訪問介護で物をもらってもいい?対応方法と事例別Q&Aを紹介
「利用者さんから物やお金を渡されそうになって困っている。」
「物やお金をもらいそうになった際に相手を傷つけない断り方を知りたい。」
このようなお悩みをお持ちの人は多いのではないでしょうか。
ヘルパーの仕事で物やお金をもらうことは、悪いことと思いつつも、利用者さんの感謝や親しみの気持ちは分かるので、つい受け取ってしまいそうになりますよね。
今回「みーつけあ」では、利用者さんから物を渡されそうになったときに受け取ってもいいのかについて、詳しくご紹介します。
この記事を参考に、利用者さんを傷つけない言葉遣いを知り、上手にお断りする方法を身に付けましょう。
1.訪問介護で利用者から物をもらってもいい?
利用者さんから物やお金を受け取ることは、基本的にNGです。
利用者さんから物やお金を受け取ることは、ヘルパーが事業所と結ぶ就業規定や倫理規定、介護保険法で禁止されています。
また、事業所と利用者さんの間で交わした契約書でも禁止されていることが多いでしょう。
ヘルパーとしてサービスを提供するなかで、利用者さんがちょっとした物を差し出してくることはありますよね。
たとえば、入浴介助のあとに冷たい飲みものを出されたり、排泄介助に時間がかかったときにお菓子を出されたりします。
この場合、「ちょっとした飲み物やお菓子のようなものくらいならいいのでは」と思ってしまうかもしれません。断るのは、利用者さんに悪い気がする人もいるのではないでしょうか。
しかし、この場合でも、ヘルパーは規則として物を受け取ることはできません。お菓子や飲み物でも受け取ってしまえば、リスクがあることを理解しておきましょう。
2.訪問介護でものをもらう際に考えられるリスク
利用者さんが物を渡してくるときに、決まりを知っていながら、自らすすんで物を受け取っている人もいるかもしれません。
しかし、ちょっとした物でも受け取ってしまうと結果的に致命的なトラブルになってしまう可能性があります。
以下は、訪問介護で物をもらった際に考えられるリスクです。
- ほかのヘルパーとのトラブルになる
- 利用者さんとのプライベートが曖昧になる
- 過剰な期待をもたれてしまう
それぞれ詳細を確認しましょう。
リスク1.ほかのヘルパーとのトラブルになる
物をもらってしまうと、利用者さんへの対応で他のヘルパーとトラブルになる事があります。
たとえば、1人の利用者さんに、2人のヘルパーが担当しているとします。
1人のヘルパーが利用者さんから物をもらった場合、普段から断っているもう1人のヘルパーは利用者さんから「融通の利かない人だ」、「好意を無駄にするやつ」のようなレッテルを貼られてしまうかもしれません。
そうなると、利用者との関係が悪くなってしまうばかりか、ヘルパー同士の関係に不和が生じてしまうのです。
ヘルパーの間で認識に齟齬があるとトラブルの原因になってしまいます。余計な誤解を招かないためにもルールは守りましょう。
リスク2.利用者さんとのプライベートが曖昧になる
利用者さんから物をもらうと、プライベートと仕事の境界線が曖昧になる可能性があります。
物をもらったことがきっかけで、ヘルパーと利用者さんとの距離が近くなると、プライベートにまで介入する事態になりかねません。プライベートにまで利用者との関係を持ち込むと、思わぬトラブルに発展してしまうことがあります。
以下の事例は、実際にあったトラブルです。
- 利用者さんが1人のヘルパーだけを優遇するようになってしまった
- ヘルパーが利用者から金品を受け取った
- ヘルパーが利用者に商品を売りつけた
- お気に入りのヘルパーさんに遺産をあげたいと言い出してしまった
このほかにも、明らかに規約違反なトラブルは数多くあります。
社会とのつながりの少ない利用者さんが、ヘルパーを心の拠り所とする気持ちも理解できるので、全てを否定するのも心苦しいのは事実です。
しかし、ヘルパーは生活と身体の援助が目的です。仕事とプライベートの境界線を保つように心がけましょう。
リスク3.過剰な期待をもたれてしまう
物をもらうと利用者さんから過剰な期待をもたれてしまう点もリスクの1つです。
一人暮らしの利用者さんが、お世話になっているからと、ヘルパーに物をあげたくなる気持ちはよく分かります。
しかし、物を受け取ってしまうと、お仕事の際に利用者さんが「あれだけ物をあげたのだから、もっとよいサービスをしてくれるはずだ」と勘違いしてしまう人もいるのです。
そうなれば、通常の業務を逸脱した、過剰なサービスを期待されてしまいます。もしも過度な期待を持たれ続ければ、普通に業務をおこなうだけでは満足できない利用者さんもいるでしょう。
利用者さんに変な勘違いをされないようにするという意味でも、物を受け取ってはいけないのです。
3.訪問介護で物をもらうのを断る方法を紹介
利用者さんから物をもらってはいけませんが、断り方にも気をつける必要があります。
断る際には、以下の3点に細心の注意を払わなければなりません。
- 利用者さんの気持ちを無駄にしない言葉選び
- 事業所の考えを知ってもらう
- 事業所や上司に対応してもらうようにする。
それぞれ詳細について解説します。
方法1.利用者さんの気持ちを無駄にしない言葉選びをする
利用者さんやご家族からの申し出に対して「受け取れません」、「決まりなので」と断ってしまうと相手の気持ちを傷つけてしまう可能性があります。
断ったことで利用者さんが落ち込んでしまうと、ヘルパーからしても嫌な気持ちになりますよね。
