介護ヘルパーの料金が自費ならできるサービスで「足りない」を補おう
介護ヘルパーに依頼できることは、「それはできるのに、これはできないの?」という線引きが細かく設定されていて、利用者も介護ヘルパーも複雑な思いを抱く瞬間があります。
この複雑でもどかしい思いをクリアにして、利用者のニーズに応えたサポートを行えるのが、料金自費の「介護保険適用外サービス」です。
利用者が料金を全額負担するサービスとなりますが、まさに痒い所に手が届くため、利用者も介護ヘルパーも充実感に包まれます。
今回「みーつけあ」では、利用者と介護ヘルパーの「足りない」を補う自費サービスの種類や、メリット・デメリットなどを解説します。
介護ヘルパーのサポート範囲が、自費になるとどこまで広がるのか見ていきましょう。
1.介護ヘルパーの料金が自費なら提供できるサービスが増える
各事業所が提供している介護サービスは、介護保険の適用範囲内で行われます。
そのため、もう1歩踏み込んだ生活支援サービスは、惜しくも提供できません。
介護保険のケアプランは、利用者の部屋の掃除はできるのに、窓拭きまではできないなど、できることとできないことの線引きがとても明確です。
利用者が本当に望む依頼を叶えてあげるには、「介護保険適用外サービス(自費)」を利用する他ありません。
事業所で制限されているサービスを、介護保険適用外サービスによって提供できることは、介護ヘルパーにとっても利用者にとっても、大きな喜びとなります。
2.介護ヘルパーの料金が自費になると提供できるサービス例
自費サービスの料金は、1時間いくらと定めている事業所が多いです。
基本的なプランに加えて、15分単位で料金が加算されたり、1回2時間から利用可能と最低利用時間や金額を定めていたり、料金プランは事業所によりさまざまとなります。
自費サービスを提供するいくつかの事業所を調査したところ、1時間あたりの料金相場は4,250円ほどです。
ここからは、どのようなあサービスが提供されているのか、例をいくつか紹介します。
サービス1.家族の食事作り
保険内サービスでは、利用者の食事の準備や後片付けはできても、家族の分や利用者以外の食事は調理、配膳、片付けができません。
しかし、自費となれば、利用者の家族の分まで食事の準備が可能です。
「要介護ではないが、一緒に暮らす高齢のパートナーに栄養が摂れるご飯を作ってほしい」といった希望にも応えられます。
サービス2.共用スペースの掃除
介護ヘルパーは、利用者が使用する居室やスペースのみ清掃が可能です。
また、お風呂の清掃はできても、カビとりや換気扇の掃除まではできないといった細かなルールがあります。
これらは、大掃除に分類されてしまうため介護サービスでは行えません。しかし、自費なら大清掃サービスも依頼が可能です。
きれい好きでこまめに掃除をしてほしい利用者にとっては、心身のサポートにもつながりますね。
サービス3.家族の衣類も含めた洗濯
介護保険では、基本的に利用者以外に関する事項についてはサービス対象外です。
したがって、家族の衣類を含めた洗濯は行えません。
しかし、自費サービスを利用すれば、家族の衣類もまとめて洗濯できます。
衣類を畳んだり、収納したりといった細かなお手伝いまで可能です。
身の周りのことや家事ができない利用者や、介護認定を受けていなくとも、家族の衣類を含めた洗濯が負担になっている高齢者などをサポートできます。
サービス4.通院の付き添い
保険範囲内では、乗車前と降車後の乗降介助を行えます。
病院へ向かう車への乗り降りや、病院内での車椅子への乗り降りなどです。
ただし、病院への付き添いや、待合で一緒に待つことは保険内サービスでは対応できません。
自費サービスを利用すれば、病院へ一緒に行き、呼ばれる間も利用者と一緒に待てます。
家族が同行できない利用者や、独居の高齢者も安心です。
サービス5.外出の付き添い
自費サービスでは、散歩、嗜好品の買い出し、映画など、利用者の外出に同行する身体介護が可能です。
外出は娯楽に分類されるものがほとんどのため、保険範囲内では対応できないものが大半となります。
ひとりでは外出が難しい利用者に付き添うことで、趣味や息抜きの時間を安心して過ごせるでしょう。
サービス6.冠婚葬祭の付き添い
自費サービスでは、冠婚葬祭の付き添いやお墓参りといった特別な外出の付き添いができます。
頻繁にあるわけではない冠婚葬祭での外出は、行き慣れない場所への移動とあって不安を抱く人が多いです。
介助のプロがサポートしてくれるとあれば、安心して冠婚葬祭に足を運べます。
