訪問介護の生活援助における時間区分や料金・単位について
2012年の介護保険改正により、生活援助における時間区分は60分未満から45分未満に改正されました。
これは、より効率的にサービスを提供して、少しでも多くの要介護・支援者に利用してもらえるようにするためです。
当時は、新たなサービス提供時間に困惑した事業所やケアマネジャーも多かったのではないでしょうか。
今回「みーつけあ」では、改めて訪問介護の生活援助における時間区分の見直しについて解説します。
また、サービス毎の時間区分、料金や単位についてもまとめてみました。
訪問介護のサービス時間区分について、今一度見直すキッカケにしていただければ幸いです。
1.訪問介護|生活援助の時間区分見直しについて
厚生労働省の資料「訪問介護の基準・報酬について」より、生活援助の時間区分は以下のように見直されました。
改正前 | 改正後 | |
生活援助2 | 30分〜60分未満 | 20分〜45分未満 |
生活援助3 | 60分〜 | 45分〜 |
なお、身体介護に引き続き生活援助を行う場合は、以下のとおりです。
改正前 | 改正後 | |
身体◯生活1 | 身体介護に引き続き、生活援助30分〜60分未満 | 身体介護に引き続き、生活援助20分〜45分未満 |
身体◯生活2 | 身体介護に引き続き、生活援助60分〜90分未満 | 身体介護に引き続き、生活援助45分〜70分未満 |
身体◯生活3 | 身体介護に引き続き、生活援助90分〜 | 身体介護に引き続き、生活援助70分〜 |
厚生労働省の同資料によると、生活援助の所要時間について、以下のような考え方をもって時間区分を変更したと見られます。
- 利用頻度の高い「掃除・調理」の平均所要時間は、サービス準備の6分を合算して30分〜40分程度である。
- 生活援助は複数のサービスを組み合わせて行われることが多いが、1つの項目は15分未満ですむ場合もあり、組み合わせによっては30分〜40分程度になる。
時間区分の見直しに関してよくある質問
生活援助の時間区分が見直されたことにより、利用者のなかには「従来どおり60分程度や90分程度の生活援助は提供してもらえないのか?」と、疑問に思った人も多かったようです。
しかし、改正されたのはあくまで時間区分のみとなります。
事業所やケアマネジャーによってサービス時間を再検証した結果、提供時間が適切であると判断されれば、従来どおりのサービス時間で生活援助を提供してもらうことが可能です。
たとえば、今までは生活援助の時間が60分未満(生活援助1)だったとして、引き続き同じ時間でのサービス提供が適切だと判断された場合、時間区分が「生活援助2」に変わります。
そのため、提供時間に差はありませんが、単位が変わることで利用料金に違いが生じるということですね。
2.訪問介護のサービス内容と時間区分
そもそも訪問介護とは、「介護資格を持った訪問介護員が利用者の自宅を訪れて、家事や介助サービスを行うサービス」です。
これらのサービスを、「身体介護」と「生活援助」といいます。
ここからは、訪問介護の生活援助における時間区分の改正を踏まえて、各サービス毎の時間区分について確認しましょう。
身体介護
「身体介護」は、利用者の体に直接触れて行う介護サービスです。
主なサービス内容は、以下の項目が挙げられます。
- 利用者の安否確認・健康チェック
- 排泄介助(トイレ同行やおむつ交換)
- 食事介助(流動食などの専門的調理など)
- 入浴介助(清拭や洗髪、全身浴など)
- 更衣介助(衣類の着脱の手伝い)
- 体位変換(床ずれの予防や防止)
- 移動・移乗介助(車椅子やベッドからの移動補助)
- 外出介助
- 服薬介助
- 常時介助できる状態での見守り援助 など
「実務者研修」や「介護福祉士」といった上位資格を所持している訪問介護員であれば、「たんの吸引・経管栄養」といった医療的ケアを行えます。
身体介護の時間区分は、以下のとおりです。
身体0 | 20分未満 |
身体1 | 20分〜30分未満 |
身体2 | 30分〜1時間未満 |
身体3 | 1時間〜1時間半未満 |
身体4 | 1時間半〜2時間未満 |
この時間区分によって単位が決められており、サービス利用者の自己負担額が決まります。
料金や単位に関しては、後ほど説明します。
