訪問介護の給料事情|平均額・手取り額、給料を上げる秘訣も紹介
介護業界は景気に左右されづらい仕事ですが、一方で「賃金が低い」とも言われます。
しかし、介護と一言にまとめても、職種や施設の種類は多様です。
訪問介護では、雇用形態や資格、職位によっても給料が変わります。
今回、「みーつけあ」では、訪問介護の給与事情についてまとめました。
手取り金額やパート勤務の場合も、分かりやすく解説します。
1.訪問介護の平均給料(年収)を調べた結果
訪問介護の平均給料・平均年収について調べた結果をまとめました。
ここでは、以下の内容について記載しています。
- 介護職全体と訪問介護の給料比較
- 訪問介護のボーナス事情
- 訪問介護におけるパート勤務者の給料事情
介護業界の給料事情は、職種によって大きく異なるのでひと括りにはできません。
また、訪問介護では、パート勤務者も多いことから雇用形態が給与に影響します。
結果1.介護職全体と比べて給料は低い?
まずは、厚生労働省の調査結果を基に、訪問介護員の月給を見ていきます。
以下は、調査結果を事業所の規模ごとにまとめた表です。
会社の規模 | 10人以上 | 10〜99人 | 100〜999人 | 1,000人以上 |
給与額 | 26万円 | 27万円 | 25万円 | 26万円 |
参照:令和2年賃金構造基本統計調査
※給与額は資料「きまって支給する現金給与額」より
※小数点以下、四捨五入
この結果から、訪問介護の平均給料は、26万円ほどと分かります。
次に、介護職の給料相場と比較してみましょう。
会社の規模 | 10人以上 | 10〜99人 | 100〜999人 | 1,000人以上 |
介護職全体の給与額 | 25万円 | 23万円 | 26万円 | 26万円 |
訪問介護従事者 | 26万円 | 27万円 | 25万円 | 26万円 |
参照:令和2年賃金構造基本統計調査
※給与額は資料「きまって支給する現金給与額」より
※小数点以下、四捨五入
結果から、訪問介護員の給料は介護職として「平均からやや高め」といえるでしょう。
しかし、給料は以下のような各種手当の状況によっても、上下します。
- 地域性
- 事業所の賃金体系
- 役職手当
- 資格手当 など
あくまでも、1つの参考までに留めておきましょう。
結果2.正社員はボーナスの分だけ年収が高い
正社員の年収に影響するのが、ボーナスです。
厚生労働省の調査結果を基に、訪問介護員のボーナス額をまとめました。
会社の規模 | 10人以上 | 10〜99人 | 100〜999人 | 1,000人以上 |
ボーナス(賞与額) | 45万円 | 43万円 | 47万円 | 37万円 |
参照:令和2年賃金構造基本統計調査
※小数点以下、四捨五入
ちなみに、ボーナス支給額は以下の項目によって、大きく異なります。
- 職務内容
- 経験年数
- 個人の技能 など
以下は、同調査による経験年数別・訪問介護員のボーナス額のまとめです。
経験年数 | 0年 | 1-4年 | 5-9年 | 10-14年 | 15年以上 |
ボーナス (賞与額) | 6万円 | 42万円 | 43万円 | 42万円 | 55万円 |
参照:令和2年賃金構造基本統計調査
※小数点以下、四捨五入
上記のボーナス額は、介護職の相場と同水準です。
介護業界は経験が重視されるため、未経験者はボーナス額が低い傾向にあります。
ただし、経験年数を考慮しても40〜50万円台がボーナスの平均といえるでしょう。
ボーナスは、必ず支給されるわけではありません。
ボーナスの支給については事業所に確認するか、求人の賞与欄をチェックするのが確実です。
補足:事業所によってはパートにもボーナスを支給する
ボーナスが支給される事業所では、正社員にボーナスがあります。
パートの場合は、ボーナス不支給でも、違法ではありません。
2019年には、大阪高等裁判所で「無期契約労働者に対するボーナスが支給されないことは、違法ではない」とした実例もあります。
ただし、訪問介護では、パートでもボーナス支給される場合があります。
介護労働安定センターの調査では、「パート職員でもボーナスあり」とする事業所が約半数です。
定期的にボーナスを支給している | ボーナス制度はあるが経営状況によって不支給の場合がある | ボーナス制度はないが、経営状況により支給する場合がある | ボーナス制度はなく、不支給 | |
