訪問介護員の資格の種類について|取り方・資格手当・仕事内容を紹介
「訪問介護の仕事を始めたいけど、どのような資格が必要なのだろう?」
「資格の取り方や、資格手当についても知りたい」
訪問介護員として働くには、介護資格の取得が不可欠です。
資格がなくてもできる仕事はありますが、仕事の幅を増やして、キャリアアップを目指したいと考えている人もいるでしょう。
今回「みーつけあ」では、訪問介護員の資格の種類について、資格の取り方、資格手当、仕事内容を踏まえて紹介します。
介護資格の種類を把握して、今後のキャリア計画を明確にしましょう。
1.覚えておこう!訪問介護の基本的な資格は3つ
訪問介護員(ホームヘルパー)として働くには、介護資格が必要です。
近年では、資格支援制度が充実している事業所が増えてきました。
そのため、無資格でも働きながら資格の取得を目指すことも可能です。
まず始めに、訪問介護員が目指すべき代表的な介護資格を、3つ紹介します。
- 介護職員初任者研修
- 実務者研修
- 介護福祉士
それぞれの資格について、詳しく見ていきましょう。
資格1.介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)
訪問介護員として働くために、必須となる資格が「介護職員初任者研修」です。
介護の現場で働くうえで、基本となる技術と知識を習得する事ができます。
資格を取得するには、約130時間の講義と演習を受講しなければいけません。
研修内容は、以下のとおりです。
職務の理解 | 6時間 |
介護における尊厳の保持・自立支援 | 9時間 |
介護の基本 | 6時間 |
介護・福祉サービスの理解と医療との連携 | 9時間 |
介護におけるコミュニケーション技術 | 6時間 |
老化の理解 | 6時間 |
認知症の理解 | 6時間 |
障害の理解 | 3時間 |
こころとからだのしくみと生活支援技術 | 75時間 |
振り返り | 4時間 |
合計 | 130時間 |
引用:介護職員初任者研修・生活援助従事者研修関係 – 厚生労働省
講義・演習を修了後、1時間ほどの修了試験が行われます。
試験内容は各スクールによって異なりますが、一般的には選択問題30問、記述問題が2問です。
短ければ1ヶ月半、通常なら3ヶ月〜4ヶ月ほどの期間で、修了することができます。
・介護初任者研修の費用
介護職員初任者研修にかかる費用は、無料から10万円前後と幅広くなっています。
なぜなら、取得する場所や状況によって、待遇が異なるからです。
たとえば、介護ヘルパーとして働きながら資格を取得する場合、事業所が介護職員初任者研修の受講料の一部を負担してくれる場合があります。
ハローワークの職業訓練であれば、訓練受講の要件を満たすことで、テキスト代以外の費用は無料です。
ただし、「安ければよい」というわけではなく、スクールによって受講内容や契約内容は異なります。
事前に下調べをしたり、口コミを確認したりと、内容を把握しておきましょう。
▼ハローワークで資格の取得を検討している人は、以下の記事もご参考ください。
>>介護ヘルパーの資格「介護職員初任者研修」をハローワークで取得するには?
資格2.実務者研修(旧ホームヘルパー1級)
「実務者研修」は、介護職員初任者研修の上位資格です。
より専門的な知識や、医療的ケアに関する技術を学ぶことができます。
研修内容は、20科目で450時間です。もし介護職員初任者研修を修了しているのであれば、介護職員初任者研修で学んだ130時間分は免除できます。
同様に、「ホームヘルパー1級、2級、3級」を取得している場合でも、その際に学んだ項目は受講する必要がありません。
詳しくは、下記の厚生労働省の資料をご参考ください。
出典:実務者研修|厚生労働省
また、実務者研修には、介護職員初任者研修のような修了試験はありません。
ただし、スクールによっては学習内容の確認として、試験を行っている場合があります。
試験がないからといって、研修を怠けないようにしましょう。
3. 介護福祉士(国家資格)
出典:[介護福祉士国家試験]受験資格(資格取得ルート図)|公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
「介護福祉士」は、介護資格で唯一の国家資格です。
社会的認知度や信頼性が高く、転職や就職には有効な実績となります。
介護福祉士の国家試験を受験するには、「実務者研修」の修了しており、実務経験が3年以上なければなりません。
厚生労働省の資料「第33回介護福祉士国家試験合格発表」によると、合格率は2021年3月の発表時点で71.0%となっています。
介護のスペシャリストとして、リーダー的立場で仕事をしていきたいと考えている人は、介護福祉士を目指しましょう。
▼資格の取り方についてさらに詳しく知りたい人は、以下の記事もご参考ください。
>>介護ヘルパーの資格の取り方について|費用や年齢制限は?
