業務中のケガは労働災害?登録ヘルパーは休業補償が支給されるのか徹底解説!
「業務中のケガって労働災害と認められる?」
「休んだら収入はゼロになるのかな…」
「休業手当っていくら支給されるの?」
1人で訪問介護をこなす登録ヘルパーは、常に利用者様のために動きっぱなしです。
そのため、思わぬケガや事故が起きることも珍しくはありません。
ケガにより休業を余儀なくされた場合、休業補償は支給されるのでしょうか。
今回「みーつけあ」では、委託契約の多い登録ヘルパーに休業補償が支給されるかどうかを詳しく解説します。
労働災害のこと?休業補償とはなにか
引用:https://www.photo-ac.com/
ここでは、休業補償の正しい知識をご紹介します。
「休業補償」と聞いたことはあっても、正しく理解できている方は少ないです。
特に、登録ヘルパーに適用するのかどうか、という点はしっかりと理解しておきましょう。
そもそも休業補償とは
休業補償とは労働基準法第76条に規定されており、簡単に解釈すると「業務上負傷し労働ができない場合、事業所が平均賃金の約60%の休業補償を、登録ヘルパーに支給しなければならない」という意味です。
ただし事業所が労災保険に加入している場合は、労災保険から休業補償が支給されるため事業所は支給を免責されます。
第七十六条 労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。
労働保険については、厚生労働省が「労災保険制度の概要図」を発表しています。
休業の場合だけでなく、その他多くのケースについて理解できるので、ぜひ参考にしてください。
休業補償は登録ヘルパーには適用されるの?
結論から言うと、休業補償は登録ヘルパーにも適用されます。
これは、登録ヘルパーが労働基準法に定められた「労働者」に該当し、労働基準法が適用されるという見解を厚生労働省が示しているためです。
介護保険法に基づく訪問介護の業務に従事する訪問介護員等については、一般的には使用者の指揮監督の下にあること等から、労働基準法第9条の労働者に該当するものと考えられます
労働基準法が適用されるので、労働災害と認められれば休業補償だけでなく、通院が必要な場合には療養補償が支給されます。
休業手当とは違う!休業補償と休業手当の違い
休業補償は、名称の似ている休業手当と勘違いされがちですが、全くの別物なので注意してください。
休業手当は労働基準法第26条に定められており、利用者様の緊急入院などで仕事がなくなってしまった場合に適用される手当のことを言います。
第二十六条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。
(出来高払制の保障給)
休業補償と休業手当の大きな違いは、休業に至る理由です。
休業補償は登録ヘルパーが業務上の負傷などによって労働できない場合の休業、休業手当は利用者様や事業所の都合で起きた休業を対象とします。
また休業補償は平均賃金の60%ときっちり決まっていますが、休業手当は平均賃金の60%以上と定められており、支払う額も違います。
休業手当の詳しい内容は「登録ヘルパーは休業手当が支給される?計算方法まで徹底解説」をご覧ください。
休業補償が支給される3つの条件
引用:https://www.photo-ac.com/
業務中に負傷したからと言って、必ず休業補償が支給される訳ではありません。
休業補償が支給されるには、
- 労働できない状況であること
- 療養していること
- 平均賃金の60%以上の賃金を支給されていないこと
この3つの条件を満たす必要があります。
1つずつ詳しく見ていきましょう。
労働できない状態であること
休業補償は休業を余儀なくされる状態でないと支給されません。
多くの場合は医師からの診断書によって、労働できない状態であることを証明する必要があります。
「負傷した腕が痛むので休みます」
「安静にしていた方が早く治りそうなので」
このような自己判断による休業は、休業補償の対象にはならないので注意しましょう。
療養していること
医師から「療養のため休業の必要がある」などと診断され休業補償を支給される場合、その休業期間は基本的に療養に専念する必要があります。
もちろんですが、休業期間中に旅行をしたりするなどの不適切な行動をしてはいけません。
最悪の場合、懲戒処分や不正受給として返還を求められることもあるので、気をつけましょう。
平均賃金の60%以上の賃金を支給されていないこと
休業補償は平均賃金の60%の賃金が補償されます。
つまり、既に補償額以上の賃金が支給されている場合は、補償の対象になりません。
休業補償はいくら?計算方法を解説
引用:https://www.photo-ac.com/
休業補償は労働基準法や労災保険制度が絡んでいて複雑です。
ここでは休業補償がどこからどのような計算で支給されるのか解説します。
休業補償は事業所と労災保険、どちらから支給されるのか
休業補償は労働基準法第76条に定められるとおり、事業所に支給する義務があります。
ただし事業所が労災保険に加入している場合は、保険給付の請求書を労働基準監督署長に提出することで、事業所の代わりに労働保険から休業補償を支給してもらうことができます。
しかし労働保険の休業補償は、労働災害が発生した日から4日以降の休業に対してなので、4日未満の休業には適用されません。
また、4日以上の休業であっても3日目までの休業補償は事業所が支給することになっています。
労災保険の概要や申請方法は厚生労働省「労働災害が発生したとき」に詳しい解説が掲載されています。
事業所と労災保険の支給額の違い
休業補償は平均賃金額の60%と定められており、その額は事業所でも労災保険でも違いはありません。
しかし、労災保険は休業補償に加えて休業特別支給金(平均賃金の20%)を支給するため、事業所の支給額よりも多くなります。
休業補償の計算方法
休業補償を計算するには、まず平均賃金を求める必要があります。
平均賃金は、労働災害が発生した日の直前3カ月のものを求めましょう。
例えば4月に労働災害が発生した場合、1月から3月までの総賃金を歴日数で割ると求められます。
この平均賃金の60%が休業補償、20%が休業特別支給金です。
分かりやすく数式をご用意したので、ぜひ参考にしてみてください。
また休業日数にも気をつけておきましょう。
3日以内であれば事業所(60%)が、4日以上であれば労災保険(80%)が支給します。
より詳しく計算方法を知りたい方は厚生労働省「休業補償の計算方法」を参考にしてください。
まとめ
引用:https://www.photo-ac.com/
登録ヘルパーの中には休業補償を諦めている方も多いです。
しかし業務中の負傷であれば、休業補償は登録ヘルパーにも支給されます。
補償される賃金は平均賃金の60%、事業所が労災保険に加入していればさらに20%が支給されるので、収入がゼロになる心配はありません。
負傷に限らず、業務が原因で起きた事故やケガは必ず事業所に報告してください。
正しく行動し、休業補償でしっかり療養しましょう。