訪問介護の勉強会ネタ7選|面白いテーマで有意義な研修
「勉強会の企画を頼まれて困った」
「勉強会のネタがマンネリ化してきた」
このように勉強会に関して、頭を抱えている人は多いでしょう。
一般的に勉強会とは、「共通の目標や関心事を持つ人が定期的に集まり、議論して学ぶための会合」です。
訪問介護における勉強会は、ヘルパーとして利用者さんに質の高いサービスを提供するためにおこなわれます。
今回「みーつけあ」では、「訪問介護で使える勉強会のネタ7選」と「勉強会の内容がマンネリ化したときに使える面白いネタ」を紹介します。
ぜひ参考にしてください。
1.訪問介護で使える勉強会ネタ7選
勉強会の企画で最初に必要になるのが、ネタの選定です。
ここでは、訪問介護において知っておきたい基本的なスキルや技術をもとに、勉強会のネタを7つピックアップして紹介します。
- コミュニケーション
- 介護保険制度
- 認知症ケア
- 介護職員のストレスマネジメント
- 災害時の対応
- 感染対策
- オムツ交換・衣類の着脱介助について
最低限身につけておきたい知識と技術として解説するので、ぜひ勉強会のネタとして参考にしてください。
勉強会ネタ1.コミュニケーション
コミュニケーションのスキルは、利用者さんと信頼関係を形成するうえで大切です。
コミュニケーションのスキルがないと、スタッフ間や利用者さんとのトラブルを引き起こしてしまう原因にもなりかねません。
訪問介護におけるトラブルの原因は、以下のようなコミュニケーションエラーによるものが多いです。
- ホウレンソウ(報告・連絡・相談)で必要な情報が共有できていなかった
- ヘルパーの対応について家族からクレームがあった
- 認識の差からすれ違いが生じた
コミュニケーションをあらためて勉強する機会は少ないため、勉強会のネタとして設けることをおすすめします。
勉強会ネタ2.介護保険制度
介護保険制度を学ぶことで、自分たちが普段おこなっているサービスの流れについて、再度確認できます。
また、介護保険制度は3年に1度改定されるため、勉強会で都度確認すべきです。
介護保険制度の改定には、以下のような内容があります。
①地域包括ケアシステムの構築 | ②費用負担の公平化 |
高齢者が住み慣れた地域で生活を継続するために、以下の内容を拡充 ・介護 ・医療 ・生活支援 ・介護予防 | ・低所得者の保険料軽減を拡充 ・保険料上昇を抑えるために所得や資産のある人の負担を見直す |
訪問介護は、介護保険法で定められた法律のもと、利用者さんにサービスを提供します。
そして、サービスに対して、介護報酬を受け取る形で成り立っている形です。
介護保険法について理解を深めることは、訪問介護員が正しくサービス提供するための知識を身に付ける目的があります。
勉強会ネタ3.認知症ケア
認知症ケアは、訪問介護で役に立つ知識の1つです。
2025年には、国民の4人に1人が75歳以上の後期高齢者となり、日本は超高齢化社会に突入します。
超高齢化社会が進むことで問題となるのが、認知症患者の増加です。
厚生労働省が取り組む認知症施策には、以下のような内容が含まれます。
- 早期発見・早期対応の整備
- 医療体制の整備
- 認知症対応力向上の促進
- 介護の手法の普及
- 介護者の負担軽減 など
国の施策を確認するとともに、勉強会で認知症ケアの理解を深めましょう。
適切なケア方法を学べると、認知症を抱えた利用者さんの負担軽減につながります。
勉強会ネタ4.介護職員のストレスマネジメント
訪問介護の現場では、多くのスタッフがストレスを抱えている現状にあります。
厚生労働省の調査によると、以下の内容で不満をもつ訪問介護員が多いようです。
- 賃金
- 人事評価
- 教育・能力開発
ストレスを溜め込むと、サービスの質が低下する可能性もあります。
そのため、訪問介護員1人ひとりがストレスとうまく付き合って、適切な対処法を考えることが重要です。
広島県では、ストレスマネジメント支援として、以下のような内容を提示しています。
- 不適切なケアや高齢者虐待とストレス
- ストレスのしくみと対処法
- ストレスが生じやすい介護場面と対処法
- 組織としてのストレスマネジメント
- リーダーとしてのストレスマネジメント
実際の資料です。勉強会をおこなうときの参考にしてみてください。
ストレスマネジメントの勉強会は、仕事のモチベーションやクレーム減少につながるでしょう。
勉強会ネタ5.災害時の対応
災害時の対応は、日頃からシミュレーションする必要があります。
事業所のマニュアルとともに確認するとともに、勉強会のネタとして取り上げるのもよいでしょう。
勉強会では、以下のような内容で対応方法を話し合うのがおすすめです。
- 事前対策
- 応急期
- 復旧・復興期
災害の種類ごとにシミュレーションすると、いざというときにスムーズ対応できます。
また、マニュアルに不足している点に気付ければ、改訂にも役立てられるはずです。
