介護ヘルパーが関連する事件はなぜ起きる?事例と対策を確認して未然に防ぐ
ニュースを見ていると、介護ヘルパーに関する事件を目にすることがあります。
介護ヘルパーとして働いている人や、これから転職を考えている人は、不安に感じるはずです。
そこで今回「みーつけあ」では、介護ヘルパーの現場で起きた事件について、事例や予防策を解説します。
「なぜ介護ヘルパーの職場では、悲しい事件が起きてしまうのか」「どうすれば防ぐことができるのか」を、一緒に考えていきましょう。
1.訪問介護の現場で実際に起きた3つの事件
介護に関する事件は、介護ヘルパーが被害者になる場合と、加害者になる場合があります。
ここでは、過去に実際に起こった事件を3つのケースに分けて見ていきましょう。
- 介護ヘルパー自身が加害者になるケース
- 介護ヘルパーが事件に巻き込まれた被害者
- 介護ヘルパーの事業者が事件を起こした事例
それぞれの事例から、自分の環境に当てはまるものはないか確認してみてください。
(1)介護ヘルパー自身が加害者になるケース
介護ヘルパーが、訪問先で盗みを働くなどの犯罪を起こし、加害者となるケースがあります。
介護ヘルパーとして働いていたAさんは、抱えていた借金の返済に苦しみ、勤務先の利用者さん宅から金品を盗み続けます。
窃盗による被害総額は、約318万円とのことです。
以前から利用者さんの家族は、お金の減りが早いことや大切なネックレスがなくなっていたことを不審に思っていました。
Aさんはよく働いていて、利用者さんもよい印象を持っており、始めは信用していたようです。
しかし、物がなくなることが増えたため、警察に被害届を提出。
Aさんが他の窃盗事件で逮捕されたとき、勤務時の窃盗も自白しました。
利用者さんとAさんは、家族ぐるみの付き合いになるほどの信頼関係を築いていたようです。
(2)介護ヘルパーが被害者になるケース
介護ヘルパーが、訪問先で被害者となるケースもあります。
2019年には、53歳の利用者さんが70歳の介護ヘルパーに暴行を加え、死亡してしまう事件がありました。
利用者さんは男性で、介護ヘルパーは女性です。
介護ヘルパーが利用者さんより高齢であったことから、力では敵わない状況でした。
事例では、死亡事件として報道されましたが、事実として性的な嫌がらせも受けていたことが明らかになっています。
(3)介護ヘルパーの事業者が事件を起こしたケース
介護ヘルパーや利用者さんではなく、介護事業者が事件を起こすケースもあります。
よくあるケースは、存在しない介護ヘルパーを稼働させていると嘘の申請を行い、介護報酬をだまし取る不正受給事件です。
厚生労働省の資料「指定取消効力停止処分あった介護保険施設 事業所等内訳」によると、不正受給によって効力の停止・指定取り消しされた事業所は、2018年だけで153件もあります。
指定取り消しを受けた事業所は、自治体から介護報酬が支払われません。
また、新規の指定事業所申請は、5年後以降でなければ認められなくなるので、ほとんどの場合廃業となります。
2.介護ヘルパーに関連した事件はなぜ起こる?
事件が起こる理由を具体的に考えることで、自分の周りでできる対策・解決策を考えられます。
ここでは、以下2つの理由から考えてみてみましょう。
- 介護する側とされる側の双方がストレスを抱えている
- 訪問介護は特殊な職場環境
どちらも介護ヘルパーとして働いていれば、1度は不満として感じたことがあるはずです。
介護する側とされる側の双方がストレスを抱えている
ストレスを抱えた状態では、犯罪が起こりやすくなります。
厚生労働省が2019年に行った、「令和元年度『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に 基づく対応状況等に関する調査結果」では、ストレスが原因で介護士が起こした虐待事件が年間170件にものぼることが明らかになりました。
人員が不足している事業所は、過酷な就労環境になることが多いです。
人手が足りないと1人あたりの業務負担が増え、精神的に苦痛を感じることもあるでしょう。
また、介助を受ける側もストレスを抱えています。
「怪我や病気のせいで、できないことが増えた」と、感じている利用者さんに出会ったこともあるはずです。
認知症でうまく思いが伝えられず、乱暴な行動を取ってしまう人もいます。
このように、双方が多少なりともストレスを抱えた環境であることは考慮しておかなければいけません。
訪問介護は特殊な職場環境
訪問介護の職場環境も、事件が起こる一因として考えられます。
介護ヘルパーが働く場所は利用者さんの自宅で、介助は基本的に1対1で行われるものです。
つまり、「他の人の目につかない環境で仕事を行う」ということになります。
利用者さんが見ていない隙に盗みを働いたり、身体的ではなく精神的に暴行を加えてしまう介護ヘルパーも過去にはいました。
魔がさしたとはいっても、人目があれば暴行や窃盗といった犯罪行為を踏みとどまるでしょう。
このように職場の環境が閉鎖的であることも、事件が起こりやすくなる1つの理由としてとして考えられます。
3.介護ヘルパーが事件に巻き込まれないための3つの対策
事件を起こさないことはもちろん、巻き込まれるリスクを少しでも減らすためには対策が必要です。