生活援助
「生活援助」は、利用者の体に直接触れない範囲の、身の回りのお世話をするサービスです。
主なサービス内容は、以下の項目が挙げられます。
- 利用者の安否確認・健康チェック
- 掃除(居室やトイレの掃除、ゴミ出しなど)
- 洗濯(乾燥、取り入れ、アイロンがけも含む)
- ベッドメイク(シーツ交換、布団カバーの交換など)
- 衣類の整理・補修
- 一般的な調理(配膳や片付けを含む)
- 日用品の買い物代行(内容・釣り銭の確認も含む)
- 薬の受け取り など
訪問介護員が行えるのは、あくまで利用者が日常生活を送るうえで最低限必要な援助のみです。
利用者以外の掃除や洗濯、ペットの世話や庭の手入れは介護保険外サービスとなります。
生活援助の時間区分は、以下のとおりです。
生活2 | 20分〜45分未満 |
生活3 | 45分〜 |
生活1は、単独で行われることがありません。
また、生活3は事業所によってサービス時間が異なります。つまり、ケアマネジャーによるケアプランによって最適な時間が決められるということです。
▼介護保険外サービスについては、以下の記事が参考になります。
>>訪問介護ヘルパーに頼めることって?できること・できないことを紹介
身体介護+生活援助
身体介護と生活援助は、組み合わせて利用することも可能です。
ただし、組み合わせによる時間区分は決まっています。それぞれ確認してみましょう。
身体◯生活1 | 身体◯に引き続き、生活援助を20分〜45分未満 |
身体◯生活2 | 身体◯に引き続き、生活援助を45分〜70分未満 |
身体◯生活3 | 身体◯に引き続き、生活援助を70分〜 |
身体介護に関しては、組み合わせの場合でも時間区分は変わりません。
しかし、生活援助は単独の場合と組み合わせの場合で、時間区分が異なりますので注意しましょう。
3.訪問介護の料金と単位
最後に、それぞれのサービス毎の料金と単位について紹介します。
利用者が介護サービスを利用したとき、その対価として事業所に支払われるサービス費用を「介護報酬」といいます。
介護報酬は、各サービスと地域によって定められた「単位」をかけ合わせることで算出が可能です。
つまり、「単位数 × 単位単価 × 自己負担額1割 = 1回のサービスの料金」ということになります。
まずは、厚生労働省の資料「介護報酬の算定構造介護サービス」を参考に、今回紹介した時間区分ごとの単位を見てみましょう。
サービス内容 | 時間区分 | 単位 |
---|---|---|
身体介護 | 身体0(20分未満) 身体1(20分〜30分未満) 身体2(30分〜1時間未満) 身体3(1時間〜) | 167単位 250単位 396単位 579単位(30分を増すごとに+84単位) |
生活援助 | 生活2(20分〜45分未満) 生活3(45分〜) | 183単位 225単位 |
身体介護+生活援助 | 身体1生活1(身体介護20分〜30分未満 生活援助20分〜45分未満) | 317単位 ※身体介護の所要時間が20分から起算して 25分を増すごとに+67単位 (201単位を限度) |
たとえば身体1を行った場合、単位は250です。単位単価が10円だった場合、介護報酬は2500円となります。
そして、利用者の自己負担が1割であれば、料金は250円です。
自己負担額は、所得によって以下のように異なります。
最大負担は3割ですが、基本的には1割負担です。
また、単位単価は地域によっても異なりますので注意しましょう。
▼さらに詳しい料金の相場が知りたい人は、以下の記事をご参考ください。
>>介護ヘルパーの値段相場はどのぐらい?料金表やケース別具体例を紹介
まとめ:訪問介護の時間区分を正しく理解しよう
今回「みーつけあ」では、訪問介護の生活援助における時間区分の改正内容とともに、各サービスの単位や料金について紹介しました。
訪問介護サービスは、時間区分によって介護報酬が決められています。
そして、ケアマネジャーによってケアプランが作成されることで、利用者に最適とされるサービス時間が決まるのです。
また、時間区分が変わったことで、サービス内容が制限されたというわけではありません。
今後も引き続き、サービス時間毎に適切な介護報酬が支払われているか?を考えていきましょう。