訪問介護の時給相場は高い?内訳や正社員と比較して分かる給料事情
「訪問介護ヘルパーの時給は高いの?安いの?」
「就職しようか悩んでいるから、実際の給与事情が気になる」
「アルバイトやパートだと手厚い保証はないの?」
訪問介護ヘルパーとして働くとき、このような疑問はつきものです。
今回「みーつけあ」では、時給相場や給料の内訳を、雇用形態による違いも含めて比較して解説します。
これから就職される人や現役で働いている人でも、気になるような情報を集めました。ぜひ参考にしてください。
1.訪問介護ヘルパーの時給相場
訪問介護ヘルパーとして働くなら、まず最初に気になるのが給料ではないでしょうか。
働いても給料が低ければ、生活に支障が出たり、就職へのモチベーションが下がったりします。
「なぜこんなに給料が低いの?」と後悔をしないためにも、訪問介護ヘルパーの時給相場を確認していきましょう。
基本的な給料形態は、アルバイトやパートであれば時給換算になります。正社員なら月給制です。
そこで、以下の2つに分けて訪問介護ヘルパーの時給相場を解説します。
- アルバイト・パートで働く場合の時給
- 正社員で働く場合の時給
それぞれの給料相場を確認してみてください。
アルバイト・パートで働く場合の時給
厚生労働省が行った「賃金構造基本統計調査」によると、2019年の訪問介護ヘルパーの時給は、男性が「1,479円」、女性が「1,445円」であることがわかります。
【賃金構造基本統計調査の結果】
性別 | 平均時給 |
男性 | 1,479円 |
女性 | 1,445円 |
参考:賃金構造基本統計調査
求人サイトを独自に調査した結果では、全国平均は「1,393円」です。厚生労働省の結果に比べて、50〜90円ほど低くなっています。
また、厚生労働省が2021年に発表した「一般労働者の産業別賃金水準」によると、介護分野を含む「医療・福祉」は、全産業平均を下回っているのが実情です。
訪問介護ヘルパーとして、アルバイトやパートの雇用形態で働くときの時給相場は、サービス業と比較すると高いものの、全体的に見ると低いという結果になりました。
正社員で働く場合の時給
厚生労働省のデータによれば、正社員の平均年収(ボーナス抜き)はおよそ「314万円」です。
仮に1日8時間で週5日(月22回)出勤した場合、時給換算すると「1,635円」になります。
【計算内容】
年額相場 | 総支給3,530,000万円–ボーナス387,400円=3,142,600円 |
日給相場 | 261,883円÷22日=130,941円 |
時給相場 | 130,941円÷8時間=1,635円 |
正社員では、アルバイトやパートと比べたときに、給料が高く福利厚生も保証されています。
一方で、フルタイム労働や休みの融通も効きにくいといった点は、デメリットとなるでしょう。
これから訪問介護ヘルパーを目指す場合は、メリットとデメリットを考慮したうえで雇用形態を検討する必要があります。
あなた自身の生活スタイルや経済状況によって、最適な雇用形態を選ぶことが重要です。
2.訪問介護の時給は援助内容で変動する
ここまでは、訪問介護ヘルパーの時給を雇用形態別に確認してきました。
訪問介護では、雇用形態以外で時給が変わる要素として、「援助の内容」があります。
援助の内容は、主に以下の2つです。
- 生活援助
- 身体介護
それぞれの支援内容によって単位数が決められており、訪問時に提供した内容により時給が変動します。
一例として、身体介護と生活援助で同程度の時間のサービスを提供した場合の単位を、以下の表でまとめました。
援助内容 | 時間 | 単位 |
身体1 | 20分以上30分未満 | 248 |
生活1 | 20分未満 | 66 |
参考:訪問介護サービスコード表
身体介護は、入浴介助や利用者さんの移乗など肉体労働であることが多く、単位数も高めの設定です。
これらを踏まえて、生活援助と身体介護の時給を見ていきましょう。
生活援助の時給相場
雇用地域で多少の上下はありますが、複数の求人サイトを参考に計算した時給相場は「1,200〜1,400円」です。
訪問介護で働く場合の給料相場よりは、若干低い時給になっています。
生活援助の内容は、仕事や身体的な理由で利用者さんの援助が難しい家族に代わり、洗濯や掃除などの日常生活のお手伝いです。
これまで専業主婦として生活してきた人ならスキルを活かしやすく、生活援助の仕事に絞って求人を探している人もいるかもしれません。
しかし、生活援助の時給相場は低めになっているため、目標の収入を達成できない可能性も出てきます。
