訪問ヘルパーの人手不足が止まらない!原因や悩みのタネとは?
介護業界は、常に慢性的な人手不足に悩まされています。
2020年には、新型コロナウイルスの感染拡大によってさらに深刻化。
介護事業所の休廃業が急増しました。
中でも、訪問ヘルパーの人手不足は際立って深刻な問題となっています。
なぜ、訪問ヘルパーはこれほどまでに慢性的な人手不足を抱えているのでしょうか?
今回「みーつけあ」では、訪問ヘルパーの人手不足に関する原因や悩みについて解説します。
訪問ヘルパーの人手不足が深刻な原因とは?
引用:https://www.photo-ac.com
訪問ヘルパーの人手不足は、いくつかの原因が重なっています。
今回は、以下の3点に原因をまとめてみました。
- 有効求人倍率は15倍超えに…
- 訪問ヘルパーの高齢化
- 改善されない賃金の低さ
それぞれ解説していきます。
1. 有効求人倍率は15倍超えに…
訪問ヘルパーは、高齢者の自宅を訪問して介護の仕事を行います。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、訪問介護そのものが上手く機能しなくなりました。
2020年8月に行われた、第182回社会保障審議会による資料によると、訪問介護職の有効求人倍率は15倍を超えています。
2019年時点で、施設介護員の有効求人倍率が4.31倍に対し、訪問介護職は15.03倍です。
また、約8割の事業所が、「訪問ヘルパーの不足を感じている」という結果になっています。
有効求人倍率とは?
有効求人倍率とは、「求職者1人に対して、いくつの求人があるのか?」という指標です。
例えば、事業所からの求人が10人いるのに、仕事を求めている人が5人しかいないとします。
この場合、有効求人倍率は「10÷5」となり、2倍です。
つまり、有効求人倍率が15倍というのは、事業所が「15人の人手が欲しい」と言っているのに対し、実際に仕事を求めている人は1人しかいないということ。
訪問ヘルパーの人手不足が、いかに深刻であるかが分かりますね。
2. 訪問ヘルパーの高齢化
加えて、訪問ヘルパー自身の高齢化が深刻な問題となっています。
訪問ヘルパーは、40代から50代が主流です。
そして、60代以上は全体の4割を占めています。
今後、加齢によって退職する訪問ヘルパーが増えるとなると、さらなる人手不足が予測されるでしょう。
3. 改善されない賃金の低さ
2021年、介護報酬改定が公表されました。
これにより、施設介護や通所介護など、ほとんどのサービスは基本報酬が上がっています。
しかし、訪問介護のみ、ほとんど基本報酬が上がっていないのです。
改定されたのは2時間ルール
今までは、1日に2ヶ所以上の訪問介護を提供したとき、その間隔が2時間以上空いていないと、「1回のサービスとして算定」されていました。
例えば、身体介護を25分、2時間以内に2回提供したら、合算された50分で単位が決まっていたということです。
これが改定により、25分×2回分として算定されます。
改定された単位を元に、計算してみましょう。
改定前 | 改定後 |
---|---|
身体介護25分×2回=50分:396単位 | 身体介護25分+25分:250単位×2回=500単位 |
このように、同じ50分でも単位が多くなるということです。
2時間ルールが緩和されたことで、どれほど給料に改善がみられるのか?
