介護ヘルパーにかかる料金相場はいくら?介護保険や軽減制度を使おう
「訪問介護を始めたいけど、介護ヘルパーの相場ってどれくらいなのだろう?」
このように、お悩みではありませんか。
たしかに、明確な費用が分からないと、申し込みづらいですよね。
在宅介護にかかる費用の相場は、月額6.9万円と言われています。
介護サービスに焦点をあてると、3.7万円程度です。
介護サービスの費用は、介護ヘルパーに依頼するサービス内容と、時間に応じて決定します。
今回「みーつけあ」では、介護ヘルパーにかかる費用や料金の軽減制度について、分かりやすく解説していきます。
また、施設へ入居した場合の相場も紹介しているので、比較検討の材料にしてください。
介護ヘルパーの相場や、在宅介護に係る費用を知って、ご本人も家族も快適に過ごせる選択肢を見つけましょう。
1.介護ヘルパーに依頼する費用は時間とサービス内容で決まる
介護ヘルパーにかかる費用は、依頼するサービス内容と時間によって決まります。
厳密にいうと、サービス内容と時間によって決められた「単位」があり、単位に応じて費用が算出されるのです。
基本的なサービスの点数は、以下のように厚生労働省で定められています。
サービス内容 | 時間 | 単位 |
---|---|---|
身体介護 | 20分未満 | 167単位 |
20分以上30分未満 | 250単位 | |
30分以上1時間未満 | 396単位 | |
1時間以上 | 579単位に30分増すごとに+84単位 | |
生活援助 | 20分以上45分未満 | 183単位 |
45分以上 | 225単位 | |
通院等乗降介助 | 1回あたり | 99単位 |
訪問入浴介護 | 1回あたり | 1,260単位 |
基本の費用に対して、夜間・早朝や2人以上の介護ヘルパーによる対応などの、オプション費用が加算されます。
費用は、1単位10円を基準に計算します。
たとえば、身体介護20分以上30分未満であれば、250単位×10円=2,500円です。
しかし、地域によって人件費や家賃に変動があるため、0〜20%の範囲で割増されます。
地域によって、1単位11円で計算されることもあるので、注意しましょう。
介護保険の仕組み
介護ヘルパーのサービスを受けるときには、介護保険を利用できます。
介護保険を利用すれば、介護サービスは原則1割の自己負担です。
つまり、あなたが支払う費用は、サービス料金の1割で済みます。
ただし、前年度の所得に応じて、自己負担率が2割や3割になるので注意しましょう。
前年の所得 | 負担割合 |
---|---|
年金収入等340万円以上 | 3割 |
年金収入等280万円以上 | 2割 |
年金収入等280万円未満 | 1割 |
参考:介護保険における現役世代並みの所得のある者の利用者負担割合の見直し│厚生労働省
65歳以上になると、介護保険被保険者証が自治体より交付されます。
介護保険サービスを受けるためには、介護認定に必要な手続きを自治体で行わなければなりません。
要介護のレベルによって、利用できる限度基準額が単位で定められています。
要介護状態区分 | 区分支給限度基準額 |
---|---|
要支援1 | 5,032単位 |
要支援2 | 10,531単位 |
要介護1 | 16,765単位 |
要介護2 | 19,705単位 |
要介護3 | 27,048単位 |
要介護4 | 30,938単位 |
要介護5 | 36,217単位 |
1ヶ月ごとに利用した単位が計算されて、限度基準額を超えた分は全額自己負担となります。
2.在宅介護にかかる相場は月額6.9万円
介護ヘルパーの費用の考え方が分かっても、「実際どれくらいかかるの?」と気になりますよね。
在宅介護が必要な家庭を対象にした「在宅介護のお金と負担」の調査の結果、在宅介護にかかる相場は、月額6万9,000円であることが分かりました。
この数字は実際に支出した額であり、介護保険を適用させた場合の相場です。
費用のなかには、介護ヘルパーに支払う介護サービスの利用料や医療費、おむつ代なども含まれています。