時給を重視して働きたい場合は、次に解説する身体介護の相場を確認してみましょう。
身体介護の時給相場
身体介護の時給相場は「1,400〜2,000円」です。生活援助より、500円程高くなっています。
仕事内容は、利用者さんの身体に直接触れて行う介護です。
移乗や入浴介助、体位変換やたんの吸引など、肉体労働の側面が強いといえます。
そのため、利用者さんの体に触れなくても行える生活援助よりも、身体介護のほうが時給相場は高く設定されています。
3.訪問介護の時給を上げるための3つの方法
収入に納得して就職・転職をしても、生活費は一生必要です。いずれは、給料や時給を上げたいと思う日がくるかもしれません。
ここでは、訪問介護ヘルパーが給料を上げるためにできる3つの方法を解説します。
- 高額手当がある勤務を増やす
- 待遇のよい事業所を選ぶ
- 資格を取得する
時間と費用がかかるものから、即実行できる方法などさまざまです。
あなたの給料を上げるための参考にしてください。
方法1. 高額手当がある勤務を増やす
時給を上げるには、高額手当付きの勤務が多くなるように、業務割りを変更してもらう方法があります。
たとえば、手当がある勤務は、以下のようなものです。
- 早出
- 夜勤
- 土日祝日
このような勤務は、通常の時給に加えて、別で手当が発生します。
ただし、不規則な生活によって体調を崩しやすくなる点に注意が必要です。
また、家族と過ごす時間が減ってしまう可能性もあります。
家族の協力が必要になる場面も出てくるため、生活とのバランスを考えて手当がでる勤務を検討してみましょう。
方法2. 待遇のよい事業所を選ぶ
今よりも待遇のよい職場に移動もしくは掛け持ちをすることで、時給を上げる方法もあります。
実は、訪問介護ヘルパーとして採用されることは難しくありません。
厚生労働省のデータでは、訪問介護ヘルパーの人材が不足していることが確認できます。
出典:介護労働実態調査 ((財)介護労働安定センター)|厚生労働省
政府は、人材確保のための取り組みをしているため、転職にもそれほど困らないでしょう。
もし、掛け持ちをする場合は、双方の事業所に事前に相談しておくことをおすすめします。
事業所によっては、掛け持ちを禁止しているからです。
勤務先で掛け持ちの相談をすると、今以上の時給の提示や仕事量を増やしてもらったというケースもあります。
あなたと事業者の双方が納得できる働き方を目指すためにも、まずは相談してから転職を視野に入れましょう。
▼掛け持ちに関する記事はこちらから。
>>登録ヘルパーは掛け持ちしても良い?掛け持ちをする3つのメリットとは
方法3. 資格を取得する
資格を取得すると、確実に収入が上がります。
全国どこの事業所に就職・転職したとしても、「資格手当」が加算されるためです。
また、任せられる仕事が増えることで、これまで貰えなかった手当が支給されることもあります。
収入を上げるために取得するなら、以下2つの資格取得がおすすめです。
- 介護福祉士
- サービス提供責任者
それぞれの内容を確認してみましょう。
介護福祉士
介護福祉士は、訪問介護ヘルパーと同じ生活援助や身体介護とともに、利用者さんや家族へ介護用品の使い方を説明・指導します。
介護のスペシャリストとして注目されており、訪問介護ヘルパーから一歩進んだ福祉業務に携わりたい人におすすめです。
また、介護福祉士の資格があればケアマネージャーの資格試験も受験できます。さらなる収入アップと、キャリアアップが期待できるでしょう。
受験資格としては、以下のいずれかが必要です。
- 実務経験ルート:3年以上の実務経験+実務者研修の資格取得
- 養成施設ルート:2年以上の介護福祉士養成施設経験(最短1年)
- 福祉系高校ルート:福祉高校を卒業(2009年以降の入学者とそれ以前の入学者で受験資格が異なる)
時給を上げるために、介護福祉士を目指して経験を積みましょう。
サービス提供責任者
サービス提供責任者の仕事内容は、ケアマネージャーが作成した介護指示書をもとに、介護サービスの計画の立案と訪問介護ヘルパーへの研修や指導を行うことです。
他業種との連絡調整も担っていることから、コーディネーターとしての役割もあります。
受験資格は、介護福祉士資格の取得か介護職員実務者研修を修了していることです。
そのため、介護福祉士からキャリアアップを視野に入れている人が目指すとよいでしょう。
▼給料アップの方法については、以下の記事も参考になります。
>>訪問介護ヘルパーは年収が低い!?給料の相場や給料アップの方法を紹介
▼資格の取り方に関しては、以下の記事をご参考ください。
>>介護ヘルパーの資格の取り方について|費用や年齢制限は?
