介護ヘルパーが介護保険でできることは何?料金や利用の流れも紹介
介護ヘルパーを雇えば、介護が必要な高齢者の自宅を訪問して、介護サービスを提供してくれます。
しかし、「何でもしてあげられる」というわけではありません。介護ヘルパーができること・できないことは、介護保険法によって定められているのです。
今回「みーつけあ」では、介護ヘルパーが介護保険でできること、料金や利用の流れについて紹介します。
介護保険でできること・できないことを理解すれば、いざサービスを利用したときに「こんなはずじゃなかった」と、後悔を減らすことができるでしょう。
介護ヘルパーによる訪問介護とは?
介護ヘルパーが提供する介護サービスは「訪問介護」といいます。
訪問介護とは、要支援・要介護の高齢者が自立した私生活を送れるように、生活を支援・介護するサービスです。
自宅に訪問してくれる介護ヘルパーは、以下の介護資格を修了した「訪問介護員」になります。
- 介護職員初任者研修修了者
- 実務者研修修了者
- 介護福祉士 など
また、介護ヘルパーが行う介護サービスは大きく分けて3種類です。
- 身体介護
- 生活援助
- 通院等乗降介助
まず始めに、上記3種類のサービスについて詳しく紹介します。
1. 身体介護
身体介護サービスでは、利用者の体に直接触れなければ行えない介護サービスを提供します。主なサービス内容は、以下のとおりです。
他にも、起床・就寝介助や服薬介助といった介護サービスを提供できます。
より専門的な資格をもった介護ヘルパーであれば、「たんの吸引、経管栄養」を行うことも可能です。
2. 生活援助
生活援助サービスでは、利用者の体に触れない範囲での日常生活をサポートします。たとえば、以下のようなサービスの提供が可能です。
生活援助で提供できるサービスは、日常生活における必要最低限の支援のみとなります。「家事代行サービス」とは異なりますので注意しましょう。
3. 通院等乗降介助
通院等乗降介助は、介護サービスを利用する人の通院における乗降車や、移動を手助けするサービスです。
介護ヘルパーが自ら車を運転して、利用者を病院まで連れていってくれます。病院で人手が足りない場合には、歩行・受診の手続きなども、必要に応じてサポートが可能です。
【補足】訪問介護と訪問看護は別のサービス
訪問サービスには、似たような名前の「訪問看護」というサービスもあります。
訪問看護とは、看護師が自宅を訪問して、利用者の病気や障がいに応じた看護を行うことです。主治医の指示を受けて医療処置を行えます。
介護ヘルパーにはできない「医療的ケア」ができるので、訪問看護が必要であるかどうかは、ケアプランの作成の際にケアマネジャーと相談しましょう。
介護ヘルパーによる介護保険サービスでは提供できないこと
では、介護ヘルパーが提供できないサービスとは、一体どのような内容となっているのでしょうか。
厚生労働省が公表する「介護保険制度全体を貫く理念」では、介護保険について「介護が必要となった人の尊厳を持っ て、自立した生活ができるようにサービスを給付する」と伝えています。
また理念の第4条を要約すると、「国民は介護が必要にならないように健康つくりをして、介護が必要になった場合でも、サービスを利用しながら能力維持の向上に努めましょう」と説明していました。
つまり介護保険サービスとは、「日常生活を送る上で、人としての尊厳を維持できる範囲のサポート」ということになります。
介護ヘルパー(訪問介護)ではできないサービスとは?
介護ヘルパーができないサービスについて、いくつか例を挙げていきます。
- 利用者以外の食事の準備やおせち料理
- 利用者とは関係のない部屋の掃除・洗濯
- 庭の手入れ、水やり、草むしり
- 家具の移動、電化製品の修理、
- 嗜好品の買い物代行、遠出による買い物
- ペットの世話、来客対応、話し相手のみ
- 散髪、カミソリを使ったひげ剃り
- 認められていない医療行為 など
このように、介護ヘルパーができないサービスは、日常生活に必ずしも必要とはいえないようなラインナップが多いです。
介護ヘルパーができる医療行為は限られている
介護ヘルパーは医者ではありません。提供できる医療行為は限られています。
参考までに、厚生労働省が2005年に除外した医療行為は以下のとおりです。
- 水銀体温計や電子体温計による、わき下の体温測定
- 耳式電子体温計による、外耳道での体温測定
- 自動血圧測定器による血圧測定
- パルスオキシメータの装着(新生児以外の入院治療が必要のない人に限る)
- 専門的な判断や技術を必要としない、軽微な切り傷、擦り傷、やけどなどの処置
- 医師・看護師からの指導があった上での服薬介助
参考:出典:医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の 解釈について – 厚生労働省
実際に介護ヘルパーができること・できないことを認識していない介護サービス利用者が多く、さまざまなトラブルに発展しています。
詳しくは、以下の記事も参考にしてください。
>>訪問介護のヘルパーがやってはいけないこと・できないことについて解説!