なぜ資格の名称が変わったのか?
かつては、「訪問介護員養成研修2級課程(ホームヘルパー2級)」や、その上位資格となる「ホームヘルパー1級」などの資格がありました。
しかし、2013年の介護保険法の改正によって、ホームヘルパー2級は廃止されています。代わりに、「介護職員初任者研修」として位置づけられました。
これによって、複雑だったキャリアパスが明確化されて、より多くの介護人材を育成する養成施設ルートが確立したのです。
2.その他の介護資格や職業7選
訪問介護員にとって、主流となる3つの資格について理解できたでしょうか。
ここからは、介護資格の種類と職業についても見ていきましょう。
紹介するのは、以下の7つの資格・職業です。
- サービス提供責任者
- ケアマネジャー(介護支援専門員)
- 介護事務
- 喀痰吸引等研修
- レクリエーション介護士
- 介護予防運動指導員
- 福祉用具専門相談員
介護業界の仕事は、訪問介護員以外にも「ケアマネジャー・サービス提供責任者」といった職業があります。
もし、訪問介護の仕事が合わないと感じても、資格さえ取得していれば他の職業で活躍することも可能です。
万が一の転職で再び介護業界で働きたいのであれば、覚えておくとよいでしょう。
(1)サービス提供責任者
サービス提供責任者は、ケアマネジャーや訪問介護員との連絡・調整を行う仕事です。
ケアマネジャーが作ったケアプランを元に、訪問介護サービスの計画を立てたり、訪問介護員に仕事を割り振りしたりします。
また、介護サービスの利用者やその家族に対して、サービスに関する説明を施すことも業務の一つです。
サービス提供責任者になるには、以下の条件を満たす必要があります。
- 実務者研修を修了している人
- 介護福祉士の資格を取得している人
- 初任者研修を修了しており、実務経験が3年(540日)以上ある人
実務経験が3年以上あれば、初任者研修のみでもサービス提供責任者にはなれますが、現実的には求人として応募できるケースは少ないです。
そのため、サービス責任者を目指す場合は、実務者研修の取得をおすすめします。
(2)ケアマネジャー(介護支援専門員)
ケアマネジャーは、要介護認定を受けた利用者が介護保険サービスを受けられるように、ケアプラン(サービス計画書)を作成したり、サービス提供責任者と調整を行う仕事です。
訪問介護事業所以外にも、特別養護老人ホームや地域包括支援センターなども職場となります。
ケアマネジャーになるためには、「介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネジャー試験)」に合格しなければいけません。
また、受講するには実務経験5年以上かつ、従事日数900日以上など、条件があります。
高齢者の体に関する知識や、介護保険に関わる法律・制度の知識も必要なため、難易度の高い資格といえるでしょう。
(3)介護事務
介護事務は、介護サービスを提供する事務所内で事務業を行う仕事です。
介護保険に関する深い知識が必要なのはもちろん、事業所の窓口業務や管理業務も行います。
また、介護事務員は資格の取得が必須条件ではありません。
代わりに、介護保険に関する知識、PCスキル、経理業務スキル、コミュニケーション能力が求められます。
現場で働くよりも、縁の下の力持ちとして事業所を支える仕事がしたい人におすすめです。
(4)喀痰吸引等研修
喀痰吸引等研修は、「たんの吸引・経管栄養」を行える介護職員を養成するための研修です。
実務者研修の科目「医療的ケア」でも、同じ内容を学ぶことができます。
そのため、訪問介護員としてキャリアアップを目指すのであれば、実務者研修で習得するとよいでしょう。
(5)レクリエーション介護士
レクリエーション介護士は、高齢者とのコミュニケーション能力や、レクリエーション知識・実行スキルを学ぶことができる資格です。
受講することで、高齢者に生きがいを与えたり、喜ばせたり笑顔にできたりといった能力を高めることができます。
資格を取得するには、レクリエーション介護士の認定講座を受講して、修了試験に合格しなければいけません。
介護業務に限らず、高齢者とのコミュニケーションの場で活躍したい人は、資格の取得を目指してみましょう。