勉強会ネタ6.感染症対策
訪問介護では、ウイルスや細菌による感染経路が限定されるため、責任も大きいです。
訪問介護員ごとに、「実施している感染症対策が適切であるか」を再確認するために勉強会として取り上げましょう。
新型コロナウイルスに限らず、インフルエンザやノロウイルスなど、さまざまな感染症予防のために知識が必要です。
たとえば、アルコール消毒を実施している場合、以下のウイルスには効果が薄いとされています。
- ロタウイルス
- ノロウイルス
参考:ロタウイルスに関するQ&A|厚生労働省
ノロウイルスに関するQ&A|厚生労働省
ウイルスによって対応が異なりますので、それぞれの感染症における対策を学習しましょう。
勉強会ネタ7.オムツ交換・衣類の着脱介助について
オムツ交換や衣類の着脱は、頻度が多いケアの1つです。
しかし、あらためて勉強する機会は、少ないのではないでしょうか。
そのため、基本に戻って勉強会をするのもおすすめです。
実際に、ヘルパーさん同士で体験すれば、介護を受ける側の気持ちを体験できます。
自分たちの手技を見直すきっかけにもなるでしょう。
実技を踏まえた勉強会は楽しく実施できるうえに、利用者さんの目線に立って体験できます。
2.訪問介護の面白い研修テーマ5選
ここでは、勉強会で取り上げられる機会の少ない、面白いテーマについて紹介します。
- 腰痛予防のエクササイズ
- クレーム事例と対処法
- ヒヤリハットと事故防止
- ヘルパーができる医療行為
- 高齢者の食事
取り上げるテーマは、サービスの質を向上させる目的と、ヘルパー自身の身を守るために大切な内容になっています。
ぜひ参考にしてください。
(1)腰痛予防のエクササイズ
腰痛予防のエクササイズは、訪問介護員に向けた勉強内容で設定しましょう。
勉強会で取り上げられるネタは、訪問介護員の悩みを取り上げる機会が少ないはずです。
厚生労働省が提示している腰痛予防のエクササイズでは、以下のような内容を紹介しています。
- 作業別腰痛予防対策のポイント
- 職場で簡単にできるストレッチング
- セルフチェックとからだづくり
ストレッチングとセルフチェックを適切におこなえると、訪問介護員の働きやすさが向上するでしょう。
訪問介護員のモチベーション維持や労働災害を減らすために、腰痛予防も勉強会で取り上げてみてください。
(2)クレームの事例と対処法
利用者さん宅を訪問する訪問介護では、クレームの対処法に困ってしまったことがあるでしょう。
人対人で成り立つ訪問介護サービスでは、サービスに対する苦情やクレームがつきものです。
すぐに上司を呼べる環境でないことが多いため、適切に判断しなければいけません。
実際にあったクレームの事例を参考にしながら、適切な対処法の勉強会を行うことでいざというときに役に立ちます。
▼以下の記事では、実際のクレームの事例とともに対処法について解説していますので参考にしてみてください。
>>訪問介護の苦情事例を確認してトラブルを避けよう
(3)ヒヤリハットと事故防止
重大な事故を防ぐためには、実際に起こったヒヤリハット事例の共有が大切です。
実際のヒヤリハット事例を提示して、どのような対策をすべきか意見交換できれば、事故防止に繋がります。
労働災害における経験則の1つに、ハインリッヒの法則があります。
ハインリッヒの法則とは、重大な事故が1件起こったときに、以下の危険要因が存在しているという内容です。
- 29件の軽傷事故
- 300件の傷害のない事故(ヒヤリハット)
自分達で考え、意見交換の場を設けることで、さまざまな視点から事故防止について気付くきっかけにもなります。
勉強会を通して、ヘルパー1人ひとりがヒヤリハットを意識してサービスを提供できれば、サービスの質の向上につながります。
(4)ヘルパーができる医療行為
医療行為と介護ケアの際どいラインについて、実際に現場で悩む訪問介護員は多いです。
厚生労働省は、2005年7月に一部の行為を医療行為から除外すると発表しました。
・水銀体温計・電子体温計により腋下で体温を計測すること、及び耳式電子体温計 により外耳道で体温を測定すること
・自動血圧測定器により血圧を測定すること
・新生児以外の者であって入院治療の必要がないものに対して、動脈血酸素飽和度 を測定するため、パルスオキシメータを装着すること
・軽微な切り傷、擦り傷、やけど等について、専門的な判断や技術を必要としない 処置をすること(汚物で汚れたガーゼの交換を含む。)
・5患者の状態が以下の3条件を満たしていることを医師、歯科医師又は看護職員が 確認し、これらの免許を有しない者による医薬品の使用の介助ができることを本人 又は家族に伝えている場合に、事前の本人又は家族の具体的な依頼に基づき、医師 の処方を受け、あらかじめ薬袋等により患者ごとに区分し授与された医薬品につい て、医師又は歯科医師の処方及び薬剤師の服薬指導の上、看護職員の保健指導・助 言を遵守した医薬品の使用を介助すること。具体的には、皮膚への軟膏の塗布(褥 瘡の処置を除く。)、皮膚への湿布の貼付、点眼薬の点眼、一包化された内用薬の内 服(舌下錠の使用も含む)、肛門からの坐薬挿入又は鼻腔粘膜への薬剤噴霧を介助 すること。
