登録ヘルパーでも押さえておきたい労災保険の基礎知識について
登録ヘルパーとして働く場合、サービス利用者宅への移動や勤務中による、不慮の事故やケガなどのリスクがあります。
そんなとき「登録ヘルパーは労災保険が適用されるのだろうか?」「そもそもどのようなケースが労災になるのだろう?」と、あまり理解していない方も多いのではないでしょうか?
今回「みーつけあ」では登録ヘルパーでも押さえておきたい労災保険の基礎知識について紹介していきます。
登録ヘルパーの労災とは?
引用:https://www.photo-ac.com/
労災とは「労働災害」の略語となっていて、通勤や勤務中に起こった病気や怪我などを指しています。
労災は労働者が強制的に加入している「労災保険」によって、治療費や生活費などを補うことができます。
登録ヘルパーも労働者として認められている
この訪問介護の業務に従事する者の中には、委託、委任等の呼称が用いられている場合もあるが、労働者に該当する かどうかについては、使用者の指揮監督等の実態に即し総合的に判断すること。 なお、介護保険法に基づく訪問介護の業務に従事する訪問介護員等については、一般的には使用者の指揮監督の下に あること等から、労働基準法(以下「法」という。)第9条の労働者に該当するものと考えられること。
請負や業務委託である場合、原則として労災保険の適用を受けることはできません。
実態として登録ヘルパーは事業所に雇用され、基本的には介護事業所の指揮命令の下に仕事を行っているので、労働者として認められています。
労動保険の加入は事業所に義務付けられている
常勤、パート、アルバイト、派遣等の名称や雇用形態にかかわらず、
労働者を1人でも雇っている事業場は加入義務があります。
労災保険と雇用保険の総称となる「労働保険」は、労働者を雇っている事業所の加入義務として定められています。
Q&Aサイトでは「登録ヘルパーにも労災保険の加入義務はあるのでしょうか?」という質問がありました。
厚生労働省の「訪問介護労働者の法定労働条件」でも、登録ヘルパーを労働者として認めているため、強制的に加入対象となっていると言うべきでしょう。
登録ヘルパーの労災の種類について
労災保険で補償されるのは、業務中によって起きる「業務災害」と、通勤によって起きる「通勤災害」があります。
業務労害
業務災害の身体的な要因としては、サービス利用者の介護中に起きた従業者の転倒事故、またはぎっくり腰などのケースが考えられます。
業務災害の精神的な要因としては、セクハラやパワハラによって鬱病や適応障害になってしまった、もしくはそれが原因で自殺をしてしまったというケースが考えられます。
通勤労害
そして通勤災害として「自宅からサービス利用者宅に向かう途中で事後にあった」というようなケースなどが考えられます。
労災保険の給付種類について
引用:https://www.photo-ac.com/
労災保険にもいくつか給付種類があり、これらは業務災害と通勤災害によって僅かに表記が異なります。
例えば、これから説明する「療養(補償)給付」は業務災害の場合「療養補償給付」として扱われ、通勤災害の場合「療養給付」として扱われます。
上記の点を踏まえていくつか紹介していきます。
療養(補償)給付
労働者が、業務または通勤が原因で負傷したり、病気にかかって療養を必要とするとき、療養補償給付(業務災害の場合)または療養給付(通勤災害の場合)が支給されます。
療養(補償)給付は、業務中や通勤中にケガをしたり病気にかかった場合に、医療サービスや治療費を補償するための給付となっています。
療養給付は、労働保険指定医療機関で無償で医療サービスが受けられる「現物支給」または「現金給付」になります。
休業(補償)給付
労災によって働けなくなり、労働賃金を受け取れなくなった場合には休業(補償)給付を申請できます。
申請条件は以下の3つとなっています。
- 労災によるケガや病気の療養中のため
- 労働することができない
- 賃金を受けていない
上記条件に当てはまる場合、休業4日目から賃金の60%相当が給付され、特別支給金の場合は20%相当も加算されます。
休業補償給付は傷病(補償)年金に切り替わる場合もある
療養開始から1年半以上経っても完治せず、後遺障害として残ってしまった場合は、休業補償給付は傷病(補償)年金に切り替わります。
傷病等級について詳しく知りたい場合は「傷病(補償)年金|厚生労働省」にて内容をご確認ください。
障害(補償)給付
労災による怪我や病気が、治療後も障害として残った場合には、障害等級に応じた年金や一時金が給付されます。
障害等級1~7の場合は年金支給となり、障害等級8~14の場合は一時金支給になります。
遺族(補償)給付
労災によって亡くなってしまった場合は、遺族に年金が支給されます。
遺族がいないときには一時金が支給され、特別支給金が加算されます。
業務上の労災の意義について
労災として認められるには、ケガや病気が業務上で起きた事でなければいけません。
判断基準には「業務起因性」と「業務遂行性」の2つの基準があります。
- 業務起因性:ケガや病気の原因が業務上にあるかどうか
- 業務遂行性:労働契約に基づき、事業所の支配下で業務をしていた際に起きた事であるかどうか
「業務起因性」と「業務遂行性」の両方が認められた場合にのみ、労災として労災保険が発生します。
治療費を労働者が自己負担する必要はなくなり、定められた分の休業補償もされます。
「業務遂行性」と「業務起因性」のどちらか一方でも認められなければ、治療費は労働者が健康保険を使用して一部を自己負担するということになります。
腰痛は状況によって判断が難しい
登録ヘルパーとも関連性の高い「腰痛」に関する労災について一例を紹介しておきます。
明らかに業務中に起きたぎっくり腰などであれば、労災として判断されることは難しくないですが、蓄積して起きた場合には加齢やプライベートにも要因が反映されるため、労災として判断されるのが難しくなっています。
腰痛による労災認定は、最寄りの都道府県労働力、労働基準監督署にお問い合わせください。
まとめ
引用:https://www.photo-ac.com/
今回「みーつけあ」記事では登録ヘルパーでも押さえておきたい労災保険の基礎知識について紹介してきました。
登録ヘルパーはサービス利用者の体を起こしたりといった重労働も業務の中にあるため、比較的ケガにも繋がりやすい仕事でもあります。
労災について少しでも理解しておくことで、金銭的にも損をしないで済むケースもあるかもしれません。
是非ご参考ください。