訪問介護は無資格で罰則がある?例外や今後の働き方を解説
「資格なしでヘルパーとして働いていたら罰則があるの?」
「無資格OKの求人に応募しても大丈夫?」
このように、訪問介護員の資格に関する罰則についてお悩みですね。
訪問介護で働く条件の1つが、介護職員初任者研修といった資格を保有していることです。
そのため、条件に違反した場合、訪問介護を提供する事業所に罰則が課される可能性があります。
今回「みーつけあ」では、無資格で働いた場合の罰則について解説します。
罰則がない例外や資格取得に向けての働き方も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
1.訪問介護で無資格のまま働くと罰則はある?
無資格で訪問介護員として働くことは、処罰の対象となります。
介護保険法で、訪問介護員の資格を以下のように定めているためです。
令第三条第一項第一号イ及びロに掲げる研修(以下この条から第二十二条の二十九までに置いて「研修」という。)の課程は、介護職員初任者研修課程及び生活援助従事者研修課程とする。
より詳しく無資格の罰則について知るために、以下の内容を確認してください。
- 訪問介護の身体介護は資格が必須
- 訪問介護事業所の指定取り消し事例がある
それぞれの内容を解説します。
(1)訪問介護の身体介護は資格が必須
訪問介護では、身体介護に資格が必須とされています。
身体介護と生活援助の違いを、以下の表で確認しましょう。
身体介護 | 生活援助 |
利用者の身体に直接接触して行われるサービス ・食事介助 ・排泄介助 ・入浴介助 ・体位変換 ・更衣介助 ・清拭介助 など | 日常生活の援助であり本人の代行的に行われるサービス ・買い物 ・爪切り ・調理 ・掃除・整理整頓 ・洗濯・アイロンがけ ・ゴミ出し など |
身体介護は、利用者さんの体に触れて行う内容です。
そのため、正しい知識をもっていないと、利用者さんの安全を確保できません。
無資格者が身体介護を提供した場合、介護保険法 第二十二条の二十三に違反します。
無資格で介護サービスを提供していることが判明した場合、事業所が指定の取り消しや効力の停止処分を受ける可能性が高いです。
処分を受けると、事業者は介護保険給付を受ける介護事業を禁止されます。
(2)訪問介護事業所の指定取り消し事例がある
実例として、無資格者が介護サービスを提供したことで、指定取り消しを受けた事業所もあります。
青森県の例では、無資格者が訪問介護サービスを提供して介護報酬を請求した事業所がありました。
無資格による訪問介護を正当化する目的で、サービス提供記録を改ざんして、提供記録と、架空請求用のダミーを作成したことが発覚しています。
不正に介護報酬を受け取ったことで、「指定効力全部停止処分」を受けました。
指定効力全部停止処分は、介護保険法第七十七条による罰則で、該当地域の都道府県知事によって与えられる重い処分です。
処分を受けると、定められた期間の介護事業を禁止されます。
営業ができない状態になるため、利用者さんにも迷惑をかけてしまうでしょう。
2.訪問介護で無資格でも違法にならないケース
厚生労働省の提示条件に当てはまる場合、無資格で働いても違法にならないケースがあります。
たとえば、厚生労働省は2020年2月に、新型コロナウイルスによる臨時的な取り扱いを提示しました。
内容は、人材を十分に確保できない場合、無資格者でも介護サービスを可能とするといったものです。
条件として、以下の内容が定められています。
- 介護施設で高齢者への介護サービス提供に従事したことがある人
- 利用者へのサービス提供に支障がないと認められた人
このように、厚生労働省が提示した条件を満たすと、無資格でも訪問介護サービスを提供できる場合があります。
しかし、あくまでも一時的な措置であり、いずれは資格が必要になることを頭に入れておいてください。
3.介護職は今後無資格で働けなくなる?
