訪問ヘルパーは稼げるのか?相場や給料を上げる方法について
給料が少ないというイメージの強い介護業界。しかし訪問ヘルパーの求人では「時給2,000円」といった、高単価な広告を見かけた人も多いと思います。
訪問ヘルパーとして働いている人のなかには、月収48万円を達成している人もいるのです。
では、実際のところ訪問ヘルパーは本当に稼げるのでしょうか?
今回「みーつけあ」では、訪問ヘルパーの収入目安や具体的な給与水準について解説します。
給料を上げる方法についても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
訪問ヘルパーはどのくらい稼げる?給料相場を徹底調査
まず始めに、訪問ヘルパーの給料相場を紹介します。
訪問ヘルパーの仕事は、調理・洗濯・買い物などの生活のサポートを中心とした「生活援助」と、食事・入浴・排せつ介助といった、利用者に直接触れて行う「身体介護」の2種類です。
生活援助の時給は1200円〜1400円程度、身体介護の時給は1300円〜2000程度が相場になります。
しかし、訪問ヘルパーの給料は雇用形態や施設によってさまざまです。
この記事では、正規・非正規および、他介護事業の給料と比較しながら紹介していきます。
訪問ヘルパーの平均給与は29万円
厚生労働省の調査による給与目安は以下のとおりです。
特養 | 老健 | 介護療養型医療施設 | 通所介護 | グループホーム | 訪問介護 | |
---|---|---|---|---|---|---|
常勤 | 332,260 | 317,350 | 285,360 | 262,900 | 276,320 | 291,930 |
非常勤 | 239,290 | 260,710 | – | 201,870 | 180,410 | 208,210 |
参照:厚生労働省『平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果』
このなかで特別養護老人ホーム、老人保健施設は「夜勤」が存在します。
そのため割増賃金や手当による給与アップが含まれ、給与水準は高いです。
訪問介護が一定の給与水準を保っているのは、「施設の経費がかからないこと・資格所持者が多いこと」などが要因です。
そのほかの特徴として、非常勤の給与は下から2番目となっています。
これは、施設介護にはない移動時間が発生したり、仕事量が安定しなかったりといった、労働時間に関するデメリットが影響しているからです。
【補足】特殊な雇用形態「登録ヘルパー」について
訪問ヘルパーには、正社員・パート・アルバイトとは異なる「登録ヘルパー」という雇用形態が存在します。
登録ヘルパーは、働きたい時間を指定して働けるため、時間の融通が効く仕事です。
自宅から直行直帰で利用者宅を訪問することができるので、給料はサービスを提供した時間のみになります。
しかし、希望する時間に仕事がなかったり、利用者の都合で仕事がキャンセルされたりと、収入が安定しないことがデメリットです。
▼みーつけあのインタビュー動画もご参考ください。
▼訪問介護のデメリットに関する関連記事はこちら
>>登録ヘルパーは本業としても稼げる?デメリットや対応策について
訪問ヘルパーの時給は800円未満や1400円以上とさまざま
厚生労働省の同調査による「時給別の集計対象職員数」をみると、訪問ヘルパーは時給800円未満から1400円以上まで幅広く存在することがわかります。
時給800円未満 | 70人 |
時給800~899円 | 156人 |
時給900~999円 | 200人 |
時給1,000~1,099円 | 320人 |
時給1,100~1,199円 | 299人 |
時給1,200~1,299円 | 431人 |
時給1,300~1,399円 | 262人 |
時給1,400円以上 | 545人 |
参照:厚生労働省『平成30年度介護従事者処遇状況等調査結果』
また上記データから、時給1,200~1,400円以上がもっとも多いというのもわかりますね。
ただし、この値は地域や業務内容、資格の有無によって大きく変化します。
あくまで参考程度にとどめましょう。
訪問ヘルパーの「高時給で稼げる」には要注意!