今後の動向に、注目が集まりそうです。
訪問ヘルパーの人手不足に拍車をかける悩みのタネ
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訪問ヘルパーの人手不足は、根本的な原因だけではありません。
現場の悩みとして、以下の3点をピックアップしてみました。
- 仕事内容が大変
- 世間的な評価が低い
- 若者に人気がない
1. 仕事内容が大変
訪問ヘルパーの仕事は、「生活援助、身体介護」の2種類があります。
生活援助は、家事を中心とした支援がメイン。
身体介護は、利用者の体に直接触れる介護がメインです。
生活援助の仕事例 | 身体介護の仕事例 |
調理・洗濯・掃除・買い物代行 など | 着替え・入浴介助・排泄介助・移動、移乗介助 など |
施設介護とは異なり、現場は利用者の自宅になります。
環境や利用者によっては、臨機応変な対応が求められるでしょう。
また、訪問介護は利用者と1対1で対応しなければいけません。
施設であれば、同僚と助け合うことができますが、訪問介護では全てが自己責任です。
ネット上の口コミでは、このような意見があります。
一件ずつ、移動するのがすごく大変。時間、労力、精神力、バイクとガソリンを使い、片道約10~15分。移動交通費は100円ほど。出ない所もある。入所・入院で定期訪問数が減り、時間が余るので勿体ない。一日に入れる件数が少ないので、拘束時間の割には給料は少ない。責任の重さと給料が全然合わない。現場の声が、上に届かずイライラする事が多い。
人の命を扱う仕事である以上、決して簡単な仕事とは言えないでしょう。
2. 世間的な評価が低い
介護業界における3Kとして「きつい・汚い・危険」という、世間的な印象があります。
その内容は以下のとおり。
- 高齢者の体を扱う肉体労働がきつい
- 他人の排泄介助なんて汚い
- 濃厚接触による感染リスクがあって危険 など
また、「介護の仕事をしてみたいか?」というアンケートでは、約85%の人が「したいとは思わない」と答えています。
世間的なイメージは、決して好印象とは言えません。
まだまだ「介護は面倒な仕事」というレッテルが貼られているように思えます。
3. 若者に人気がない
若者の介護業界への関心が低いという点も、人手不足の大きな要因の1つです。
介護福祉士養成施設への入学者数推移では、以下のような調査結果があります。
海外からの留学生は増加傾向ですが、全体的な入学者数は減少し続けています。
平成26年度から30年度にかけて、約4割減です。
訪問ヘルパーの高齢化と相まって、人員の増加は絶望的と言えるかもしれません。
訪問ヘルパーの人手不足を解消するには?
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では、訪問ヘルパーの人手不足を解消するには、どのような解決策が必要なのでしょうか。
ネット上で挙げられている専門家の意見から、2つほど紹介します。
基本報酬の見直し
訪問ヘルパーの人手不足が続くと、介護保険制度だけでは十分なサービスを受けられない状況に陥ってしまいます。
訪問介護の重要性を改め、仕事内容に見合った基本報酬の改善が求められるでしょう。
しかし、2021年の介護報酬改定でも、訪問ヘルパーの報酬は上がりませんでした。
このまま基本報酬の底上げが実現されないと、訪問介護への関心はますます薄れていくのではないでしょうか。
専門性の評価を上げるべき
訪問介護の事業者が懸念している要素として、「専門性が評価されていない」という声が上がっています。
例えば、生活援助は利用者の家事支援が主な仕事内容です。
この仕事内容に対して、財務省は「本当に介護の仕事と言えるのか」、「家政婦として扱われているのではないか」という、疑問の声が上がりました。
さらには、生活援助を介護保険制度から外して、市町村事業に移したいという考えまで示しています。
これに対し、中日新聞ではNPO法人グレースケア機構の柳本文貴代表の声を、以下のように掲載しています。
在宅高齢者の暮らしをみとりまで含めトータルに支え、思いに添ったケアができるやりがいある仕事なので、専門性を評価して介護報酬を引き上げてほしい。このままでは事業者も疲弊して安く使い捨てられる
基本報酬だけに限らず、訪問介護そのものの専門性を評価してもらう必要がありそうです。
まとめ
引用:https://www.photo-ac.com
現状のままでは、訪問介護業界の人員増加は見込めないでしょう。
今後の対策として、訪問介護そのものの専門性、基本報酬の見直しとともに、世間的なイメージ改善が重要視されます。
また、人数で補えない仕事は「介護ロボットなどのテクノロジーでカバーする」といった動きを、いよいよ現実化させていく必要があるのではないでしょうか。
引き続き、「みーつけあ」は介護業界の動きに注目していきます。