訪問ヘルパーは爪切りできる?医師法に違反しないための知識
訪問ヘルパーとして働いていると、業務に制限が多いと感じるはずです。
ぱっと思い浮かぶ制限といえば、医療行為がありますね。
「利用者の方の爪が伸びていて危ないから、切ってあげたい…!」
「でも、爪切りって医療行為だった気がする」
このように、現場で迷ってしまうこともありますよね。
今回「みーつけあ」では、訪問ヘルパーの爪切りの悩みを解決しる記事を作成しました。
厚生労働省が提示している基準に基づいて解説しますので、参考にしてみてください。
1.訪問ヘルパーの爪切りは医療行為?
画像元:https://www.photo-ac.com
まず、結論からお伝えします。
介護の爪切りは医療行為ですが、訪問ヘルパーでも対応可能です。
何故なら、平成17年に厚生労働省から規制の対象ではないと提示されたから。
こちらの厚生労働省の見解では、爪が正常であれば訪問ヘルパーが爪切りしても問題ないと示されています。
しかし、正常な爪とそうでない場合の判断は、どのように行うのでしょうか。
この判断基準も、厚生労働省の見解から確認してみましょう。
爪に異常がある場合は気を付けよう
利用者の方の爪に異常がある場合は、専門的な処置が必要です。
異常がある場合とは、以下のような状態を指します。
- 巻き爪や爪白癬
- 爪の周囲に化膿や炎症が見られる
- 利用者の方が糖尿病 など
簡単な爪切りでも、抵抗力が弱まった高齢者の身体では、様々なリスクを考慮しなければいけません。
巻き爪や爪白癬は、訪問ヘルパーをしていると見かけることが多いはずです。
また、巻き爪とセットで化膿や炎症が起きていることもありますね。
利用者の方が糖尿病なら、合併症の足病変というものにも注意が必要です。
足病変とは、糖尿病で血管や神経に異常が出ることで起きる潰瘍や変形の総称。
神経が鈍ることで、傷に気付けなかったり、感染から症状が悪化するリスクがあります。
ここまで見てきたように、爪や足に異変があるなら専門的な医療の知識が必要です。
訪問ヘルパーとして爪切りはできないので、事業所の上司やケアマネジャーに伝えて対策を講じてもらいましょう。
次の章では、爪切りを行う際に気を付けたいことを確認していきます。
2.訪問ヘルパーの爪切りで気を付けたいポイント
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訪問介護は基本的に1対1で行うため、他の介護現場と違い先輩からの注意もありません。
現場で困らないように、訪問ヘルパーの爪切りで気を付けたいポイントを事前に把握しておきましょう。
介護の知識の基本ですが、以下2点をおさらいとして紹介します。
- 深爪を避ける
- スクエアオフ
業務が忙くても忘れないよう、参考にしてみてください。
ポイント1.深爪を避ける
利用者の方の爪を切る際には、深爪を避けましょう。
切りすぎた爪は、皮膚に食い込んでダメージを与えます。
さらに、皮膚への食い込みが悪化すると、巻き爪になる可能性も。
目安として、爪の白い部分を約1~2mm残すようにしましょう。
足の爪が指先から出る状態を保つことで、体重の負荷から指先を守れます。
爪にかかる体重の負荷を考えると、スクエアカットも重要です。
次の章で続けて解説します。
ポイント2.スクエアカット・オフ
介護の爪切りの基本はご存知通り、スクエアカットです。
スクエアカットでは、爪を四角く切って指先へ爪が食い込むことを防ぎます。
スクエアカットを施したら、尖った爪の角のスクエアオフも忘れずに行いましょう。
スクエアオフとは、鋭い爪の角をやすりがけして丸く安全に整えること。
爪は人体で歯と骨の次に硬い部位ですから、尖ったままでは危険です。
さらに、高齢者は皮膚が薄いので、爪でも十分に怪我の原因になります。
もし、爪切りをした次の訪問で、利用者の方にひっかき傷があったら嫌な気持ちになりませんか?
訪問ヘルパーとして、利用者の方の怪我を予防するスクエアオフも行いましょう。
ここまで見てきた内容の通り、爪切りは訪問ヘルパーでもできる医療行為です。
しかし、現場で利用者の方から頼まれることの中には、訪問ヘルパーに許可されていない医療行為も潜んでいます。
「医療行為かもしれないけど、頼まれたからやってしまった…」
このような曖昧な判断は避けたいです。
曖昧な自己判断の結末がどういったものか、次の章で確認してみましょう。
3.訪問ヘルパーが医療行為を行うとどうなる?
