訪問介護員(ホームヘルパー)とは?役割と仕事内容・給料事情のキホン
「訪問介護員ってどのような仕事なの?」
「家政婦や家事代行と似ているけど、どういった役割があるのか知りたい」
訪問介護の仕事に興味があるけど、仕事内容や給料について把握できていない人は、意外と多いのではないでしょうか。
簡単に説明すると、訪問介護員とはホームヘルパーの正式名称で、利用者の自宅でさまざまなお世話をする仕事です。
しかし、なかには提供してはならない仕事内容があります。
そこで今回「みーつけあ」では、訪問介護員の仕事内容や役割、給料事情なども含めて紹介します。
訪問介護員について理解を深めて、仕事を始める準備をしましょう。
1.訪問介護員(ホームヘルパー)とは?
訪問介護員とは、介護保険法に基づいて利用者の自宅へ行き、介護サービスを提供する専門職のことです。
通称、「ホームヘルパー」と呼ばれます。
サービス内容は、体に直接触れる介助や身の回りのサポート、通院介助などです。
しかし、なかには訪問介護員と家政婦(夫)、家事代行との区別がつかない人も少なくありません。
そこで、以下では訪問介護員との違いについて、表を用いて解説します。
役割を明確にして、仕事のイメージを膨らませる参考にしてください。
補足:訪問介護員の役割
訪問介護員は、よく家政婦や家事代行と間違えられます。これは、仕事内容が非常に似ているためです。
訪問介護員・家政婦・家事代行の3つの役割について、表にまとめたので確認しましょう。
訪問介護員 | 家政婦(夫) | 家事代行 | |
対象者 | 要介護認定を受けている人 | 誰でも可 | 誰でも可 |
契約方法 | ケアマネジャー | 個人 | 各会社 |
サービス提供内容 | ケアプランに沿った内容のみ | 自由 (娯楽に関するサービス提供も可能) | 介護保険外サービスも提供可能 |
資格 | 必要 | 不要 | 不要 (介護の資格保有者もいる) |
自己負担額 | 介護保険適用であれば1〜3割 | 全額自己負担 | 全額自己負担 |
訪問介護員はサービス内容に制限があり、資格を保有している人がサービスを提供します。
しかし、介護保険が適用されるため自己負担額は1割〜3割まで抑えられます。
一方で、家政婦や家事代行には依頼内容・資格に制限が設けられていません。介護保険が適用されないので、全額自己負担です。
より明確に訪問介護員と家政婦・家事代行の違いを知るために、次章より仕事内容について詳しく確認しましょう。
2.訪問介護員(ホームヘルパー)の仕事内容
家政婦・家事代行との違いを明確にするため、訪問介護員の仕事内容について、以下の3つを具体的に理解しましょう。
- 体に触れる身体介護
- 身の回りをお世話する生活援助
- 通院や買い物に付き添うなどの移動介助
訪問介護員として働くなら、これらの3つは最低限理解しておくべき仕事です。
ぜひ参考にして、資格を持っているからこそ提供できる価値に目を向けてみてください。
内容1.体に触れる身体介護
まずは、利用者の体に直接触れて介護サービスを提供する、「身体介護」です。
具体的な仕事内容の例は、以下のとおりです。
- 排泄介助:トイレの利用やおむつ交換など
- 食事介助:流動食、糖尿病食、肝臓病食など
- 清拭:蒸しタオルを使って全身を拭く
- 入浴介助:手や足などの部分浴、全身浴、洗髪
- 更衣介助:服の着脱の補助
- 体位変換:床ずれ防止のため
- 移動・移乗介助:歩く、乗るなどの補助
- 起床及び就寝介助:ベッドに寝かせる、起き上がるときの介助
- 服薬介助
- 自立生活支援のための見守り的援助:近くで見守り、必要なときだけ手伝う
入浴や排泄、食事介助といっても、利用者の状況によって介護方法が異なります。
たとえば、歩行が可能な利用者の場合、トイレまでの移動は付き添います。
しかし、トイレの中までは入らず外から声かけをするだけの場合や、歩行が困難でトイレでの排泄が難しい利用者であれば「おむつ交換」をします。
このように、利用者1人ひとりに合った身体介護を行うのも、訪問介護員の仕事です。
次は、生活援助について見ていきましょう。
内容2.身の回りをお世話する生活援助
掃除や家事などの身の回りをお世話をするのが、「生活援助」と呼ばれる仕事です。
具体的な仕事内容の例は、以下のとおりです。
