訪問介護の2時間ルールはなぜ必要?例外や具体例について紹介
「2時間ルールはなぜ必要なの?」
「適用されるシチュエーションや例外についても知りたい」
訪問介護員として働き始めた人のなかには、2時間ルールについていまいち把握できていない人も多いのではないでしょうか。
2時間ルールは、介護報酬の算定にも関わる規定です。そのため、訪問介護員として働くならば必ず覚えておかなければいけません。
そこで今回「みーつけあ」では、訪問介護の2時間ルールについて、例外や具体例を踏まえて紹介します。
2時間ルールについて正しく理解して、訪問介護業務に努めましょう。
1.訪問介護サービスの内容
まず始めに、訪問介護サービスの内容について紹介します。
訪問介護員は、介護が必要な人の自宅を訪れて、「身体介護・生活援助・通院介助」といった介護サービスを提供する仕事です。
それぞれのサービス内容は、以下のようになります。
- 身体介護:入浴介助や排泄介助など、要介護者の体に直接触れて行う介護
- 生活援助:掃除や洗濯など、要介護者に直接触れなくても行える援助
- 通院介助:要介護者が通院するための移動・乗降介助
生活援助や通院介助であれば、介護資格がなくても提供できます。しかし、身体介護を行うには介護資格が必要です。
訪問介護員として働くのであれば、介護の入門資格である「介護職員初任者研修」を取得しましょう。
▼介護職員初任者研修については、以下の記事が参考になります。
>>介護ヘルパーの資格とは?初任者研修・実務者研修との違いや内容を解説
2.訪問介護の2時間ルールはなぜ必要?
利用者は、1日に複数回の訪問介護サービスを受けることができます。
ただし、原則として各サービスの間を概ね2時間空けて提供しなければいけません。この規定が、訪問介護の「2時間ルール」です。
もし概ね2時間の間隔が空いていない場合、各サービスは1回のサービスとして扱われます。
介護報酬(料金)は、サービスの所要時間に応じて決まっているため、一つひとつのサービスごとに適切な単位が加算されるように設けられた規定が「2時間ルール」ということです。
単位と2時間ルールについて
介護報酬は、サービスの所要時間に応じた「単位」によって算定されます。
以下の表をご参考ください。
サービス | 時間 | 単位 |
---|---|---|
身体介護中心型 | 20分未満 20分以上30分未満 30分以上1時間未満 1時間以上1時間30分未満 +以降30分を増すごとに | 167単位 250単位 396単位 579単位 84単位 |
生活援助中心型 | 20分以上45分未満 45分以上 | 183単位 225単位 |
各サービスの所要時間によって単位が決められ、介護報酬が算定されます。
たとえば、35分の身体介護を2時間以上の間を空けて1日に2回提供した場合、396単位×2で792単位が加算されます。
もし、2時間未満で同様の身体介護を2回提供した場合、所要時間は合算されて70分となり、579単位です。
このように、実施記録との不整合を起こさないためにも、2時間ルールは重要な規定ということになります。
また、1単位あたりの単価は、地域によって異なるため注意しましょう。
3.訪問介護の2時間ルールには例外がある
2時間ルールには、適用されない以下のような例外もあります。
- 看取り期の訪問介護
- 指定訪問介護事業所の20分未満の身体介護
看取り期の訪問介護に関しては、「令和3年度介護報酬改定に関する審議報告(案)の概要」より、新たに弾力化された方針です。
それぞれについて、詳しく紹介します。
例外1.看取り期の訪問介護
看取り期の場合、さまざまなニーズに応えるためにサービス頻度が増えることも珍しくありません。
そこで、2021年度の介護報酬改定より、以下のように明記されました。
看取り期の利用者に訪問介護を提供する場合に、訪問介護に係る2時間ルール(2時間未満の間隔のサービス提供は所要時間を合算すること) を弾力化し、合算せずにそれぞれの所定単位数の算定を可能とする。
つまり、看取り期の訪問介護であれば、各サービス間隔が2時間未満でも合算せずに算定ができるようになったということです。
例外2.指定訪問介護事業所の20分未満の身体介護
頻回の訪問介護が可能な指定訪問介護事業所の場合、20分未満の身体介護に限り間隔が2時間未満であっても、合算せずに単位数を算定できます。
一例として、以下の表をご参考ください。
指定訪問介護事業所で上記のような訪問介護を行った場合、25分の身体介護は合算されて50分(396単位)となります。
しかし、20分未満の身体介護は合算されないため、20分未満(167単位)です。
したがって、両方を合わせた563単位が、上記の場合の単位数ということになります。
4.訪問介護の2時間ルールでよくある具体例
2時間ルールの基本情報については、概ね理解できたでしょうか。
ここからは、2時間ルールについてより理解を深められるように、具体例を用いて説明します。
実際に利用者や家族から質問されたときのためにも、さまざまなシチュエーションで介護報酬の算定ケースを覚えておきましょう。
具体例1
2時間未満で、上記のような訪問介護を行ったとしましょう。
この場合、2時間ルールがなければ「250単位+167単位+250単位=667単位」となってしまいます。
しかし2時間ルールの規定により、所要時間は合算されて70分(579単位)です。
具体例2
続いては、3回の身体介護を行ったうち、片方は2時間未満、もう片方は2時間以上の間隔が空いていたケースです。
この場合、2時間未満の身体介護は合算されて50分(396単位)になります。
一方、2時間以上の間隔が空いた25分の身体介護は25分(250単位)です。
したがって、「396単位+250単位=646単位」という算定になります。
具体例3
3つ目は、時間に関する具体例を紹介します。
20分〜45分未満の生活援助を、15:00〜15:30の30分提供した後、2時間後に身体介護を提供するとしましょう。
この場合、「時間的には17:30から身体介護を行ってもよいのでは?」と思う人もいるでしょう。
しかし、介護保険上では45分未満(生活2)という区分のサービスです。
したがって、2時間の間隔を空けるのであれば、17:45から行うということになります。
5.訪問介護の2時間ルールは通院介助にも適用される?
なかには、「通院介助は2時間ルールに適用されないの?」と疑問に思った人もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、2時間ルールが適用されるのは「身体介護中心型」と「生活援助中心型」のみです。したがって、「通院介助」には適用されません。
また、身体介護と生活援助を組み合わせて提供する場合は、「生活援助加算」として算定しなければいけません。
たとえば、20分の身体介護と30分の生活援助を組み合わせたとしましょう。
通常の加算であれば、身体介護167単位と生活援助183単位で合計350単位です。
しかし実際の算定は、20分〜45分未満の生活援助が加算単位+67として算定されます。
つまり、20分の身体介護と30分の生活援助で234単位となるわけです。
▼単位についてさらに詳しく知りたい人は、以下の記事もご参考ください。
>>訪問ヘルパーの単位どう扱う?身体介護と生活援助の組み合わせなど徹底解説
まとめ:2時間ルールを理解して訪問介護に努めよう
2時間ルールは、訪問介護の現場において必ず把握しておけなければいけない規定です。
「看取り期の訪問介護」と「指定訪問介護事業所の20分未満の身体介護」に関しては、例外として2時間ルールが適用されません。
また、通院介助に関しては2時間ルールの適用外です。あくまで「身体介護中心型」と「生活援助中心型」に対して適用されるということを覚えておいてください。
2時間ルールを正しく理解して、不適切な実施記録を残さないようにしましょう。