登録ヘルパーは請負ではなく労働者!保険や有給についても紹介
登録ヘルパーの仕事には出社という概念がなく、現場に直行直帰出来てしまう特殊な業務形態から「請負なのでは?」と勘違いをされるケースがあります。
しかし、実態として労働基準法で定められている「労働者」の条件を満たしていれば、特殊な働き方である登録ヘルパーでも労働者として認められます。
今回「みーつけあ」では、登録ヘルパーは請負ではなく労働者であるという理由や、保険と有給についても紹介していきます。
登録ヘルパーは請負ではなく労働者である
引用:https://www.photo-ac.com
請負とは、正社員のように事業所と雇用関係を結ぶのではなく、個人として業務の一部を引き受ける働き方で、勤務時間という概念もありません。
似たような形態として委任/準委任契約という働き方もありますが、それぞれの違いは以下となっています。
- 請負:引き受けた仕事の「完成・完了を約束」し、その結果に対して報酬を受け取る
- 委任/準委任契約:引き受けた仕事の成果物の有無ではなく、遂行する業務自体に対して報酬を受け取る。
他にも「業務委託」という言葉をよく耳にするかもしれませんが、民法上では業務委託契約という契約はありません。
業務委託は、請負契約、委任契約、準委任契約をまとめて呼ぶための総称と言ってもいいでしょう。
労働者として該当しない要件について
勤務時間という概念がない点では、登録ヘルパーは請負に近い働き方と言えますが、はたして登録ヘルパーは請負になってしまうのか?
労働者として該当しない要件については以下となっています。
- 事業所から指揮命令を受けていない
- 時間給によって収入を得る働き方ではない
- 本人の代わりに、別の者が仕事を受けることができる
- 出勤時間、出勤場所に拘束性がない
- 仕事の内容やどのような業務に携わるかについて、自分で決めることができる
登録ヘルパーの働き方を見てみると、時間に融通は効くものの、従業員の一人としてシフトを提出し、事業所の指示で指定された場所へ向かっているはずです。
仕事内容も「1件につき〇〇円」といった内容ではなく、「生活援助の時給〇〇円」や「身体介護の時給〇〇円」ではないでしょうか。
また、介護保険上ではヘルパーについて「使用者の指揮監督の下にある」とされているため、登録ヘルパーは労働基準法が適用される「労働者」であるということになるでしょう。
この訪問介護の業務に従事する者の中には、委託、委任等の呼称が用いられている場合もあるが、労働者に該当するかどうかについては、使用者の指揮監督等の実態に即し総合的に判断すること。なお、介護保険法に基づく訪問介護の業務に従事する訪問介護員等については、一般的には使用者の指揮監督の下にあること等から、労働基準法(以下「法」という。)第9条の労働者に該当するものと考えられること。
▼登録ヘルパーの労働基準法に関する記事はこちら
>>登録ヘルパーは労働者|深刻化する労働基準法の問題について
請負ではない登録ヘルパーは保険や有給も適用される
引用:https://www.photo-ac.com
登録ヘルパーが労働基準法に基づく労働者であるということは、「労災保険、雇用保険、社会保険」などの保険が適用されることになります。
また、条件さえ満たしていれば有給休暇を取得することも可能です。
ここからは各保険の加入条件や適用基準についても紹介していきます。
労災保険の加入条件について
従業員を一人でも雇っている場合、事業所は必ず労災保険に加入する必要があります。
労災保険の加入対象者は正社員やパート・アルバイト、日雇いであっても全ての労働者が対象となります。
しかし、本記事の冒頭でも取り上げた「請負」という働き方の場合、事業所に所属する労働者ではないため、労災保険に加入することは出来ません。
▼登録ヘルパーの労災保険に関する記事はこちら
>>登録ヘルパーでも押さえておきたい労災保険の基礎知識について
雇用保険の適用基準について
雇用保険の適用基準については以下のようになっています。
- 最低31日間以上働く見込みがある
- 1週間の所定労働時間が20時間以上である
- 学生ではない(例外もあり)
登録ヘルパーが所定労働時間の適用基準を満たすためには、仮に週5日間働いていたとすれば、1日4時間以上の労働時間が条件ということになります。
学生に関しては例外として、企業の内定をもらい、卒業前に勤務を開始したとして、引き続き勤務を継続することが明確だった場合には雇用保険の加入対象として認められます。
▼登録ヘルパーの雇用保険に関する注意点はこちら
>>登録ヘルパーは雇用保険に加入することができるのか?条件や注意点について
社会保険の加入条件について
社会保険とは、「健康保険と厚生年金を合わせた総称」となっています。
主な加入条件は以下となります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上である
- 月収が8.8万円以上(年収106万円以上)である
- 1年以上の雇用が見込まれている
- 学生ではない
これらの条件は、従業員が501人以上の事業所が対象となります。
501人以下の事業所に関しては、従業員(前項の4つの条件を満たしているか、すでに被保険者である者)の過半数の同意を得て、事業所が加入申請をする形となります。
▼登録ヘルパーの社会保険に関する注意点はこちら
>>登録ヘルパーでも社会保険に加入できる?加入条件や注意点について
有給休暇の取得条件について
訪問介護事業においては、年次有給休暇について、短期間の契約期間が更新され6箇月以上に及んでいる場合であっても、例えば、労働契約が1箇月ごとの更新であることを理由に付与しない例が認められるところであるが、雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤している場合には、法に定めるところにより年次有給休暇を付与する必要があること(法第39条)。
上記資料より、登録ヘルパーでも勤務から半年が経過すれば、有給休暇を取得することが可能です。
しかし、登録ヘルパーは所定労働日数が明確に算出できないため、厚生労働省による「訪問介護労働者の法定労働条件」より過去6ヶ月の労働日数×2を1年間の所定労働日数として判断すると定めています。
詳しい付与日数に関しては以下画像をご参考ください。
▼登録ヘルパーがもらえる有給の賃金に関してはこちら
>>登録ヘルパーの有給はいくらもらえる?取得条件や賃金について
▼登録ヘルパーの有給の計算についてはこちら
>>【登録ヘルパー】有給休暇は何日もらえる?計算方法について
請負ではない登録ヘルパーは就業規則も届け出なけれないけない
引用:https://www.photo-ac.com
請負契約や委任/準委任契約の場合は、事業所に所属する労働者ではないため就業規則を定める必要はありません。
本記事でも、登録ヘルパーは労働者であるとお伝えしていますが、実際に厚生労働省による資料でも、この事実は認められています。
登録ヘルパーは特殊な雇用形態のため、正社員とは別に専用の就業規則を作成するのが望ましいです。
また、就業規則は雇用者が従業員に周知させなければならない「周知義務」もあります。
事業所に訪れる機会の少ない登録ヘルパーへの対応として、書面交付等によって就業規則を認知してもらう必要性も念頭においておきましょう。
▼登録ヘルパーの詳しい就業規則についてはこちら
>>登録ヘルパーの就業規則について押さえておきたいこと
▼登録ヘルパーの就業規則のひな形についてはこちら
>>【登録ヘルパー】就業規則の作成でよくある質問やひな形の注意点について
まとめ
引用:https://www.photo-ac.com
本記事では、登録ヘルパーは請負ではなく労働者であるという理由や、保険と有給についても紹介してきました。
登録ヘルパーは事業所に所属する労働者であり、正社員や常勤ヘルパー同様に労働基準法が適用されています。
「知らない間に損をしていた」という事態を避けるためにも、本記事が個々人でも理解を深められるキッカケになれば幸いです。