介護ヘルパー(訪問介護員)とは?仕事内容・資格・やりがいについて紹介
介護が必要な高齢者の自宅を訪問して、日常生活のサポートをする介護ヘルパー(訪問介護員)。
高齢化社会が加速している日本では、必要不可欠な仕事です。
今回「みーつけあ」では、介護ヘルパー(訪問介護員)の仕事内容について紹介します。
「介護ヘルパーの仕事内容って何?」
「資格は必要なの?」
「給料や労働時間はどうなっているんだろう」
「やりがいや魅力についても知りたい!」
このような疑問について、詳しく紹介していきます。ぜひご参考ください。
介護ヘルパー(訪問介護員)の仕事内容
引用:https://www.photo-ac.com
介護ヘルパーは「ホームヘルパー、訪問ヘルパー」などと、呼ばれることがあります。正式名称は、「訪問介護員」です。
要介護者の自宅を訪問して、排泄や入浴の介助、洗濯や掃除などの家事を提供することが仕事となります。
仕事内容は、大きく分けて3つです。
- 生活援助
- 身体介護
- 通院等乗降介助
生活援助
生活援助は、利用者に直接触れない範囲の日常生活を支援する仕事です。
主には、以下のような仕事内容が挙げられます。
- 調理
- 洗濯
- 掃除
- 買い物代行 など
支援できる内容は、日常生活を送るために欠かせない家事のみです。
利用者が単身であったり、家族が家事を行えない状況だと判断された場合に、サービスとして提供できます。
参考:介護保険の訪問介護 – 厚生労働省
身体介護
身体介護は、利用者に直接触れて行う介助の仕事です。
主な仕事内容は、以下のとおり。
- 排せつ介助
- 入浴介助
- 食事介助
- 着替え介助 など
生活援助に比べると、より専門知識や技術をもって行う仕事内容と言えます。
また、上位資格を取得していれば、「たんの吸引、経管栄養」などを行うことが可能です。
介護ヘルパー(訪問介護員)の資格については、後ほど紹介していきます。
通院等乗降介助
通院等乗降介助は、利用者の通院における乗降車や、移動介助を行う仕事です。
介護ヘルパー(訪問介護員)が、自ら車を運転して、利用者を病院まで連れていきます。
その後の歩行、受診手続きなども、必要に応じて介助しなければいけません。
参考:介護保険制度における通院等乗降介助の適用範囲の拡大 – 総務省
介護ヘルパー(訪問介護員)がやってはいけない事
引用:https://www.photo-ac.com
介護ヘルパー(訪問介護員)が行える仕事は、介護保険法によって定められています。
この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。
つまり、介護保険サービスの目的は、利用者の自立を手助けするための支援活動です。
事前に、利用者に合わせた介護サービス計画書(ケアプラン)が作成され、その内容に基づいたサービスを行うという流れになります。
しかし、これだけでは具体的に介護ヘルパー(訪問介護員)がやってはいけない事は分からないでしょう。
ここからは「生活援助、身体介護」の、それぞれの仕事内容でやってはいけない事について紹介します。
介護ヘルパー(訪問介護員)がやってはいけない生活援助
実際に、介護ヘルパー(訪問介護員)がやってはいけない生活援助は、以下のとおりです。
生活援助項目 | やってはいけない事 |
---|---|
掃除関連 | ・利用者が使用していない部屋の掃除 ・庭の手入れ、ペットの世話 ・窓拭きや換気扇掃除 ・引っ越しや大きな家具の移動 など |
料理関連 | ・利用者の家族分の料理 ・おせち、恵方巻きなどの行事料理 など |
洗濯関連 | ・利用者の私物とは異なる洗濯、収納など |
買い物関連 | ・嗜好品全般(酒、タバコ類)の購入 ・お歳暮 など |
その他 | ・お墓参り代行 ・現金の引き落とし代行 ・来客の応接、応対 など |
介護ヘルパー(訪問介護員)の生活援助は、家事代行サービスと間違われてしまう事が多いです。
しかし、これらの仕事内容は「介護保険外サービス」として提供されます。利用者から頼まれたとしても、断らなければいけないのです。
▼さらに詳しく知りたい方はこちらから。
>>訪問ヘルパーができないことってどんな仕事?実例をまとめて紹介!