もちろん、サービス内容や頻度によって費用は異なりますが、目安として覚えておきましょう。
介護サービスの支出相場は3.7万円
「在宅介護のお金と負担│公益財団法人家計経済研究所」によると、在宅介護にかかる費用のうち、介護サービスにあたる支出の相場は月あたり3万7,000円です。
調査では、要介護レベルが高ければ高いほど、支出額も高くなっていることが分かりました。
介護保険では、要介護のレベルによって月あたりの支給限度額が決まっています。
限度額の範囲なら自己負担が1割ですが、超えてしまうと原則全額自己負担です。
多くの世帯においては介護保険の限度額範囲内に収まっており、全額自己負担はほとんど発生しません。
しかし、急に要介護者の状態が悪化したり、家族の都合で介護サービスを多く受けたりすると、全額自己負担分の支出も発生します。
家族の協力度合いによって、費用が大きく変動することを理解しておきましょう。
介護サービス以外の支出相場は3.2万円
「在宅介護のお金と負担│公益財団法人家計経済研究所」からは、介護サービス以外の支出相場は、月あたり3万2,000円という結果も出ています。
介護ヘルパーが行う介護サービス以外にも、在宅介護では支出が発生するわけです。
内訳は、以下のとおりです。
項目 | 費用の相場(月あたり) |
介護用品 (おむつ代・介護食など) | 13,000円 |
医療費 | 7,000円 |
税金・社会保障費 | 7,000円 |
その他 (日用品・化粧品など) | 4,000円 |
介護リフォームや医師の往診などが必要な場合は、相場以上の費用が発生すると考えておきましょう。
3.介護ヘルパーの利用で使える料金軽減制度
介護ヘルパーを利用するときには、できるだけ費用負担を軽くしたいですよね。
そこで、知っておきたい料金軽減制度が2つあります。
- 高額介護サービス費
- 高額医療・高額介護合算制度
詳しく確認していきましょう。
高額介護サービス費
高額介護サービス費とは、1ヶ月に支払った介護サービスの負担の合計が限度額を超えたとき、超えた費用を払い戻してもらえる制度です。
負担限度額は、所得によって定められています。
令和3年8月1日以降のサービスから、高所得者世帯にも負担限度額が新設されました。
所得区分 | 負担の上限額(月あたり) | |
新設 | 課税所得690万円(年収約1,160万円)以上 | 140,100円(世帯) |
課税所得380万円(年収約770万円) 〜課税所得690万円(年収約1,160万円)未満 | 93,000円(世帯) | |
据え置き | 市町村民税課税〜 課税所得380万円(年収約770万円)未満 | 44,400円(世帯) |
世帯の全員が市町村民非課税 | 24,600円(世帯) | |
世帯の全員が市町村民非課税であり、 前年の公的年金等収入金額 +その他の合計所得金額の合計が80万円以下の方等 | 24,600円(世帯) 15,000円(個人) | |
生活保護を受給している方等 | 15,000円(世帯) |
参考:令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます│厚生労働省
対象は、自治体から要介護・要支援の認定を受けた人のみです。
条件を満たしたうえで、高額介護サービス費の支給対象となった場合、自治体から支給申請書が送付されます。
申請書を提出すれば支給決定通知書が届き、口座へ返金されるので、しばらく待ちましょう。
一度申請すると、2回目以降は自動的に返金されます。
高額医療・高額介護合算制度
高額医療・高額介護合算制度は、1年間の医療保険と、介護保険の自己負担額が高額である場合に利用できる制度です。
制度を利用すれば、自己負担額を軽減できます。
高額医療・高額介護合算制度を利用するには、以下の2つの条件を満たさなければなりません。
- 国民健康保険・被用者保険・後期高齢者医療制度の各医療保険における世帯内である
- 1年間の医療保険と介護保険の自己負担合算額が限度額を超えた世帯である
70歳以上の一般所得世帯は、56万円が上限です。
