訪問介護で生活援助の範囲はどこまで?利用料金まで徹底解説
「訪問介護ってどんなサービスが受けられるの?」
「生活援助が支援してくれる範囲はどこまで?」
「訪問介護サービスを始めるにはどうしたらいいの?」
このような疑問をお持ちではないでしょうか。
訪問介護で受けられる生活援助は、「利用者さんの自立支援を促すこと」が前提になります。
そのため、利用者さんが在宅で生活の維持ができるようにサポートをするところまでが、生活援助の範囲です。
より具体的に理解してもらうために、今回「みーつけあ」では、生活援助の範囲や利用料金についてまとめました。
また、サービス利用までの流れも紹介します。訪問介護サービスを検討中の人は、ぜひ参考にしてください。
1.訪問介護の生活援助で依頼できる範囲は?
訪問介護と一口に言っても、サービスの種類はさまざまです。
大まかには、以下の3つのサービスとして分類できます。
- 生活援助
- 身体介護
- 通院介助
生活援助は、日常生活を送るうえで、必要な生活全般を支えるサービスです。
身体介護とは、利用者さんの行動を介助するサービスであり、手足が不自由な場合に、支えたり、介助して動いてもらったりするサポートになります。
通院介助とは、医療機関への受診に訪問介護ヘルパーが付き添う介助のことです。
それでは、具体的なサービス内容を踏まえつつ解説します。必要な支援がどれかを確認していきましょう。
生活援助
訪問介護における生活支援とは、利用者さんが日常生活を送るうえで必要な生活力をサポートすることです。
具体的には、以下のような支援を行います。
- 食事の準備
- 洗濯
- 利用者さんの居住空間の掃除
訪問介護で提供するサービスの根幹は、「利用者さんの自立支援を促す」という考えがあります。
そのため、訪問介護ヘルパーが利用者さんのできることを奪わないよう注意しつつ、できそうなことは、自立できるようにサポートをするのが生活援助です。
身体介護
身体介護とは、利用者さんの体に直接触れて、身の回りの介助を行うサービスです。
具体的には、以下のようなサービスがあります。
- 食事介助
- 移乗介助
- トイレ介助やオムツ交換
- 体位変換
- 更衣
利用者さんの自立支援を促すとともに、重症化や寝たきりで動けなくなる廃用症候群の予防を目的としています。
また、身体介護は専門的な知識が必要な介護サービスです。
そのため、専門の介護資格を持ったヘルパーが身体介護を行います。
通院介助
通院介助とは、利用者さんが安全かつ確実に通院をするためのサービスです。
具体的には、以下のような内容が行われます。
- 通院の準備(身だしなみや持参物の確認)
- タクシーや公共交通機関への移乗介助
- 受診・再診の手続き
- 処方箋・薬の受け取り
- 支払い
上記のような、通院をするために必要な一連の動作が通院介助です。
基本的な移動手段は、タクシーや公共交通機関、もしくは徒歩となります。
そのため、ご家族が対応可能の場合は、通院介助の対象外となるため注意が必要です。
2.訪問介護で生活援助の範囲ではできない3つのサービス
訪問介護には、受けられるサービスと受けられないサービスの明確な基準があります。
なぜなら、受けられるサービスの基準が、「利用者さんの自立支援を促すこと」と設定されているためです。
では、受けられないサービスとは、どのような内容なのでしょうか。
この章では、訪問介護で生活援助の範囲外となるサービスを、以下3つで解説します。
- 医療行為
- 利用者さん以外の支援
- 利用者さんの生活に直結しないこと
生活援助の範囲外サービスは、自費対応や他のサービスを利用するなど、さまざまな選択肢が考えられます。ぜひ確認してみてください。
範囲外1.医療行為
訪問介護サービスの生活援助では、医療行為を受けることができません。
なぜなら、訪問介護ヘルパーはあくまでも介護のスペシャリストだからです。医療資格を持っているわけではありません。
また、医療行為については、医師法17条で「医師でなければ医業をなしてはならない」と定められています。
つまり、医師のみが医療行為ができるのです。
「でも看護師だって医療行為をするのでは?」と考えた人もいるのではないでしょうか。
看護師は、保健師助産師看護師法第37条で、医療行為について「診療の補助」が可能と定められています。
そのため、医師の指示があれば、医療行為を医師の補助として行えるのです。
具体的な医療行為にあたる例としては、以下のようなものがあります。
- 火傷や褥瘡などの傷口の処置
- 喀痰吸引
- 点眼や座薬挿肛 など
上記のような処置を在宅で考える場合は、医師に訪問看護指示書を作成してもらい、訪問看護サービスの利用を検討する必要があります。
▼医療行為に関する記事は、こちらも参考になります。
>>介護ヘルパーの医療行為は禁止?実態やできること・できないことについて
範囲外2.利用者さん以外の支援
訪問介護の生活援助は、利用者さんの自立支援が目的です。
そのため、利用者さん以外の家族や友人などは、サービス対象外となります。
たとえば、利用者さんの食事介助中に一緒に食事をしていた配偶者が「私も食事が食べにくいから介助してほしい」と頼んできたとしましょう。
この場合、配偶者さんの食事に関しては一切の介助や援助はできません。
もし、配偶者さんに介護が必要な場合は、介護申請をして配偶者さんのケアプランに基づいた訪問介護が必要になります。
範囲外3.利用者さんの生活に直結しないこと
利用者さんの生活に直結しないサービスは、受けられません。
たとえば、以下のような内容は利用者さんの生活に直結しない内容です。
- 草むしり
- ペットの世話
- 農作業(畑仕事や家庭菜園の収穫)
- 郵送物の手続き
訪問介護の生活援助は、国民全員が払う介護保険の税金から行われます。
そのため、生活を豊かにするためには、自費でホームヘルパーに依頼するといった対策が必要です。
▼詳しく知りたい人は、以下の記事をご参考ください。
>>【介護保険外】訪問ヘルパーの自費サービスとは?料金や内容を徹底解説!