介護ヘルパー(訪問介護員)がやってはいけない身体介護
医療行為に該当してしまう仕事は、介護資格を持っていても行うことができません。
一例として、以下のような仕事内容が挙げられます。
身体介護項目 | やってはいけない事 |
---|---|
食事関連 | ・経管栄養の注入 ・胃ろうチューブの挿入や洗浄 ※一定の研修を修了した場合のみ可能。 |
入浴関連 | ・散髪(電気シェーバーによる髭剃りは可能) |
排泄関連 | ・排尿カテーテルの挿入、消毒、洗浄など ・肌に接着したパウチの取り換え(専門的な管理が必要とされない場合は可能) |
その他 | ・リハビリ、マッサージの補助 ・入院や手術の同意や手続き ・専門的な判断や技術が必要な傷の処置 |
※2021年3月現在の参考内容。
また、医療行為に含まれない仕事内容に関して、厚生労働省は以下の項目を紹介しています。
- 水銀体温計や電子体温計による体温計測
- 専門的な判断や技術を必要としない怪我の応急処置
- 耳垢の除去(耳垢塞栓は除く)
- 重度の歯周病等がない場合の歯磨き など
参考:医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)-厚生労働省
医療行為の判断は、一般的な医療知識の向上と共に変化しているのが現状です。
あくまで一例として、ご参考ください。
介護ヘルパー(訪問介護員)に必要な資格
引用:https://www.photo-ac.com
介護ヘルパー(訪問介護員)として働くには、介護資格が必要です。
資格の取得には、数万円から数十万円の費用がかかります。しかし近年では、資格支援制度が充実している事業所が増えてきました。
無資格でも、キャンペーンが実施されている場合があるのです。
未経験の方でも、資格が取得しやすい環境が整っている場合があります。求人情報の詳細は、しっかりチェックしておきましょう。
本記事では、代表的な介護資格を、4つほど紹介します。
1. 介護職員初任者研修
介護ヘルパー(訪問介護員)として働くために、必須となる資格が「介護職員初任者研修」です。
介護の現場で働く上で、基本となる技術と知識を習得する事ができます。
資格を取得するには、約130時間の講義と演習を受講しなければいけません。また、最終的には修了試験に合格する必要があります。
研修内容は、以下のとおりです。
職務の理解 | 6時間 |
介護における尊厳の保持・自立支援 | 9時間 |
介護の基本 | 6時間 |
介護・福祉サービスの理解と医療との連携 | 9時間 |
介護におけるコミュニケーション技術 | 6時間 |
老化の理解 | 6時間 |
認知症の理解 | 6時間 |
障害の理解 | 3時間 |
こころとからだのしくみと生活支援技術 | 75時間 |
振り返り | 4時間 |
合計 | 130時間 |
引用:介護職員初任者研修・生活援助従事者研修関係 – 厚生労働省
短ければ1ヶ月半、通常なら3ヶ月〜4ヶ月ほどの期間で、修了することができます。
・合格率は非公開となっている
正確な合格確率は、公的に明かされていません。
ネット上の口コミで確認できる限り、「ほぼ合格できる、9割以上は合格している」といった情報が多いです。
難易度そのものは、かなり低いと言えるでしょう。
2. 実務者研修
より深い知識を学んだり、キャリアアップを目指せる「実務者研修」。
本記事内でも紹介した、身体介護の「たんの吸引、経管栄養」などのサービスを提供するにあたり、必要となる資格です。
上記資料からも、「介護福祉士の養成施設における2年以上の養成課程と同等の水準」と表記されていることから、専門性の高さが伺えますね。
実務者研修は、20科目で450時間の研修内容です。
もし、初任者研修を修了しているのであれば、同等の内容となっている130時間分は免除されます。
より幅広く介護の現場で活躍したい人は、視野に入れておきたい資格と言えるでしょう。
3. 介護福祉士
介護資格の中で、唯一の国家資格となっている「介護福祉士」。
社会的認知度や信頼性が高く、転職や就職には非常に有利な実績となります。
介護福祉士国家試験に受験するためには、「実務者研修」の修了及び、実務経験3年以上が必要です。
合格率は、2021年3月の発表時点では71.0%となっています。
参考:第33回介護福祉士国家試験合格発表 – 厚生労働省
介護のスペシャリストとして、リーダー的立場で仕事をしていきたいと考えている方は、挑戦してみると良いでしょう。
4. 生活援助従事者研修
生活援助従事者研修は、生活援助を中心とした働き方がしたい人のために設けられた資格です。
研修内容は、介護職員初任者研修とさほど変わりません。しかし、研修時間は半分以下の59時間となっています。
参考:介護職員初任者研修・生活援助従事者研修関係 – 厚生労働省
手軽に資格を取得できますが、身体介護の仕事は引き受けられないので注意しましょう。
介護ヘルパー(訪問介護員)として、本格的に働くのはまだ検討中という方が、最初の一歩として取り組みたいのであればおすすめです。
介護ヘルパー(訪問介護員)の働き方
引用:https://www.photo-ac.com
では、実際に介護ヘルパー(訪問介護員)になったら、どのような働き方ができるのでしょうか?
