のヘルパーが担当している場合、サービスに差が生まれ、クレームへと発展する可能性があるのです。
ただ、余った時間で規定内の作業をしたり、コミュニケーションを取ったりすることは問題ありません。余った時間を、作業を進めたり、会話を楽しんだりするのに使ってもよいですが、プラン外のサービスを提供することは避けてくださいね。
3.訪問介護で早く帰ることが認められない場合
ケアプランどおりのサービス提供が済んだからといって、無条件でいつでも帰れるわけではありません。ただ、これを知らないヘルパーも多く、勝手に退勤してしまうヘルパーもおり、クレームが寄せられているのも事実です。
訪問介護で早く帰ることが認められていないケースは以下のとおりです。
- 滞在時間が短すぎる場合
- 勝手な時間変更をした場合
誰にも文句を言われないタイミングで退勤できるように、早く帰ることが認められないケースも押さえておきましょう。
1.滞在時間が短すぎる場合
訪問介護の所要時間と実際の滞在時間に差がありすぎる際は、注意が必要です。
20分以上30分未満の計画で、サービスの提供時間が15分では、条件を満たしていません。この場合は、20分未満の区分で算定されるべきなのです。
ただ、同じ計画でも実際の滞在時間が20分を超えているなら問題ありません。区分内の最短時間より1分でも過ぎていれば、制度上は認められています。
2.勝手な時間変更をした場合
原則的には、ケアプランに設定されている時間どおりに訪問するのが普通です。しかしながら、下記のようなクレームが自治体に寄せられてしまっています。
- 遅刻をしたのに、早く帰る
- 勝手に早く来る
- ヘルパーが訪問を忘れる
ときには不慮のできごとで、訪問する時間が前後してしまうこともあるでしょう。ただ、設定されている時間と現に勤務した時間の差異について、介護保険法における規定はありません。
もし何か事情があって遅れる、早く到着する場合、しっかり連絡をして利用者の承諾を得さえすれば、問題にはなりづらいでしょう。
しかし、時間を守れないと嫌なヘルパーという印象を持たれてしまいますし、なにより遅れたとき利用者に万が一のことがあっては一大事です。勝手な時間変更は慎みましょう。
4.訪問介護で規定の時間より早く帰る際のポイント
勤務を規定どおり行ったとしても、滞在時間が予定より短いと、利用者の心象が悪くなる場合があります。
早く帰ることで起きるトラブルを未然に防ぐには、下記の3点に注意してください。
- 利用者に事情を説明する
- 実施記録に正確な時間を記入する
- ケアプランの見直しを検討する
ヘルパーと利用者の認識を一致させたり、ケアマネージャーや事業者と情報を共有したりすることが重要です。
ここからポイントを具体的に解説していきます。
ポイント1.利用者に事情を説明する
訪問介護の利用者は、こまごまとした規定を理解していない可能性があります。なので、事情を説明することがとても大切です。一言添えるだけでも、利用者のヘルパーに対するイメージは変わってきますよ。
では、利用者に説明できるように、まずは訪問介護の所用時間と報酬に関する規定を見ておきましょう。
訪問介護の報酬は現に要した時間ではなく、計画に位置づけられた内容の介護をおこなうのに要する標準的な時間で算定する。
つまり、「報酬は実際に勤務した時間ではなく、プランに沿った規定時間をもとに算出される」ということです。
この規定をふまえて、訪問介護の所要時間はサービスを行うために必要な平均時間で設定されていて、実際に行われる作業時間とは異なる旨を伝えましょう。
また、利用者や家族によってヘルパーに対する考え方が違います。そのため、ヘルパーが早く帰ることに不満を持つ人もいれば、むしろ喜ぶ人もいるのです。
「会話を楽しみたいから、時間いっぱい滞在してほしい」と考える利用者もいれば、「気疲れするから、サービス提供が終わった時点で帰ってほしい」と望む利用者もいるでしょう。
利用者にとってよいヘルパーとは、不快な思いをさせないヘルパーです。
事情を丁寧に説明し、希望を聞くよう心がけてくださいね。
ポイント2.実施記録に正確な時間を記入する
訪問介護の実施記録には、実際に行ったサービスの開始時間と終了時間を記入しましょう。
実務記録を正確に記入することで、利用者からクレームがあっても「提供すべきサービスが終了したから早く帰った」と主張できるのです。
たとえば、14時に開始して15時に終了する「30分以上1時間未満」のプランだとして、実際にサービスを14時2分に開始し14時50分に終了した場合は、作業時間が48分ですので、規定を守れていると主張できますよね。
自身がしっかりと仕事をしたかどうかの記録ですので、わずかな差異だったとしても、かならず正確な時間を報告しましょう。
ポイント3.ケアプランの見直しを検討する
実施記録を見て、早く終わることが続いたり、あまりにも時間が余ったりする場合は、ケアプランが適切でない可能性があります。
そもそも、利用者の実態を把握していないケアプランだったため、時間が余ってしまっている可能性もあります。また、ぬかりないケアプランを作成しても、訪問介護を継続するうちに、利用者の心身の状況や環境は変化するものです。その影響で、短時間の支援で済むようになるケースもあるのです。
時間が余る旨をケアマネジャーに報告して、ケアプランの見直しを打診してみてください。
まとめ:訪問介護ではサービス提供が済んだら帰ってもよい
本記事では、訪問介護で早く帰ることはできるのかについて解説しました。
訪問介護では、ケアプランどおりの支援を終えても時間が余る場合は、早めに帰っても大丈夫です。また、余った時間で利用者とコミュニケーションをとるのは問題ありませんが、規定外のサービスをするとクレームの原因になるので注意しましょう。
ただ、毎回早めに終わったり、極端に時間が余ったりする場合は、ケアプランが適切でない可能性があります。そのような場合はケアマネージャーに報告して、プランの見直しも視野に入れましょう。