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訪問ヘルパーが禁止されている医療行為を行ってしまうと、どんなことが起こるのでしょうか。
医療行為は、医師法によって定められています。
そのため、訪問ヘルパーが認められていない医療行為を行うと医師法違反です。
介護現場の医師法違反には、実例があります。
平成27年10月には、大阪の老人ホームで届出なく医療行為を行ったとして、施設長と職員合わせて22人が書類送検されました。
この事件が起きたのは訪問介護ではないものの、医師法違反はあってはならないと理解できるはずです。
もし訪問先で判断できないことを頼まれたときは、施設の上司への確認を最優先しましょう。
さらに、訪問ヘルパーは自分の身を守るために、最低限の知識を持っておくことが重要です。
次の章では、訪問ヘルパーの医療行為について解説します。
ぜひ参考にしてみてください。
▼関連記事はこちらから。
>>介護職員と医療行為(インスリン対応など)の線引きについて解説!
4.訪問ヘルパーができること・できないことを確認しよう!
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ここでは、厚生労働省の情報に基づいて、訪問ヘルパーにできること・できないことを解説します。
訪問ヘルパーが感じる不安を、以下の項目で一緒に解決しましょう。
- 訪問ヘルパーができること
- 訪問ヘルパーができないこと
一覧表として紹介するので、気になったときはその都度確認してみてください。
訪問ヘルパーができること
まずは、訪問ヘルパーができることから見ていきましょう。
訪問ヘルパーができることには、以下2つの分類があります。
- 医療行為に当てはまらない
- 許可されている医療行為
医療行為に当てはまらないことは、訪問ヘルパーでも問題なく対応できるはずです。
許可されている医療行為では、一定の条件が決められているものもあります。
医師法違反を避けるために、それぞれの項目を確認していきましょう。
・医療行為に当てはまらない
医療行為に当てはまらない行為は、以下の表の通りです。
行為 | 内容 |
---|---|
体温測定 | 水銀・電子体温計の脇下計測、及び耳式計測 |
血圧測定 | 自動血圧側的の使用・介助 |
動脈血酸素飽和度計測 | パルスオキシメーターの装着 |
応急処置 | 軽微な切り傷などの処置 |
服薬介助 | 一包化された薬の服薬補助・見守り |
表の内容を見ると、どれも日常生活の範囲内であることが分かるはずです。
一般的に考えれば、体温を計るときにわざわざ病院へ足を運ぶ人はいないですよね。
医療行為ではなくても注意が必要なのが、服薬介助です。
上記表の服薬介助の内容にある「一包化」という言葉は、一度に飲むべき薬が一袋にまとめられていることを指します。
服薬介助で行えるのは、一包化された薬を利用者の方が飲めるように介助したり、服薬の様子を見守ったりすることです。
一方、複数の薬の服薬を整理・調整するのは、服薬管理として医療行為になります。
服薬管理は医師や薬剤師が関わる専門的な分野なので、訪問先で頼まれても断らなければいけません。
繰り返しになりますが、訪問ヘルパーが行えるのは服薬介助です。
曖昧な線引きですが、頭の片隅に入れてトラブルを避けましょう。
・許可されている医療行為
ここでは、訪問ヘルパーが許可されている医療行為を確認します。
許可された医療行為の中には例外事項があるので、合わせてご確認ください。
以下の表の行為と内容が訪問ヘルパーにできることで、例外事項が専門知識を必要とする医療行為です。
行為 | 内容 | 例外事項(対応できない場合) |
---|---|---|
爪切り | 利用者の爪を切る | 巻き爪や糖尿病 |
口腔ケア | 歯磨き、口内の汚れ除去 | 重度の歯周病 |
耳掃除・耳垢除去 | 耳垢を掃除する | 耳垢栓塞 |
ストーマ装具 | パウチ内の排泄物の除去 | 肌にパウチが接着している |
導尿介助 | カテーテルの準備、体位保持 | カテーテルの挿入 |
浣腸 | 市販浣腸器での浣腸 | 摘便 |
表を見ると、爪切り以外でも訪問ヘルパーができることがありますね。
認められている内容は、どれも介護の知識で対応できることです。
「頼まれたけど、専門分野外だな…」
このように感じた場合は、認められていない医療行為である可能性が高いので避けましょう。
