訪問介護の給料が安い現状と理由|これから給料が上がる見通しを解説
「訪問介護の給料は安い」というイメージをもっている人は多いでしょう。
実際に、訪問介護の給料は他業界や介護業界のなかでも安い傾向にあります。
しかし、その理由や国が進めている改善施策を知れば、これから給料が上がっていくイメージへと変わるでしょう。
今回「みーつけあ」では、訪問介護の給料が安い現状と、今後の処遇改善加算などについて紹介します。
訪問介護の仕事が気になっている人や給料について知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
1.訪問介護の給料が安いって本当?全国の平均月収で比較
訪問介護の給料が安いというのは、「ただのイメージ」なのか「本当なのか」が、気になっている人も多いのではないでしょうか。
実際の給料がどの程度なのかは、データで確認することで正確な数字がわかります。
訪問介護の給料が安いのは本当なのか、全国の平均月収で比較してみましょう。
訪問介護員の平均月収は21万円!手取りは18万円前後
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査の職種別賃金額」によると、訪問介護員(ホームヘルパー)の平均月収は21万円と発表されています。
つまり、各種保険料の支払いを済ませると、手取りで18万円ほどしかない計算です。
では、一般的に日本全体の月収はどの程度なのかも確認しておきましょう。
国税庁の「平成30年分民間給与実態統計調査」では、男女の年収は440万円が平均となっています。
平均給料 | |
訪問介護員 | 21万円(手取り18万円程度) |
全国のすべての職 | 36万円(手取り32万円程度) |
※目安であり実際の事業所と相違があります。
この違いを見る限り、訪問介護の給料は安いというほかありません。資格手当が支給されるかどうかで、給料に違いが生まれます。
また、手当が出やすいのは、以下の資格や職種です。
- 介護福祉士実務者研修
- 介護福祉士
- ケアマネジャー
支給される額は、それぞれの事業所によって異なります。求人を探すときに「資格手当がどの程度支給されるのか」を、確認するとよいでしょう。
具体的にどのくらいの額が支給されるのか、どういった資格が有利に働くのかが知りたい人は、以下の記事を参考にしてみてください。
>>訪問介護で資格手当が出る資格5つ!支給額相場や取得方法を徹底解説
2.訪問介護員の給料が安いといわれる要因
訪問介護員の給料が安いといわれる原因にはいくつかありますが、主に以下の3つが挙げられます。
- 人材が集まりやすい仕事だと思われているから
- 介護報酬に上限があるから
- 直前にキャンセルになってしまうケースもあるから
介護に限ったことではありませんが、心身ともに疲労が蓄積されやすい仕事のため、給料が高くても問題ないように思えます。
一体どのような要因が、訪問介護の給料を安くしているのか確認してみましょう。
要因1.人材が集まりやすい仕事だと思われているから
一般的に、人材が集まりやすい仕事だと思われている点が1つの原因といえるでしょう。
「人材が集まりやすい=人手をたくさん確保できる」ということで、1人あたりに支払う給料は安く設定されやすいです。
介護施設で働く場合、資格を持っていない状態かつ未経験であっても、採用される可能性が高くなっています。
実際の求人情報でも、「人手不足のため未経験OK、資格取得はサポート」というような介護施設は多いです。
訪問介護でも、同じく未経験OK、資格取得サポートの事業所は多くあります。しかし、身体介護を行うには必ず介護資格が必要です。
では、どうして人が集まりやすい仕事だと思われているのでしょうか。
その背景には、単純に「誰でもできる仕事」という認識が広まっていることが考えられます。
そして、最低限必要な資格は「介護職員初任者研修」と呼ばれる入門資格だけです。
このように難易度が低く、老若男女問わず取得できる資格であることからも、人材が集まりやすいと思われているのでしょう。
要因2.介護報酬に上限があるから
介護報酬に上限があることも、訪問介護の給料が安い原因となっています。
要介護度に応じて、サービス内容と介護報酬が決まっているため、自由に価格が決められません。
このことから、訪問介護員に支払える給料を、それぞれの事業所が上げたり下げたりできません。
事業所自体に入ってくる介護報酬が少ない場合には、自動的に訪問介護員の給料も安くなります。
介護報酬の見直しがおこなわれなければ、事業所が訪問介護員の給料をあげたいと思っていても、難しいのが現実です。
要因3.キャンセルになってしまうケースもあるから
訪問する予定だった利用者さん宅の介護サービスが、直前でキャンセルされてしまうケースもあります。
- 外出しようとしていて天候が荒れることがわかった
- 家族の人が来てくれることになった
- 利用者さんの体調が悪くなった
当然ながら、キャンセルされるとその分の報酬は出ず、仮に移動していたとしても給料に反映されません。
訪問介護では、サービス提供をおこなっている時間帯にしか時給が反映されない事業所があります。そのため、給料が安いと感じてしまうのでしょう。
3.訪問介護の給料が安い問題は今後どうなる?
