訪問介護の服薬介助について解説!医療行為とのボーダーラインとは?
「訪問介護の際に服薬介助をするのが不安」
「訪問介護の服薬介助は医療行為に該当しないか知りたい」
このようなお考えをお持ちではないでしょうか。
服薬介助をする場合は、どこまでが医療行為に該当しない行為なのか判断しづらいことがありますよね。
今回「みーつけあ」では、訪問介護ヘルパーが服薬介助をする際の進め方や注意点について解説していきます。
訪問介護の仕事内容を理解して、判断ミスが無いように介護の仕事を進めましょう。
1.訪問介護の服薬介助はどこまでしてもよい?
訪問介護をする際に、服薬介助が必要になる場合があります。
しかし、服薬介助は医療行為に該当する場合があるため、どこまでが服薬介助に該当するか注意しなければ思わぬ事故を引き起こしてしまうかもしれません。
服薬介助は医療行為に該当するのか、服薬介助の業務範囲はどこまでなのかについて確認しましょう。
服薬介助は医療行為に該当する場合がある
服薬介助は医療行為に該当する場合があるため、訪問介護ヘルパーがどこまで介助できるか注意する必要があります。
一包化された内服薬を飲むことをサポートすることは訪問介護ヘルパーがおこなえる服薬介助の範囲内です。しかし、パッケージから薬を取り出すことは医療行為として服薬介助の範囲外となります。
訪問介護ヘルパーは医療従事者ではないため、医療行為に該当する服薬介助はおこなえません。医療行為に該当する服薬介助とは、医療的な判断が必要になるケースが挙げられます。
自分の行為が医療行為に該当するのか判断できない場合は、介護事業所に必ず確認を取るようにしましょう。
訪問介護における服薬介助の業務範囲
訪問介護における服薬介助の業務範囲は医療行為に該当しない服薬介助に限られます。
訪問介護ヘルパーにとって、服薬介助は薬の準備や服薬の声がけなど、サービス利用者が自主的に服薬をすることを介助することが役割です。
訪問介護で服薬介助をしてはいけないケース
訪問介護で服薬介助をしてはいけないケースとして、以下が挙げられます。
- 高齢者の容態が安定していない場合
- 服薬による副作用を医師や看護師が経過観察しなければならない場合
- 誤嚥のリスクがあり、医療的な知識が必要になる場合
これらのケースは医療行為に該当するため、訪問介護ヘルパーが服薬介助をしてはいけません。医師や看護師の対応が必要です。
▼医療行為については、以下の記事をご参考ください。
>>介護ヘルパーの医療行為は禁止?実態やできること・できないことについて
2.訪問介護における服薬介助の進め方
訪問介護の服薬介助は以下の手順で進めていきます。
- 服薬のタイミングを確認する
- 白湯と薬を用意する
- 利用者に内服薬を渡す
- 飲み込めたかを確認する
服薬介助においては、誤って薬を服用することがないように注意しなければなりません。
薬を一包化してもらうなど、服薬管理をしっかりして服薬に関する事故を起こさないようにしましょう。
また、誤嚥を防止するためにマニュアル管理をしておくのも重要です。具体的な手順について内容を確認していきます。
1.服薬のタイミングを確認する
内服薬には飲むべきタイミングが決められているため、服薬のタイミングを確認しましょう。
薬を飲むタイミングとして、主に以下が挙げられます。
- 起床時
- 食前
- 食後
- 睡眠前
服薬のタイミングは医師によって定められているため、しっかりと確認して間違いなく服薬しましょう。
2.白湯と薬を用意する
服薬の時間になったら冷ました白湯や水と薬を用意しましょう。
サービス利用者が失念していることも考えられるため、訪問介護ヘルパーがしっかり管理して声がけをする必要があります。
3.利用者に内服薬を渡す
訪問介護ヘルパーは本人が薬を飲むのを手伝います。
サービス利用者が自分で飲むことが難しい場合、同意を得てから口に入れるまで介助しましょう。
4.飲み込めたかを確認する
介護士はサービス利用者がしっかり所定の薬を飲み込めたかを確認します。
服薬を確認したら、チェックリストに記入するなど書面に記録を残しましょう。
厚生労働省のガイドラインによると、訪問介護における服薬介助の手順は以下のようになります。
1-5 服薬介助
○水の準備→配剤された薬をテーブルの上に出し、確認(飲み忘れないようにする)→本人が薬を飲むのを手伝う→後かたづけ、確認
引用:「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について|厚生労働省
こういったガイドラインやマニュアルを参考にしながら服薬介助の仕事を進めてください。
3.訪問介護で服薬介助する際の注意点を解説
訪問介護で服薬介助する際は、以下の点に注意してください。
- 薬を服用する際の姿勢
- 薬を飲む際の水分の種類
- 服用する薬の種類
- 服用後の容態の変化
- 服薬介助の記録を残す
服薬介助は一歩間違えると事故に繋がる恐れがあるため、訪問介護ヘルパーがしっかりと確認する必要があります。
ここで紹介する注意点を理解しておくようにしましょう。
注意点1.薬を服用する際の姿勢
薬を飲む際は、なるべく体を起こして服薬するようにしましょう。
寝たままの姿勢だと、上手く薬を飲み込めなかったり、むせる可能性があります。
体を起こすのが難しい場合は、頭を持ち上げたり体を横向きにしたりすることで薬を飲みやすくしましょう。
注意点2.薬を飲む際の水分の種類
薬を飲む際の水分には水や白湯を冷ましたものがよいでしょう。