無期雇用 | 58.9% | 12.0% | 9.9% | 7.9% |
有期雇用 | 28.0% | 7.4% | 8.7% | 11.2% |
参照:介護労働安定センター『事業所における介護労働実態調査』p72〜
※無回答のデータは割愛
※無期雇用=正社員
※有期雇用=短時間労働者・契約社員
過度な期待はできませんが、事業所によってはパート勤務でもボーナスが支給されています。
結果3.パートの給料は事業所ごとに幅がある
訪問介護のパート給料は、以下の2つの勤務形態に分けて見る必要があります。
- 直接、事業所と雇用契約を結んでいる場合
- 登録ヘルパーとして勤務する場合
まず、事業所と直接雇用を契約しているパート給料は時給制です。
「拘束時間×時給」から給料を計算します。
次に、登録ヘルパーの給与も時給制です。
ただし、拘束時間ではなく「訪問介護の時間数」で給料が発生します。
移動時間は拘束時間と考えず、実際に介護している時間が賃金の対象です。
両者の違いから、多くの事業所が登録ヘルパーの時給を高めに設定しています。
移動時間を含めて時給を提示しているためです。
厚生労働省の調査によると、訪問介護員の時給額は1,560円となっています。
介護職の時給相場が1,198円なので、訪問介護の時給は高いと言えます。
ただし、時給では、地域や事業所の違いが大きく影響する点を押さえておきましょう。
2.訪問介護で給料の手取り額をチェック
手取り額とは、総支給額から控除額を差し引いた実際の支給額です。
厚生労働省の調査結果による訪問介護員の月給は、事業所規模や経験にもよりますが、およそ26万円となります。
実際の手取り金額は、総支給額の7〜8割程度が目安です。
計算すると、「26万円×0.7〜0.8=18.2〜20.8万円」となります。
訪問介護の手取り金額は、18〜21万円が目安といえるでしょう。
3.訪問介護の給料が上がる秘訣・ポイントは?
訪問介護で給料を上げるためには、以下の項目がポイントになります。
- 資格を取得してキャリアを磨く
- 職位を上げる
- 給料が高い事業所へ転職する
キャリアアップは、もっとも確実な昇給のポイントです。
キャリアアップは、資格と職位といった2つの視点から考えられます。
場合によっては、転職も給料を上げるための手段となります。
ポイント1.キャリアアップにつながる資格を取得する
訪問介護でのキャリアアップとして、押さえておきたいのが資格の取得です。
介護業界では、資格によって手当が付く場合もあります。
国家資格をはじめ、上級資格の取得者は手当の対象です。
訪問介護には、以下の資格があります。
資格の種類 | 資格の位置付け |
初任者研修(旧ヘルパー2級) | 厚生労働省の認定する公的な資格 |
実務者研修(旧ヘルパー1級) | 厚生労働省の認定する公的な資格 |
介護福祉士 | 国家資格 |
訪問介護で働く場合は、最低でも初任者研修を修了しておかなければいけません。
さらに上位の認定として、実務者研修があります。
介護の知識に加え、医療や福祉全般の知識を学ぶのが目的です。
医療的ケアについても実践形式で学べます。
実務者研修の認定に加え、実務経験が3年以上あれば介護福祉士を目指すことも可能です。
介護福祉士は国家資格であり、取得者は好条件の待遇が期待できます。
複数の求人サイトを参照した結果は、以下のとおりです。
資格の種類 | 手当額 |
初任者研修(旧ヘルパー2級) | 3,000円 |
実務者研修(旧ヘルパー1級) | 5,000円 |
介護福祉士 | 10,000円 |
上記のとおり、上級資格の取得で給料アップが期待できます。
▼資格手当について詳しく知りたい人は、以下のページを参考にしてみてください。
>>訪問介護で資格手当が出る資格5つ!支給額相場や取得方法を徹底解説
ポイント2.職位を上げて責任あるポジションにつく
昇格にともなって、昇給が期待できます。
仕事の量と質ともに、業務の負担が増えるからです。
通常、職位が上がると責任や業務の内容が変わります。
訪問業務から離れる場合もあれば、管理業務を兼任する場合もあるでしょう。
場合によっては、新事業所の立ち上げや人事業務に関わる場合もあります。
職位が上がれば、現場職以上の責任と仕事量を負うので、業務は多忙です。
しかし、役職手当や能力手当などの支給により、給料アップが期待できます。