サービス7.定期的な見守りや安否確認
どちらも介助のついでにできそうなことですが、実際にやろうとすると難しい項目です。
同居家族が不在の時の見守りや、利用者の話し相手になるといったことでも、保険範囲内のサービスでは行えません。
自費サービスでは、「数時間家を空けるから、祖父を見ていてほしい」「脳の活性化やストレス発散に、要介護の妻の話し相手になってほしい」といった、家族の不安に寄り添うことができます。
サービス8.金銭管理や契約書の記入
お金の引き出しや金銭の管理などは保険内サービスでは行えません。
しかし、自費サービスでは可能となります。
「ひとりで暮らす物忘れが激しい母のお金の管理が心配」といった家族の不安に、介護ヘルパーが寄り添うことができるのです。
サービス9.年末年始の大掃除や洗車
住居が汚れていくのをただ眺めるだけしかできないというのは、これまで家をきれいに保ってきた利用者にとって苦痛とも言えます。
自費サービスでは年末年始の大掃除や、日常の細かな清掃、洗車などにも柔軟に対応可能です。
快適な住まい環境を整えて、利用者の暮らしの質向上を測ります。
サービス10.訪問理容師の依頼
身なりを整えることは、快適な生活を送るうえで大切なこと。
介護ヘルパーの利用者には「髪を切ってほしい」という要望が少なくありません。
髪を切るには、専門知識やスキルが必要です。
そのため介護保険内サービスでは、理髪を行うことはできません。
自費サービスを通してその道のプロに依頼すれば、訪問理容師や訪問看護師によるサポートを提供できます。
▼訪問介護のできること・できないことに関する記事はこちらから。
>>訪問介護ヘルパーに頼めることって?できること・できないことを紹介
>>介護ヘルパーの医療行為は禁止?実態やできること・できないことについて
3.料金が自費の介護ヘルパーで働く3つのメリット
自費の介護保険適用外サービスで働くメリットは以下の3つです。
- できなかったことまで支援できる
- 指名してもらえて気持ちが伝わる
- できなかった経験ができる
自費の介護サービスでは、介護保険適用範囲内でのサポートで得られないことを、多く吸収できます。
介護ヘルパーとしてのやりがいをより強く感じることで、スキルアップが見込めるでしょう。
メリット1.できなかったことまで支援できる
利用者の生活をよりよくするための支援を行う介護保険適用外サービスは、介護ヘルパーにとってやりがいを感じられる瞬間に出会えます。
- 苗木の手入れが毎日の楽しみで、要介護になってからはそれが出来なくて元気がない
- きれい好きな利用者が、汚れた窓を見て悲しそうな顔をしていた
- 家族に手作りのご飯を作ってあげられなくて、もどかしい思いをしている
- 読書が趣味だが、介護保険範囲内のサポートでは本の買い出しや、書店への付き添いを依頼できない
介護保険適用外サービスでは、利用者がこれまでしていた毎日のルーティーンを代行したり、趣味の継続をお手伝いしたり、より広い範囲でのサポートが可能です。
利用者だけでなく、「やってあげたいけど、できない」という介護ヘルパーのもどかしい思いも消化できるのは、大きなメリットといえるでしょう。
メリット2.指名してもらえて気持ちが伝わる
すべての事業所に当てはまることではありませんが、指名制度を取り入れている事業所では、自費サービスにおける指名が介護ヘルパーにとって、大きなやりがいにつながります。
指名は、利用者と介護ヘルパーの信頼関係を表す顕著なものです。
また、「〇〇事業所のヘルパーさん」ではなく「介護ヘルパーの〇〇さん」と、ひとりの介護ヘルパーとして認めてもらったことが目に見えて分かる嬉しい瞬間です。
メリット3.できなかった経験ができる
映画やショッピングへの付き添いなど、介護保険適用内の介護ヘルパーでは得られなかった経験ができる点も、介護保険適用外サービスの大きなメリットです。
- 利用者の愛犬の散歩
- 映画やショッピングへの付き添い
- 庭の草むしり
一見すると、日常生活には必要ないような項目でも、利用者にとっては欠かせないことは多くあります。
介護保険適用外サービスでは、イレギュラーな対応や、必要最低限ではないと弾かれていたサポートまで経験できるため、介護ヘルパーの経験値を上げる大きなチャンスです。
「ケアとは何か」という、本質を考えるよい機会となります。
4.料金が自費の介護ヘルパーで働く2つのデメリット
介護ヘルパーとしてのやりがいを感じられる一方で、自費の保険適用外サービスにはデメリットもあります。
