訪問介護の調理における注意点まとめ|利用者さんを守るためにできること
「訪問介護の調理が不安…」
「調理時に気を付けなければいけないことは?」
このように、訪問介護の調理に不安を感じて調べていますね。
利用者さんが安全に食事をするためには、食品のみならず、食器や調理器具まで衛生的な配慮が必要です。
また、調理をする訪問介護員自身も、体調に気を付ける必要があります。
今回「みーつけあ」では、訪問介護の調理に関する注意点を紹介します。
利用者さんが食事をするときの注意点も合わせて解説するので、ぜひ確認してください。
1.訪問介護は調理時間に注意する
訪問介護は、サービス提供時間が決められています。
厚生労働省によると、調理・配下膳の平均所要時間は、30〜40分ほどです。
長く思えるかもしれませんが、器具を準備したり、利用者さんに声かけをしたりといった時間も含まれています。
訪問介護員は、限られた時間のなかで、適切に調理を提供しなければいけません。
慌ただしくサービスを開始して、調理器具でケガをするようなことがないように、事前の確認を怠らない意識が必要です。
2.訪問介護調理の衛生管理における注意点
訪問介護員は、調理提供時に衛生管理に気を付けなければいけません。
直接体に取り込む食事は、利用者さんの健康を支えると同時に、感染症や食中毒のリスクがあるためです。
安心安全の調理に向けた衛生面の注意点を、以下3点で紹介します。
- 食品
- 食器や調理器具
- 介護職員の体調
それぞれの項目を確認しましょう。
その1.食品
厚生労働省が提示する、食品に関する衛生管理のポイントとして、以下の点を確認しましょう。
- 食品汚染
- 生もの調理
- 寄生虫除去
- 肉調理
- 保存食
ノロウイルスによる食中毒の多くは、調理担当者が食品を汚染したことによる可能性が高いとされています。
また、調理中の衛生管理が万全でなければ、食中毒のリスクは高まるものです。
魚介類といった生の食材は、鮮度管理が難しいため、訪問介護での使用は避けてください。
肉類の調理は、加熱に注意が必要です。
75℃以上の温度で、1分以上の加熱を心掛けましょう。
保存食を使用する際も、カビや匂いに異常がないか確認をするといった衛生管理の意識を持って、訪問介護の調理をおこなってください。
その2.食器や調理器具
食品だけでなく、食器や調理器具の衛生管理も大切です。
清潔が保たれていないと、食中毒のリスクが上がります。
訪問介護の調理では、ほとんどの場合、利用者さんのお宅にある食器や調理器具を使用するでしょう。
仮に、食器や調理器具が汚れていた場合は、使用する前に清潔を保つ必要があります。
食べ物の洗い残しだけでなく、洗剤が残留していないかまで確認できるとよいです。
汚れが付着していた場合は、水洗いするといった配慮を心掛けてください。
その3.訪問介護員の体調
訪問介護員の体調が悪い場合は、「介護サービスを提供できる状態か」を必ず事業所に確認してください。
日本食品衛生協会によれば、ノロウイルスの約8割は、調理実施者に由来するとされています。
下痢や腹痛といった消化器系の不調がある場合は、ノロウイルス感染症の可能性があるため、病院を受診してください。
また、訪問介護員が気を付けなければいけないのは、消化器系の感染症だけではありません。
手荒れや切り傷がある場合、化膿した部分から、黄色ブドウ球菌といった細菌が食品に入る可能性があります。
手にキズがあるときは、食材や調理器具に触れないように絆創膏で止血してください。
応急処置をした場合は、食品に異物が混入しないように注意しなければいけません。
このように、訪問介護の調理では、サービスを提供する側の体調管理にも注意しましょう。
3.訪問介護の調理では嚥下の行程にも注意
訪問介護の調理では、利用者さんの嚥下メカニズムを知っておくことも重要です。
嚥下のメカニズムを知ることで、むせ込みや窒息の防止につながります。
厚生労働省の情報をもとに、メカニズムについて以下5つの項目で確認しましょう。
- 認知期
- 準備期
- 口腔期
- 咽頭期
- 食道期
嚥下のメカニズムを理解すると、食形態に明確な基準をもって判断できます。
日々の利用者さんの食事状況を気にかけて、適切なモニタリングにつなげるために、嚥下メカニズムを確認してみてください。