介護ヘルパー(訪問介護員)には、大きく3つの働き方があります。
- 正社員やパート・アルバイトとして働く
- 登録ヘルパーとして働く
- 派遣として働く
正社員やパート・アルバイトとして働く
最も一般的なのは、事業所に直接雇用してもらう働き方です。
定時に事業所へ出勤。その後、担当する利用者の自宅へ訪問して介護サービスを提供。事業所内での仕事もこなしつつ、退勤時間になったら帰宅。
このように、勤務時間が決まっているため、給料が安定しやすいでしょう。
登録ヘルパーとして働く
訪問介護の仕事の中では、とくに特殊な働き方となっている「登録ヘルパー」。
働きたい時間を自ら申告して、好きな時間に働けるのが特徴です。
家事・育児の隙間時間や、副業として働きやすいでしょう。
ただし、利用者の入院・入所・死亡などが原因で、仕事が急にキャンセルになってしまうこともしばしば。
給料が安定しない点には注意が必要です。
▼登録ヘルパーのメリット・デメリットに関する記事はこちらから。
>>通勤時間に縛られない登録ヘルパーの働き方|メリットやデメリットについて
派遣として働く
派遣社員として、介護ヘルパー(訪問介護員)の仕事をすることも可能です。
通常の派遣と同様に、仕事を紹介してもらえれば働くことができます。
ただし、契約が満了してしまったら、新しい派遣先を探さなければいけません。
登録ヘルパー同様、仕事が安定しない点がデメリットと言えるでしょう。
介護ヘルパー(訪問介護員)の労働時間について
引用:https://www.photo-ac.com
介護ヘルパー(訪問介護員)は、主に午前8時~午後6時の時間帯の中で、営業時間が設定されています。
正社員であれば、1日8時間、週5日の勤務が一般的です。また、利用者の都合次第では、営業時間外に勤務する場合もあるでしょう。
パート・アルバイトであれば、定時出勤ではあるものの、勤務日数や時間には多少融通が効きます。
登録ヘルパーは、先ほども説明したとおり、利用者の状況によって労働時間が変動しやすいです。
夜間対応型訪問介護もある
夜勤を希望するのであれば、「夜間対応型訪問介護」という選択肢もあります。
18時から翌朝8時までの時間帯に、介護や安否確認などをおこなう仕事です。
それぞれの生活環境に合わせて、働き方を選んでみると良いでしょう。
介護ヘルパー(訪問介護員)の平均給与
引用:https://www.photo-ac.com
ここからは、介護ヘルパー(訪問介護員)の平均給与についても見ていきましょう。
正社員、パート・アルバイト、登録ヘルパー、派遣社員の4つで、それぞれ比較したデータが下記になります。
正社員 | 平均年収:295万円 |
---|---|
パート・アルバイト | 平均時給:1,116円 |
登録ヘルパー | 平均時給:1,392円 |
派遣社員 | 平均時給:1,402円 |
引用:ホームヘルパーの仕事の年収・時給・給料情報 – 求人ボックス
登録ヘルパーの仕事の年収・時給・給料情報 – 求人ボックス
※2021年3月現在のデータとなります。
正社員の給与は、月給にすると約25万円で、日本全体の平均給与と比較すると低くなっています。
パート・アルバイトは、一般的な時給と言えるでしょう。
登録ヘルパー、派遣社員は、比較的高めの時給です。しかし給料が安定しない分、平均給与としては不満の声が多くなっているように思えます。
▼登録ヘルパーの給与に関する記事はこちらから。
>>登録ヘルパーの給料相場はいくら?他業種とも比較してみました
介護ヘルパー(訪問介護員)のやりがい
引用:https://www.photo-ac.com
介護ヘルパー(訪問介護員)の仕事は、よく「きつい・汚い・危険」の3K問題が話題になります。
実際に介護の仕事に関する調査では、85.4%の人が「介護の仕事をしたいとは思わない」と答えているのです。
しかし、現実としては、介護ヘルパー(訪問介護員)の仕事に「やりがいを感じている」という声は多くなっています。
利用者さんと会話が楽しい。色々な人生観に触れられる。
お客様に喜んで貰え、素敵な笑顔に会える。
利用者のありがとうの言葉はやっていて良かったと思う瞬間
ご利用者様の喜んでくださる姿。必要とされていると感じる事が多い。人生の先輩から聞ける貴重なお話、助言はとても勉強になります。
毎回感謝されると素直に嬉しいです。
