訪問介護手順書の作り方!計画書との違いも解説
「訪問介護手順書はどうやって作るの?」
「内容や書き方が分からない…」
「何を重視して書いたら、利用者さんにとってよい訪問介護手順書になるの?」
このような疑問をお持ちですね。
訪問介護手順書の作成手順や書き方は、ある程度決まっています。
方法さえ理解できれば、毎回どうしたらよいのか悩むこともなくなるでしょう。
今回「みーつけあ」では、訪問介護手順書を作成する意味や作り方を解説します。
また、書くときに気を付けたいポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
訪問介護手順書の作り方を正しく理解して、迷わず作成できるようになりましょう。
1.訪問介護手順書とは?
「訪問介護手順書」とは、サービス提供責任者によって作成される、訪問介護のサービス内容を詳しく書いた計画書のことです。
作成の義務がある介護計画書と違い、手順書は業務を効率化するために作ることが推奨されています。
ここまでの内容を踏まえ、より詳しく以下の内容を確認していきましょう。
- 訪問介護手順書と計画書の違い
- 訪問介護手順書の必要性
それぞれの違いや必要性を知って、正しく手順書を作れるようにしてください。
訪問介護手順書と計画書の違い
手順書と計画書の大きな違いは、作成義務の有無です。
手順書作成には義務がないものの、計画書は利用者さんにケアプランを提示するために作成が必須となります。
訪問介護計画書を基に、利用者さんやその家族へ介護プランの説明をして、納得してもらうことでサービスが開始できます。
では、訪問介護手順書を作成する必要性はあるのでしょうか。
訪問介護手順書の必要性
訪問介護手順書は作成義務がないものの、事業所内での業務を効率化するために必要です。
厚生労働省でも、「3ム」の解消に向けて作成を推奨しています。
【訪問介護の3ム】
- ムリ
- ムダ
- ムラ
「3ム」を解消することで、従業員が効率的で安全な介護を提供できるようになるでしょう。
介護を受ける利用者さんにとっても、従業員の業務基準が担保されることで、よりよいサービスが受けられるようになります。
2.訪問介護手順書の作成で押さえておきたいポイント
訪問介護手順書の作成で押さえておきたいポイントとして、以下の3つを確認しておくとスムーズに作成できます。
- 利用者さんの現状を把握する
- 利用者さんに必要な支援を分析する
- テンプレートを作成する
訪問介護手順書を作成するための基礎が詰まっていますので、これから作成する計画書の参考にしてください。
ポイント1. 利用者さんの現状を把握する
訪問介護手順書の作成は、「利用者さんの現状を把握する」ことが重要です。
利用者さんの現状として、以下の項目を把握しましょう。
- 身体状況(ADL)
- 利用者さんを取り巻く環境(協力体制や経済面)
- 生活状況
- 利用者さんや家族の思い
これら現状を把握すると、利用者さんにとって今必要な個別性のある支援計画の立案ができます。
また、個別性のある支援計画なら、利用者さんやその家族の満足度も上がるはずです。
事前準備として、細かい部分まで入念に計画してください。
ポイント2. 利用者さんに必要な支援を分析する
現状を把握ながら、利用者さんが求めていることや利用者さんにとって必要となる支援を分析しましょう。
介護や医療の専門知識や根拠を基に、分析を進めていきます。
利用者さんは、表面化された欲求と、その裏に隠された欲求を持ち合わせていることが多いです。
たとえば、表面的な欲求として以下の項目が挙げられます。
- 片麻痺で利き腕が上手く動かないため、食事の介助をしてほしい
- 両足に痺れがあるため、トイレ介助をしてほしい
- 住み慣れた家で過ごしたい
一方、利用者さんが感じてはいるものの、言語化して伝えられないニーズもあります。
たとえば、以下のようなものです。
- 片麻痺でも利き腕と逆の手を使って食事ができるようになりたい
- ポータブルトイレやオムツではなく、家のトイレに行く方法を一緒に考えてほしい
