登録ヘルパーでも知っておきたい健康診断の種類やポイントについて
労働安全衛生法によって、事業者が従業員に対して健康診断を実施することは義務づけられています。
とはいえ、健康診断の対象者は「常時使用する労働者」として一定の要件を満たした場合のみ義務規定としているため、健康診断に行ったことがない登録ヘルパーの方も多いのではないでしょうか。
今回「みーつけあ」では、登録ヘルパーでも健康診断を受けられるのか、健康診断の種類や項目、費用などを含めたポイントについてご紹介していきます。
登録ヘルパーが理解しておきたい健康診断のポイント
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冒頭でも「健康診断の対象者は『常時使用する労働者』として一定の要件を満たした場合のみ義務規定としている」と記載しましたが、登録ヘルパーの場合は「法定外だから健康診断は行わない」と判断する事業所もあるようです。
まずは登録ヘルパーが理解しておきたい健康診断のポイントについても紹介していきます。
健康診断の対象者について
労働安全衛生法第66条安衛則第44条による定期健康診断の対象者は「常時使用する労働者」として定めています。
この「常時使用する労働者」とは、平成19年10月1日基発第1001016号通達によって以下のように示されています。
- 1:期間の定めのない労働契約により雇用される者、または期間の定めのある労働契約により雇用される者であって、契約期間が1年以上(特定業務に従事する場合は6か月以上)である者、契約更新により1年以上雇用されることが予定されている者・雇用されている者
- 2:1週間の所定労働時間が同じ事業所において同種の業務に従事する通常の労働者に比べ4分の3以上である者
また、これに対し厚生労働省は、所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満であっても、概ね2分の1以上であれば一般健康診断を実施することが望ましいと通達も出しています。
登録ヘルパーの場合は、上記の要件を満たさない方も多いため、健康診断の義務対象になっていないというのが事実ではあります。
事業所側としては健康診断の費用を抑えられるというメリットもあるように思えますが、同じ職場で働くパートナーの戦力を病気で失うリスクを減らすことにも繋がるため、法定外であっても受診させるべきという考え方も、戦略として必要となる場合もあります。
健康診断は労働時間になるのか?
「健康診断を受けている間の賃金はどうなるのか?」という質問に対して、厚生労働省は以下のように記述しています。
受診のための時間についての賃金は労使間の協議によって定めるべきものになります。ただし、円滑な受診を考えれば、受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいでしょう。
これに対して、多くの事業所は就業時間中に行う健康診断は労働時間として、就業時間外に行う場合は労働時間ではないとしているのが一般的になっているようです。
登録ヘルパーの場合、労働時間はサービス利用者宅での勤務時間のみとなっているケースがほとんどであるため、健康診断が労働時間の対象となるのは難しいでしょう。
登録ヘルパーでも知っておきたい健康診断の種類
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事業者は、労働安全衛生法第66条に基づいて、労働者に対して医師による健康診断を実施しなければいけません。
ここからは健康診断の種類や診断項目について紹介していきます。
一般健康診断
一般健康診断は、仕事の種類や勤務時間(夜勤)に関係なく、全ての職種に対して行われる健康診断となります。
主に以下の5種類が一般健康診断の種類となっています。
- 雇入時の健康診断
- 定期健康診断
- 特定業務従事者の健康診断
- 海外派遣労働者の健康診断
- 給食従業員の検便
一般的に知られているのは「定期健康診断」で、常時使用する労働者(特定業務従事者を除く)を対象に1年以内毎に1回の実施が義務付けられています。
本記事で紹介していく健康診断は、この「定期健康診断」の話となっています。
他の健康診断についても詳しく知りたい方は、下記リンクの厚生労働省の資料をご参考ください。
特殊健康診断
特殊健康診断は、厚生労働省で定められた有害な業務に従事する労働者を対象とした健康診断です。
対象となる労働者は以下になっています。
・屋内作業場等における有機溶剤業務に常時従事する労働者 (有機則第29条)
・鉛業務に常時従事する労働者 (鉛則第53条)
・四アルキル鉛等業務に常時従事する労働者 (四アルキル鉛則第22条) ・特定化学物質を製造し、又は取り扱う業務に常時従事する労働者及び過去に従事した在籍労働者(一部の物質に係る業務に限
る) (特化則第39条)
