訪問介護は正社員とパートでどう違う?仕事内容や給料を比較
訪問介護には、正社員やパート、登録ヘルパーといった働き方があります。
正社員のメリットは、経済的・社会的立場の安定です。
一方で、「正社員は責任も重く、仕事も大変そう」と、不安を感じる人もいるのではないでしょうか。
拘束時間の柔軟性を考えると、パートとしての働き方も魅力的です。
正社員とパートはどちらにも、メリットとデメリットがあります。
今回「みーつけあ」では、訪問介護における正社員としての働き方について解説します。
正社員とパートの給与や仕事内容などを比較して紹介するので、ぜひ参考にしてください。
1.訪問介護での正社員とパートの違いは?
訪問介護の雇用形態は、正社員とパートに分けられます。
正社員は、「週あたり40時間で5日勤務」といった、フルタイム勤務の働き方です。
パートの場合は、正社員より拘束時間が短く、勤務時間も柔軟な働き方ができます。
「正社員」と「パート」は、どちらも訪問介護ヘルパーとしての仕事は同じです。
しかし、以下の点で働き方が異なります。
- 勤務時間(労働時間)
- 賃金(月給制もしくは時給制)
- 仕事内容・責任の大きさ
上記の相違点から、正社員とパートの働き方を詳しくみていきましょう。
その1.勤務形態(労働時間)
正社員とパートでは、勤務時間が異なります。
正社員の労働時間は、法律や就業規則に従うのが原則です。
一方、パートの勤務時間は、正社員より融通が効きます。
働く時間の調整で、正社員より柔軟な場合が多いです。
また、訪問介護のパート勤務には、「登録ヘルパー」という特有の働き方があります。
登録ヘルパーは、自分の都合に合わせて、働く日時や時間帯を決められる働き方です。
それぞれの違いは、以下のとおりです。
- 直接雇用型=事業所と直接雇用契約を結ぶ
- 登録雇用型=事業所にヘルパーとして登録する
直接雇用には、正社員とパートがあります。
直接雇用のパートは、シフトが固定している点で正社員と同じです。
ただし、時間給で働くため、契約時に勤務時間・曜日を希望できます。
以下の表は、雇用形態別の勤務時間をまとめたものです。
正社員 | パート(直接雇用) | 登録ヘルパー | |
勤務時間 | フルタイムで固定 (40時間/週)など | 短時間 | 自己希望で選択可 |
労働時間の柔軟性 | × シフトが固定しているため | △ 勤務時間は契約時に希望できるが、シフト固定後は変更が難しい | ◯ 勤務日・時間は自分で決められる |
求人情報にある「パート」という記載では、直接や登録といった働き方を分けていない場合もあるので、注意してください。
その2.賃金(月給制・時給制)
正社員とパートでは、給与形態が異なります。
正社員は月給制で、パートは時給制です。
直接雇用のパートは、拘束時間が給与の対象となります。
勤務している時間に応じて給与が発生して、移動時間や雑務による勤務時間も、時給に含まれます。
一方、登録型ヘルパーは、訪問介護の実務が時給対象です。
移動時間は給与に関係なく、交通費の扱い方は事業所によって異なります。
雇用形態によって区別されるのが、ボーナスの有無です。
ボーナスの支給がある事業所の場合、正社員にはボーナスがあります。
パートの場合、ボーナスが支給されるかどうかは、事業所次第です。
介護労働安定センターの調査では、訪問介護のパート職員にボーナスを支給する事業所が約半数となっています。
定期的にボーナスを支給している | ボーナス制度はあるが経営状況によって不支給の場合がある | ボーナス制度はないが、経営状況により支給する場合がある | ボーナス制度はなく、不支給 | |
無期雇用 | 58.9% | 12.0% | 9.9% | 7.9% |
有期雇用 | 28.0% | 7.4% | 8.7% | 11.2% |
参照:介護労働安定センター『事業所における介護労働実態調査』p72〜
※無回答のデータは割愛
※無期雇用=正社員
※有期雇用=「契約社員」「パート」など、無期雇用以外の職員
その3.仕事内容・責任の大きさ
正社員とパートでは、仕事内容や責任の大きさが違います。
もちろん、「訪問介護のプロフェッショナル」という意味では、正社員もパートも同じです。
しかし、事業所の職員という立場で見ると、両者の仕事内容は異なります。
正社員は、パートよりも責任ある仕事を任されるのが普通です。
責任ある仕事とは、たとえば以下のような内容があります。
- 利用者へのクレーム対応
- 急なシフト変更にともなう人員調整・人員補充
- 職員の事故対応
- 書類整理などの雑務
- 新人教育
- 社内研修会や勉強会の準備・実施
- サービス責任者やリーダーなどの上位職昇進
上記のほか、以下のような自己研鑽も求められます。
- 社外研修会への積極的な参加
- 社員教育・勉強会への参加義務
- 資格の取得
正社員は、事業所の社員として大きな責任を負います。
訪問介護以外の業務を任される機会が多く、上位職に就く人材も正社員のなかから選ばれるケースがほとんどです。
責任がある分、正社員はより高い知識や技術を求められるでしょう。
社内外で行われる勉強会や研修では、正社員は原則参加であったり、パートは自由参加だったりする場合があります。
さらに、正社員に対して資格補助制度や研修補助などを整備している事業所も少なくありません。
上位資格の取得を推進する事業所もあるため、正社員とパートでは待遇が異なります。
2.訪問介護の正社員とパートはどっちがよい?
正社員とパートの働き方について、それぞれのメリット・デメリットを整理してみましょう。
以下の内容で、順番に解説します。
- 正社員のメリット・デメリット
- パートのメリット・デメリット
正社員では雇用が安定するものの、勤務形態の柔軟さはありません。
勤務日や時間は事業所の規則に従います。
一方、パートは自分の時間に合わせやすい働き方といえるでしょう。
勤務日や時間帯が、正社員より柔軟です。
ただし、収入面や福利厚生などは、正社員より不安定となります。
(1)正社員のメリット・デメリット
正社員のメリット・デメリットは、以下のようにわけられます。
メリット | デメリット |
|
|
安定した収入や整備された福利厚生は、正社員の強みです。
収入と福利厚生がしっかりとしていれば、ライフプランを立てやすくなります。
ローンを組むときにも、正社員である点が有利です。
さらに、事業所は正社員に対して、以下の待遇を保証する義務があります。
- 厚生年金
- 健康保険
- 労働保険(労災・雇用保険)
参考:厚生労働省・日本年金機構
病気やケガ、失業などの思わぬトラブルがあったとき、正社員は一定の保証がされているのです。
デメリットは働く人の見方にもよりますが、「生活の中で仕事の重みが増す」という点があげられます。
拘束時間が厳しく、仕事に対する責任が大きいです。
ときには、「プライベートより仕事を優先せざるをえない」といった状況もあるでしょう。
しかし、責任の分だけ昇進する可能性も高く、キャリアアップにつながります。
(2)パートのメリット・デメリット
パートのメリット・デメリットは、以下のように整理できます。
メリット | デメリット |
|
|
パートのメリットは、勤務時間に柔軟性があることです。
働き方は、自分の都合に合わせて設定できます。
時間的な拘束がゆるやかなので、仕事と家庭の両立が可能です。
子育てや介護、社会人学生など働ける時間が限られている場合でも、訪問介護の仕事ができます。
デメリットは、経済的安定という点で不安要素があることです。
昇給やボーナスの支給などは期待できず、福利厚生も正社員より不十分な場合があります。
また、正社員に比べると責任ある仕事やポジションを任される機会は少ないです。
そのため、キャリアアップという点では物足りないかもしれません。
福利厚生については、パートでも正社員と同水準で保証される場合があります。
労働時間が一定の基準を満たしていれば、厚生年金や健康保険といった制度に加入可能です。
ただし、研修補助や資格取得補助など、事業所が独自に用意している福利厚生については対象外となる場合があります。
3.正社員として雇用されるためにすべきこと
訪問介護で、正社員として働くためには、一定の条件をクリアしておくと採用で有利です。
以下のポイントで、正社員雇用のための条件を解説します。
- 資格を取得する
- 経験年数を積む
- 正社員を募集している事業所を選ぶ
訪問介護では、資格取得が必須です。
また、介護業界では、経験年数を重視する傾向があります。
求人の探し方でも、気をつけるべきポイントがあるので、内容を詳しく見ていきましょう。
準備1.資格を取得する
訪問介護の仕事は、資格が必須です。
そのため、資格取得は正社員になるための必須条件となります。
訪問介護に必要な資格は、以下3つのいずれかです。
- 介護職員初任者研修修了者
- 実務者研修修了者
- 介護福祉士
介護職員初任者研修修了者は、「旧ヘルパー2級」に相当します。
130時間の講義を受け、さらに修了試験に合格すれば取得が可能です。
実務者研修修了者は、「旧ヘルパー1級」に相当します。
介護職員初任者研修修了者の上級資格で、合計450時間の講義を修了しなければいけません。
2つの資格の違いを、以下の表にまとめておきます。
介護職員初任者研修 | 実務者研修修了者 | |
科目数・受講時間の目安 | 9科目・130時間 | 20科目・450時間 |
サービス責任者の実務資格 | なし ※実務経験3年以上あれば可 | あり |
医療的なケアの知識 | なし | あり |
参照:厚生労働省『各介護サービスについて』
また、介護福祉士は、訪問介護員として働けます。
介護福祉士は国家資格であり、訪問介護では歓迎される資格です。
介護福祉士は養成校(専門学校)で学ぶほか、「実務者研修修了者」と「3年以上の実務経験」があれば、国家試験の受験資格が得られます。
▼資格の取り方に関しては、以下の記事が参考になります。
>>訪問介護員の資格の種類について|取り方・資格手当・仕事内容を紹介
準備2.経験年数を積む
介護業界では、実務経験が重要視されます。
未経験者の場合は、新人教育や介護技術の未熟さもあるため、経験は採用にとってプラスとなります。
機会があるときに、訪問介護の求人情報を調べてみてください。
多くの求人で、経験者優遇や経験を考慮といった情報が添書きされています。
もちろん、経験の有無だけで採用が決まるわけではなく、人間性や個人の素養なども重要です。
しかし、人材の流動性が高い訪問介護業界では、即戦力として経験の有無が採用の成否に影響します。
準備3.正社員を募集している事業所を選ぶ
正社員雇用への近道は、「正社員を募集している事業所」に応募することです。
介護が人材不足の業界だと言っても、正社員の募集がなければ採用は難しいでしょう。
パート勤務から正社員に採用されるケースもありますが、将来的な保証はありません。
「気に入っている事業所以外では働きたくない」といった場合を除いては、正社員募集の求人に的を絞るのが得策です。
4.正社員で働くときに気をつけたいポイント
正社員で働くとき、事前に確認しておきたいポイントを解説します。
正社員は職場との関わりが深く、事業所は人生の多くの時間を過ごす場所となります。
採用が決まれば嬉しいものですが、就職後に悔やむようでは本末転倒です。
就職を決める前に、以下の項目について確認しておきましょう。
- 勤務条件
- 業務内容
- 施設の雰囲気
ポイントに沿って、さらに詳しく解説していきます。
ポイント1.勤務条件を確認
収入面や待遇などは、事前に確認しておくことが大切です。
勤務条件で確認すべき項目として、以下の内容があげられます。
- 勤務時間(シフト)
- 残業の有無(残業時間)
- 休暇(有給休暇の扱い)
- 給与・給与の締日と支払日
- ボーナスの有無・支給実績の目安
- 昇給の有無・タイミング
- 福利厚生(社会保険、研修の金銭的補助など)
- 試用期間(定めがあれば)
面接時には、待遇面の質問を控えるケースもありますが、事前に把握しておかなければいけません。
募集事項に給与額が記載されていても、経験年数や保有資格の種類によって給与額が変わる可能性もあります。
ポイント2.業務内容を把握する
業務内容に関して確認しておきたい項目は、以下のとおりです。
- 就業場所(多店舗経営では臨時で就業場所が変動する場合もある)
- 入社後の研修
- 訪問介護以外の職務内容
正社員は訪問時間以外でも、仕事に拘束されます。
事業所によっては、訪問介護以外の仕事や業務を任されることもあるでしょう。
たとえば、「週40時間の勤務時間」を目安としていても、残業や休日出勤が必要になるかもしれません。
また、研修や勉強会などでサービス出勤が必要になるケースも考えられます。
ポイント3.施設の雰囲気や環境をチェック
事前に事業所の雰囲気を、把握しておきましょう。
一緒に働く上司や同僚との人間関係は、働きやすさに影響します。
面接で迎えてくれる職員や面接官の対応は、人間性や職場の雰囲気が少なからず現れるものです。
職員同士が会話する姿を見れば、職場の雰囲気を感じとれるかもしれません。
また、職員の年齢構成や男女比といった要素も、雰囲気に影響します。
面接を受ける前でも把握できる内容なので、確認しておきましょう。
見学やホームページの掲載情報、地域の評判などを聞いてみてください。
訪問介護の正社員に関するQ&A
はじめて訪問介護で働く場合は、さまざまな疑問や不安、悩みが生じるものです。
訪問介護で正社員として働く場合の疑問や質問を、以下の項目で解説します。
- 訪問介護でバイトは募集している?
- 訪問介護は1日に何件回る?
- 訪問介護の空き時間は給与になる?
求人を探すときの参考に役立ててください。
Q1.訪問介護でバイトは募集している?
A.求人情報はハローワークのほか、民間企業が運営する求人情報にも掲載されています。
訪問介護の場合、一般に「バイト」と呼ばれる雇用形態は、パートや非常勤と呼ばれています。
バイトで求人が見つからない場合は、パートや非常勤を含めて検索してください。
Q2.訪問介護は1日に何件回る?
A.訪問介護の訪問件数は、事業所や地域、また時期によっても変動します。
求人情報を見ると、1日あたり5〜12件と幅があるようです。
厚生労働省の報告によれば、訪問介護の利用は「30分未満」と「30分〜1時間」の利用が多いとされています。
訪問介護員の勤務時間を8時間として、移動時間と休憩時間を考慮した場合、1日あたり平均6〜7件ほどです。
加えて、訪問宅ごとの距離(移動時間)によって、訪問回数が増減します。
▼登録ヘルパーのスケジュールについてはこちらの記事も参考にしてみてください。
>>登録ヘルパーは忙しい?1日のスケジュールをご紹介!
※参考:厚生労働省『介護給付費等実態統計』訪問介護単位数・回数,要介護状態区分・内容類型・所要時間別
Q3.訪問介護の空き時間は給与になる?
A.空き時間の賃金は、事業所ごとに扱いが異なります。
直接雇用は、事業所と従業員が雇用契約を結んでいるため「拘束時間」が時給対象です。
つまり、移動時間も仕事と考えて給与が発生します。
登録型は「直行直帰」を基本としている事業所が多く、移動時間は給与の対象となりません。
移動時間の給与については、事業所に確認が必要です。
登録ヘルパーの場合は移動時間の給与のほか、交通費についても合わせて確認しておきましょう。
まとめ:正社員は責任の分だけやりがいもある
訪問介護は正社員のほか、パートや登録ヘルパーといった働き方もあります。
正社員は「経済的・社会的立場の安定性」が利点です。
ライフプランを立てやすい点は、大きなメリットといえるでしょう。
また、責任ある仕事やポジションを与えられる機会が増えます。
キャリアップにつながるため、「介護業界に腰を据えて働きたい」という人にとってはやりがいとなるはずです。
対して、パートや登録ヘルパーは時間的な制約の縛りがゆるい点でメリットがあります。
雑務や訪問介護以外の仕事は少ないため、「訪問介護の仕事のみに専念したい」という人にとっては働きやすいスタイルです。
どちらにもメリットがあるので、自分のワークスタイルに合った働き方を選んでください。
▼「フリーで働く」という選択もあります。自分で営業する方法や、必要なことについては以下の記事で紹介しています。
>>訪問介護はフリーランスで働ける?自由な働き方を実現するためにやるべきこと