介護ヘルパーによる介護保険サービスを利用できる人
「介護保険サービスを受けられる条件は何だろう?」と、あまり理解できていない人もいるのではないでしょうか。
介護保険サービスは、誰でも受けられるわけではありません。自宅で生活をしている「要介護1〜5」の認定を受けた65歳以上の人が、訪問介護を受けられます。
ここからは介護保険サービスを受けるための「要介護認定制度」について紹介します。
要介護認定制度について
要支援1〜2の場合
判定の結果、要支援1〜2に判定された場合でも、「介護予防訪問介護」というサービスを提供してもらえます。
ただし、目的は介護が必要にならないための予防になるため、受けられるサービスは「生活援助・訪問看護・訪問リハビリ」といったサービスが中心になります。
また、要支援1であれば、訪問回数が週に2回までと限定されるので注意しましょう。
介護ヘルパーの介護保険サービスを受ける流れ
では、実際に介護ヘルパーを雇って介護保険サービスを受けるには、どのような流れ・手続きが必要なのでしょうか。
大まかな流れは、以下のようになります。
- 要介護認定を申請する
- 市区町村などの調査員による認定調査
- 要介護度・要支援度の判定
- 介護保険サービス計画書の作成
- 介護保険サービスの利用開始
1. 要介護認定を申請する
始めに、市区町村の窓口で要介護認定、または要支援認定を申請をしましょう。
申請する窓口は、医療機関や病院、自治体の介護保険窓口が多くなっています。地域によって場所や名称が異なるため、各WEBサイトをご確認ください。
申請には以下の書類が必要です。
- 要介護(要支援)認定申請書
- 介護保険被保険者証
- マイナンバー・身分証明書 など
要介護(要支援)認定申請書は、市区町村の窓口から入手が可能です。
介護保険被保険者証は、65歳以上(第1号被保険者)の全員に交付されます。本人が40歳~64歳(第2号被保険者)の場合は、医療保険証(被保険者証)を用意しましょう。
2. 市区町村などの調査員による認定調査
申請後、市区町村などの調査員による認定調査が行われます。
そして、主治医意見書の作成を、市区町村が主治医に依頼します。
主治医がいないときは、市区町村の指定医の診察が必要です。
3. 要介護度・要支援度の判定
調査結果や主治医意見書の一部がコンピューターに入力されて、「一次判定」が行われます。
その後、一次判定の結果と主治医意見書に基づき、「二次判定」を実施。この結果によって、要介護認定が決定します。
申請から認定の通知が送られるまでの流れは、原則として30日以内です。
4. 介護サービス計画書の作成
認定後、介護支援専門員(ケアマネジャー)と共に介護保険サービスのケアプランを話し合います。
利用者本人や家族の希望、心身の状態などを考慮した上で、介護サービス計画書を作成していきましょう。
また、認定結果によって依頼する環境は変わります。
5. 介護保険サービスの利用開始
介護サービス計画書(ケアプラン)が作成されれば、内容に基づいたさまざまな介護保険サービスの利用が可能です。
▼サービス開始までの流れについては、以下の記事もご参考ください。
>>介護ヘルパーを依頼するまでの流れとは?各サービスの料金や種類についても紹介
介護ヘルパーの介護保険の料金はいくら?