・高圧室内業務又は潜水業務に常時従事する労働者 (高圧則第38条) ・放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る者 (電離則第56条)
・除染等業務に常時従事する除染等業務従事者 (除染則第20条) ・石綿等の取扱い等に伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者及び過去に従事したことのある在籍
労働者 (石綿則第40条)
具体的な診断項目
定期健康診断の具体的な診断項目に関しては、労働安全衛生法第66条安衛則第44条によって以下のように定められています。
1 既往歴及び業務歴の調査
2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3 身長(※2)、体重、腹囲(※2)、視力及び聴力の検査
4 胸部エックス線検査(※2) 及び喀痰検査(※2)
5 血圧の測定
6 貧血検査(血色素量及び赤血球数)(※2)
7 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)(※2)
8 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロー
ル、血清トリグリセライド)(※2) 9 血糖検査(※2)
10 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査) 11 心電図検査(※2)
※2:定期健康診断(安衛則第44条)における健康診断の項目の省略基準
※2の「健康診断の項目の省略基準」とは、医師が必要でないと認めた場合に省略ができる項目となっています。
医師が定める省略基準については以下のようになっています。
身長 20歳以上の者 腹囲 1. 40歳未満(35歳を除く)の者
2. 妊娠中の女性その他の者であって、その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断
された者
3. BMIが20未満である者(BMI(Body Mass Index)=体重(kg)/身長(m)2) 4. BMIが22未満であって、自ら腹囲を測定し、その値を申告した者胸部エックス線検査 40歳未満のうち、次のいずれにも該当しない者
1. 5歳毎の節目年齢(20歳、25歳、30歳及び35歳) の者
2 .感染症法で結核に係る定期の健康診断の対象とされている施設等で働いている者 3. じん肺法で3年に1回のじん肺健康診断の対象とされている者喀痰検査 1. 胸部エックス線検査を省略された者
2. 胸部エックス線検査によって病変の発見されない者又は胸部エックス線検査によって結核
発病のおそれがないと診断された者貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、 血糖検査、心電図検査 35歳未満の者及び36~39歳の者
健康診断の受診は事業所の戦略的メリットが多い
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事業所の従業員全員が健康診断を受診することは、健康診断費用が福利厚生費として扱われるための条件の一つにもなっています。
他にも、特定事業所加算や処遇改善加算を取得するための要件でもあったり、各種労働系の助成金をもらう際の要件にもなっていたりすることがあるため、全ての従業員に定期健康診断を受診させることは、戦力的メリットとしても恩恵があります。
特定事業所加算取得に関しては、他にも要件があるため下記リンクの内容をご参考ください。
福利厚生費として扱われるための注意点
健康診断費用が福利厚生費として扱われるためには、3つの注意事項があります。
- 1:従業員全員が健康診断を受診している
- 2:健康診断の範囲が常識的な範囲であり、従業員の健康管理を目的としたものである
- 3:健康診断の受けた従業員の費用を全て事業所が負担する必要がある
特に健康診断費用の支払い方法には注意が必要となります。
従業員が勝手に健康診断に行くと言い出したからといって、受診費用を本人に渡してしまうと、健康診断費用を福利厚生費にすることは出来なくなります。
まとめ
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今回「みーつけあ」では登録ヘルパーでも知っておきたい健康診断の種類や項目、診断対象者や費用などを含めたポイントについて紹介してきました。
健康診断は原則として事業所負担となっているので、登録ヘルパーにとっては定期的に健康管理ができる手段の一つとしてもメリットがあります。
どうしても法定外の健康診断となると腰が重くなってしまう気持ちは分かりますが、健康管理の一貫として検討してみるのも良いかもしれません。
是非ご参考ください。