ここまで見てきた事例や、事件が起きる理由を思いだしながら、以下3点を確認してみてください。
- 人員が不足している職場は避ける
- 普段から報告・連絡・相談を行う
- 悪質な事業所に身を置かない
具体的に、自分の身を守る方法を頭に入れましょう。
対策1.人員が不足している職場は避ける
就活や転職で複数の事業所で面接を受けているなら、人員配置には注意しましょう。
業務負担の大きい職場は、個人の能力を超えた業務による事故やトラブルが起きやすいため、おすすめできません。
別の選択肢があれば、より人員に余裕のある職場を探すとよいでしょう。
ゆとりをもって働くことは、自身の健全な働き方につながり利用者さんに快適なケアを届けることができます。
対策2.普段から報告・連絡・相談を行う
業務の報告・連絡・相談は積極的に行いましょう。
事件になる前に、嫌味を言われる・体を触られるなどの「小さなトラブル」を抑制することで、予防につながります。
長く働いていると、些細なことに感じられるかもしれませんが、暴行やわいせつ行為といった犯罪につながる可能性は十分にあります。
こういった背景があるにもかかわらず、相談も対策も取らずに訪問先に通いつづけるのは非常に危険です。
上司に相談すれば、力の強い男性スタッフに切り替えるといった対策もできます。
普段から仕事の様子や内容を、職場内で共有しておきましょう。
対策3.悪質な事業所に身を置かない
介護報酬の不正受給や、過酷な労働環境の放置は事業者の怠慢です。
しかし、悪いのが事業者でも、職場が問題を起こせば当然働いている人間にも被害が及びます。
環境が変わらないようであれば、職場を変えることも検討してください。
勇気を持って辞める決断をすることは、悪質な業者を減らすことにつながります。
4.介護ヘルパーが事件を減らすために普段からできること
お互いが気持ちよくコミュニケーションを取ることで、事件のリスクは減らせます。
そのためには、利用者さんと良好な関係を築くことが大切です。
関係がよければ、介護ヘルパーは快適なケアを届けようと前向きな気持ちで仕事ができます。
利用者さんも、嫌な気持ちで介護を受ける場面が減るでしょう。
ここからは、4つのポイントに分けて信頼関係を築くコツを解説します。
- 利用者さんの気持ちを尊重する
- 話の聞き手となり共感する
- 聞く姿勢や動作も工夫する
- 利用者さんをよく観察する
もし実践していないことがあれば、ぜひ試してみてください。
コツ1.利用者さんの気持ちを尊重する
介護ヘルパーとしてではなく、1人の人間として利用者さんの気持ちを尊重しましょう。
体の自由がきかないことを理由に、自分を無意識に責めてしまう利用者さんもいます。
仕事としては介助する立場であっても、コミュニケーションではお互い同じ立場・目線に立って接するようにしてください。
気持ちを尊重していることは利用者さんにも伝わり、次第に心を許してくれるでしょう。
コツ2.話の聞き手になり共感する
話の聞き手になり共感することも、信頼関係を築くための大きなポイントです。
ただ相槌を打たれるだけでは、話している側も聞いてもらえているのか不安になります。
楽しい話をしているときには一緒に笑い、悲しい話をしているときには寄り添って聞くようにしてください。
言葉を出しにくい利用者さんを相手にするときは、言われた言葉をそのまま繰り返して確認を取ることも大切です。
利用者さんの思いや言葉を否定せずに共感することで、心が通じ合った円滑なコミュニケーションになります。
コツ3.聞く姿勢や動作も工夫する
介助を行いながらの会話にはなりますが、利用者さんが話しているときには目を見るといった、話を聞く姿勢に気を付けましょう。
上の空で聞かれていたら、誰でも不快に感じてしまいます。
忙しい業務のなかでも、できる限り利用者さんの目を見て話を聞くようにしてください。
立ち止まり、そして話に耳を傾けることも「立派な仕事の1つ」です。
目を見ることで、利用者さんは話を聞いてくれていると分かり、安心してくれるでしょう。
コツ4.利用者さんをよく観察する
どういったコミュニケーションが利用者さんにとって快適に感じるのか、日頃からよく観察してみてください。
普段からあまりコミュニケーションが得意ではなくて、会話が苦痛に感じている人もいるはずです。
また、手振り、身振りが大きい人ほど、よりコミニュケーションを取ろうとする気持ちが強いかもしれません。
もちろん、会話が苦手な利用者さんに対しては、無理に話しかける必要はないでしょう。
ですが、「本当は話したいけど、大きな声が出せないから話したくない」という人もいるはずです。
声が出せないなら筆談、言葉を話せないなら手振りや身振りなど、コミュニケーションの方法はたくさんあります。
利用者さんに合わせて臨機応変な対応をすることは、良好な関係性を築くうえで大切なスキルとなるでしょう。
まとめ
介護ヘルパーが過去に起こした事件や、巻き込まれた事件の概要から、トラブルにならないための対策まで見てきました。
ストレスが溜まった状態は、介護ヘルパーと利用者さんの双方ともによいことではありません。
この記事で紹介した対策も試して、事件に巻き込まれるリスクを少しでも減らすようにしましょう。
介護ヘルパーとして安心・安全に働くことは、利用者さんと利用者さん家族の満足にもつながるはずです。