介護ヘルパーによる通院介助は保険適用される?自費ケースまでを解説
「介護ヘルパーによる通院介助は保険が適用できる?」
「家族の通院にすべて付き添うスケジュールを組むのが難しい」
「通院介助について詳しく知りたい」
通院介助は意外に時間がかかるし、スケジュールを合わせにくくて大変ですよね。
いきなりの事故や怪我だと、さらに予定が組みにくくなるものです。
今回「みーつけあ」では、介護ヘルパーによる通院介助の仕組みについて詳しく解説をしています。
また、実際に保険はどの範囲まで適用できるのか、どの対応が自費となるのかといった点までわかりやすく説明していきます。
ぜひ最後まで読んで、スケジュールに左右されない毎日を得る参考としてください。
1.介護ヘルパーは介護保険+自費で通院介助に対応可能
結論から述べると、介護ヘルパーは通院介助に対応可能です。
しかしその場合は、介護保険適用範囲と介護保険適用範囲外が混在することになります。
つまり、「介護保険による10%~30%の実質負担額」+「自費サービスによる実費負担額」を合わせた支払いになるということです。
なぜ、このように細かく分ける必要があるのでしょうか。
その理由を、これから説明していきます。
2.介護ヘルパーの通院介助は大きく分けて2種類
介護ヘルパーによる通院介助は、「介護保険適用サービス」と「自費サービス」に分けられます。
介護保険サービスには「介護保険」が適用されて、利用者の実質負担額は10%~30%に抑えられます。
一方で、ペットの散歩や洗車など、利用者のニーズには沿っていても「介護保険」の適用が認められない事柄があります。
こういったニーズを満たすために各事業者は、かかった時間や手間の分だけお金をもらう実費サービスを取り揃えています。
- 介護保険適用サービス
- 自費サービス
2点の違いを詳しく見ていきましょう。
介護保険適用サービス
介護保険適用サービスとは、その名前が示すとおり介護保険が適用され、実質負担額が抑えられるサービスのことです。
訪問介護以外にも、施設への短期入所や特別養護老人福祉施設への入居の際に用いられます。
訪問介護における介護ヘルパーの業務としては、入浴、排せつ、食事などの介護である「身体介護」と、洗濯や掃除などの家事代行を行う「生活支援」の2つが大きな内容です。
また、訪問看護や訪問リハビリなども、介護保険適用サービスに含まれます。
自費サービス
自費サービスとは、介護保険適用外のサービスのことです。
介護保険は適用されませんが、各事業者がよりサービスに厚みを持たせるためのプランとして持っているケースがあります。
介護保険が適用されないことでサービスの幅が広がり、介護認定を受けていない人でも同様のサービスを受けることが可能です。
具体的な内容としては、「家具の移動や修繕、ペットの散歩、庭に生えている草木の手入れ」などが挙げられます。
こうしたサービスについて各事業者が「1時間につき○○円」「1回につき○○円」と価格を定めています。
3.介護ヘルパーの通院介助は認定で変わる
介護ヘルパーの通院介助に介護保険を適用できるかどうかは、要介護認定の程度によって変わります。
内訳による介護保険利用可否は、以下のとおりです。
- 要支援1・2→適用できない
- 要介護1~5→適用できる
日常生活をほぼ問題なく送れる、あるいは介護予防サービスの利用によって状態の改善が見込まれる「要支援者」は、通院介助に介護保険を適用できません。
- 要介護者は通院介助に保険が一部適用される
- 要支援者は通院介助は自費サービスとなる
両者の違いを見ていきましょう。
要介護者は通院介助に保険が一部適用される
要介護度が1から5に認定されている人は、保険が一部通院介助に適用されます。
しかし、「家を出発して病院で診察を受け、再び家に帰ってくる」という一連の行動すべてに対して保険が適用されるわけではありません。
実際に保険が適用されるのは、下記の行動を取っている間です。
- 自らの運転する車両への乗車・降車の介助
- 乗車前・乗車後の屋内外での移動等の介助
- 通院先・外出先での受診等の手続き・移動等の介助