3.訪問介護を介護保険の範囲で依頼するときの費用
訪問介護の利用料金は、以下の計算式で求められます。
<訪問介護の利用料金>
訪問介護の利用料金(円)=サービス内容×利用時間(分)+追加の加算料金(円)
訪問介護の料金一覧については、以下の表をご参照ください。
※1単位=10円の計算
参考:介護報酬の算定構造
介護報酬は、1単位10,4〜11円でサービスを受ける地域によって異なります。
利用者さんの自己負担額は、基本的に1割です。
たとえば、1単位=10円の地域で167単位の生活援助を受けた場合、合計1670円となります。
利用者さんは1割を負担するため、1回あたりのサービス利用額は167円となります。
詳しいサービス利用額は、介護サービスを開始する際に、ケアマネジャーに確認しましょう。
次の章では、サービス開始までの流れを解説します。
▼訪問介護の費用に関する記事はこちらから。
>>介護ヘルパーのサービス利用にかかる費用は?施設介護と徹底比較
4.訪問介護サービス開始までの3ステップ
訪問介護サービスを利用したいけど、どうやって始めたらよいのかわからないという人も多いのではないでしょうか。
申請手続きや医師の意見書が必要と言われても、どうすればよいか分からないものです。
ここからは、訪問介護サービスを始めるまでの3ステップについて解説します。
- 介護認定
- 介護サービス計画書(ケアプラン)の作成
- 介護サービスの開始
それぞれのステップで具体的にすべきことを把握して、スムーズに介護サービスを始められるように備えてください。
ステップ1.介護認定
まずは介護認定を受けましょう。
介護認定がないと、訪問介護サービスを開始する手続きができません。
具体的には、以下の手順で進めます。
- 市区町村へ介護認定の申請
- 認定調査
- 医師から意見書を作成
- 一次審査・二次審査
- 認定
介護認定を受けるためには、お住まいの地区町村へ申請手続きが必要です。
まずは、各自治体の窓口に相談をしましょう。
認定調査では、自宅で聞き取りや実際の身体可動域を確認します。
本人の具体的なADL(日常生活行動)や生活力を把握するための大切な調査ですので、素直に現状を伝えましょう。
一次審査は、認定調査の内容を基に、二次審査は介護認定審査会にて認定の有無が決められます。
支援や介護が必要と判断された場合は、要支援・介護認定を受けられます。
ステップ2.介護サービス計画書(ケアプラン)の作成
要支援・要介護認定を受けたら、次は介護サービス計画書(ケアプラン)を作成してもらいましょう。
相談先は、介護認定によって異なります。
介護認定 | 相談先 |
要支援認定 | 地域包括支援センター |
要介護認定 | ケアマネジャーのいる居宅介護支援事業者 |
要支援認定の人は地域包括支援センターで、要介護認定の人はケアマネジャーのいる居宅介護支援事業者に相談して、介護サービス計画書(ケアプラン)を作成してもらいましょう。
介護サービス計画書は、利用者さんのニーズや個別性を踏まえて作成されます。
そのため、ケアプランの作成時には、現状や生活をするうえでの困りごとなどを伝えておくことが重要です。
ステップ3.介護サービスの開始
介護サービス計画書の作成ができたら、実際にサービスを受ける訪問介護事業所を探します。
「どの事業所にしたらよいかわからない」という人は、ケアマネジャーに相談して選ぶとよいでしょう。
ケアプランを使って事業所と契約をしたら、いよいよサービス開始となります。
ここで注意しておきたいのが、「利用者さんと事業所は、直接契約であること」です。
契約には本人の同意が必要であり、自己責任になります。
そのため、内容を理解して納得してから契約をしましょう。
「1人だと心配…」という人は、ご家族に付き添ってもらうことをおすすめします。
▼更に詳しい流れを知りたい人は、以下の記事をご参考ください。
>>介護ヘルパーを依頼するまでの流れとは?各サービスの料金や種類についても紹介
5.訪問介護で生活援助を依頼する事業所の選び方
訪問介護を受けるには、事業所と契約する必要があります。
しかし、「何を基準に事業所を選べばよいのかわからない」という人も多いのではないでしょうか。
訪問介護サービスを通じて長期的に付き合っていくため、相性のよい事業所を慎重に選びたいですよね。
ここでは、事業所を選ぶときの3つのコツを解説します。
- ケアマネジャーに相談する
- 事業所の離職率で比較する
- 事業所の評判を確認する