訪問ヘルパーおよび登録ヘルパーの求人にて、「時給2,000円」など高水準な給与を目にしたという方も多いのではないでしょうか。
時給2,000円であれば、1日4時間×週3日働いただけでも月10万円を超えます。そのため一見稼ぎが多いように感じますよね。
しかし訪問ヘルパーの高時給には注意が必要です。
なぜなら「移動時間が換算されていない」「高時給な身体介護業務はかなり少ない」という2つの問題があるから。
それぞれ詳しくみていきましょう。
訪問ヘルパーは「移動時間」が換算されないことも
訪問ヘルパーは業務にて、利用者宅から次の利用者宅への移動が発生します。
必要な移動時間は時給として換算されるケースが多いのですが、「必要超過の移動時間は時給換算されない」というリスクも。
例えばAさん宅からBさん宅まで30分の移動時間を確保したとします。
しかしBさん都合によって入り時間がずれ込み、移動を含む空き時間が1時間になったとすると、必須の移動時間外となる30分には時給が発生しません。
そのため本来稼げたはずの給料が発生しない…という状況になります。
施設介護等ではこういった事態が発生しないので、訪問ヘルパーならではのデメリットとして知っておきましょう。
身体介護が少ない
より高い技術を求められる身体介護は、そもそも仕事数自体が少なかったり、ベテラン職員に割り振られてしまったりすることが多いです。
しかし高時給は身体介護業務に該当する値のため、「実際は時給1,200円の生活援助業務が9割だった」など、期待とは違う給料になってしまうことも多々。
具体的に身体介護はどの程度あるのか。自分のスキルなどと照らし合わせながら、面接等で確認するのがオススメです。
▼訪問介護の給料に関する記事はこちら
>>登録ヘルパーと保育園について徹底解説!働く時間を増やして収入を増やすには
>>登録ヘルパーの給与はどれくらいもらえる?働き方や稼ぎ方について紹介
訪問ヘルパーは稼げる?1日の流れと給料イメージ
ここからは、訪問介護の現場で稼ぐイメージを深めるべく、訪問ヘルパーの主な1日の流れを紹介します。
8:30 | 事業所へ出勤および移動 |
9:00~ | 訪問1件目(着替えと移乗) |
9:30~ | 移動 |
10:00~ | 訪問2件目(入浴介助) |
11:30~ | 昼休憩(1時間) |
12:30~ | 移動 |
13:00~ | 訪問3件目(清掃など) |
14:00~ | 移動 |
14:30~ | 訪問4件目(買い物) |
15:30~ | 移動 |
16:00~ | 訪問5件目(調理) |
16:30 | 業務終了 |
上記スケジュールの場合、「業務4.5時間+移動2.5時間=7時間」が労働時間です。
そのうち身体介護はおよそ2.0時間、生活援助は2.5時間として計算します。なお身体介護の時給は2,000円、生活援助および移動の時給は1,200円です。
すると1日の給料は(2,000円×2.0時間)+(1,200円×4.5時間)=9.400円となります。
週3日間働いたとして、1か月でおよそ12万円。月全体でみると身体介護の頻度が下がってしまったり、スケジュールに穴ができたりといったリスクを想定しても、およそ9~10万円ほどが想定できますね。
訪問ヘルパーが稼げる方法を徹底紹介!
