訪問介護員の緊急時の対応とマニュアルを理解しよう
「業務中の緊急時には、どのように対応したらよいの?」
「訪問介護の緊急時の対応とマニュアルを理解しておきたい」
訪問介護の現場で、急に事故や災害に巻き込まれたら、気が動転して適切な判断ができないこともあるでしょう。
しかし、そのようなときのために緊急時の対応やマニュアルを理解しておけば、最悪の事態を避けることが可能です。
今回「みーつけあ」では、訪問介護の緊急時の対応やマニュアルについて紹介します。
万が一のトラブルに備えて、正しい対応やマニュアルを理解しておきましょう。
1.訪問介護員の緊急時マニュアルの目的とは?
緊急時マニュアルは、訪問介護サービスを利用してくれる要介護者やその家族に、安全で安心できる介護ケアを提供するために必要不可欠です。
主な目的としては、以下の項目が挙げられます。
- 訪問介護サービス提供時の、事故・災害を未然に防ぐこと。
- 利用者の急変や急病に、迅速な対応を行うこと。
- 利用者やその家族に、信頼してもらえる介護サービスを提供すること。
- 訪問介護員に危機管理体制の確立を周知してもらうこと。
- 事業所内の連絡・協力体制を強化して、他の関係機関との連携を図ること。
- 事故の再発防止に努めること。 など
緊急時マニュアルの目的を理解することで、すばやく最適な対処を行ったり、二次災害を防ぐことに繋がります。
訪問介護サービスとしての信頼を得ることはもちろんですが、第一としては利用者の安心・安全の確保が目的です。
2.訪問介護員の緊急時の対応や流れ
ここからは、実際の緊急時の対応や流れについて紹介します。
緊急時の流れを理解しておけば、どのように行動・判断をすればよいのかを明確化する事が可能です。
主な流れは、以下のようになります。
- 事態発生・救急車の要請判断
- 119番通報と応急手当
- 事業所へ連絡
- 到着した救急隊への状況報告
- 再度、事業所へ報告
順番に見ていきましょう。
対応1.事態発生・救急車の要請判断
まず始めに、救急車を呼ぶ必要があるかないかを判断します。
必要と判断した場合は、119番通報をしてください。迷ったときや不要と判断した場合には、事業所への電話連絡が優先となります。
責任者や管理者に状況報告をして、指示に従いましょう。
119番通報をする場合は、通報と応急手当後に事業所へ連絡します。
【救急車を呼ぶべき症状について】
ためらわずに救急車を呼ばなければいけない高齢者の症状としては、以下の項目が挙げられます。
- 顔の半分が動きにくい、あるいは痺れている。
- 笑ったときに顔の半分がゆがんでいる。
- ろれつが回っていない。
- 視野が狭い、2重に見えている。
- 手足の痺れや、突然力が入らなくなる。
- 激しい頭痛や高熱。
- 急にふらついたり、立てなくなったりしている。
- 胸や背中の激痛や、息切れ呼吸困難。
- 激しい腹痛や吐血。
- 意識がない、あるいは薄れている。
- 痙攣が止まらない。
- 強い吐き気、大量の出血、広範囲のやけど など
高齢者の場合、自覚症状が出にくい場合もあります。積極的に症状を聞いて、様子を確認しましょう。
対応2.119番通報と応急手当
119番通報が必要だと判断した場合には、落ち着いて「住所・利用者氏名・事業所名」を伝えてください。
先方からの質問には、できる限り細かく状況を説明するとよいでしょう。
電話を終えたら、安全な場所で利用者の安静を保ちます。
意識がないのであれば、以下のような回復体位をとらせることが望ましいです。
- 仰向けやうつ伏せから、横向きに寝かせる。
- 上側の手を、顔と床面の間に入れる。
※左手が床側なら、右手の甲に顔を乗せる。 - 下あごを軽く前に出して、気道を確保する。
- 上側の足を前に出して膝を90度曲げておきます。
※左足が床側なら、右足を曲げる。
参考:回復体位とは?普段どおりの呼吸はあるけど意識がない!救急車を待つ間にできること|SECOM信頼される安心を、会社へ。
利用者や家族が不安にならないように、できる限り落ち着いて対応をしましょう。
対応3.事業所へ連絡
応急手当後、事業所に電話をして救急車を呼んだことを伝えます。
その後、責任者や管理者に状況を説明して、事業所の指示に従ってください。
また、折り返しの連絡に備えて、電話には常に出られるようにしておきましょう。
対応4.到着した救急隊への状況報告
救急隊が到着したら、症状・持病・服薬などの状況を伝えます。