断る際には、以下のような言葉を添えるだけでも相手の印象が変わります。
- お気遣いありがとうございます
- お気持ちとてもうれしいです
- お気持ちだけいただきます
ポイントは、お礼の気持ちを相手に伝えることです。物は受け取れないけれど、気持ちはしっかりと伝わっていることを、言葉に出すようにしましょう。
方法2.事業所の考えを事前に知ってもらう
利用者さんやその家族が、ヘルパーに物をあげてはいけないという規約を知らないケースがあります。この場合はルールを知っていただくだけで、簡単にトラブルを回避できますよ。
ただし、高齢の利用者さんが規約を隅々まで読むのは大変なので、その都度お伝えするとよいでしょう。
方法3.事業所や上司に対応してもらう
どうしても断り切れずに物をもらいそうになった場合、事業所や上司に報告して、対応してもらうことをおすすめします。
自分の代わりに上司に説明してもらうだけでも、ヘルパーが断るよりも利用者さんに納得してもらえる可能性が高まるでしょう。また、組織的な対応をする事業所だと、相手に好印象を与えるかもしれません。
事業所から立場を明確にすることで、ヘルパーと利用者の関係が円滑になることもあるので、物をもらう対応に困っている場合は、事業所に相談してみましょう。
4.訪問介護で物をもらってしまった際の対応方法
もしも、利用者さんに物をもらってしまったなら、事業所に「報告・連絡・相談」をしてください。
物をもらったことを報告したあとの対応は、事業所に任せましょう。
そして、何か物を受け取ってしまったあとに訪問する際は、その話題に触れないようにするのが得策です。すでに解決したことを、わざわざ話を蒸し返すようなことをする必要はありません。
利用者さんの気持ちに配慮して普段と変わらない態度で接しましょう。
▼さまざまなシチュエーションでの断り方については、以下の記事が参考になります。
訪問ヘルパーがやってはいけないこと|Q&Aや断り方を紹介
5.訪問介護で物をもらうことに関するQ&A
訪問介護で物をもらってはいけませんが、訪問介護の仕事をしていて「こういう場合はどうすればよいのだろう」と判断に迷ってしまうこともあるのではないでしょうか。
ここでは、以下の疑問に回答していきます。
- 利用者さんへプレゼントしてもよいのか
- 訪問介護で買い物をする際に買ってもよいもの
- 利用者さんとプライベートで付き合いをしてもよいのか
自分がその場面に遭遇したらと想像しながら、今後の参考にしてください。
Q1.利用者さんへプレゼントするのはよい?
A.ヘルパーから利用者さんにプレゼントをするのは問題ないと思われるかもしれませんが、これもよくないことです。
なぜなら、プレゼントの内容によっては、健康に影響が出てしまう場合があるからです。
たとえば、食べ物をプレゼントした場合、あげたものが原因で食中毒やアレルギーが発生する可能性があります。場合によっては命に関わる問題になってしまうのです。
トラブルを避けるためにも、利用者さんへプレゼントをするのは控えましょう。
▼プレゼントに関しては、以下の記事も参考になります。
>>訪問介護でプレゼントは受け取れる?利用者さんから物をもらった場合の対処法
Q2.訪問介護で買い物をする際に買ってもよいものは?
A.訪問介護での買い物は、生活に必要な物以外は買ってはいけません。
日常の生活に必要な物は以下の物が挙げられます。
- 食料
- トイレットペーパーや洗剤などの消耗品
- 趣向品以外の飲み物
日常生活に必要な物のなかには食料が含まれますが、訪問介護で買ってもよい食料は、お米やおかずなどの食事に必要な物に限られます。必要以上のお菓子は含まれません。
趣向品以外の飲み物とは、牛乳や乳酸菌飲料など健康によいとされる飲み物に限られます。お酒やジュースなどは趣向品に含まれ、生活する上で必要なものではないので買ってはいけません。
そのほかに、生活必需品の購入は場合によっては認められています。たとえば、コップが割れてしまい補充する必要がある、蛍光灯が切れて購入するなどの場合は、購入しても問題ありません。
▼買い物代行に関しては、以下の記事をご参考ください。
>>訪問介護の買い物代行で対応できる範囲に関するQ&A
Q3.訪問介護で知り合った利用者さんとプライベートで付き合いをしてもよい?
A.訪問介護で知り合った利用者さんとプライベートの付き合いをしてはいけません。
近所付き合いの少ない一人暮らしの利用者さんは、ついヘルパーにあれこれ話をしたくなってしまいがちです。ヘルパーも、お話をしていくうちに利用者さんに親近感を持つようになり、深くお付き合いをしたくなってしまう場合がありますよね。
しかし、ヘルパーと利用者さんが親密になると、銀行に支払いに行ってきてほしいなど、ケアプランにはないお願いをされやすくなります。
もちろん、利用者さんとの距離が近くなり仲良くなるのはよいことですが、お仕事とプライベートはしっかりと分けて考えることが大切です。
まとめ:訪問介護では、物をもらった場合は丁重に断ろう
本記事では、訪問介護の際に物をもらうのはよいかについて解説しました。
利用者さんから安易に物を受け取ると、トラブルに巻き込まれてしまう可能性があります。そのため、ちょっとした物でも受け取るのは避けましょう。
もし、利用者さんから物をもらいそうになったときは、気持ちだけをありがたく頂戴しつつ、事業所として受け取れないことを伝えましょう。その際には、感謝の言葉を添えることが大切です。
この記事を参考に、利用者さんとの適切な距離感を保ち、よりよい仕事につなげてください。