この点については、改めて詳しく触れていきます。
要支援者は通院介助は自費サービスとなる
要支援者も通院介助を受けることはできますが、一連のサービスに介護保険は適用されません。
厚生労働省の資料「各介護サービスについて」には、「要介護者である利用者に対して~」とはっきり書かれています。
「要支援者」については触れられておらず、通院等乗降介助のサービス提供範囲として想定されていないことが分かります。
事業者が通院が必要な利用者に対して、通院介助のサービスを提供するのは自由ですが、あくまでも保険適用外であるということを覚えておきましょう。
4.通院介助の注意点は「介護保険の適用範囲」
訪問介護における介護保険適用範囲は、基本的に「自宅内でのサービス提供」が想定されています。
厚生労働省の資料「介護保険制度について」においても、訪問介護は「自宅で利用するサービス」に含まれています。
そうはいっても、「自宅から出かけるときや帰って来るとき」には介助が必要です。
このようなニーズを満たすのが、「通院等乗降介助」です。
- 自らの運転する車両への乗車・降車の介助
- 乗車前・乗車後の屋内外での移動等の介助
- 通院先・外出先での受診等の手続き・移動等の介助
つまり、このタイミング以外は保険適用外となります。
では、以下のようなシチュエーションではどのような対応となるのでしょうか。
- 適用されるのは自宅から病院までの移動間がメイン
- 一回の通院介助に介護保険適用料金+自費料金を組み合わせる事業所が多い
シチュエーションに応じて、詳しく見ていきましょう。
適用されるのは自宅から病院までの移動間がメイン
厚生労働省が示している保険の適用範囲内を、外出スタート時から流れを追って確認していきます。
- 利用者の車椅子を押して家から車に向かう→適用
- 車から病院に向かう間→適用外
- 病院に到着し、病院入口まで向かう→適用
- 診察間→適用外
- 病院から車に向かう→適用
- 家に帰る間→適用外
- 家に到着し、家のなかに入るまで→適用
保険の適用・適用外はこの流れのとおりです。「車椅子を押している間だけ」「車の乗降介助を行っている間だけ」しか適用されないということがお分かりいただけたでしょうか。
このように、通院介助は移動間のみに限られます。
診察などの間は適用されない
「診察の間も介助に入るのでは?」とお考えの人もいるかもしれませんが、診察の間も介護保険は適用されません。
病院に入った後は基本的に病院内のスタッフが付き添うことになり、介護ヘルパーの介護とはなりません。
例外的に、病院内における排せつなどの際には介護ヘルパーによる補助がカウントされるケースもありますが、各地方自治体の「医療保険」の取り扱いによって状況は異なります。
基本的に算定されるのは、「直接利用者の介助を行っている場合」に限られます。
一回の通院介助に介護保険適用料金+自費料金を組み合わせる事業所が多い
「無給の時間が発生してしまう」という問題を解決するために、各事業者は介護保険が適用されない時間帯を自費料金として設定しています。
つまり、移動前後における介助の時間は介護保険を適用させ、診察の際や移動中などは別料金を利用者からもらうという手法を取っているということです。
こうした取り組みにより、事業者は大きな負担なく通院介助に対応できる仕組みを整えています。
利用者あるいは家族にとっては費用が大きくなるため、金額と時間、手間のバランスなどを考えながら、各状況にふさわしい対応を取っていくことになります。
5.介護ヘルパーによる通院介助の料金例
では実際に通院介助には、どの程度の料金がかかるのでしょうか。以下のシチュエーションを想定して計算してみましょう。
【前提条件】
- 車両乗降介助・徒歩移動の際に使用する時間→50分(396単位)
- 診察等の待機時間→2時間
- 自費サービス→3,000円/h
- 介護保険単位単価→10円
3,000円×2時間=6,000円
396円+6,000円=6,396円
このケースにおいては、1回の通院で6,396円が必要な計算となりました。
あくまでもシミュレーションではありますが、介護保険が適用されない分の金額が多くの割合を占めていることがわかります。