- 掃除:居室内、トイレ、卓上など
- ゴミ出し:準備、片付け
- 洗濯:洗濯、干す、取り入れ、畳む、収納、アイロンがけ
- ベッドメイク:シーツ、布団カバーの交換など
- 衣類の整理:衣替え
- 被服の補修:ボタンの取り付け、破れの補修など
- 一般的な調理:配膳、後片付け
- 買い物
- 薬の受け取り
ただし、生活援助を提供できる条件は、以下の2パターンのみです。
- 1人暮らし
- 同居家族が介護や病気、仕事などで日中に介助を行える人がいない
「日中は家で1人きりなので、介護職員のサポートを受けながら生活がしたい」という人が対象となります。
そのため、同居している家族が在宅していれば基本的に利用できません。
内容3.通院や買い物に付き添うなどの移動介助
そして最後に、通院や買い物に付き添うなどの移動介助を行うサービスです。
通称「介護タクシー」と呼ばれます。
主な仕事内容は、自宅から病院まで付き添いです。また、病院到着後も降車や移動、病院の手続きまでサポートするケースもあります。
場合によっては、買い物や現金の引き落としなども付き添います。ただし、娯楽や生活などの買い物には、付き添いができないので注意しましょう。
3.訪問介護員(ホームヘルパー)の働き方3つ
訪問介護員(ホームヘルパー)の働き方は、主に以下の3つです。
- 正社員
- 登録ヘルパー(パート)
- マッチング(個人)
正社員・登録ヘルパー・マッチングで働く時間や内容が変わります。
そのため、それぞれの働き方を理解すれば1日の勤務時間のイメージもしやすくなります。
自分に合った働き方を考えながら、順番に見てみましょう。
働き方1.正社員
まずは、正社員として働く方法です。正社員として働くメリットは、以下のとおりです。
- 給料が固定されているので安心して働ける
- 有給や福利厚生が利用できる
- 昇給がある
- キャリアアップが目指せる
訪問介護は利用者の都合や入院などの理由で、突然仕事がキャンセルになる場合があります。
しかし、正社員であれば月給制度なので、イレギュラーが発生しても給料面に響きません。
毎月決まった額の給料を得られる正社員は、給料が安定しにくい訪問介護員のなかでも人気の働き方です。
働き方2.登録ヘルパー(パート)
次に、登録ヘルパーやパートで働く方法です。登録ヘルパーやパートで働くメリットは、以下のとおりです。
- 好きな時間に働ける
- 子育てや介護を両立しやすい
- ダブルワークで稼ぐことができる
登録ヘルパーは希望した時間帯に働けます。
そのため、フルタイムで働くのは難しい人にとっては働きやすい環境です。
また、空き時間も有効に使えるので、家に帰ったり、ショッピングに出かけたり、カフェで休憩したりと有意義な過ごし方ができます。
働き方3.マッチング(個人)
3つ目の働き方は、マッチングによる短時間の働き方です。
介護を依頼したい利用者がマッチングサイトを利用して依頼すると、そこに登録されたヘルパーが派遣されるシステムです。
マッチングのメリットは、以下のとおりです。
- 事業所に行かなくてもいい
- 効率よく訪問ができるので多くの利用者を担当できる
- 希望する時間に働ける
マッチングサイトは事業所に所属をしていないので、報告書や引き継ぎなどを書きに行く必要がありません。何度も受注すると、効率よく稼げます。
次章では、より詳しく働き方の違いで変わる給料の目安を紹介するので参考にしてください。
4.訪問介護員(ホームヘルパー)の給料目安
訪問介護員の給料目安は、以下のとおりです。
働き方 | 給料(月給) | 給料(時給) |
常勤ヘルパー | 319,140円 | 228,450円 |
非常勤ヘルパー | 172,560円 | 108,020円 |
月給制の常勤ヘルパーがもっとも高く、時給制の非常勤ヘルパーがもっとも低い結果となりました。
ただし、働く時間によって金額は大きく異なりますので目安としてください。
事業所によっては、資格手当や移動手当などが給付されるケースもあります。
手当が多ければ、それだけ給料も高くなる傾向があるわけです。
訪問介護員で少しでも多く稼ぎたいと考えているなら、手当まで確認して職場を選びましょう。
▼訪問介護の給料に関しては、以下の記事も参考になります。
>>介護ヘルパーの給料相場はいくら?収入を上げる方法や介護報酬改定も解説!
