訪問介護に疲れた!よくある悩みと対処法を解説
訪問介護は、ヘルパー自らが利用者さんの自宅を訪問して、生活援助や身体介護などを行う介護サービスです。
訪問介護ヘルパーは、働き方の自由度が高いとされています。一方で、訪問介護特有の不安や悩みが大きなストレスとなり、退職に繋がることも少なくはありません。
今回「みーつけあ」では、訪問介護で直面しやすい悩みの対処法を詳しく解説します。
もしあなたが訪問介護に疲れたと感じているなら、楽しく仕事を続けるための参考にしてください。
1.訪問介護ヘルパーが疲れたと思うとき
訪問介護に従事するなかで、ヘルパーはさまざまな悩みに直面して、どうしても疲労感を拭いきれないときがあります。
悩む内容は人それぞれですが、解決策を探すために、「何で疲れているのか」を明確にしましょう。
よくある悩みとして、以下の3つが挙げられます。
- 体力的にしんどい
- 利用者さんや家族の対応に苦労する
- 給与や人間関係などの就業環境がよくない
それぞれ具体的な事例を紹介するので、自分に当てはまる内容がないか確認してみてください。
悩み1.体力的にしんどい
体力面の悩みは訪問介護だけでなく、介護業界全般で発生しやすい悩みです。
ときには、訪問介護特有の事情によって、「体力的に疲れた」と感じることがあるでしょう。
実際に疲労を感じる問題として、以下の業務内容が挙げられます。
- 身体介護
- 利用者さんの自宅間の移動
身体介護は、食事や入浴などの介助を付きっきりで行うため、体力の消耗が激しい仕事です。
利用者さんの体を支えたり持ち上げたりといった動作では、ヘルパー自身が体を痛めてしまう場合もあります。
ヘルパーが利用者さんの自宅間を移動することも、訪問介護の特徴です。
1日に複数の利用者さんの自宅を移動するため、サービスを提供する時間以外にも疲れてしまいます。
また、タイトな訪問スケジュールの場合は、移動時間中に休むことも難しく、精神的な疲労も重なるでしょう。
悩み2.利用者さんや家族の対応に苦労する
訪問介護特有の悩みとしてよく挙げられるのが、以下のようなものです。
- 1人で行う業務へのプレッシャー
- 利用者さんや家族と相性が合わない
訪問介護ヘルパーは、基本的に1対1で利用者さんの介護を行います。
フォローしてくれる同僚が現場にいないため、全て1人で対応しなければいけません。
万が一の緊急時には、1人で判断しなければいけないのです。
このように、ヘルパー1人にかかる責任が重く、プレッシャーに感じてしまうことがあります。
また、利用者さんだけでなくそのご家族とも1対1で応対するケースもあるでしょう。
人と接する仕事である以上、どうしても相性の悪い利用者さんや家族の担当になる場合もあります。
介護によるストレスできつく当たられてしまったり、訪問する自宅の環境がよくなかったりと、さまざまな要因が積み重なって疲れてしまうかもしれません。
悩み3.給与や人間関係などの就業環境がよくない
就業環境は、仕事を続けるうえで重要な要素です。
訪問介護ヘルパーが負担に感じやすい就業環境としては、以下2つが挙げられます。
- 給与が低い
- 他のヘルパーや管理者と合わない
訪問介護の報酬は、実際に介護を行った時間によって計算・決定されます。
そのため、登録制のