訪問介護で男性ヘルパーを指定できる?可否や問題点を解説
「うちのおじいちゃんは恥ずかしがり屋だから、男性ヘルパーにお願いしたい」
「体が大きいから、男性ヘルパーのほうが安心だけど指定はできる?」
訪問介護の利用にあたって、このような疑問を持っていますね。
利用者さんが男性であったり、介助で力が必要だったりする場合、男性ヘルパーのほうが安心して依頼できるでしょう。
しかし、訪問介護の現状では、ヘルパーの性別を指定するのは難しいです。そこで今回「みーつけあ」では、訪問介護の男性ヘルパー指定について解説します。
難しい理由や性別を指定する方法まで紹介するので、ぜひ参考にしてください。
1.訪問介護で男性・女性の指定を希望するケースは多い
訪問介護で男性ヘルパーを希望する声は、利用者さんと事業所の双方から挙がっています。
SNSでは、以下のような意見も見られます。
次は彼を指名で依頼しよう。
利用者さん側の視点で見たときは、以下のような理由で男性を指定したい希望がありますよね。
「入浴や排泄の介助を異性にされるのが恥ずかしい」
「体が大きいため男性じゃないと介助が難しい」
しかし、訪問介護を男性に依頼するのは制限があり、現状の介護対応では難しいです。
2.訪問介護を男性ヘルパーに依頼できない3つの理由
男性を指定するのが難しい理由には、以下の3つがあります。
- 男性の介護士が少ない
- 事業所で対応していない
- サービスに差が出るリスクがある
訪問介護の視点でみたとき、利用者さんのニーズに応えられないのが現状です。
ここからは、それぞれの理由に対して、厚生労働省の調査にもとづいて解説します。
訪問介護利用の知識が深まる内容となっているので、ぜひ参考にしてください。
理由1.男性の介護士が少ない
男性ヘルパーが少ないため、事業所として訪問介護で男性を派遣するのが困難な状況にあります。
平成29年に介護労働安定センターが実施した介護労働実態調査によると、訪問介護員の男女比は、女性87.8%に対して、男性はたった9.5%しかいません。
そもそも、訪問介護員は男女関係なく人手不足が深刻な状況にあります。
このように、訪問介護事業所では、人材不足に悩まされる状態が加速しています。
そのため、性別に合わせた訪問介護は提供しづらいというのが、現状です。
理由2.事業所で対応していない
訪問介護を男性ヘルパーに依頼できない理由として、性別を指定するサービスに事業所が対応できていないことが挙げられます。
ヘルパーの性別に関する要望に応えられるように、努力している事業所は多いです。
しかし、男性の介護士が少ないことから、ニーズに応えられない現状があります。
また、利用者さん視点で見たときに、ヘルパーの性別だけでなく人柄や相性の良さから「個人で指定したい」といった要望もあるはずです。
訪問介護は、介護保険にもとづいた公平なサービスを提供するため、対応できない可能性があります。
理由3.サービスに差が出るリスク
訪問介護は保険料から支払われるため、公平なサービスでなくてはなりません。
利用者さんの希望で男性ヘルパーを訪問させた場合、他の訪問介護を利用されている人から見て不公平な対応とみなされる可能性が高いです。
事業所としては、特定の利用者さんを贔屓(ひいき)するわけにはいきません。
一定のサービス品質を提供するために、男性ヘルパーの指定に応じられない事情もあるのです。
3.訪問介護で男性ヘルパーを指定依頼する方法
訪問介護で男性ヘルパーを指定して依頼するには、指名対応する事業所を探さなくてはいけません。
現状の訪問介護では、有料のサービスとして介護保険料外で対応する事業所があります。
どうしても性別を指定したい場合は、有料サービスも検討してみてください。
介護保険料内では、個別の指名に対応できる事業所が少ない状況となっているものの、介護保険外の有料サービスでヘルパーの指定に対応する検討が進められています。
しかし、日本総研の報告によると、多くの事業者が男性ヘルパーの指定サービスの導入に難しさを感じている実情が明らかになっています。
事業所が有料での指名に踏み切れない理由をまとめると、以下のとおりです。
- 人員不足によりシフトの都合で対応できない
- 利用者さんの自立支援を阻害する可能性がある
- ヘルパーの業務や給与、評価の優劣につながりかねない
検討は今後も続くので、公的な訪問介護サービスでも有料指名が可能になる可能性はあります。