6.2021年の「介護報酬改定」により保険適用範囲が拡大
なにかと制約が多い介護ヘルパーによる通院介助でしたが、2021年4月の「介護報酬改定」により保険適用範囲が拡大されました。
病院から病院、あるいは介護施設から病院への移動も介護保険が適用されるようになったのです。
通院等乗降介助について、目的地が複数ある場合であっても、居宅が始点又は終点となる場合には、その間の病院等から病院等への移送や、通所系サービス・短期入所系サービスの事業所から病院等への移送といった目的地間の移送に係る乗降介助に関しても、同一の事業所が行うことを条件に、算定可能とする。
この改定によるメリットは以下のとおりです。
- 複数の病院を掛け持ちできる
- 介護施設から病院への移動に対応できる
- 規制緩和により家族もスケジュールが組みやすくなる
それぞれ、チェックしてみてください。
複数の病院を掛け持ちできる
介護報酬改定によって一番大きく変わったのは、「複数の病院を一日に掛け持ちすることができるようになった」という点です。
これまでは制度上、病院から病院への移動は保険が適用されませんでした。
そのため、「一日に介護ヘルパーと行ける病院は一つまで」あるいは、「2つ目の病院に行く前に一度帰宅しなけれないけない」というわずらわしさがあったのです。
しかし、2021年4月の改定により、住居が始点か終点になる場合には病院間の移動にも保険が適用されるようになりました。
介護施設から病院への移動に対応できる
改定による2つ目の大きな変化は、「介護施設から病院に直接移動できるようになった」という点です。
つまり、事業者がショートステイやデイサービスなどのサービスを提供している際には、サービス提供日程と病院に行く日程を組み合わせることが可能となります。
たとえば、「午前中→デイサービス、午後→病院に付き添い、診察終了後付き添いにて帰宅」というスケジュールが組めるようになりました。
こうした取り組みによって、利用者と事業者ともにスケジュールの幅が大きく広がっています。
規制緩和により家族もスケジュールが組みやすくなる
規制が緩和されたことによって利用者本人だけではなく、家族も介護スケジュールを立てやすくなりました。
自費サービスを利用すると、どうしても費用が高くついてしまいます。
そのため、「スケジュールをむりやり調整したうえで介護者の通院に付き添う」といった事例も、状況によって選ばざるを得なかったケースもあります。
しかし、複数の病院間の移動にも介護保険が適用されることによって、支出がより抑えられることになりました。
費用面の心配がなくなることで、スケジュールの組み立てに幅が出たのは、家族にとっても大きなメリットです。
7.介護保険で通院等乗降介助に対応してくれる「介護タクシー」という制度も
介護保険が使えるシステムの一つとして、要介護者の移動を助ける「介護タクシー」という制度もあります。
車椅子のまま乗り降りができる車を使用していることや、運転手が介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)といった専門資格を有していることが大きな特徴です。
この介護タクシーによるサービスは、訪問介護における「通院等の乗降介助」に分類されるため、要支援者は利用することができません。
あくまでも、要介護者向けのサービスとして、通院や買い物などの「必要な外出」に対応しています。
まとめ:付き添えないなら介護ヘルパーを頼もう
この記事では、介護ヘルパーによる通院介助の情報を知りたいとお考えの人向けに、概要や介護保険を適用できる人・できない人の違い、具体的なシステムなどの確認をしてきました。
実費負担という側面が利用に大きく影響していた通院介助ですが、介護報酬改定によって使いやすさはより増しています。
家族がどうしても付き添えないという状況では、介護ヘルパーに依頼をして付き添ってもらうケースも出てくるでしょう。
サービスを受けるメリットと費用のバランスを考えながら、有効にこの制度を使えるよう家族で話し合いをしてみてはいかがでしょうか。