訪問介護の買い物代行で対応できる範囲に関するQ&A
「訪問介護の買い物って範囲はどこまでなの?」
「いざ頼まれたら、どのように対応したらよいの?」
訪問介護員として買い物代行を引き受けると、さまざまな頼み事をされて困った経験があるのではないでしょうか。
訪問介護では、提供できるサービスがケアプランによって定められています。
そのため、「頼まれたら何でもしてあげてよい」というわけではないのです。
今回「みーつけあ」では、訪問介護の買い物代行で対応できる範囲について、Q&A方式でいくつかまとめてみました。
また、買い物以外でも、できないことについて紹介します。
訪問介護員にできる範囲を正しく理解して、利用者や家族とも共有しましょう。
1.訪問介護の買い物代行の範囲とは?
まずは、訪問介護員にできる買い物の範囲について、大まかに理解を深めましょう。
訪問介護は、「身体介護、生活援助、通院介助」といった介護サービスに分類されます。
- 身体介護:入浴介助や排泄介助といった、利用者に直接触れて行う介護
- 生活援助:掃除や洗濯など、利用者に触れない範囲の身の回りのお世話
- 通院介助:利用者が病院に通院するための移動介助
買い物代行は、主に生活援助として行う介護サービスです。
しかし、訪問介護員にできる買い物には範囲が決められています。
なぜなら、訪問介護サービスは、ケアプラン(介護サービス計画書)によって定められているからです。
訪問介護員ができる買い物の範囲は、利用者が最低限の日常生活を送るための必需品や、薬の受け取りなどが対象となります。
つまり、訪問介護員が代行をしなくても、日常生活に支障がない買い物は引き受けることができないということです。
2.訪問介護員ができない買い物の範囲
では、日常生活に支障がない買い物とは、どのようなものが挙げられるのでしょうか。
この記事では、以下3点をピックアップして解説します。
- 日常生活に必要ない買い物
- 利用者と直接関係のない買い物
- 遠出による買い物
支障がない買い物の範囲には、利用者以外の買い物や、遠出による買い物も含まれます。
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
(1)日常生活に必要ない買い物
利用者が普段使う日用品例としては、トイレットペーパーや歯ブラシがあります。
一方、日常生活に必要のない買い物は、お酒やタバコ、雑誌といった嗜好品です。
ただし、一口に必需品とはいっても、内容は利用者によって異なります。
訪問介護員は、自分の判断で必要不必要を決めるのではなく、利用者の立場で判断をする能力も必要となるのでしょう。
(2)利用者と直接関係のない買い物
生活援助に関わらず、訪問介護員が提供する介護サービスは利用者のみが対象です。
一緒に住む家族の買い物は、ついでだとしても引き受けられません。
また、来客用のお歳暮、お中元なども、利用者の介護には直接関係のない買い物となります。
(3)遠出による買い物
買い物できる範囲は、物に限った話ではありません。
生活範囲内にある施設で買い物が済ませられるのであれば、必要以上の遠出による買い物は訪問介護サービスの対象外です。
3.訪問介護員が買い物以外でもできないこと
訪問介護員ができないことは、買い物以外にもあります。
身体介護や通院介助においても、ケアプランに基づいたサービスしか提供できないのです。
ここからは、身体介護と通院介助でも提供できないサービスについて紹介します。
いざ頼まれたときに誤って引き受けてしまわないように、理解を深めておきましょう。
身体介護で提供できない範囲
身体介護は、利用者に直接触れて介護を行います。入浴や排泄を含め、食事介助や移動介助もサービスの一環です。
ただし、医療行為や散髪などは、行うことができません。これらのサービスは、医師や美容師といった専門家の仕事だからです。
医療行為の範囲は基準が難しいですが、認められている行為としては以下の項目が挙げられます。
- 水銀体温計や電子体温計を使ったわき下の体温測定
- 耳式電子体温計による、外耳道での体温測定
- 自動血圧測定器による血圧測定
- パルスオキシメータの装着(新生児以外の入院治療が必要のない人に限る)
- 専門的な判断や技術を必要としない、軽微な切り傷、擦り傷、やけどなどの処置
- 医師・看護師からの指導があった上での服薬介助
参考:医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の 解釈について – 厚生労働省
他にも、爪に異常がない場合の爪切りや、耳かきなども認められています。
どうしても基準がわからない場合は、対応前に責任者に確認しましょう。
▼さらに詳しくしりたい人は、以下の記事をご参考ください。
>>介護ヘルパーの医療行為は禁止?実態やできること・できないことについて
>>訪問ヘルパーは爪切りできる?医師法に違反しないための知識
通院介助で提供できない範囲
通院介助は、利用者を病院まで連れて行くまでの移動介助や、送迎車への乗降介助を行う介護サービスです。
ただし、病院内での介助は病院スタッフの役割となるため、介護保険の適応外となります。
病院内は医療保険の適応内であり、医療機関が行うべきという考え方になるのです。
しかし、病院のスタッフが対応できない場合に限り、訪問介護員が介護保険サービスとして算定することもできます。
明確な対応に関しては、都道府県・市町村によって判断がさまざまです。事業所のルールに従って行動するようにしましょう。
4.訪問介護の買い物代行の範囲に関するQ&A
訪問介護員が対応できない範囲について、大まかには理解できたでしょうか。
ここからは、さらに細かく買い物代行の範囲に関する疑問を理解していきましょう。
ネット上でもよく見かける口コミや情報を元に、8つのシチュエーションをピックアップしました。
- 大掃除を頼まれたらどうすればよいの?