限度額は所得や加入している保険、年齢によって細かく定められています。
医療保険の窓口で、基準限度額がいくらなのかを算定してもらいましょう。
高額医療・高額介護合算制度を利用するためには、加入している医療保険の窓口へ申請が必要です。
国民健康保険や後期高齢医療制度に加入している人は、自治体からお知らせが届きます。
健康保険組合に加入している場合は通知がないため、自己負担額を計算して組合に確認をしましょう。
4.介護ヘルパー以外の施設を利用したときの相場
ここまで、介護ヘルパーを雇って在宅介護をするときの費用に焦点を当てて見てきました。
しかし、重度の介護が必要だったり、家族が介護に時間をかけられないのであれば、施設の利用も検討しましょう。
たとえば、以下に挙げた3つの施設に必要な料金相場を比較してみてください。
- 有料老人ホーム
- 特別養護老人ホーム
- ケアハウス
それぞれの特徴も解説しているので、ぜひ参考にしてくださいね。
有料老人ホームの相場
有料老人ホームとは、高齢者の心と体を健康に保つために必要な、食事・家事・健康管理・介護を行う施設を指します。
有料老人ホームの相場は、月額10〜50万円と幅広いです。
民間企業が運営しているため、サービス内容に応じて価格が決まります。
また、施設の種類によっても費用は変動します。
種類 | 入所一時金 | 月額費用 | 提供されるサービス |
---|---|---|---|
介護付有料老人ホーム | 0円〜数千万円 | 10〜50万円 | ・生活支援 ・身体介護 ・食事サービス ・リハビリ ・レクリエーションなど |
住宅型有料老人ホーム | 0円〜数千万円 | 10〜30万円 | ・生活支援 ・食事サービスなど |
健康型有料老人ホーム | 0円〜数千万円 | 10〜40万円 | 家事サポート 食事サービスなど (要介護になった場合は退去しなければならない) |
入所一時金がかかる有料老人ホームは、少なくありません。
なかには、入所に数千万円かかるケースもあります。
保険は適用されず、提供されるサービス内容によって、価格は大きく変動します。
必要なサービスを見極めて、入所することが大切です。
特別養護老人ホームの相場
特別養護老人ホームは、在宅での自立した生活が困難になった要介護3以上の高齢者向けの施設です。
食事・入浴・排泄のサポートや健康管理、リハビリ、生活支援、レクリエーションといったサービスを受けられます。
相場は月あたり5〜13万円程度となり、入所一時金はかかりません。
低所得世帯であれば、食費・住居費の負担軽減も受けられます。
公的施設で費用負担が少ないため、入居待ちが発生するほど人気の施設です。
入居を考えているのであれば、早めに空きを調べましょう。
ケアハウスの相場
ケアハウスとは、家庭で自立した生活が困難になった60歳以上の方を対象とした施設です。
食事のサービスや入浴介助、緊急時の対応、レクリエーションといったサービスを受けられます。
食事や入浴のサポートをしてもらえますが、通常の家のように自由に暮らせることも特徴です。
相場は月あたり6〜20万円程度となり、入所一時金は施設によってバラバラです。
ケアハウスの、代表的な2種類の施設をみてみましょう。
種類 | 入所一時金 | 月額費用 | 対象者 |
---|---|---|---|
一般型 | 0円〜30万円 | 6万円〜10万円 | 60歳以上の高齢者で自立した生活に不安のある方 |
介護型 | 数十万円〜数百万円 | 6万円〜20万円 | 要介護度1以上で65歳以上の方 |
重度な介護は不要でも、1人での生活に不安のある高齢者に向いている施設です。
5.費用面以外の介護ヘルパーを利用する影響
「介護ヘルパーにお願いして在宅介護をするか」「施設に預けるか」を費用面だけで決定してしまうと、後悔することになりかねません。
というのも、在宅介護をすることで、費用以外の負担も発生するからです。
公益財団法人家計経済研究所の「在宅介護のお金と負担」の調査では、以下の影響に言及しています。
- 家計
- 介護者と家族の関係
- 仕事上の困難