メカニズム1.認知期
認知期は、利用者さんが食べ物を目で見て認識する工程です。
人が食べ物を視認すると、唾液の分泌が開始されます。
消化器官も脳からの指令を受け、食事の準備が始まる初期段階です。
唾液分泌量が少ない利用者さんの場合は、食事前に嚥下体操をおこなうといった配慮が必要です。
メカニズム2.準備期
準備期では、口の中に入った食材が唾液と混ざり、咀嚼されて食塊という塊に整えられます。
準備期に充分な咀嚼がおこなわれないと、食材を丸飲みする形になり危険です。
利用者さんが咀嚼する様子は、確認しておきましょう。
じっと見つめると、「食べづらい」と感じる利用者さんもいます。
利用者さんが視線を感じて食べづらそうにしている場合は、咀嚼しやすいか質問して食機能の評価につなげてください。
「現状で対応している食形態が合っているか」を日々確認できれば、利用者さんの変化に合わせて適切な食事を提供できます。
メカニズム3.口腔期
口腔期は、口内で食塊となった食べ物が、のどへと送られる行程です。
口腔期には、舌の動きや歯の状態が重要になります。
歯が抜けてしまった利用者さんは、うまくのどに送り込めない可能性があります。
口から食材がこぼれ落ちる様子を確認した場合、口腔期の機能で利用者さんが不便に感じているかもしれません。
適度に水分を含んだ、滑らかに飲み込める食事内容を考えてみてください。
口腔期は、舌が食べ物に多く触れ、味覚や触覚が優位に働く段階です。
利用者さんが味に対して反応する工程でもあるので、味覚の様子も確認しましょう。
メカニズム4.咽頭期
咽頭期は、食べたものを喉から食道へ送る行程です。
飲み込み自体は短い時間ですが、誤嚥が起こりやすいため、リスクが高い段階と言えます。
誤嚥は、本来食道へ送り込まれるものが、気道に入ることです。
反射的に、防御反応としてむせ込みを繰り返します。
誤嚥性肺炎となるリスクもあるため、ケアプランを見直して、予防に務めましょう。
メカニズム5.食道期とは
食道期とは、食道から胃へ送られるまでの行程です。
食道上部にある上食道括約筋には、咽頭への逆流を防ぐ働きがあります。
括約筋がうまく機能しないと、逆流性食道炎といった症状を引き起こします。
高齢者は、上食道括約筋の機能が落ちることも多く、逆流性食道炎で苦しい思いをしているかもしれません。
逆流性食道炎の主な症状として、ゲップが多くなるといった状態があります。
食事時にゲップが多い場合は、逆流性食道炎の可能性を考えて、利用者さんの状態を見守りましょう。
4.生活習慣病に関する調理の注意点
利用者さんが生活習慣病を抱える状態では、調理から配慮できるポイントがあります。
調理で注意しなければいけない代表的な生活習慣病として、以下3つを確認してください。
- 糖尿病
- 高血圧
- 脂質異常症
利用者さんが糖尿病の場合は、使用する食材によって血糖をコントロールする必要があります。
ご家族や担当の医師から、どのような食材が適切か確認しましょう。
また、利用者さんが好きな食材から、栄養バランスの偏りがないように献立を考えてください。
高血圧の場合は、一般的に塩分制限が対策として取られます。
調理時に味付けする、塩や醤油の使用料を制限して、塩分過多を避ける工夫が必要です。
減塩レシピは、利用者さんが薄味に感じる場合が多くなるでしょう。
1つの工夫として、ネギやシソといった香りがある食材を用いることで、薄味でも味に深みをもたせた調理ができます。
また、酢を酸味として味付け使用するといった工夫もできるので、利用者さんの好みに合わせて試してください。
脂質異常症は、血液中の脂質の濃度が基準値を超えた場合に診断されます。
脂質異常症の利用者さんには、脂質やコレステロール制限といった対策をする場合が多いです。
また、糖質制限も有効な対策となります。
高齢者におすすめの低カロリー食材として、以下の例を確認してください。
- 魚
- 大豆
- キノコ
- 海藻 など
高齢者でも食べやすい日本食は、低カロリーのレシピが多い特徴があります。
好きな料理に合わせて、低カロリー食材での調理を意識しましょう。
訪問介護調理の注意点と合わせて知りたいQ&A
最後に、訪問介護の注意点と合わせて知りたい疑問点を、まとめて回答します。
- 調理が時間内に終わらないときはどうする?