(6)介護予防運動指導員
介護予防運動指導員は、高齢者が自立した生活を送れるように、体のケアを中心に支援を行う仕事です。
主に、筋肉トレーニングや運動の手助けなどを行います。
介護予防運動指導員養成研修を受講する条件は、以下の項目に当てはまる人のみです。
- 初任者研修(旧ホームヘルパー2級)を修了しており、2年以上の実務経験がある人
- 介護職員基礎研修課程を修了した人
- 実務者研修を修了した人
- 介護支援専門員の資格を取得している人
- 健康運動指導士の資格を取得している人
- 医療分野の国家資格を取得している人(介護福祉士、医師、看護師、栄養士 など)
介護現場でよりリーダー的な存在として活躍していきたい人は、資格の取得を視野に入れておくとよいでしょう。
(7)福祉用具専門相談員
福祉用具専門相談員は、福祉用具に関するアドバイスを行う仕事です。
福祉用具を使用する利用者やその家族や、担当のケアマネジャーなどへ福祉用具に関するアドバイスや相談をします。
また、介護保険制度における福祉用具の貸与事業を事業所で行う場合、必ず2名以上の配置しなければいけません。
福祉用具専門相談員は、福祉用具専門相談員指定講習を受講して、修了試験に合格することで取得できます。
ただし、以下の資格を保有している人であれば、福祉用具専門相談員として認められます。
- 介護福祉士
- 社会福祉士
- 保健師
- 看護師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 義肢装具士
訪問介護業界でキャリアアップを目指しているのであれば、介護福祉士を目指すことで福祉用具専門相談員としても認めてもらうことが可能です。
3.訪問介護員は資格なしでも働けるって本当?
結論から言うと、訪問介護員は資格なしでも働くことが可能です。ただし、従事できる仕事は限られてしまいます。
訪問介護員の仕事内容は、「身体介護、生活援助、通院介助」の3つがメインです。
このうち、生活援助と通院介助は、介護資格がなくても行える仕事内容となります。
身体介護のみ、専門的な知識・スキルを必要とするため、資格がなければ行えません。
身体介護のほうが時給が高く設定されていることも多いため、介護業界で活躍していきたいと考えているのであれば、まず介護職員初任者研修の取得を目指しましょう。
4.訪問介護の仕事内容とは?
介護サービスの提供内容は、あらかじめケアマネジャーと、利用者やその家族間で決められています。
そのなかで訪問介護員が提供する介護サービスは、大きく3つに分けられます。
- 身体介護
- 生活援助
- 通院介助
ここからは、それぞれの介護ザービスの内容について紹介します。
(1)身体介護
身体介護は、利用者の体に直接触れて行う介護サービスです。
業務内容としては、以下が挙げられます。
- 食事介助
- 入浴介助
- 排泄介助
- 服薬介助
- 着替え介助
- 体位変換介助
- おむつ交換 など
実務者研修を修了した訪問介護員であれば、さらに「たんの吸引・経管栄養」といった医療ケアを行うことが可能です。
(2)生活援助
生活援助は、利用者に直接触れなくても行える身の回りのサポートを行う介護サービスです。
業務内容としては、以下が挙げられます。
- 調理
- 洗濯
- 掃除
- 買い物代行
- 薬の受け取り など
買い物代行は、あくまで生活に不可欠な日用品が中心となります。お酒・タバコなどの嗜好品はサービス対象外です。
また、生活援助を行えるのは、利用者の身の回りのお世話に限られます。
家族分の食事の準備や、利用者が使用していない部屋の掃除は行なえません。
▼訪問介護員ができること・できないことに関しては、以下の記事が参考になります。
>>訪問ヘルパーのサービス内容とは?できること・できないことをまとめて紹介
(3)通院介助
通院介助は、利用者の通院における、乗降車や移動介助を行う仕事です。
訪問介護員が自ら車を運転して、利用者を病院まで連れていきます。
その後の歩行、受診手続きなども、必要に応じて介助する場合があります。
5.訪問介護の資格による手当に違いはある?