- タバコ・お酒の買い物も頼まれてしまった
- 車で20分の範囲は買い物の対象外?
- 購入した果物の皮むきを頼まれた
- 訪問介護は家政婦とは違うの?
- 訪問前に買い物を済ませることは可能?
- 買い物のお釣りはあげると言われてしまった
- お餅が食べたいと言われたら断るべき?
それぞれについて、Q&A方式で解説や断り方を紹介します。実際の介護現場で役立てていただければ幸いです。
Q1.大掃除を頼まれたらどうすればよいの?
A.大掃除は、訪問介護サービスの対象外となります。丁寧に断りましょう。
訪問介護員が掃除できるのは、利用者が使っている部屋の掃除のみです。
したがって、家族が利用している部屋や、窓拭きといった掃除も介護保険の対象外となります。
利用者の部屋しか掃除ができないということを伝えたうえで、民間企業や自治体による家事代行サービスを紹介してあげましょう。
Q2.タバコ・お酒の買い物も頼まれてしまった
A.「お医者様に止められていますから、私には出来ないのです」と、誠実に理由を伝えましょう。
利用者さんが「自分にとっては必需品なんだ」と言い張っても、絶対に独断で対応してはいけません。
介護サービスで健康を害する買い物を引き受けてしまっては、事業所へのクレームにも繋がります。
あまりにもしつこく言われるのであれば、サービス責任者に相談して対応してもらうことも1つの手段です。
▼嗜好品関連の買い物に関しては、以下の記事も参考になります。
>>訪問ヘルパーは酒タバコの買い物代行ができない?できる・できないサービスについて
Q3.車で20分の範囲は買い物の対象外?
A.必要な移動時間であれば、問題ありません。
なぜなら田舎や地方では、車で20分移動しなければ買い物ができない環境も珍しくないからです。
ただし、何件も買い物施設を通り越しての移動は対象外となります。
仮に「〇〇店の特売日だから」と利用者に指示をされたとしても、遠出による買い物代行は引き受けないようにしましょう。
Q4.購入した果物の皮むきを頼まれた
A.ケアプランに基づいていなければ、断らなければいけません。
予定外の依頼をされた場合は、ケアマネジャーやサービス責任者に相談をすることが第一優先です。
ただし、今回のケースの場合は介護保険でも対応できるサービスになります。
問題なのは、ケアプランとして計画されている内容であるか?ということの確認です。
些細な頼みごとであっても、まずは事業所側に報告するようにしましょう。
Q5.訪問介護は家政婦とは違うの?
A.訪問介護と家政婦は、全く異なる職種です。
訪問介護は、介護資格を有したヘルパーが介護保険法に基づいて「自立した生活を送るための手助けをする」ことが目的です。
対する家政婦は、家事を行うスキルさえあれば、誰でも行うことが出来ます。
また、利用者本人に対するサービス以外にも、育児や旅行の付き添いなど、さまざまな要望に柔軟な対応が可能です。
似たような訪問サービスとはいえ、目的が異なるので注意しましょう。
Q6.訪問前に買い物を済ませることは可能?
A.前回の訪問時や事前電話により、利用者から購入する商品の確認が取れていれば、訪問前に買い物を済ませることが可能です。
ただし、この場合のサービス所要時間は、買い物にかかった時間と利用者の自宅での訪問介護の時間を合算して算出されます。
つまり、買い物をした店舗から利用者の自宅に向かうまでの時間は介護報酬として算出されません。
十分に注意しましょう。
参考:介護保険最新情報vol.267 「平成24年度介護報酬改定に 関するQ&A(連番460)|厚生労働省
Q7.買い物のお釣りはあげると言われてしまった
A.金銭を含め、菓子折りや1杯のお茶ですらもらってはいけません。
業務中は、いかなる御礼の品であっても受け取らないようにしましょう。
無理やり渡されたのであれば、必ず事業所へ報告して、対応をしてもらってください。
また、利用者には「事務所に伝えなければいけないので、事情を伺いにスタッフが訪れますが問題はありませんか?」と伝えるとよいでしょう。
他の訪問介護員とも情報を共有することで、注意を促すことが出来ます。
Q8.お餅が食べたいと言われたら断るべき?
A.まずは、サービス責任者に相談しましょう。
大手の事業所では、大丈夫かどうかに関わらず禁止にしているケースがほとんどです。
間違っても、個人的な判断で買い物に応じてはいけません。
少しでも不安に思う内容があれば、迷わずに事業所と相談をすることで、トラブルを最小限に押さえることができるでしょう。
▼さらに細かい断り方や対応が知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
>>訪問ヘルパーがやってはいけないこと|Q&Aや断り方を紹介
まとめ:買い物の範囲は正しく理解してもらおう
訪問介護員が提供できるサービスは、介護保険法によって定められています。そのため、頼まれたからといって何でもしてあげてよいというわけではありません。
大事なのは、ちゃんと事情を説明して、利用者やその家族にも理解をしてもらうことです。
「これくらいなら」と勝手な判断をしてしまうと、事業所にも迷惑をかけてしまいます。
訪問介護の買い物の範囲をしっかり理解して、お互いに公平なサービスを提供するように心がけましょう。