ここまでが、訪問ヘルパーができることでした。
次は、訪問ヘルパーができないことを確認していきます。
訪問ヘルパーができないこと
ここでは、医療行為に関して訪問ヘルパーができないことをまとめています。
現場で頼まれると迷いそうですが、冷静に考えると医師法違反を避けられるでしょう。
訪問ヘルパーができないことは、以下の通りです。
- 褥瘡処置
- 導尿カテーテル挿入
- インスリン注射
- 飲み薬の投薬
さらに、先ほど紹介した許可されている医療行為の中でも、例外事項に含まれるものは対応できません。
例外事項 |
---|
巻き爪や糖尿病の爪切り |
重度の歯周病の口腔ケア |
耳垢栓塞の場合の耳掃除・耳垢除去 |
パウチが肌接着しているときの排泄物除去 |
導尿介助のカテーテル挿入 |
便秘のときの摘便 |
ご覧いただいた通り、訪問ヘルパーが対応できないことは看護や医療の知識が必要なものばかりでした。
このような医療行為は、現場で頼まれたとしても断るべきです。
断るときは、以下のように理由も含めて伝えましょう。
「お医者さんじゃないとできないから、お医者さんにやってもらいましょう」
上記はあくまでも一例ですが、医療やお医者さんといった言葉を使うと説得力が増します。
また、利用者の方の家族から過剰な要求をされるときは、上司やケアマネジャーに相談してください。
ここまで、訪問ヘルパーの医療行為について見てきました。
訪問介護では医療行為以外に、身体介護や生活援助の制限もあります。
現場の判断に迷ったら、あくまで上司への確認を優先するようにしましょう。
▼関連記事はこちらから。
>>訪問ヘルパーのサービス内容とは?できること・できないことをまとめて紹介
5.訪問ヘルパーの爪切りに関するQ&A
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最後に、爪切りに関して訪問ヘルパーの方が抱えるよくある疑問を、Q&A方式で解説します。
以下の順番で解説するので、気になることがあれば参考にしてみてください。
- 職場の先輩に爪切りは医療行為だからダメといわれた
- 爪切りは身体介護と生活援助どっち?
- 看護師資格があれば医療行為もできるの?
それでは見ていきましょう。
Q1.職場の先輩に爪切りは医療行為だからダメと言われた!
長く介護に関わる人の中には、医療行為は全てダメだと判断している場合があります。
以前は医療行為が拡大解釈されていたので、介護士ができることの線引きが曖昧でした。
しかし、この記事で紹介してきたように、平成17年以降は厚生労働省から明確な基準が提示されています。
先輩に対して知識の古さを指摘する必要はありませんが、あなたは自信を持って取り組みましょう。
Q2.爪切りは身体介護と生活援助どっち?
爪切りは、身体介護に該当します。
身体介護と生活援助の分類は、訪問ヘルパーを初めたてのときによくある悩みですね。
基本的に、利用者の方の体に触れる内容であれば、身体介護と判断できます。
ただ、爪切りもケアプランに含めるべき業務の1つであることは忘れないでください。
度々爪切りをするのであれば、ケアマネジャーや上司に相談が必要です。
利用者の方に適切な支援をするためにも、業務報告で訪問ヘルパーの責務を全うしましょう。
Q3.看護師資格があれば医療行為もできる?
看護師資格があるからといって、介護士に認められていない医療行為を行ってはいけません。
訪問ヘルパーとして働く場合、事業所から都道府県に届出を出す手続きが必要だからです。
そもそも、看護師が医療行為を行う場合でも、医師の判断や指示を受けていたはずです。
看護の技術を介護に活かすのは素晴らしいことですが、訪問先での自己判断は避けましょう。
訪問看護という選択肢もあるので、視野に入れて見てはいかがでしょうか。
まとめ
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今回「みーつけあ」では、訪問ヘルパーの爪切りと医師法の関係を解説してきました。
爪切りができることが分かれば、自信をもって業務に取り組めるはずです。
ケアプランに爪切りが組み込まれていないときは、上司やケアマネジャーへの相談も忘れずに!
正しい知識で、訪問ヘルパーとしてできる支援を提供しましょう。
もし、今後の業務で医療行為の不安を感じることがあれば、この記事の一覧表をご活用ください。