結果は、在宅介護をおこなう半数以上の世帯で、世帯の総収入が減少していました。
収入減の原因は、介護による仕事の休みすぎや、仕事の質が落ちた(満足できない)ことが挙げられます。
在宅介護のために、仕事を離職する人も少なくありません。
また、在宅介護をするうえで、「家族と過ごす時間が減った」「他の家族に手が回らなくなった」「家族と意見があわなくなった」と、感じる人も多いです。
さらに、要介護者だけでなく、他の家族との関係にも影響する可能性があります。
このような調査結果を見ると、「費用を抑えるために在宅介護をする」という選択が家族にとってふさわしいのか、いま一度考えるべきといえるでしょう。
在宅介護をするために仕事を辞めたり、仕事に身が入らなかったりすると家計が減って本末転倒です。
在宅介護は、どうしても家族の時間と労力の負担がかかってしまいます。
家族みんなで共倒れになってしまう前に、きちんと話し合いの機会を設けましょう。
費用以外の影響もしっかりと考慮し、施設への入居も前向きに検討することをおすすめします。
6.介護ヘルパーの費用相場で気になるQ&A
最後に、介護ヘルパーの費用相場に関して気になることを、Q&A形式にまとめてみました。
お答えする疑問は、以下の3つです。
- 介護ヘルパー以外に依頼したほうがよいケースは?
- 介護ヘルパーが早く帰るけど料金は変わらない?
- 今後料金があがる可能性はある?
順番に見ていきましょう。
Q1.介護ヘルパー以外に依頼したほうがよいケースは?
A. 家族による介護ができない状況であれば、介護ヘルパー以外に依頼することをおすすめします。
- 家族が遠方に住んでいる
- 家族が体調不良で介護ができない
上記のようなケースに当てはまる場合、介護ヘルパーのサービスを受けているとき以外は、要介護者一人で過ごすことになります。
一人で在宅しているときに急な体調悪化があると、そのまま死に至る可能性も否定できません。
緊急事態にも対応してくれる介護施設へ入居することを検討しましょう。
Q2.介護ヘルパーが早く帰るけど料金は変わらない?
A.短縮された時間によっては、料金が変わることもあります。
たとえば、「30分以上1時間未満」の身体介護サービスを依頼しているのに30分未満で終わった場合は、条件を満たしていません。
サービス時間に応じて、「20分未満」や「20分以上30分未満」の区分で算定されます。
しかし、「30分以上1時間未満」の身体介護サービスを依頼して、40分で終了しても料金は変わりません。
早く帰る介護ヘルパーが気になるのなら、実際にサービスを受けた時間はどの程度だったのか記録し、ケアマネージャーに相談しましょう。
Q3.今後料金があがる可能性はある?
A.料金があがる可能性は、あります。
以下の場合に当てはまれば、介護にかかる料金があがるかもしれません。
- 介護ヘルパーの利用頻度が増えた
- 認知症によって点数が加算された
- 所得が大幅に増えて自己負担割合や高額介護サービス費の限度額が増えた
要介護者の容態は年々悪化するのが一般であるため、介護サービスはどんどん変化していきます。
そのため、費用が上がる可能性は大いにある、と言えるでしょう。
介護サービス内容や頻度も変わらないのに料金が上がった場合は、所得によって自己負担額が増えた可能性も考えるべきです。
また、今後の法改正によって負担額が増える可能性も否定できません。
在宅介護を始めたときから、その後10年間ずっと同じ料金であるケースは少ないです。
要介護者の介護状態や家族の状況に応じて、受ける介護サービスの内容を検討しましょう。
まとめ
介護ヘルパーにかかる費用は、時間とサービス内容によって変わります。
介護保険を利用することで原則自己負担は1割です。
さらに、高額介護サービス費や高額医療・高額介護合算制度を活用することで、実質の負担額を軽減できます。
在宅介護は、費用の負担に限らず、家族の時間や労力も必要とする事柄です。
家族としっかり話し合い、施設に入れることも前向きに検討することをおすすめします。
要介護者本人にも家族にも最適な介護が行えるように、必要な介護サービスを上手に活用しましょう。