以下2点を、確認してみましょう。
- 費用対効果が求められる
- 24時間対応で夜間の仕事がある
自費での介護サービスは、介護保険の適用範囲内で働くときよりも、利用者さんの期待値が高まります。
時間帯の制限も無くなり、介護ヘルパーの責任や負担が増えてしまう点がデメリットです。
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
デメリット1.費用対効果が求められる
自費の介護サービスは1時間の利用料金が決して安くありません。
そのため、お金をもらった分だけサービスの質が求められます。
はじめて利用する場合、費用が高い事業所ほどよりよいサービスを受けられると考える人は少なくないでしょう。
その期待による介護ヘルパーの精神的な負担があることは確かです。
デメリット2.24時間対応で夜間の仕事がある
事業所によりサービス提供時間は異なりますが、一般的に早朝や深夜はサービスの提供を行っていないことがほとんどです。
一方、介護保険適用外サービスは対応案件が幅広くなります。したがって、早朝や夜間も柔軟に対応可能です。
同居する家族の負担を減らしたいときや、万が一のときに頼れるという点で需要があります。
ただし、こうした24時間対応の事業所の場合は夜間や朝早くから働くケースも珍しくありません。
働き手にとっては、体力面でのデメリットとなる可能性があるのです。
気になる自費サービスの介護ヘルパーについての疑問を回答!
介護ヘルパーの自費サービスについて、気になるQ&Aを紹介します。
ここで紹介する疑問は、以下の3点です。
- 自費サービスで開業したいけど需要はある?
- 看護師でも自費サービスで提供できる?
- 入浴サービスは自費だとどのくらいの料金がかかる?
それぞれ詳しく解答しているので、気になる質問からご覧ください。
Q1.自費ヘルパーで開業したいけど需要はある?
A.自費サービスは、要介護・要支援認定者の他に、その家族や、一般の高齢者など幅広い層が利用可能です。
高齢化社会が進むこの時代において、要介護や要支援認定を受けていない元気な高齢者も、日常生活の維持のために自費サービスを利用したいという人は多くいます。
- 慣れない交通機関を利用するため、買い物に付き添ってほしい
- 足腰が弱ってきたため、換気扇掃除や窓拭きを代わりにやってもらいたい
- 体調が優れないため、愛犬の散歩をお願いしたい
- 同居する家族がいないため、少しの間だけでも話し相手になってほしい
若い世代においては、「共働きで忙しいため、代わりに子供の食事を作ってほしい」「高齢の親が心配だから顔を見に行ってほしい」といった依頼をお願いされることもあります。
介護保険範囲内のサービスでは、利用する人やサービス内容が規則厳しく定められている分、自由度の高い自費サービスの需要は大きいです。
Q2.看護師でも自費サービスで提供できる?
A.看護サービスにおいても、事業所によっては介護と同様に保険外の自費サービスを提供しています。
24時間、365日提供可能で、滞在時間や訪問回数・曜日の制限がないため、長時間サポートを行えるのが特徴です。
また、保険内サービスでは利用者の居宅で療養補助を行う場所の制限がありますが、自費サービスでは外出に付き添ったり、長距離の移動に同行することも可能になります。
▼訪問看護に関する記事はこちらから。
>>訪問看護ヘルパーのサービスを受けるなら医療保険?それとも介護保険?
Q3.入浴サービスは自費だとどのくらいの料金がかかる?
A.介護保険外サービスの料金は事業所により大きく異なります。自費で行う入浴サービスの相場は、だいたい30分2,000円~3,000円です。
要介護・要支援認定を受けていなくても、「高齢の母親の入浴が不安だけど、できれば同性のヘルパーさんに介助をお願いしたい」といったように、入浴サービスを自費で利用する人もいます。
まとめ:介護ヘルパーの料金が自費なら痒い所に手が届く
介護保険で何でも援助できるようにしてしまうと、支援資金は底をつき、保険サービスを悪用する人も出てきてしまいます。
そのため、事細かなルールは必要不可欠です。
介護保険適用外サービスでは、利用者のニーズに寄り沿ったサービスを提供できるため、介護ヘルパーにとっても、やりがいや喜びを感じられる瞬間が増えます。
まさに痒いところに手が届く自費サービス。保険内サービスと混合で提供されるシーンも多くなっており、需要はどんどんと伸びていくことでしょう。