5.訪問介護員(ホームヘルパー)がやってはいけないこと
訪問介護員がやってはいけないことは、大きく分けて以下の3種類があります。
具体例と一緒に紹介しているので、参考にしてください。
やってはいけないこと | 具体例 |
---|---|
生活に差し支えないもの | ・草むしり ・窓拭きや大掃除 ・ペットの世話 ・家具の移動 など |
医療行為にあたるもの | ・重度の歯周病の口腔ケア ・インスリンの注射 ・経管栄養(自分の口から栄養を取れなくなった人に対して、栄養剤を胃まで送る方法) ・床ずれの処置 など |
利用者本人以外に対するお世話 | ・子どもの世話 ・家族の食事を作る ・家族の部屋の掃除をする など |
訪問介護員は利用者のためであっても、日常生活に必要最低限のサービスしか提供できません。
そのため、利用者や家族に依頼されたからといって、ケアプラン以外の支援はできないわけです。
また、医療行為は医師や医師の指導があった看護師にしかできませんので、頼まれても提供できません。注意してください。
▼関連記事はこちらから。
>>訪問介護ヘルパーに頼めることって?できること・できないことを紹介
>>介護ヘルパーの医療行為は禁止?実態やできること・できないことについて
6.訪問介護員(ホームヘルパー)になるには資格要件を知ろう
訪問介護員として活躍するのであれば、資格を取得しておきましょう。
訪問介護は、利用者の自宅へ行って介護サービスを行うため、介護に関する正しい知識や技術を身につけなければいけないからです。
そこで下記では、訪問介護員になるための資格要件について紹介します。
- 資格なしなら「生活援助」
- 介護職員初任者研修なら「身体介護を含む」
資格を取れば仕事の幅も広がるので、訪問介護員として働くのであれば、資格取得を目指してみてください。
資格要件1.資格なしなら「生活援助」
介護の資格がなくても、生活援助であれば訪問介護員として働けます。
しかし、利用者は身体介護と生活援助の組み合わせの依頼がほとんどです。
そのため、生活援助だけの支援の需要は低く、稼ぎにくいでしょう。
訪問介護員として本格的に働きたいのであれば、資格を取得して専門知識や技術の習得をおすすめします。
資格要件2.介護職員初任者研修なら「身体介護を含む」
介護ヘルパーの入門資格である、介護職員初任者研修を修了すれば、身体介護の提供が可能です。
介護職員初任者研修は、働きながらでも資格が取りやすいように配慮されています。
具体的には、全130時間のカリキュラムをすべて受講後、修了試験を受けて合格すれば資格保有者になれます。
また、修了試験も難しくはありません。不合格になっても、合格するまで何度も再試験を受けさせてもらえるので、何度も挑戦しましょう。
ただし、再試験に追加料金を払わなければいけないスクールもあるので、申し込む際にチェックしてください。
訪問介護員養成研修とは
訪問介護員養成研修とは、業務に必要な知識や技術を習得するための研修のことです。
以前まで「ホームヘルパー1〜3級」と呼ばれていました。
しかし、平成24年にホームヘルパー1〜3級が廃止され、「介護職員初任者研修」に一元化されています。
すでに、ホームヘルパー1〜3級を持っている場合、追加の講習を受けるだけで介護職員初任者研修を取得できます。
一元化されても、「訪問介護員◯級養成研修課程修了」と履歴書に記載できます。
同じ効力を持っており、介護員養成研修を修了していれば、身体介護は問題なく可能です。
▼資格の取り方に関しては、以下の記事をご参考ください。
>>介護ヘルパーの資格の取り方について|費用や年齢制限は?