家族の連絡先やいつ来るかといった状況説明も、必要に応じて対応しましょう。
対応5.再度、事業所へ報告
再度、事業所に現場状況を伝えてください。その後は、事業所の指示に従って行動しましょう。
緊急事態に慣れていない場合、焦って救急車を呼んでしまうことがあるかもしれません。
しかし、仮に早とちりだったとしても利用者にはリスクがありませんので安心してください。
救急隊には丁寧に謝り、事業所には状況を説明すれば問題ありません。
逆に、異変に気づかずに容態が急変した場合のほうが、利用者にとってはリスキーです。
【救急車を呼ぶべき症状について】の項目を念頭において、少しでも不安であればためらわずに救急車を呼びましょう。
3.訪問介護員の緊急時の対応とマニュアル
ここからは、実際の緊急時マニュアルの内容について紹介します。
緊急時マニュアルは、訪問介護サービスに関わらず施設サービスの内容も含めていることがほとんどです。
この記事では、訪問介護員に向けた内容に注視して、以下の内容をピックアップしました。
- 業務中の注意点
- 衛生面の注意点
- 事故や急病時の注意点
- 災害時の対応
それぞれの項目を確認して、緊急時に役立てましょう。
(1)業務中の注意点
業務中の注意点は、以下のとおりです。
・基本的な知識を習得し、質の高い介護サービスの提供を目指す。
・利用者の特徴や心身の状況等を把握し、注意をはらう。
・平素からサービス利用者、家族とのコニュニケーションを図るよう努力する。
・利用者に関する報告事項の徹底を図る。
・職場全体で情報共有と情報提供の重要性を周知する
・施設等の危険箇所を把握し、転倒予防等の安全な対応を心掛ける。
(2)衛生面の注意点
衛生面の注意点は、以下のとおりです。
・調理,配膳は衛生的に行う。
・食事に提供する食器等の消毒を適切に行う。
・設備,備品の衛生的な管理に努める。
・食中毒及び感染症の発生を防止するために必要な措置を講じる。
・インフルエンザ対策,腸管出血性大腸菌感染症対策,レジオネラ症対策 等については必要な措置を講じる。
・空調設備等により適温の確保に努める。
・医薬品及び医療用具の管理を適正に行う。
・予防及びまん延防止のために従業員研修等を定期的に行う。
・外部からの感染を防止する。
・保健所及び市への報告は迅速に行う。
(3)事故や急病時の注意点
事故や急病時の注意点は、以下のとおりです。
・利用者の状態を確認する。
・利用者の安全を確保する。
・救急処置を行い、同時に他の従業員に応援要請する。
・医師や協力医療機関等に状態等を連絡して指示を受ける。
・状態等に応じて救急車を要請する。
・ご家族,緊急連絡先等に速やかに状況等を報告する。
・必要に応じて警察署,保健所,市等の関係機関先に連絡して指示を受ける。
・経過観察を行う場合には、状況,病状等の急変に備えて緊急連絡体制等の確認を行 う。
・事故,病状急変時の状態等を正確に記録する。
・記録した文書を従業員に周知し、事故情報等を共有する。
・事故報告を速やかに行う。
・送迎時の事故の場合には、送迎者が単独で判断せずに管理者に連絡して指示を 受ける。
(4)災害時の対応
災害時の対応は、以下のとおりです。
・消防法に基づく防災対策を確実に行う。
・事業所独自の具体的な防災計画を策定する。
・災害発生時の指揮系統を明確にしておく。
・従業員連絡網を整備する。
・災害発生時のために食料,医薬品,日用品等を備蓄する。
・災害発生時のために軍手,懐中電灯,ラジオ等を備え付ける。
・事業所の耐震性等の安全性について点検と対応を進める。
・災害発生時の指定避難場所や公園,広場等を把握しておく。
・防災計画に基づいて定期的に避難,救出等の訓練を行う。
・訓練後に防災訓練の再点検や見直しを行う。
・事故報告を速やかに行う。
▼緊急時の対応については、以下の記事も参考になります。
>>訪問ヘルパーの方必読!緊急時の対応方法について紹介
まとめ:緊急時に備えて迅速に対応しよう
この記事では、訪問介護員の緊急時の対応の流れや、緊急時マニュアルの内容について紹介しました。
訪問介護員として働くうえで、高齢者の容態が急変したり、事故や災害にあったりすることはめずらしくありません。
常に緊急時のシチュエーションをイメージして、迅速な判断と対応ができるように心がけておくことが重要です。
事業所との連携力を高めて、利用者にも安心して利用してもらえる環境作りを心がけましょう。