どうしても水で飲めないという場合は、カフェイン量の少ない麦茶や玄米茶で服用します。
カフェイン量の多い緑茶やジュースで飲むことがないように注意してください。
注意点3.服用する薬の種類
薬を服用する際は、間違いなく飲む予定の薬であることを確認しましょう。
また、薬の種類によっては錠剤やカプセルなどつかみにくく落としてしまい、失くしてしまうこともあります。
サービス利用者が誤って紛失してしまわないように、テーブルにタオルを敷き薬が転がらないようにしたり、ふちのあるお盆を利用したりするなど工夫して服薬を介助してください。
注意点4.服用後の容態の変化
薬の服用後に容態の変化がないかどうか、体調管理に注意しましょう。
もし、容態に変化がある場合は、医師や看護師などに薬の種類や服用したタイミングを伝える必要があります。
注意点5.服薬介助の記録を残す
薬を服用したら、書面などに記録を残してください。記録を残すことで、正確に薬を飲んだことを確認できます。
また、薬の数を管理することで飲み忘れの防止にもつながるでしょう。
4.訪問介護で服薬を拒否された際の対応方法
訪問介護では、利用者さんに服薬を拒否されてしまう場合もあります。
服薬を拒否された場合には、以下の対応方法をとりましょう。
- 薬の効能を説明する
- 医師指導のもと食べ物と一緒に内服する
- 薬の味を変える
服薬を拒否される場合は、自分は病気ではないといった思い込みが原因になることや薬の味が好みではないことが多いです。
利用者と話し合い、服薬が必要であることを理解してもらったり、薬の味を変えたりするなどの方法が有効です。それぞれ具体的に内容を確認していきましょう。
対応方法1.薬の効能を説明する
服薬を拒否された場合は、服薬が必要であることを理解してもらうための話し合いをしましょう。
服用を拒否する理由を聞いて共感したり、薬の効能を説明したりすることで、自分に服薬が必要な理由を理解してもらうことが大切です。
対応方法2.医師指導のもと食べ物と一緒に内服する
薬を飲むこと自体に抵抗があるという場合は、食べ物と一緒に内服することも考えましょう。食べ物に混ぜることで、違和感なく服薬してもらえます。
ただし、組み合わせによっては服薬の効果に影響を与えることもありますので、医師に指導を仰ぐようにしましょう。
対応方法3.薬の味を変える
薬の味が苦手だという場合は、薬の味を変えることも有効です。
たとえば、錠剤や粉薬が苦手だという場合は、味を感じないようにカプセルやシロップなどに変更することで服薬を受け入れてもらえる場合があります。
薬を飲みやすくなるように味を工夫できるかどうか、医師とも相談してみましょう。
5.訪問介護の服薬介助のQ&A
訪問介護で服薬介助をする際、イレギュラーなことが起こったり、判断に迷ったりしたときにどのように対応すれば困ることもあるでしょう。
よくある疑問として挙げられるものは以下のとおりです。
- 医療行為が必要な場合はどうする?
- 服薬管理と服薬介助の違いは?
- 服薬介助を円滑に進めるために工夫すべきポイントは?
- 訪問介護の服薬で事故が起こったらどうすればいい?
介護の現場では1つの判断ミスが不測の事態を招いてしまいます。
不測の事態が起こった際は、自分だけで解決しようとせず、医師や看護師、ケアマネージャーと相談するようにしましょう。
Q1.医療行為が必要な場合はどうする
A. 訪問介護ヘルパーは医療従事者には該当しないため、単独では医療行為をおこなえません。
自己判断で医療行為をしてしまった場合、医療行為違反として処罰される場合があります。
医療行為が必要な場合、あるいは医療行為であるか迷った場合は必ず医師や看護師に相談しましょう。
Q2.服薬管理と服薬介助の違いは
A. 服薬管理は、きちんと規定量の服薬ができるように管理することです。
薬を飲むタイミングや薬の種類、用法や用量などを管理して、飲み間違いや飲み忘れをしないよう注意します。
一方、服薬介助は薬を飲めるように介助することです。薬や水を渡したり服薬しやすいように体を起こしたりといった医療行為に該当しないものに限られます。
Q3.服薬介助を円滑に進めるために工夫すべきポイントは?
A. 服薬介助を円滑に進めるためには、効率的に服薬を管理することが必要です。
たとえば、おくすりカレンダーやおくすり管理箱を作成して1日に必要な薬の量を管理することで、見た目でわかりやすい効率的な服薬管理につなげられます。
サービス利用者が服薬量を忘れてしまったという場合でも、これらのアイテムを見せてあげることで服薬量を理解してもらえるでしょう。
Q4.訪問介護の服薬で事故が起こったらどうすればいい?
A. まずは、医師や看護師、ケアマネージャーへ連絡をしましょう。適切な指示を仰いで対応をします。
訪問介護の服薬で事故が起こった際には、事故の経緯を説明できるように服薬管理の記録を見せることが重要です。
服薬による事故かどうか、服薬の量とタイミングを管理することが求められます。常に服薬介助の記録を残しておくことが大切です。
まとめ:訪問介護の服薬介助は医療行為とのボーダーラインに注意
本記事では、訪問介護の服薬介助について解説しました。
訪問介護ヘルパーは医療行為ができないため、服薬介助をする際は医療行為にならないように気を付けなければなりません。
不測の事態が起こった際は1人で解決しようとせず、医師や看護師、ケアマネージャーに相談するようにしましょう。
サービス利用者が決められた服薬ができるよう適切に服薬の介助をしていきましょう。