4.同性介護にまつわる問題点
訪問介護では、性別にまつわる問題点があります。
排泄や入浴介助といった性的な範囲を含む介護では、異性による対応に抵抗を持つ人は少なくありません。
残念ながら、異性介護によって、性的虐待にあたる被害を受けた利用者さんもいます。
日本高齢虐待防止学会の事務局長は、異性介護自体が虐待にあたるとの見解も示しました。
利用者さん側は同性介護を希望して、事業所も要望に合ったサービスを提供したいという利害は一致しています。
しかし、双方共に同性介護が望ましいと分かっているものの、法律に関する整備が進まないことも起因して、問題解決が難しい状況です。
異性介護に関する法律
2006年に指定された高齢者虐待防止法では、以下のような項目を虐待にあたると設定しました。
- 身体的虐待
- 介護放棄
- 心理的虐待
- 性的虐待
- 経済的虐待
性的虐待は、わいせつな行為をすることに関して設定されましたが、異性介護に関する言及はされていません。
訪問介護の現状を踏まえると、異性介護の違法化や是正措置等の法律化は、スタートラインにすら立っていない状況です。
訪問介護の男性・女性ヘルパー指定で知りたいQ&A
最後に、訪問介護で性別を指定したい利用者さんやご家族が知りたい疑問として、以下の3つにQ&A形式で回答します。
- トイレ介助を異性ヘルパーが担当するのは普通?
- 訪問介護に女性が多い理由は?
- 男性の介護を拒否する場合は?
トイレ介助といったセンシティブな内容のサービスでは、異性ヘルパーの対応を不快に思う場面があるはずです。
また、男性の訪問介護員は少ない現状がありましたが、なぜ女性のほうが多いのでしょうか。
男性の介護を拒否する利用者さんの対応に関しても解説するので、それぞれを確認してみてください。
Q1.トイレ介助を異性ヘルパーが担当するのは普通?
A.排泄や入浴介助において異性のヘルパーによる担当は、事業所によって異なります。
訪問介護員の出勤状況から、どうしても異性によるサービスとなってしまうかもしれません。
しかし、できる範囲で同性介護を原則としている事業所もあります。
これから訪問介護を利用される場合は、事業所に直接問い合わせるとよいでしょう。
現在、訪問介護を利用中の場合は、ケアマネージャーに相談してみてください。
同性介護の意向を、検討してもらえる可能性があります。
Q2.訪問介護に女性が多い理由は?
A.非正規雇用として、主婦の採用が多いため、女性が多いです。
厚生労働省によると、訪問介護員の69.7%は、パートタイマーや派遣社員となっています。
家事の経験を活かせる仕事として求人が出されている点も、女性が訪問介護に参加しやすい要因です。
また、40〜59歳の訪問介護員が多いことから、育児を終え一段落した主婦が訪問介護で働くケースも多いでしょう。
このような要因から、訪問介護では女性が活躍する機会も多くなっています。
Q3.男性の介護を拒否する場合は?
A.ケアマネジャーと一緒に、利用者さんの介護の方針を考えましょう。
利用者さんの性別にかかわらず、男性ヘルパーによる介護を拒否する場合はあります。
たとえば、利用者さんが以下のようなイメージを持っている状態では、拒否につながるかもしれません。
- 男性に柔和なイメージがなく怖い
- 男性の家事に抵抗がある
女性に比べて平均身長が高い男性に対して、利用者さんは「威圧感があって苦手」といったイメージを持っている可能性があります。
また、高齢の利用者さんは、時代背景から男性に対して料理や掃除といった能力に期待していない面もあります。
利用者さんの心情を察すれば、拒否の理由が見えてきやすいです。
ご家族だけで悩むのではなく、事業所やケアマネジャーと相談して今後の対応を検討してください。
まとめ:男性・女性ヘルパーの指定は有料サービスも検討
訪問介護で男性ヘルパーを指定する場合、事業所によって対応してくれる余地はあります。
しかし、基本的には依頼できないものだと考えておきましょう。
介護業界では同性介護が望ましいとしながらも、女性ヘルパーに頼らざるを得ない状況です。
介護保険外のサービスでは、同性介護に対応する事業所もあります。
制度化されていないため、事業所によって費用や対応の違いがある点には注意が必要です。
訪問介護で男性ヘルパーを指定するときには、事業所やケアマネージャーにしっかりと要望を伝えましょう。