後悔のない最良の事業所選びができるように、ぜひ参考にしてください。
選び方1.ケアマネに相談
事業所選びに失敗したくないのであれば、ケアマネジャーへ相談しましょう。
ケアマネジャーに相談するメリットは、以下の3つです。
- 各事業所の特色を把握している
- 利用者さんの身体状況を把握している
- 事業所の評判を聞ける
ケアマネジャーは、「なぜこの事業所を紹介するのか」という理由を、利用者さんやそのご家族に説明するように、国から求められています。
特色を十分に把握しているため、利用者さんの身体状況にあった事業所を選んでくれるでしょう。
また、さまざまな事業所に出入りをしているケアマネジャーなら、各事業所スタッフの雰囲気も理解しています。
まずは、最良の選択を提示できるケアマネジャーに相談するのがおすすめです。
選び方2.事業所の離職率で比較
事業所の離職率で、比較・検討する方法もあります。
ヘルパーの入れ替わりが少なく、長く付き合える訪問介護ヘルパーがいる事業所のほうが、利用者さんにとっても安心できるでしょう。
事業所の離職率は、厚生労働省の「介護事業所・生活関連情報検索」サイトで調べられます。
検索手順は、以下のとおりです。
- 検索した事業所のある地域を選択
- 「介護事業所を検索する」をクリック
- 事業所や地域名で検索
- 事業所の「詳細情報を見る」をクリック
- 「事業所の詳細」をクリック
- 「従業員」をクリック
- 前年度の退職者数を確認
訪問介護サービスの利用は、長期的になります。
訪問介護ヘルパーがコロコロ変わってしまうと、利用者さんとの信頼関係が築けません。
プライバシーの観点から見たときに、生活の場に入る訪問介護ヘルパーと利用者さんの信頼関係は、非常に重要です。
長く付き合える訪問ヘルパーを見つけるためにも、離職率で選ぶ方法も試してみてください。
選び方3.事業所の評判を確認
事業所の評判や、口コミも確認しましょう。
評判を確認する具体的な方法は、以下の4つです。
- 直接事業所の見学に行く
- ケアマネジャーに相談する
- 利用経験のある人の話を聞く
- ネットの口コミサイト
確実な方法は、事業所に見学に行き、スタッフの雰囲気を直接感じることです。
そのうえで、ケアマネジャーに特徴を聞いて、主観・客観の両視点から事業所を知るのがよいでしょう。
また、現在利用している人から、感想を聞く方法もおすすめです。
経験者の感想は貴重な情報源であり、「もし自分が利用したら?」とイメージしやすくなります。
注意点として、ネット書き込みは、あくまで参考程度にしましょう。
誰が書き込んだか不明瞭な情報だけに、嘘や誇張表現の可能性もあるからです。
さまざまな角度から事業所を分析して、自分視点で判断しましょう。
▼関連記事はこちらから。
>>これで安心!訪問ヘルパーの失敗しない選び方は「ケアマネジャー」がカギ!
6.訪問介護で生活援助の範囲を超えるときに依頼できるサービス
訪問介護の生活援助で受けられるサービスや、事業所の選び方は理解できたでしょうか。
しかし、利用者さんの生活能力や身体状況によっては、生活援助だけでは賄えないことがあるのも現実です。
身体の不自由による生活力の低下は、介護の自立支援と相対するものです。
その他、医療行為などが必要な場合、介護士では対応が難しいため、訪問看護サービスの導入が必要でしょう。
訪問サービスは、介護以外にも以下のような選択肢があります。
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 訪問入浴介護
訪問介護以外のサービスを検討する場合は、ぜひ参考にしてください。
サービス1.訪問看護
訪問看護とは、病気や障害を抱えた人が、在宅で療養生活をしていけるように支援するサービスです。
訪問介護が生活支援をするのに対して、訪問看護師は、医療的な観点から患者の生命が維持できるような支援をします。
また、住み慣れた自宅で過ごしたいという利用者さんの思いを尊重し、自立支援ができるように関わります。
具体的な支援内容は、以下のとおりです。
- 医師の指示下での医療処置
- 医療機器の管理(人工呼吸器、在宅酸素・点滴など)
- 利用者さんの身体状況の観察(血圧・脈拍・体温測定など)
- 日常生活援助(清拭、洗髪、入浴介助など)
この他にも利用者さん・ご家族への生活指導など、訪問看護で受けられるサービスは多岐にわたります。
▼訪問看護の保険に関しては、こちらの記事が参考になります。
>>訪問看護ヘルパーのサービスを受けるなら医療保険?それとも介護保険?