介護ヘルパー(訪問介護員)は、利用者と1対1で行う責任の重い仕事です。
しかし、利用者の中には自分の命を大切に扱ってもらえることに、心から感謝をしてくれる人がいます。
そんな利用者からもらえる感謝の言葉は、訪問ヘルパーにとって最高のやりがいと言っても過言ではありません。
時間や人間関係に縛られない働き方に魅力を感じる声も
登録ヘルパーであれば、自由な働き方に魅力を感じる声も多くなっています。
定年後も長く働ける
途中自宅に帰れるから
家事はやりやすい
上司、先輩などから見張られてるプレッシャーがないので落ち着いてケアに集中出来る。
施設で働くのが向かない、一人で自分のやり方でやりたい人にはいいと思う。
施設勤務では、同僚の人間関係に悩まされる方が少なくはありません。
一方、登録ヘルパーなら事業所に向かわず、直行直帰の働き方が働く時間を好きに選べる上、同僚の人間関係に悩む機会は少ないです。
一人で臨機応変に仕事がしたいという方には、とくに相性が良い仕事と言えるでしょう。
介護ヘルパー(訪問介護員)のよくある悩みQ&A
引用:https://www.photo-ac.com
最後に、介護ヘルパー(訪問介護員)に関するよくある悩みについて紹介していきます。
Q.1 介護ヘルパーの仕事に将来性はある?
上記資料によると、日本の人口は2010年を境目に減少傾向です。
しかし、75歳以上の人口割合は、毎年増加傾向にあります。
さらに同資料内では、2000年から2012年にかけて、訪問介護やデイサービスの受給者数が、238%も上昇しているというのです。
つまり、介護サービスの需要は今後も増加傾向にあると言えるでしょう。
まさに、「食いっぱぐれない職種の代表格」と言えるのではないでしょうか。
Q.2 一人で対応するのが不安です
初めて介護ヘルパー(訪問介護員)として働く場合、仕事内容に関する不安は拭いきれないでしょう。
- 利用者に嫌われたらどうしよう
- トラブルにならないか心配
- 仕事を続けていけるか不安
- どうやって接したら良いか分からない
現役の方の中には、利用者から信頼してもらえるまでに1年以上かかったという方もいらっしゃいます。
仕事を丁寧にこなすことは、もちろん大事です。
しかし、それ以上に重要なのは、お互いに気持ちの良い関係を築くことではないでしょうか。
介護ヘルパー(訪問介護員)が、利用者にしてあげられることは限られています。
利用者の全ての要求に、答えてあげられるわけではありません。
お互いの立場をしっかり理解し合えるよう、努めていく気持ちが大事です。
Q.3 利用者の暴言に耐えられない
残念ながら、介護ヘルパー(訪問介護員)の仕事は綺麗事だけで続けられる世界ではありません。
口コミでは、以下のようにリアルな現状を語る声もあります。
ほとんどの利用者様方は認知症の進行により「ありがとう」なんて言ってはくれません。 便まみれになって、きれいにして差し上げようとしても拒否されたり、時には暴言、暴力を振るわれることもあります。 人として当然の親切以上のことをして差し上げているにも関わらず認知症の利用者様に罵倒されることなど日常茶飯事です。 それでも、一瞬でも、その利用者様に「カチン」と来るような人は介護従事者になる資格はありません。 そんなことをされても、愛おしい、この人の為にと本気で思える人が真の介護士です。
人には、向き不向きがあります。介護の現場においては、「ここまでしてあげているのに…」という、見返り精神だけでは通用しません。
とはいえ、利用者と「合う・合わない」があるのも事実です。
どうしても耐えられないのであれば、事業所に担当を変えてもらえないか相談をしてみましょう。
それでも仕事環境が変わらないのであれば、転職を検討してみるのも手段の一つです。
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>>登録ヘルパーを辞めたい理由まとめ|辞める前に考えるべきこと
まとめ
引用:https://www.photo-ac.com
介護ヘルパー(訪問介護員)の仕事は、今後もますます需要が高まっていきます。
介護スキルを身につければ、自身の身の回りでも大いに役立てることも可能です。
本記事を読んで、少しでも興味が湧いた方は、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。