- 家族分の調理は対応できる?
- 訪問介護の調理で役立つレシピを知りたい
訪問介護の調理では、サービス時間の制限によって時間内に終わらないといった悩みを抱える人も多いでしょう。
また、利用者さんのご家族分の調理まで頼まれて困ることもあるかもしれません。
調理のレシピで悩む人に向けて、解決策も解説するので、それぞれの内容を確認してみてください。
Q1.調理が時間内に終わらないときはどうする?
A.訪問時間内に終えられるように、事前準備やポイントを確認しましょう。
「なぜ時間内に終わらなかったのか」を、検証することが大切です。
原因を分析すると、以下のような課題が見えてくるはずです。
- 利用者さんから話しかけられて手がとまってしまう
- 調理自体が苦手で終わらない
- 時間がかかる内容を後回しにしている
課題を把握したら、解決するためにどのような対策をおこなうか明確に決めて取り組みましょう。
おすすめは、調理工程を分解して、小さな時間設定を設ける方法です。
どの項目に時間がかかるか分析できるため、今後の調理に役立てられます。
また、どうしても解決できない場合は、サービス提供責任者に相談をするのも1つの手です。
Q2.家族分の調理は対応できる?
A.訪問介護は、ご家族へのサービス提供はできません。
訪問介護は、介護を必要とする利用者さんのみに提供できるサービスであるためです。
「調理の量を増やして欲しい」といった要望があったとしても、ケアプランとして適切であるか事業所と相談してから、対応してください。
▼訪問介護にできること・できないことについては、以下の記事をご参考ください。
>>訪問介護ヘルパーに頼めることって?できること・できないことを紹介
Q3.訪問介護の調理で役立つレシピを知りたい!
A.訪問介護の調理で役立つ、時短レシピを確認しましょう。
利用者さんに喜んでもらえるレシピの例として、以下のようなものがあります。
- カレー味の豆腐ステーキ
- 簡単オムレツ
- ナスミートソース
- 鶏の黒酢煮
- 減塩野菜のお浸し
- ふわふわハンバーグ
▼詳細な作り方は、以下の記事で解説しているので、ぜひ参考にしてください。
>>訪問介護のご飯作りがストレス!レシピやポイントを覚えて楽しもう
まとめ:注意点を守って調理を楽しもう
訪問介護の調理時に注意しなければならない点を解説しました。
訪問介護の調理では、サービス時間を超えないように手際よく進める必要があります。
しかし、調理器具には、包丁といった刃物もあり、ケガのリスクもつきものです。
仮にケガをしてしまった場合は、適切に処置して、利用者さんの体調不良を防いでください。
調理が苦手な人でも、利用者さんの笑顔と感謝の言葉で大変だと思う気持ちは吹き飛ぶはずです。
注意点を把握して、利用者さんに楽しんでもらえる調理を心掛けましょう。