サービス2.訪問リハビリテーション
訪問リハビリテーションとは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が自宅に訪問して、リハビリ訓練を提供するサービスです。
利用者さんが生活に困らないための、身体活動の維持・向上を目標としています。
主に在宅療養が可能と判断されて退院した人や、通院が難しい人が利用します。
自宅でリハビリができるため、生活面での身体的な課題が見えやすいことが特徴です。
そのため、訪問リハビリテーションでは、利用者さんのニーズに合ったリハビリのメニューが考えられます。
介護よりも、「リハビリとして体を動かして生活したい」といった人向けのサービスといえるでしょう。
サービス3.訪問入浴介護
訪問入浴介護とは、利用者さんが病気や加齢など何らかの理由で、自宅の浴室で入浴ができなくなった場合に利用できるサービスです。
専門業者が簡易浴槽を自宅に持ち込み、部屋の一部を借りて入浴介助を行います。
訪問入浴介護には、2つの種類があります。
- 指定訪問入浴介護
- 介護予防訪問入浴
それぞれ、利用条件や対応する人員配置も異なります。
種類 | 対象者 | 対応スタッフ |
---|---|---|
指定訪問入浴介護 | 要介護1~5 | 看護スタッフ1名+介護士2名 |
介護予防訪問入浴 | 要支援1・2 | 看護師スタッフ1名+介護士1名 |
訪問介護入浴についてより詳しく知りたい場合は、以下の記事も確認してみてください。
>>介護ヘルパーの入浴介助は依頼できる?条件を満たして介護疲れの予防
訪問介護で受けられる生活援助の範囲で知っておきたいQ&A
最後に、訪問介護の生活援助における範囲について、よくある疑問をQ&A形式で解説します。
- 掃除が日によって差があるのはなぜ?
- 生活援助で座薬をいれてもらうことはできる?
- 生活援助と家事援助の違いは?
実際に訪問介護サービスを利用すると、上記のような疑問が浮かんでくることもあるはずです。
生活援助に対するイメージをより具体的に理解して、少しでも疑問を減らしましょう。
Q1.掃除が日によって差があるのはなぜ?
A.ケアマネジャーに相談しましょう。
訪問介護事業所では、ケアプランに則って生活援助が行われます。
しかし、ヘルパー1人ひとりの力量や認識の違いによって、差が生まれている可能性があるかもしれません。
一度ケアプランの内容見直してもらうか、サービス範囲を明確することで、ヘルパーによる差がなくなります。
Q2.生活援助で座薬をいれてもらうことはできる?
A.座薬の挿肛は、薬剤投与という医療行為の一環となります。
そのため、生活援助の範囲では受けられません。
訪問介護ヘルパーに相談しても、ケアプランに含まれていない場合は断られてしまいます。
しかし、利用者さんご本人やご家族が実施する分には、問題ありません。
Q3.生活援助と家事援助の違いは?
A.家事援助は、生活援助の中に含まれる支援の1つとして考えられます。
たとえば、食事の準備や掃除、洗濯など日常生活を遂行するためのお手伝いも家事援助にあたるでしょう。
ただし、訪問介護ヘルパーが提供できるのは、あくまで介護保険法で定められた範囲のサポートのみです。
生活援助の範囲内で行われるため、家事援助を依頼したいのであれば、ケアマネジャーに介護保険内で利用できるか確認してみましょう。
▼訪問介護にできること・できないことについては、以下の記事をご参考ください。
>>訪問介護ヘルパーに頼めることって?できること・できないことを紹介
まとめ:生活援助の範囲が分かると訪問介護を依頼しやすくなる!
訪問介護サービスにおける生活援助について、その他受けられるサービスを踏まえて解説してきました。
訪問介護では、生活援助の他にも、身体介護や通院介助が受けられます。
また、依頼できない内容は、医療行為や生活に直結しない内容全般です。
訪問介護サービスを受けるためには、要支援・要介護認定の審査を受けなければいけません。
まずは、お住まいの市区町村窓口に相談してみましょう。
訪問介護サービスを検討している人は、ぜひこの記事を参考にしてください。