「介護保険サービスって料金はいくら掛かるのだろう?」
介護ヘルパーを雇いたい人にとって、料金は必ず把握しておきたい内容でしょう。
介護ヘルパーの介護保険にかかる1日の料金(自己負担額)は、
「サービスの種類別料金 × 利用時間 + その他料金(加算)」で算出されます。
介護保険の自己負担額は、基本的に1割負担です。しかし2018年以降、現役並みの所得があれば3割負担という制度に改定されました。
出典:利用者負担割合の基準が変わります – 厚生労働省
2021年4月現在では最大3割負担ですが、今後も変化する可能性があるため注意しましょう。
本記事では、自己負担額が1割の場合の「身体介護・生活援助・通院等乗降介助」について、目安の料金を紹介します。
身体介護サービスの料金
参考:どんなサービスがあるの? – 訪問介護(ホームヘルプ) – 厚生労働省※2021年4月のデータ
生活援助サービスの料金
参考:どんなサービスがあるの? – 訪問介護(ホームヘルプ) – 厚生労働省※2021年4月のデータ
通院等乗降介助サービスの料金
参考:どんなサービスがあるの? – 訪問介護(ホームヘルプ) – 厚生労働省※2021年4月のデータ
それぞれ、料金の目安として参考にしてください。
介護ヘルパー以外の介護保険サービスの種類
介護ヘルパー以外にも、介護保険には様々な種類があります。しかし、この記事で全てを紹介することはできません。
今回は、訪問サービスに絞って以下の4つを紹介します。
- 訪問入浴
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 居宅療養管理指導
1. 訪問入浴
訪問入浴は、看護師1名と2〜3名の介護ヘルパーが自宅に訪問して、持参した浴槽で入浴介助を行う介護保険サービスです。
利用者が自力で入浴ができなかったり、家族の介助だけでは入浴が困難な場合に利用されます。
訪問入浴を利用することで、利用者の生活機能の維持や、向上が期待できるでしょう。
利用者の負担額相場は、以下のようになっています。
参考:どんなサービスがあるの? – 訪問入浴介護 – 厚生労働省※2021年4月のデータ
2. 訪問看護
訪問看護は、看護師が自宅を訪問して、主治医の指示に基づいた医療処置を行うサービスです。
病状に応じて、以下のようなサービス内容が受けられます。
- 脈拍・体温・血圧などの測定
- 健康状態の観察
- 病状の悪化を防止・回復
- 痛みを軽減・服薬管理
- 排泄介助・入浴介助などの身体介護
- カテーテル・ドレーンチューブの管理
- 看取り など
利用者の負担額の相場は、以下のとおりです。
参考:どんなサービスがあるの? – 訪問看護 – 厚生労働省※2021年4月現在のデータ
※20分未満の算定は、20分以上の訪問看護を週1回以上含むことが条件です。
3. 訪問リハビリテーション
訪問リハビリテーションは、「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士」などが、自宅を訪問して自立支援を行うサービスです。
また、介護をしている家族へのアドバイスや相談もしてくれます。
利用者の負担額の相場は、以下のとおりです。
参考:どんなサービスがあるの? – 訪問看護 – 厚生労働省※2021年4月現在のデータ
4. 居宅療養管理指導
居宅療養管理指導は、「医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士」などが、通院ができない利用者の自宅を訪問して、療養の管理や指導をしてくれる介護保険サービスです。
費用は、担当医によって異なります。詳しくは、厚生労働省の資料をご参考ください。
介護ヘルパーができないことは介護保険外サービス
介護保険サービスの目的は、利用者の自立を支えるための支援活動です。
しかし「介護保険外サービス」は、介護保険制度に適応していないサービスを行うことができます。
介護保険外サービスの一例として、以下のようなサービスが挙げられます。
介護保険外サービスは、各種保険が適応されないオーダーメイドサービスです。そのため、介護ヘルパーではできなかった「ペットの世話・庭の手入れ」などを依頼することが可能できます。
介護ヘルパーができないようなサービスを提供してほしい場合は、介護保険外サービスを利用しましょう。
介護ヘルパーは介護保険外サービスと一緒に上手く利用しよう
介護ヘルパーを雇えば、住み慣れた自宅環境を維持したまま、介護保険サービスを提供してもらえます。
そして、介護ヘルパーができないことは、介護保険外サービスを併用することで補うことが可能です。
介護保険の適用範囲を理解していれば、
担当のケアマネジャーとの相談もスムーズにできるでしょう。
ケアプランの作成で後悔しないためにも、本記事の内容をぜひ参考にしてください。