- もし施設に入所したら、残された夫が生活できないから困る
表面的な欲求は、介護の依頼があった時点で把握できます。
しかし、その裏に隠れた願望まで深堀して、より利用者さんのためになる介護を実践できるようにしましょう。
ポイント3.テンプレートを作成する
訪問介護手順書は事業所ごとに異なります。しかし、記載内容は概ね変わりません。
パソコンが使える場合は、エクセルを活用してテンプレートを作成することで業務の効率化が可能です。
手書きだと、人それぞれ字体や書き方が違うので、追記や修正で用紙が汚れる可能性もでてきます。
また、読みにくい文字だったり、記載方法がバラバラだったりしていると、従業員がストレスを感じてしまいかねません。
作業の効率化を重視するなら、パソコンでテンプレートを作成して、入力作業をするとよいでしょう。
3.訪問介護手順書の作成内容と記入例
訪問介護手順書は、以下5つの内容を含めて作成すると、業務の効率化が図れます。
- 利用者さんの問題・課題
- 長期・短期目標
- 利用者さんや家族のニーズ
- 支援内容
- 訪問時の注意点
本記事で紹介する具体例に加えて、実際に先輩が作成した手順書を見せてもらうと、より理解が深まります。
また、自分自身のなかでさまざまな事例を持っていると、より作成しやすくなるはずです。
項目ごとに具体的な記入例を確認して、実際に作成する際の参考にしてください。
例1.利用者さんの問題・課題
利用者さんが抱えている問題や課題は、職員と共有することでサービスの質が保たれます。
記入例としては、以下のような内容です。
- 脳梗塞後、左半身麻痺で歩行が不安定となり、トイレまでに転倒のリスクが高い
- 数年前に利き手を骨折して動きが悪く、箸を使って食べるのが難しい
- 認知症の進行により内服忘れが目立つ。また過剰内服の可能性がある
- 加齢とともに日常生活ができなくなっている
- パートナーの介護で心身ともに疲弊している
例2.長期・短期目標
長期と短期の目標設定は、利用者さんの状態を把握しつつサービス提供するために必要です。
たとえば、排泄に関する目標を立てるなら、以下のような例を参考にしてください。
<長期目標の例>
- 転倒なく排泄行動ができる(トイレまでの行き帰りができる)
<短期目標の例>
- 無理な行動はしない
- 転倒しそうなときは家族に助けを求めることができる
- 夜間は照灯してから動き始める
- 手すりや滑り止めマットを活用し転倒予防ができる
- 状態によりポータブルトイレやオムツの検討ができる
例3.利用者さん・家族のニーズ
利用者さんや家族のニーズも、手順書に記載しておきましょう。
従業員全体の意識を統一することで、定量的なサービス提供が可能になるはずです。
利用者さん・家族のニーズの記入例は、以下になります。
<利用者さんの希望例>
- 排泄行動は最後まで自分でしたい
- 自分で食事を作りたい
- 1人で通院するのは不安だから、誰かに付き添ってもらいたい
- 浴室で転げそうだから、安全に入浴できる方法を一緒に考えてほしい
- 住み慣れた家で過ごしたい
<家族の希望例>
- 本人の思いを尊重してあげたい
- 両親ともに認知症が進行しており、2人の生活には限界を感じている
- 仕事もあり、お世話ができないから施設入所も考えている
例4.支援内容
手順書に記載する内容の中でも、支援内容は重要な項目です。
「事業所の職員が何をすべきか」を、詳細まで設定して作成しましょう。
支援内容の記入例は、以下表を参考にしてください。
支援内容 | 項目 | 詳細 |
身体介護 | 食事介助 | 1. 食事セッティング 2. 食事メニューを伝える 3. 右利きであるため、右手で箸を持ってもらう 4. 時々食べるように声かけをする(集中力がなくなるため) 5. 適宜水分摂取を促す。このとき、コップを渡してじぶんで飲んでもらうこと(とろみをつけてムセ込みに注意) 6. 汁物は溢す可能性があり、注意が必要 7. 食後は食器を流しまで一緒に運ぶ(右足が痺れているため、転倒に注意) |
実際に提供するサービスであるため、詳細を分かりやすく記載することがポイントです。