複数の求人サイトを参照した結果、以下のような役職手当があります。
資格の種類 | 手当額 |
チーフマネジャー | 60,000円 |
エリアマネジャー | 50,000円 |
マネジャー | 30,000円 |
サブマネジャー | 15,000円 |
訪問介護管理者 | 30,000円 |
手当額は事業所によって上下しますので、目安として考えてください。
ポイント3.給料の高い事業所への転職を検討する
給料の高い事業所へ転職するのも、給料を上げるポイントです。
訪問介護の給料は、地域相場や事業所の方針によって変わります。
傾向として、都市部ほど給料が高めです。
ただし、給料相場が低い地域でも事業所によって、支給額は高くなる場合があります。
事業所ごとに給料体系が変わり、基本給以外にも手当や福利厚生によって、手取り金額が変わります。
また、転職をきっかけに昇格する場合もあるでしょう。
転職は時期も影響するため、必ずしも転職が給料アップにつながるわけではありません。
しかし、人材の流動性が高い介護業界では、欠員や資格者確保のため、思わぬタイミングで好条件の求人に出会う可能性があります。
待遇面を考えて転職する場合は、定期的に求人情報を確認しておきましょう。
訪問介護と給料に関するQ&A
最後に、訪問介護の給料に関するQ&Aを解説します。
給料にまつわる疑問・質問として、以下の内容をピックアップしてまとめました。
- 訪問介護で正社員の募集はあるか
- 訪問介護の給与計算の方法について
- 訪問介護ではパートにボーナスや手当が支給されるか
記事の中で触れていない部分もあるため、補足として活用してください。
Q1.訪問介護で正社員の求人はある?
A.正社員の求人は、あります。
実際に求人情報を確認するのが確実です。
訪問介護の求人情報はハローワークのほか、民間企業が運営する求人サイトでも探せます。
確認しておきたいポイントとして、介護業界では、「常勤」という表現を使う場合が多いです。
常勤とは、正社員のことで、パートは非常勤と呼ばれる場合があります。
雇用形態の名称は、異なる場合があるので注意してください。
訪問介護でおすすめの求人サイトを、3つピックアップしました。
求人を探すときの参考にしてください。
Q2.訪問介護で給料の計算はどうしたらよい?
A.訪問介護での給料計算は、一般の会計と変わりません。
ただし、介護保険法の影響を受ける点に注意しましょう。
介護保険法が改正されたとき、従業員の給料が変わる場合もあります。
たとえば、処遇改善加算は、介護職員の待遇面の改善が目的です。
訪問介護の給料計算では、会計の処理に加えて、「介護保険が独自に行う改正の影響を受ける」という点を押さえておかなければいけません。
さらに詳しい内容については「>>訪問介護における給料の計算方法を解説!ソフトも活用してみよう」にて解説しています。参考にしてみてはいかがでしょうか。
Q3.訪問介護でボーナスや手当はパートももらえる?
A.訪問介護のパート職員に対する手当・ボーナスは事業所次第です。
事業所によって、パート勤務者にもボーナスが支給されます。
しかし、正社員に比べると割合は低いのが実情です。
介護労働安定センターによると、「パートに対しても定期的にボーナスを支給している事業所は約3割」との報告もあります。
資格手当は得られる可能性があるものの、役職手当は役職に就かない限り得られません。
ただし、パートでも実際の労働時間が正社員と同水準の場合は、厚生年金や労働保険などに加入できます。
国は「同一労働同一賃金」にもとづき、正社員とパートの給料を同等に扱うよう推進しています。
そのため、将来的には手当や福利厚生の充実度が変わるかもしれません。
まとめ:訪問介護の給料をあげるにはキャリアップが不可欠
訪問介護の給料について見てきました。
介護の仕事は、介護保険制度によって事業所の収入が決められています。
介護保険制度が定める事業所の収入は、言い換えれば「歩合制」です。
サービスを提供するごとに、介護保険の財源から報酬が支払われます。
つまり、訪問介護員は、通常の訪問業務のみで給与アップを期待するのは難しいでしょう。
訪問介護で給料をあげるには、キャリアアップが確実な手段です。
資格の取得と昇格で、各種の手当が得られます。
訪問介護で給料を上げるには、「キャリア磨き」が1番の近道といえるでしょう。