▼履歴書の書き方は、以下の記事が参考になります。
>>介護ヘルパーの履歴書で資格はどう書く?正式名称・送付方法・面接のコツを解説
7.訪問介護員(ホームヘルパー)のやりがい・向いている人
訪問介護員のやりがいと向いている人の特徴には、以下の5つがあります。
- 利用者さんに寄り添える人
- 臨機応変に対応できる人
- 失敗を恐れない人
- 責任感が強い人
- 健康で体力に自信のある人
訪問介護は、1対1の介護なのでリスクが高いです。
しかし、その分利用者さんと時間をかけて関われる仕事なので、やりがいを感じられるでしょう。
施設に勤務していると、1度に複数の利用者さんと関わる機会が多いのですが、訪問介護は利用者さん1人にじっくりと介護ができるので信頼関係を築けます。
つまり、利用者さんとじっくり関わりたい人や、1人でもリスクを恐れず前向きに仕事ができる人は、やりがいを感じやすく向いているといえるでしょう。
▼関連記事はこちらから。
>>介護ヘルパーのやりがい5選【楽しいところと大変なところがわかる】
8.訪問介護員(ホームヘルパー)に関するQ&A
最後に、訪問介護員に関するQ&Aに答えていきます。
- 訪問介護員がお金・金品をもらうのは法律で禁止?
- 家族から依頼内容を伝えられたときどこまで対応できる?
- 訪問介護員はキャリアアップできる?
訪問介護員として働くことになれば、1人で対応しなければいけません。疑問に思ったことは、すぐに解決できるようにしましょう。
Q1.訪問介護員がお金・金品をもらうのは法律で禁止?
A.どのような理由があっても、お金や金品を受け取る行為は禁止です。
行政処分を受ける可能性があるので、お金を渡されても「気持ちだけいただきます」と、相手を不快にさせない断り方をしましょう。
万が一、無理やり渡されてしまった場合には、必ず事業所に報告をして、その後の対応を引き継いでください。
Q2.家族から依頼内容を伝えられたときどこまで対応できる?
A.対応できる範囲は、ケアプランの範囲で利用者さんに関する事柄までです。
訪問時間は、分単位でスケジュールが決まっています。余分な介護ができないことを伝えましょう。
「どうしても追加して欲しい」といった依頼であれば、事業所に報告して、ケアマネジャーとケアプランの見直しを行ってください。
Q3.訪問介護員はキャリアアップできる?
A.上位資格を取得すれば、キャリアアップが目指せます。
訪問介護が取得すべき資格は以下のとおりです。
- 介護職員初任者研修
- 実務者研修:サービス提供責任者
- 介護支援専門員:ケアマネジャー
- 介護福祉士(国家資格)
- 認定介護福祉士
これらの資格を順番に取得していけば、キャリアアップを目指していけるでしょう。
▼資格別の給料については、以下の記事をご参考ください。
>>介護ヘルパーの資格による給料の違いや資格手当について徹底比較
まとめ:訪問介護員は働き方を選びながらキャリアアップできる!
訪問介護員とは、利用者の自宅に行き身体介護や生活援助、移動介助を行う仕事です。
働き方は、正社員や登録ヘルパー(パート)、マッチングがあります。
安定して働きたいのであれば、正社員が理想かもしれません。しかし、ほかにもやりたいことがあったり、ダブルワークを希望しているなら、登録ヘルパーやマッチングがおすすめです。
そして、訪問介護員として働くのであれば、まずは入門資格である「介護職員初任者研修」を取得しましょう。キャリアアップを目指すなら資格の取得からスタートしてみてください。