訪問介護を無資格で提供したときの罰則について調べていると、「今後は働けなくなる」といった情報を見かけることもあるはずです。
厚生労働省は、2021年度の介護報酬改定で、現場で働くすべての職員に対して「認知症介護基礎研修」を義務付けると発表しました。
経過措置期間を3年間として、以下の内容を提示しています。
- 2023年度までは努力義務
- 2024年度以降は研修受講の義務化
新入社員の受講についても、1年間の猶予期間を設けるとのことです。
そのため、研修を受けていない無資格の介護職員はいなくなります。
認知症介護基礎研修のカリキュラムは、全6時間です。
eラーニングに対応しているため、自宅や事業所で受講できます。
受講内容は、以下の2科目で構成されています。
- 講義を主体とした「認知症の人の理解と対応の基本」
- 演習を主体とした「認知症ケアの実践状の留意点」
働きながら資格取得できる制度を設けている事業所もあるので、研修受講について問い合わせてみるとよいでしょう。
介護業界における人手不足問題
高齢化における問題の1つが、介護業界の人手不足です。
厚生労働省の調査によると、日本は2007年に高齢化率21%を超え、超高齢化社会に突入しています。
総人口の約5%を占める団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる、2025年問題も深刻です。
介護が必要な高齢者は年々増えており、業界の人手不足は改善の兆しが見えない状況が続いています。
そのため、介護に携わる人材は、貴重な存在です。
ぜひ資格を取得して、訪問介護業界を支える担い手として働きましょう。
▼訪問介護の人手不足に関しては、以下の記事をご参考ください。
>>介護ヘルパー不足の現状は?【人手不足の理由や対策を徹底解説】
訪問介護と無資格・罰則に関するQ&A
ここでは、訪問介護と無資格・罰則に関連する疑問を3つ紹介します。
- 訪問介護で無資格OKの求人はなぜあるの?
- 社会福祉士が訪問介護をすると罰則がある?
- 訪問介護職員に必要な資格は?
介護に関連する資格はたくさんあり、どれが必要なのか分からないといった疑問を抱く人が多いでしょう。
それぞれ具体的に解説しますので、参考にしてみてください。
Q1.訪問介護で無資格OKの求人はなぜあるの?
A.有資格者の指導を受けることで、無資格でもサービスを提供できるためです。
無資格OKの求人の場合は、訪問介護と併設して施設介護を運営している場合が多いです。
働きながら資格取得できるよう支援する事業所もあり、実践しながら学習できます。
Q2.社会福祉士が訪問介護をすると罰則がある?
A.社会福祉士は、介護保険法で制定された資格ではないため、罰則があります。
訪問介護で必要な介護職員初任者研修と、社会福祉士の資格はまったくの別物です。
社会福祉士は、「社会福祉士及び介護福祉法」にもとづく国家資格であるため、介護保険法とは規定が異なります。
社会福祉士が訪問介護の現場で働きたい場合は、介護職員初任者研修の修了が必要です。
Q3.訪問介護職員に必要な資格は?
A.訪問介護員になるためには、以下のような資格が必要です。
- 生活援助従事者研修
- 介護職員初任者研修
- 介護福祉士実務者研修
- 介護福祉士
生活援助従事者研修は、2018年4月に新設された生活援助のみ行える資格です。
59時間のカリキュラムであるため、介護職員初任者研修と比較して、短い時間で資格を取得できます。
初任者研修は、130時間のカリキュラムで、身体介護と生活援助を学べます。
介護職員初任者研修を修了した後には、介護福祉士実務者研修や介護福祉士を取得するとキャリアアップにつながるでしょう。
▼介護職員初任者研修の具体的なカリキュラム内容は、以下の記事で紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
>>訪問介護員の資格の種類について|取り方・資格手当・仕事内容を紹介
まとめ:自分に合った方法で資格取得を目指そう
今回「みーつけあ」では、訪問介護で無資格のまま働いた場合の、罰則について解説しました。
無資格での訪問介護は、事業所の指定取り消しといった重い処分が下されます。
そのため、訪問介護員として働くためには、介護職員初任者研修や生活援助従事者研修を修了しなければいけません。
超高齢化社会の現代において、介護事業に携わる人材はとても貴重な存在です。
自分に合った方法で資格を取得して、訪問介護の現場で活躍してください。