例5.訪問時の注意点
実際に介護を行う職員に向けて、注意点も記載しましょう。
利用者さんによって、特記事項はそれぞれ違います。
注意点を確認しておくことで、どの職員が訪問した場合でもトラブルなくサービスを提供できるでしょう。
訪問時の注意点の記入例は、以下になります。
- チャイムを鳴らしても出てこないときは、裏口から入る
- 耳が遠いため、入るときは大きな声で読んでみる
- 家に居ない場合は畑に行ってみる
- 奥部屋は入ってはいけない
4.訪問介護手順書と合わせて知りたい計画書の作成方法
ここまでは、訪問介護手順書の作成方法を解説してきました。
内容を把握できたら、訪問介護における計画書の作成方法も理解しておきましょう。
手順書の内容を充実させるためにも、知っておいて損はない知識です。
介護計画書に記載する内容は、以下5つの項目で作成します。
- 計画書の作成者・作成年月日
- 利用者さん情報(基本情報)
- 利用者さんの現状(身体・生活状況など)
- 利用者さんの長期・短期目標と評価日
- 本人・家族の思い・優先事項
それぞれのステップごとに解説するので、ぜひ参考にしてください。
ステップ1.計画書の作成者・作成年月日
訪問介護計画書を作成した、サービス提供責任者名・作成年月日を記載しましょう。
サービス提供責任者の名前を記載するのは、責任の所在を明らかにする必要があるためです。
また、作成年月日を記載しておくことで、過去の利用者さんの状態と現状を照らし合わせて、介護の実施状況を把握しやすくなります。
ステップ2.利用者さん情報(基本情報)
利用者さん情報(基本情報)は、以下6つの項目が必要です。
- 氏名
- 性別
- 住所
- 生年月日
- 家族構成
- 要介護申請の有無・認定日・支援区分
利用者さんにも提示する情報となるため、失礼がないように正しく記入しましょう。
ステップ3.利用者さんの現状(身体・生活状況など)
利用者さんの現状には、生活や身体の状況を記入します。
利用者さんの具体的な生活状況が理解できるように、詳しく記載しましょう。
また、支援をするときの注意点やポイントなどをまとめておくと、計画を立てるときに役立ちます。
ステップ4.利用者さんの長期・短期目標と評価日
訪問介護計画書は、立案で終わりではなく、目標や評価日も設定する必要があります。
なぜなら、利用者さんの生活状況や取り巻く環境が、常に変化しているからです。
計画時点で利用者さんにとって最適なケアプランであっても、少し時間が経てば新たな課題やニーズが出てきます。
その都度、利用者さんが目指すべき長期・短期目標に評価・修正することが重要です。
評価日の間隔に明確な決まりはありませんが、2週間に1回は評価しておくとよいでしょう。
利用者さんにとって適切な計画になっているかを評価して、計画の修正をしましょう。
ステップ5.本人・家族の思い・優先事項
最後に、本人・家族の思いや優先事項を記載しましょう。
ここまで記入してきた項目よりも、内容を細かく把握する必要があります。
サービス提供責任者や事業所の職員が利用者さんに関わる時間は、1日のほんの一部に過ぎません。
「主たる介護者は家族」として捉えることで、より広い視野で支援できます。
5.訪問介護計画書の注意点
訪問介護計画書は、公的な資料となります。
利用者さんのニーズを反映しつつ、利用者さんや家族に説明して理解してもらえる内容に仕上げることが重要です。
作成時には、以下3つのポイントを押さえておきましょう。
- 誰にでも分かる言葉で書く
- 利用者さんの個別性やニーズを反映する
- 記載漏れや誤字脱字に注意する
それでは、内容を詳しく解説します。
注意点1. 誰でも分かる言葉で書く
訪問介護計画書は、誰にでも分かる言葉で書きましょう。
なぜなら、訪問介護手順書を基に利用者さんやその家族にサービス内容を説明するからです。
専門用語や難しい表現を使うと、利用者さんや家族に理解してもらえず、納得のうえで同意してもらうことができません。
分かりやすく作成するためには、「5W1H」を明確にしましょう。
- 「When:いつ」