4.訪問介護ヘルパーが時給以外に考えたい雇用形態別のメリット
ここまでの内容では、「正社員で身体介護を重点的に行うことで給料が上がる」と感じた人もいるかもしれませんね。
しかし、訪問介護ヘルパーとして働く際は、雇用体制や社会保障、ワークライフバランスなど、さまざまな視点から比較する必要があります。
「これから訪問介護に携わってみたい」と考えているならば、時給以外の要素も加味して働き方を選びましょう。
以下2つの働き方別に、訪問介護のメリットを解説します。
- 登録ヘルパーとして働くメリット
- 正社員として働くメリット
あなたにとって「登録ヘルパーと正社員のどちらがライフスタイルにあった稼ぎ方なのか」を考えてみましょう。
登録ヘルパーとして働くメリット
登録ヘルパーとして働くメリットは、「自由に働き方を調整できる」点です。
訪問介護ヘルパーは、時給換算すると登録ヘルパーのほうが正社員の時給を上回ることがあります。
正社員は固定給ですが、登録ヘルパーなら出勤時間で給料の増減をコントロールできるためです。
たとえば、1時間の訪問介護で生活援助と身体介護の両方を提供したときに、時給2,000円を超えることがあります。
さらに、次のような働き方で、時給をより高くしている登録ヘルパーもいます。
- 夜間・早出など手当の多い時間帯の勤務を増やす
- 事業所の掛け持ちする
このように、時給を自分でコントロールしながら自由に働ける点は、登録ヘルパーのメリットといえます。
▼さらに詳しく知りたい人は、以下の記事をご参考ください。
>>通勤時間に縛られない登録ヘルパーの働き方|メリットやデメリットについて
正社員として働くメリット
時給が高い働き方を選ぶ選択肢もありますが、訪問介護では正社員として働くメリットもあります。
正社員として働くメリットは、「給料や生活が安定する」ことです。
登録ヘルパーとして働く場合は、利用者さんの都合で予約がキャンセルとなり、予定していた給料を稼げないこともあります。
一方、正社員はフルタイム労働の代わりに、固定給とボーナスがもらえることから金銭的に安定しやすいです。
さらに、社会保障や福利厚生などを考慮すると、正社員のほうが生活面で安定しているといえるでしょう。
収入面だけではなく、病気やけがで働けなくなったときも生活が保障される点が正社員のメリットです。
登録ヘルパーと正社員では、生活の仕方や稼ぎ方に大きな違いがあります。
訪問介護の仕事を長く続けるためには、自分に合った働き方を吟味して選んでみてください。
訪問介護の時給で知っておきたいQ&A
最後に、訪問介護ヘルパーの時給に関する疑問をQ&A形式で解説します。
- 移動時間やその他手当は保証されているの?
- 訪問介護ヘルパーの需要はどれくらいあるの?
- 訪問介護ヘルパーは子育て中でも仕事ができますか?
時給は生活に大きく影響するため、疑問や悩みはできる限り解決しておきたいはずです。
それぞれ順番に回答していくので、ぜひ参考にしてください。
Q1.移動時間やその他手当は保証されているの?
A.移動時間の賃金は、保証されています。
なぜなら、労働基準法で支払いの義務が示されているためです。
しかし、事業所によっては、時給の中に含まれるという理由で支払わないケースや、移動距離に関わらず一律賃金にしているところもあります。
これらはすべて労働基準法違反であり、本来はすべての移動時間を書き出して、その時間に見合っただけの移動賃金を支払いが必要です。
そのため、就職・転職前に事業所の支払い体制を確認しておくことをおすすめします。
▼更に詳しく知りたい人は、以下の記事をご参考ください。
>>登録ヘルパーの移動時間問題!労働と認められる条件を徹底解説
Q2.訪問介護ヘルパーの需要はどれくらいあるの?
A.厚生労働省のデータによると、介護職員の需要は平成12年度以降、右肩上がりに増加しています。
また、介護サービス事業所における従業員不足の状況から、介護職員は不足傾向です。
さらに、2025年問題といって、要介護者が増えた際に訪問介護ヘルパーがより不足する可能性も示唆されています。
このように、訪問介護の仕事は今後も需要が継続していく見込みです。
Q3.訪問介護ヘルパーは子育て中でも仕事ができますか?
A. 子育て中でも、訪問介護ヘルパーとして勤務可能です。
実際に、子どもを3人育てながら、訪問介護ヘルパーとして働く人もいます。
しかし、子育て中では常勤の雇用形態は難しいはずです。
パートナーと十分に話し合い、子育てとの両立ができそうな場合は、訪問介護ヘルパーとして勤務してみましょう。
まとめ:訪問介護の時給を上げるならキャリアアップも視野に入れよう!
訪問介護ヘルパーの時給相場や手当、給料を上げる方法まで解説しました。
これから訪問介護ヘルパーを目指すなら、給料だけではなく資格試験やキャリアアップも視野に入れることが重要です。
訪問介護ヘルパーはまだまだ人材不足であり、これからさらに需要が伸びる仕事でもあります。
この記事を参考にして、訪問介護ヘルパーへの理解を深め、就職をするかどうかの判断材料にしてもらえたら幸いです。