訪問介護の給料が安い問題について、これから明るい変化が期待できるのでしょうか。
令和3年12月3日(金)の第2回公的価格評価検討委員会にて、「公的価格の制度、処遇改善加算」について検討されました。
上記資料によると、医療福祉の現場で給料がどの職業よりも安くなっており、世界的に見ても最低ラインであることがわかります。
処遇改善加算によって、訪問介護員だけでなく介護業界で働く介護士全体の給料が底上げされるかもしれません。
具体的には、以下の点がポイントとして挙げられます。
- 労働者確保に向けた取り組みが進む
- 介護報酬の引き上げも検討
- 訪問介護の加算は他介護より高め
それぞれより詳しく見ていきましょう。
ポイント1.労働者確保に向けた取り組みが進む
出典:令和3年12月3日 第2回公的価格評価検討委員会 公的価格の制度について
上記表を確認してみると、訪問介護と施設介護の両者で、人材不足が深刻です。
そのため、労働者確保に向けた以下の取り組みが進んでいます。
- 都道府県等との連携
- 職業安定行政との連携
介護労働者の労働条件の確保・改善上の問題点等について、都道府県等に対して、情報提供をおこないます。
加えて、介護労働者の雇用管理の改善に取り組む事業主を支援するための助成金制度や、(財)介護労働安定センターにおける雇用管理責任者講習などの活用によって、労働条件の確保・改善をおこなっています。
- 労働条件を明示
- 労働時間の適正な取り扱い
- 法定休日の確保
- 年次有給休暇
このような内容を徹底して、労働者を確保しようとしているようです。
参考:介護労働者の労働条件の確保・改善対策の推進について|厚生労働省
ポイント2.介護報酬の引き上げも検討
一時金ではなく継続的な収入とするため、介護報酬の引き上げも検討されています。
厚生労働省の「介護職員の処遇改善・介護拠点整備」では、8,443億円が投入されるようです。
そのなかの1つに処遇改善として、平成21年度の介護報酬改定(+3.0%)に加え、処遇改善に取り組む事業者に対して3年間の助成をおこなうことが決定しています。
介護報酬が改定されることで、事業所が訪問介護員に支払える給料を上げやすくなります。
このようなことから、これからは訪問介護員の給料アップに期待できそうです。
ポイント3.訪問介護の加算は他介護より高め
厚生労働省の「介護職員処遇改善加算について (対象サービス共通)」によれば、訪問介護の処遇改善加算は、他介護より高めに設定されています。
サービス別加算率をみてみると、介護老人福祉施設と比較したとき、訪問介護は高く設定されていることがわかります。
サービス | 加算Ⅰ | 加算Ⅱ | 加算Ⅲ |
訪問介護 | 13.7% | 10.0% | 5.5% |
夜間対応型訪問介護 | 13.7% | 10.0% | 5.5% |
介護老人福祉施設 | 8.3% | 6.0% | 3.3% |
※加算Ⅳ・Ⅴは今後廃止予定です。
その他の介護サービスと比較しても、訪問介護は一番高く設定されています。
処遇改善加算と特定処遇改善加算の違い
処遇改善加算と特定処遇改善加算には、以下のような違いがあります。
- 処遇改善加算は、介護職員全体の賃金向上を目的としたもの
- 特定処遇改善加算は、技能を持ったベテラン・経験を持った人の賃金向上を目的としたもの
特定処遇改善加算では、すべての介護職員を以下のように分類します。
A | 経験や技能がある介護職員 |
B | その他の介護職員 |
C | その他の職員 |
そのうえで、Bの平均賃上げ額がAよりも小さくなければならないという決まりです。
さらに、Aのなかで1人以上、月に8万円の給料アップ、または年収440万円までの給料アップが必要となっています。
全体を考えた処遇改善よりもより限定的かつ、介護のスキルや経験がある介護職員を重点的に補強していくイメージです。
4.訪問介護の給料が安いと感じたときによくある質問
最後に、訪問介護の給料が安いと感じたときによくある質問をまとめました。
- 訪問介護に向いているか不安になったら?
