介護ヘルパーの医療行為は禁止?実態やできること・できないことについて
介護ヘルパーは、介護が必要なサービス利用者の自宅を訪問して、介護サービスを提供する仕事です。
介護ヘルパーに限らず、介護職員が医療行為を行うことは禁止されています。
ただし、一部の医療行為は認められていたり、資格によっては行える医療行為も存在するのです。
今回「みーつけあ」では、介護ヘルパーの医療行為について紹介します。また、介護ヘルパーにできること・できないことについても触れてみました。
介護ヘルパーの医療行為について把握することで、不慮の医療事故を減らすことができますよ。
介護ヘルパーは医療行為が禁止されている
引用:https://www.photo-ac.com
介護ヘルパーは、医療行為を行うことができません。しかし、何を基準として医療行為と判断しているのか、いまいち把握できない人が多いでしょう。
まず、大前提として医師、歯科医師、看護師などの免許を持っていなければ、医療行為を行うことは禁止です。
厚生労働省が公表している医師法第17条では、医療行為の定義について以下のように説明しています。
「医業」とは、当該行為を 行うに当たり、医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及 ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為(医行為)を、反復継続する意思をもって 行うことであると解している。
つまり、「医師としての医療技術や判断知識がなければ、人体に危害を及ぼす可能性がある行為は医療行為である」ということです。
介護ヘルパーの医療行為に該当しない項目とは?
引用:https://www.photo-ac.com
では、医療行為に該当しない項目には、どのような項目があるのでしょうか。厚生労働省が公表している項目は、以下のとおりです。
- 水銀体温計や電子体温計による、わき下の体温測定
- 耳式電子体温計による、外耳道での体温測定
- 自動血圧測定器による血圧測定
- パルスオキシメータの装着(新生児以外の入院治療が必要のない人に限る)
- 専門的な判断や技術を必要としない、軽微な切り傷、擦り傷、やけどなどの処置
- 医師・看護師からの指導があった上での服薬介助
参考:出典:医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の 解釈について – 厚生労働省
介護ヘルパーの服薬介助について
医師・看護師から、指導があった上で行える服薬介助については、具体的に以下のような項目が挙げられます。
- 軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く)
- 湿布の貼付
- 点眼薬の点眼
- 一包化された内用薬の内服(舌下錠の使用も含む)
- 坐薬の挿入
- 鼻腔粘膜への薬剤噴霧を介助
参考:出典:医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の 解釈について – 厚生労働省
また、これらの服薬介助を行えるのは、医師・看護師によって以下の条件が確認されている場合のみです。
- サービス利用者が、入院や入所といった治療の必要がなく、容態が安定していること
- 副作用の危険性や、投薬量の調整などのために、医師・看護師による経過観察が必要ない状態であること
- 内用薬の誤嚥、坐薬による肛門からの出血の可能性など、医薬品の使用に専門的な配慮が必要ないこと
参考:出典:医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の 解釈について – 厚生労働省
厚生労働省が規制対象外とした医療行為
厚生労働省が規制対象外としている医療行為には、以下のような項目があります。
- 爪に異常がなく、疾患に伴う専門的な管理が必要でない状態での爪切り
- 重度の歯周病がない場合の口腔内の歯ブラシや口内洗浄
- 耳かき(耳垢塞栓の除去を除く)
- ストマ装具のパウチにたまった排泄物の処理(肌に接着したパウチの取り替えを除く)
- 自己導尿を補助するための、カテーテルの準備や体位保持
- 市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器を使用した浣腸
参考:出典:医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の 解釈について – 厚生労働省
爪切りに関しては、巻爪や爪周囲の皮膚の化膿や炎症などがある場合も行ってはいけません。詳しくは、以下の記事もご参考ください。
>>訪問ヘルパーは爪切りできる?医師法に違反しないための知識
介護ヘルパーが医療行為以外にもできないこと
引用:https://www.photo-ac.com
介護ヘルパーができないことは、医療行為だけではありません。介護ヘルパーが行える介護サービスは、介護保険法によって定められています。
この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。
介護サービスは、利用者が現状の能力に応じて、自立した日常生活を送れるようにサポートをすることが目的です。
利用者によっては、介護ヘルパーを「家政婦」と勘違いをしてしまうこともあります。医療行為以外にもできないことを把握すれば、より介護ヘルパーについて理解できるでしょう。
介護ヘルパーのできること・できないこと
介護ヘルパーの仕事は、大きく分けて「生活援助・身体介護」の2種類です。それぞれの仕事内容で、「できること・できないこと」をまとめてみます。
・生活援助
生活援助は、利用者に直接触れない範囲での日常生活をサポートする仕事です。できること・できないことは以下のとおり。
介護ヘルパーができるのは、日常生活を送る上で最低限必要とされる身の回りの世話のみです。できないことは丁寧に断り、介護保険外サービスの利用を促しましょう。
▼関連記事はこちらから
>>訪問ヘルパーのサービス内容とは?できること・できないことをまとめて紹介
・身体介護
身体介護は、利用者に直接触れないと行えない、日常生活をサポートする仕事です。できること・できないことは以下のとおり。
より専門的な介護技術を必要とするため、慎重に判断して介護を行う必要があります。できないことを断るのも、利用者の体を守るために必要なことです。
研修を受ければ認められる医療行為について
介護ヘルパーとして働くには、「介護職員初任者研修」を修了しなければいけません。さらに上の資格には、「実務者研修」という資格があります。
「実務者研修」を修了すれば、以下の2つの医療行為を行うことが可能です。
- たんの吸引:喀痰吸引:定期的に痰を取り除き、気道の確保、肺炎等の感染症を予防する
- 経管栄養:食事ができない人に、胃や腸などの消化器官内にチューブを挿入し、栄養剤を注入する
介護ヘルパーとしてのスキルを磨いたり、キャリアアップを検討している人は実務者研修を検討してみてはいかがでしょうか。
介護ヘルパーが禁止されている医療行為を求められたときの対処法
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万が一、禁止されている医療行為を求められたのであれば必ず断りましょう。利用者やその家族から求められたのであれば、違法であることを伝えてください。
また、利用者の容体によって対応が変わる「爪切り・歯みがき」となると、同僚や事業所の関係者が医療行為であることに気付いていない場合もあります。医療行為にあたる支持を受けた場合も、きっぱりと断るようにしましょう。
それでも強制するような職場であれば、退職を考えてもよいかもしれません。自分の身を守るためにも、違法性を訴えることはとても重要です。
まとめ
引用:https://www.photo-ac.com
介護ヘルパーが対応できる医療行為は、徐々に範囲が拡大してきています。しかし、まだまだ禁止されている医療行為があることも事実です。
介護ヘルパーにできることを理解しておくことで、違法な医療行為による医療事故を避けることができます。
1人で悩んだり、解決したりするのではなく、少しでも疑問があるのであれば関係者にも相談をしましょう。