介護ヘルパーは、資格手当による給料の違いも少なからずあります。
しかし、実際には資格手当がない事業所があることも事実です。
「介護福祉士等現況把握調査」では、介護福祉士の資格手当は平均10,802円となっています。
出典:平成20年財団法人社会福祉・振興試験センター「介護福祉士等現況把握調査」|厚生労働省
明確な資格手当の金額は公表されていません。
しかし、介護職員初任者研修なら2,000円〜5,000円、実務者研修なら5,000円〜10,000円ほどの資格手当がもらえるようです。
あくまで平均的な資格手当のデータとなりますので、少しでも給料をアップさせたい人は、キャリアアップを検討してみてはいかがでしょうか。
訪問介護員の資格別の給料差はどれくらい?
厚生労働省の「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護職員初任者研修・実務者研修・介護福祉士の給料差は以下の結果となっています。
介護職員初任者研修 | 平均給与額:301,210円 |
実務者研修 | 平均給与額:303,230円 |
介護福祉士 | 平均給与額:329,250円 |
介護職員初任者研修と実務者研修では、そこまで大きな差は見られませんが、介護福祉士になると、実務者研修に比べて26,020円と大きな差がみられました。
資格によって給料を底上げしたいのであれば、介護福祉士を目指すことで結果に繋げられるでしょう。
6.訪問介護のやりがい・向いてる人とは?
「訪問介護員の資格や仕事内容は理解したけど、向き不向きはあるのだろうか?」
介護業界で仕事をしたいけど、やりがいや向き不向きに関して気になる人も多いのではないでしょうか。
大前提として、訪問介護員として働くには高齢者を思いやれる心のゆとりが不可欠です。
以下に該当する人は、訪問介護員に向いているといえるでしょう。
- 高齢者のお世話をすることが好き
- 他人を思いやる心のゆとりがある
- 気が長く、聞き上手な人
- 体力に自信がある人
- 責任感がある人
また、実際に訪問介護員として働いている人の口コミを見てみると、やりがいについて以下のように話しています。
・利用者さんと会話が楽しい。色々な人生観に触れられる。
・お客様に喜んで貰え、素敵な笑顔に会える。
・認知の人との関わり 色々勉強になる
・元気を貰えたり、感謝される。自分のペースで働ける。
・利用者のありがとうの言葉はやっていて良かったと思う瞬間
もちろん、なかには「暴言を吐かれてストレスが溜まる」や「認知症の人に泥棒扱いされた」など、介護現場の過酷さを訴える話しもあります。
訪問介護員とは、そういった環境のなかでも、自分の務めを見失わず、相手の立場になって寛大な心で振る舞える忍耐強さも必要な仕事かもしれません。
ときどき受け取れる些細な「ありがとう」という言葉に、心から感謝できるような人であれば、ぜひ訪問介護員に挑戦してみてはいかがでしょうか。
まとめ:資格を取得してキャリアアップを目指そう!
今回は、訪問介護員の資格の種類について、資格の取り方、資格手当、仕事内容を踏まえて紹介しました。
訪問介護は、ライフスタイルに合わせた働き方ができます。
資格を取得すれば、今後のキャリアップに活かせるでしょう。
未経験でも、介護の基礎やスキルを学ぶことができるので、まずは介護職員初任者研修の取得から始めてみることをおすすめします。