- 「Where:どこで」
- 「Who:だれが」
- 「What:何を」
- 「Why:なぜ」
- 「How:どのように」
「5W1H」を明確化することで、利用者さんや家族が具体的なイメージを持って説明を聞けるようになります。
具体的に書くのは大切ですが、簡潔で明瞭に書くことも忘れずに行いましょう。
場合によっては箇条書きを活用するなど、利用者さんや家族が見て理解しやすい計画書を作成してください。
注意点2.利用者さんの個別性やニーズを反映する
訪問介護計画書は、「利用者さんの生活支援をするために作成する」ものです。
そのため、必要だと考える支援と、利用者さんの特徴やニーズをかけ合わせたものでなければいけません。
具体的には、生活状況やニーズを踏まえて計画することを意識しましょう。
作成後にもう一度、「サービス内容が利用者さんのニーズを満たした計画になっているか」を確認してみてください。
注意点3.記載漏れや誤字脱字に注意する
記載漏れや誤字脱字に注意することも、訪問介護計画書を作成するときのポイントです。
とくに「サービス内容が網羅されているか」は、必ず確認しましょう。
また、記載されていても、利用者さんやその家族が理解できなければ意味がありません。
サービス内容が理解できるように、詳細まで明確に記載しておくことが重要です。誤字脱字には注意しましょう。
訪問介護計画書は、公的な書類のため、内容の正確さは必要不可欠です。
誤字脱字の対策は、音読や他の社員とダブルチェックするなどの方法があります。
利用者さんや家族へ説明する前に、一度確認しておきましょう。
訪問介護の手順書で知っておきたいQ&A
最後に、訪問介護の手順書に関する疑問を、Q&Aとしてまとめました。
- 手順書と計画書はどちらか一方を作成すればよい?
- これまで手順書を作ってこなかったけど大丈夫?
- 手順書でバイタルチェックと記載してもよい?
記載内容については、サービス提供責任者が記載できる内容とそうでないものがあるので注意が必要です。
記載に困らない対策を知るために、それぞれを確認していきましょう。
Q1.手順書と計画書はどちらか一方を作成すればよい?
A.どちらか一方を作る場合は、計画書のみの作成でも大丈夫です。
手順書は業務の効率化に向けて作るもので、作成の義務はありません。
しかし、計画書はサービス内容の設定時に必ず必要となります。
どちらか一方だけを作る場合は、計画書を作成してください。
Q2.これまで手順書を作ってこなかったけど大丈夫?
A.作成義務と同様に、手順書を行政に提出する機会はないため、大丈夫です。
しかし、手順書を作成することで業務の効率化が図れて、職員も働きやすくなるでしょう。
また、仮に事業所を廃止して他の介護サービスに引き継ぐ場合に、手順書の提出を求められる場合もあります。
念のため、現行のサービスに関しては手順書を作成しておいたほうがよいかもしれません。
Q3.手順書でバイタルチェックと記載してもよい?
A. バイタルチェックの記載は避けましょう。
バイタルチェックは医療行為の一環です。医師もしくは医師の指示を受けた看護師が行う行為を表します。
訪問介護ヘルパーの医療行為は、法律上認められていません。記載するなら「健康チェック」としましょう。
▼医療行為に関する記事はこちらから。
>>介護ヘルパーの医療行為は禁止?実態やできること・できないことについて
まとめ:訪問介護の手順書はポイントを押さえて分かりやすく作ろう
今回「みーつけあ」では、訪問介護手順書の作成手順と、書くときのポイントについてお伝えしました。
訪問介護手順書は、利用者さん1人ひとりのニーズを考慮して作成します。
また、介護者側が理解できるだけでなく、利用者さんやその家族が理解できる内容として作成することが重要です。
利用者さんのニーズを満たして、必要な援助を提供するためにも、ぜひこの記事を参考にしてください。
空き時間に訪問介護で働いてみませんか?みーつけあでは登録ヘルパーの仕事探しを支援しています。今なら面接支援金を面接の合否に関わらず『毎回3,000円プレゼント』中!