「訪問ヘルパーとして稼げる方法はないの?」と、給料への不安が残る人もいるのではないでしょうか。
介護業界で給料を底上げしたいのであれば、積極的に環境を変えていくことが重要です
ここからは、訪問ヘルパーが稼げる方法をいくつか紹介していきます。
今回ピックアップした稼げる方法は、以下のとおりです。
- 介護資格を取得する
- 複数の事業所に登録する
- 時給の高い事業所に絞る
- 介護福祉士を目指す
- サービス責任者になる
- 事業所を経営する
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
1.介護資格を取得する
1つ目の稼ぎを増やすコツは「介護資格の取得」です。
訪問ヘルパーは介護資格の取得により資格手当がつく場合が多く、事業所によっては1万円以上の手当になることも。
特に国家資格である「介護福祉士」の資格手当は額が大きくなりやすいです。
取得するには3年間の実務経験と下位資格である介護福祉士実務者研修の修了等が必要なため、長期スパンで計画を立ててみてください。
2.複数の事業所に登録する
2つ目のコツは「複数の事業所に登録する」です。
複数の事業所に登録するメリットは、「業務がない」という事態を防ぎやすくなることにあります。
例えばA社にて13:00~16:00の業務がなくなってしまった場合、代わりにB社で仕事を入れる…という臨機応変な対応ができるのです。
ただし無駄のないスケジュールを立てやすくなる反面、シフトが被るなどのリスクも生じやすくなります。そのため慎重にシフトを組む調整力が求められますよ。
3.時給の高い事業所に絞る
3つ目のコツは「時給の高い事業所に絞る」というものです。
仮に時給1,000円と時給1,500円で月6時間×週3日働いたとすると、月給は7.2万円と10.8万円。同じ業務量にもかかわらず、3万円近くの差が生じます。
これはかなり損ですよね。そのため少しでも高い事業所に移ったり、身体介護の多い事業所のシフトを増やしたり…といった工夫は有効といえます。
また訪問介護事業所は数が多く、人手不足の影響で有効求人倍率が10倍などを超えることも多々。
より時給の高い事業所を選ぶことは決して難しくはありませんので、求人サイトや口コミをもとに、より高時給な事業所を探してみましょう。
4.介護福祉士を目指す
訪問ヘルパーとして長く働いている人であれば、介護福祉士を目指してみるとよいでしょう。
なぜなら、介護業界唯一の国家資格となる介護福祉士を取得すれば、資格手当の底上げはもちろん、仕事の幅はさらに広がります。
厚生労働省の「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護福祉士の平均給与額は、329,250円です。
無資格者の平均給与額は275,920円となっているため、その差は53,330円となります。
ただし、介護福祉士の資格を取得するには、以下の条件が必要です。
- 実務経験が3年以上ある。
- 実務者研修を修了している。
資格によって給料を底上げしたいのであれば、介護福祉士を目指すことで結果に繋げられるでしょう。
5.サービス責任者になる
サービス提供責任者とは、訪問介護サービスを提供するためにケアマネジャーや訪問ヘルパーと連絡・調整を行う仕事です。
サービス責任者になるには、以下のような条件があります。
- 介護福祉士の資格を取得している
- 実務者研修を修了している
- 初任者研修を修了しており、実務経験が3年以上ある
訪問ヘルパーに比べると、月給・時給ともに高い水準です。
介護福祉士の資格を取得した人であれば、さらなるキャリアアップの選択肢としてサービス責任者を目指してみるとよいでしょう。
6.事業所を経営する
訪問ヘルパーとしての経験を活かして、訪問介護事業所を開設するというのも一つの選択肢です。
訪問介護事業所は、設備投資が「少なくとも150万円」と、比較的開業しやすいと言われています。
以下の表は、訪問介護事業所を立ち上げる際に必要となる資金を一例としてまとめたものです。
名目 | 内訳 | 小計(概算) |
---|---|---|
法人格取得 (株式会社) | 印紙代・定款代など | 200,000円 |
人件費 | サービス提供責任者(約240,000円) 管理者(約350,000円) 介護ヘルパー(約280,000円) ※1ヶ月 | 870,000円 |
事務所維持費 | 家賃 | 70,000円 |
雑費 | オフィス用品・車両維持費など | 360,000円 |
合計 | 150万円 |
参考:
株式会社freee|会社設立手続きの手間を最小限に(会社設立費)
厚生労働省|令和元年度介護事業経営概況調査結果(人件費、雑費(その他))
厚生労働省|国民の所得や生活の状況等に関する分析(家賃)
介護労働安定センター|令和元年度 介護労働実態調査結果について(人件費)
もちろん、規模によっては数千万円が必要な場合もあります。
事業所経営は決して簡単なことではありません。経営知識を学んだうえで、計画的に検討しましょう。
まとめ
https://www.pakutaso.com/2020064117510-43.html
訪問ヘルパーは、さまざまな工夫をすることでより稼げるようになります。
しかし移動時間や身体介護業務の少なさなどを考慮すると、「実際は思っている以上に稼げない」というリスクがあることも事実です。
そのため、介護業界で稼げるようになりたいのであれば、積極的にキャリアアップを目指すことが大切です。
「キャリアアップは考えていない」という人であれば、自分の希望する働き方や生活リズムを踏まえて、訪問ヘルパーとしていくら稼げるのかを、細かく計算してみてください。
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