訪問介護現場の新型コロナワクチン事情に関するリアルな声
2019年12月初旬、中国の武漢市で第1例目の感染者が報告された新型コロナウイルスは、強力な感染力によって、世界中で猛威を振るいました。
訪問介護業界では、コロナウイルスの脅威によって感染リスクに怯える日々が続いています。
このような環境下、2021年には新型コロナワクチンも出回り始め、徐々に感染拡大は落ち着いてきました。
しかし、実際の介護現場では今日に至るまで、さまざまな葛藤があったようです。
そこで今回「みーつけあ」では、新型コロナウイルスワクチン事情に関するリアルな声をまとめました。
改めて、新型コロナウイルスと訪問介護業界について、理解を深めましょう。
訪問介護は新型コロナワクチンの優先接種対象に
2021年10月下旬の段階で、緊急事態宣言は計4回発令されています。
同年9月30日には4回目の緊急事態宣言が解除されて、10月25日には飲食店の時短要請も解除されました。
「政府CIOポータルサイト」によると、新型コロナワクチンの接種率は以下のように公表されています。
- 1回目接種率:71.17%
- 2回目接種率:65.75%
2021年10月現在のデータ。
現在でこそコロナワクチン接種率は高くなっていますが、2021年当初は訪問介護員は優先接種の対象ではありませんでした。
しかし、新型コロナウイルスによって自宅療養せざるを得ない状況が考慮されて、在宅・訪問サービスの介護員でも条件付きで優先接種の対象となったのです。
優先接種の対象となる条件は、以下になります。
- 市町村が、自宅療養中の高齢者に介護サービスが必要だと判断した場合
- 事業所と従事者がいずれも、感染者や濃厚接触者を介護すると意思を示した場合
こういった処置の理由について、厚労省認知症施策・地域介護推進課の担当者は「ワクチンには限りがあるため、優先順位を付けざるを得ない」と話しています。
なお、医療従事者等(480万人)の先行・優先接種は2021年2月17日から開始して、同年7月23日に完了しました。
参考:新型コロナウイルス緊急対策本部|全国知事会ホームページ
訪問介護現場の新型コロナワクチン事情
では、このような環境下で訪問介護現場の新型コロナワクチン事情はどのようになっていたのでしょうか。
この記事では、口コミや情報サイトから抜擢した以下の内容についてピックアップしました。
- 計画通りに進まないワクチン接種
- 旅行に出かける支援者に苛立つ
- 利用者がマスクをしてくれない
さまざまなシチュエーションによる、訪問介護現場について見ていきましょう。
(1)計画通りに進まないワクチン接種
2021年3月、在宅・訪問介護サービスの従事者も優先接種の対象となりました。
しかし、地域によっては自治体の対応が進まないケースも見られたのです。
「中国新聞デジタル」によると、2021年6月の段階で優先接種を行っていたのは、広島県内の23市町のうち三次市と神石高原町のみとのこと。
その後、続々と優先接種を決めた市町も出始めるなか、多くは「検討中」にとどまっていたようです。
このような背景として、ワクチン担当者が「7月末までに高齢者のワクチン接種を終わらせないといけないため、介護従事者に目配りする余裕がない」と話しています。
ワクチン接種が思うように進まないなか、現場では「なぜワクチンを接種して来ないのか?」と不満を漏らす利用者が事業所に抗議をすることもあったようです。
さらに、訪問介護員としては「同じ介護職なのに、なぜ施設介護と差別されているのか?」と複雑な心情を見せる人もいました。
(2)旅行に出かける支援者に苛立つ
パートとして訪問介護事業所で働くAさんの口コミです。
担当の要支援者さんが、緊急事態宣言中にも関わらず旅行に出かけてしまったそうです。
要支援者さんが自宅に帰宅した翌日、Aさんは生活援助を担当していたようですが、本音としては拒否をしたいとのこと。
お互いにワクチンは接種していたそうですが、要支援者さんの非常識な行動にAさんは苛立ちを隠せなかったのです。
しかし、事業所としては要支援者さんのケアを断るわけにはいかず、結局は誰かが担当をしなきゃいけないと頭を悩ませることに。
ワクチンを接種しているからとはいえ、軽率な判断をすると意見が食い違ってしまう恐れがあるのでしょう。
(3)利用者がマスクをしてくれない
「利用者がマスクをしてくれない」と嘆く、訪問介護員のBさんの話です。
理由は、「ワクチンを打ったから」「マスクは苦しい」や、認知症でコロナが分からないといったもの。
マスクをしてもらうように話すと「しつこい!」と怒られてしまうため、頭を抱えていると話しています。
この質問に対して、回答者は「ウチではマスクの着用の指示をしていません」と返答していました。
代わりに、「スタッフはマスクと、口腔ケアを行い、入浴介助時のみゴーグルを追加でつけています」と話していました。
ただし、利用者の家族が単身赴任で関東から行ったり来たりを繰り返していたとのことで、ご家族には事業所の責任者が注意を促したそうです。
利用者にマスクの着用を支持するかどうかは、事業所によっても対応が異なるのでしょう。
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まとめ:今後の訪問介護現場について
2021年10月下旬、日本の感染者数は著しく減少しています。飲食店の時短要請の解除に伴い、人の動きも活発になってくるでしょう。
利用者のなかには、「新型コロナワクチンも接種したし、もう大丈夫だろう」と軽率な判断や行動を取る人も増えてくるかもしれません。
しかし、新型コロナウイルスの感染が途絶えたわけではありません。
このような環境下でも、訪問介護現場では引き続き感染予防対策に細心の注意を払って、業務に努めましょう。