登録ヘルパーは労働者|深刻化する労働基準法の問題について
登録ヘルパーは別名「非常勤ホームヘルパー」とも呼ばれ、個々に好きな時間を指定して働ける働きやすさが魅力の仕事です。
働く時間に縛られない働きやすさが魅力であるにも関わらず、収入が不安定などの原因から長きに渡る人手不足や「労働基準法さえ守れない無法地帯」などと言った口コミが多く、2020年1月には東京地裁803号法廷が開かれているほどです。
※東京地裁803号法廷については記事下段で述べています。
今回「みーつけあ」では、深刻化する登録ヘルパーの労働基準法の問題についてお話していきます。
登録ヘルパーの労働基準法について
引用:https://www.photo-ac.com/
登録ヘルパーは労働者である
事業所によっては今でも登録ヘルパーを「業務委託」や「請負」として扱い、労働基準法の適用があいまいなまま働かされるケースが横行していたりします。
実態として登録ヘルパーは事業所に雇用され、基本的には介護事業所の指揮命令の下に仕事を行っているので、厚生労働省からも労働者として認められています。
この訪問介護の業務に従事する者の中には、委託、委任等の呼称が用いられている場合もあるが、労働者に該当するかどうかについては、使用者の指揮監督等の実態に即し総合的に判断すること。なお、介護保険法に基づく訪問介護の業務に従事する訪問介護員等については、一般的には使用者の指揮監督の下にあること等から、労働基準法(以下「法」という。)第9条の労働者に該当するものと考えられること。
社会保険や労働保険の加入も認められている
労働者として認められている以上、登録ヘルパーは社会保険や労働保険においても、厚生労働省資料による加入条件を満たした場合には加入義務があるということになります。
▼詳しい加入条件については以下のリンクをご参考ください。
>>登録ヘルパーでも社会保険に加入できる?加入条件や注意点について
登録ヘルパーの労働時間について
登録ヘルパーの労働時間はサービス利用者宅にて「サービス介護を行なっている時間」として認識されていますが、法律上では以下のような解釈となっています。
- 事業所が業務に必要な移動を命じている
- 当該時間に労働者の自由に使える時間が保障されていない
すなわち労働時間とは、事業所の指揮監督の下にある時間を指していて、介護サービスを提供している時間に限るものではないということになります。
このような場合、移動時間や待機時間も労働時間に該当し、事業所は適性にこれらを把握、管理する必要があります。
移動時間や待機時間の考え方について
移動時間の考え方として、休憩時間や空き時間が含まれる場合には労働時間として除外するとされています。
待機時間については、事業所の都合により待機を命じられ、その時間内の自由時間が労働者に保障されていないと認められた場合には労働時間として該当されます。
※登録ヘルパーの移動時間は、介護報酬の算定対象には含まれていません。
実際の対応について
実際の事業所の対応として、移動手当て込みで時給を上乗せしている場合や、移動手当として定額支払いにしているところが多いです。
▼交通費や通勤手当に関しては以下リンクもご参考ください。
>>登録ヘルパーの交通費はどれくらいもらえる?通勤手当との違いについて
>>登録ヘルパーの移動時間問題!労働と認められる条件を徹底解説
登録ヘルパーの深刻化する労働基準法について
引用:https://www.photo-ac.com/
2020年1月には第一回裁判が開かれる
2020年1月には、東京地裁803号法廷(裁判長 小田正二)で第一回裁判が開かれました。
初公判では、3人の原告が順番に意見を陳述し、その後の衆議院第2議員会館に場所を移動した際の院内集会にも、70人近い人たちが集まったようです。
裁判の内容は、登録ヘルパーの現場で労働基準法が守られていないため、正当な賃金を受けられずに不利益を被っているという実態を明らかにし、労働に見合った対価の補償等を求める事案となりました。
このタイミングで提訴に踏み切った理由は、2021年の通常国会に提出される予定の介護保険法の改正案について、厚生労働省の社会保険審議会の部会にて議論が進められているためです。
この改正案がこれ以上介護業界の労働環境を悪化させることがなく、これから育っていく登録ヘルパーにも希望の持てるような環境にすべく、現状の登録ヘルパーの問題点について少しでも多くの方に認知してもらうために提訴した裁判となりました。
不安定な収入が人材不足に繋がっている
上記裁判の提訴内容には、深刻な人手不足の件についても触れられています。
移動時間や待機時間の実際の対応についての項目でも記載した通り、事業所では移動手当て込みで時給に上乗せ、もしくは移動手当として定額支払いという対応がほとんどとなっています。
これは実質「労働時間はサービス介護を行なっている時間のみ」とも捉えることができ、移動距離によっては「割に合わない」などの問題が発生する原因ともなっています。
さらにはサービス利用者の都合によって仕事がキャンセルされることもあり、収入や労働時間はさらに不安定なものとなっています。
このような実態から、せっかく福祉に興味を持った若者も収入面や将来性に希望が持てず、仕事を辞めていってしまうという悪循環が続いているようです。
登録ヘルパーの高齢化も問題に…
若者が登録ヘルパーの仕事に希望を持てず辞めていってしまうことで、必然的に登録ヘルパーの高齢化も大きな問題となってきています。
今では登録ヘルパーの平均年齢は57歳を超えていて、人手不足だけに限らず人材難は深刻化しているようです。
不安定な収入、人手不足、高齢化、これらの問題が解決されない限り介護崩壊は避けられず、本格的な社会問題に発展するのも時間の問題です。
今回の裁判によって介護保険法の改正案がどのように可決されていくか、介護業界では注目が集まることになるでしょう。
まとめ
引用:https://www.photo-ac.com/
今回「みーつけあ」は深刻化する登録ヘルパーの労働基準法の問題について、現状の労働基準法の紹介と共に話してきました。
登録ヘルパーの仕事は、本来ならばその働きやすさと高齢化社会における需要から、もっと多くの方から関心を持ってもらい、積極的に取り組んでもらえる仕事内容であるべき職種です。
上手く機能していない労働基準法や介護保険法によって、収入面や将来性がデメリットとして明るみになってしまっている現状は一早く見直されるべきとも言えるでしょう。
いかにより幅広い世代に注目してもらい、活躍できる環境にしていくことができるか?
今後の登録ヘルパーのみならず、介護業界の大きな課題になってきそうです。
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