- 登録ヘルパーで働く場合の給料は安い?
- 訪問介護で稼げない場合はどうすればいい?
給料が安いことが気になり、興味はあるのになかなか訪問介護員への一歩を踏み出せない人もいるでしょう。
しかし、事前に不安や疑問点を解消しておけば、スムーズに訪問介護員を目指せます。
それぞれ具体的に見ていきましょう。
Q1.訪問介護に向いているか不安になったら?
A.自分が訪問介護に向いているのか不安に感じてしまった場合には、やりがいや働きがいに着目してみてください。
やりがいを感じられたり、自分の目標があったりする場合、訪問介護の仕事が楽しく感じられるはずです。
やりがいや働きがいが不明瞭なまま働いても、利用者さんに質の高いサービスを提供できません。
向いていないかもしれないと感じたら、以下の記事を参考に、向いている人の特徴をチェックしてみてください。
>>訪問介護に向いている人の特徴について解説!
Q2.登録ヘルパーで働く場合の給料は安い?
A.登録ヘルパーは、個々のライフスタイルに合わせて働きたい時間を指定し、好きなときに働ける魅力がある仕事ですが、給料自体は高くありません。
以下にて、訪問介護員の正社員とパートタイマーの給料の平均をまとめました。
正社員 (月給・常勤の人) | パート (時給・非常勤の人) |
182,260円前後 | 時給1,110円前後 |
出典:令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要
※いずれも令和2年
※介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得(届出)している事業所における介護職員
移動時間に時給が支給されない事業所が多く、実際に求人に書かれている時給よりも少なくなるケースがあります。
ただし、事業所のなかには移動時間にもいくらか支給されるところがありますので、事業所を変えてみるのも1つの手です。
登録ヘルパーの給料アップ方法について、「>>登録ヘルパーはなぜ稼げないのか?給料アップの方法について紹介」にて解説しています。参考にしてみてはいかがでしょうか。
Q3.訪問介護で稼げない場合はどうすればいい?
A.訪問介護で稼げない場合には、以下のような解決法があります。
- 介護資格を取得する
- 複数の事業所に登録する
- 時給の高い事業所に絞る
- 介護福祉士を目指す
- サービス責任者になる
- 事業所を経営する
介護資格を取得すれば、資格手当が支給されるため毎月の給料アップにつながるでしょう。
さらに、時給が高く設定されている複数の事業所に登録すると、基本の時給を高くできます。
また、介護福祉士やサービス提供責任者になると、自分の時給そのものを根本から底上げできます。
事業所は150万円ほどで開業できるため、経営者になることでも給料があがるでしょう。
▼こちらの記事では「訪問ヘルパーの相場や給料を上げる方法」について解説しています。ぜひ参考にしてみてくださいね。
>>訪問ヘルパーは稼げるのか?相場や給料を上げる方法について
まとめ:訪問介護の給料が安い理由を理解して働き方を考えよう
訪問介護の給料が安いことは事実です。
しかしその理由を知り、働き方を考えることで、給料を上げられます。
「給料が安いらしい」というだけで介護の仕事を避けたり、介護の仕事を辞めたりしてはもったいないです。
訪問介護の給料は、処遇改善や介護報酬改定などによって給料が高くなっていくことが予想できます。
介護に興味があり、介護が好きな人は、やりがいが大きく楽しい訪問介護の仕事にぜひチャレンジしてみてください。