1 患者が入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること
2 副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師又は看護職員による連続的な容
態の経過観察が必要である場合ではないこと
3 内用薬については誤嚥の可能性、坐薬については肛門からの出血の可能性など、
当該医薬品の使用の方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではない
こと
昔と比べて介護者ができることは増えていますが、医療行為との線引きが難しくなってきているのも事実です。
医療行為との際どいラインについてクイズ形式で勉強会を行うと、楽しく理解を深めていけるでしょう。
(5)高齢者の食事
訪問介護では、食事に関する生活援助もサービスとして提供する機会も多いです。
勉強会の内容として、利用者さんの摂食嚥下機能を再確認してみましょう。
厚生労働省は、75歳以上の人が肺炎になる原因として、7割以上が誤嚥性肺炎であるというデータを発表しています。
そのため、利用者さんの状態に応じた食事形態で、食事を準備する必要があります。
たとえば、水分は流動性が高いため、誤嚥のリスクが高いです。
利用者さんの状態に合わせて、とろみを付けるといった対策が必要です。
勉強会では、実習形式で「食事形態に合わせた調理方法」を設定してみましょう。
3.訪問介護事業における勉強会の役割とは?
訪問介護における勉強会は、ヘルパーとして利用者さんに質の高いサービスを提供するためにおこなわれるものです。
勉強会を実施することで、ヘルパーの介護知識の共有と均一化につながります。
また、勉強会は、ヘルパーのモチベーション維持にも有効です。
現代社会で、介護職員の人手不足は深刻な問題です。
厚生労働省によると、介護労働者の就業形態は、非正規職員に大きく依存しています。
訪問介護は非常勤職員の割合が全体の8割と、常勤職員に比べて大きいです。
しかし、離職率は、非常勤の職員より常勤職員のほうが高いというデータがあります。
定期的に開催する勉強会の役割は、離職率が高い常勤職員に、新たな学びや不満の共有の場を作ることにもつながります。
訪問介護で使える勉強会のネタに関するQ&A
最後に、訪問介護の勉強会でよくある質問について、3つ紹介します。
- 訪問介護では勉強会の資料はどのように作成する?
- 勉強会のネタが尽きたら?
- 訪問介護のスキルアップ研修は参加すべき?
勉強会を企画する場面で資料の作り方で、悩む場面はないでしょうか。
ネタが尽きたときの対処法やスキルアップ研修についても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
Q1.訪問介護では勉強会の資料はどのように作成する?
A. 勉強会の資料作成では、パワーポイントを使用する場合が多いです。
パワーポイントで作成すると、ボリュームが大きくても、職員が見やすくておすすめです。
しかし、無理してパワーポイントを作成する必要はありません。
紙の資料でも、内容が伝わり、参加者が楽しめる工夫があれば大丈夫です。
Q2.勉強会のネタが尽きたら?
A. 日々の事例や報告から研修すべき内容を考えてみましょう。
また、同じネタを定期的に行うのもよいでしょう。
勉強会を実施しても、月日の経過とともに忘れてしまうこともあります。
また、ヘルパーの入れ替わりがあると、「勉強会を受けていない」という人も出てくるため、同じネタでも定期的な実施をおすすめします。
勉強会を目的にするのではなく、ヘルパーのモチベーション維持やサービスの向上を念頭においた実施を心がけましょう。
Q3.訪問介護のスキルアップ研修は参加すべき?
A.新しい知識や技術を獲得するために、参加すべきです。
受講した研修内容を、スタッフに伝達すれば、従業員全体で知識を共有できます。
地域によって、実施しているスキルアップ研修の内容や日程は異なります。
ホームページで検索したり、上司に確認したり、といったアクションをおこしてみましょう。
まとめ:知識獲得からサービスの質向上につなげよう
勉強会は、テーマごとにそれぞれの狙いや目的を設定してください。
また、「勉強会をおこなった結果どうなって欲しいのか」までしっかりと考えて実施しましょう。
有意義な勉強会は、介護知識の共有と均一化から、サービスの質を向上させる働きがあります。
サービスの質が向上すると、利用者さんから嬉しい声も聞こえてくるはずです。
利用者さんからのあたたかい言葉は、ヘルパーのモチベーション維持にもつながります。
ぜひ、今回紹介したネタを参考に勉強会を実施してみてください。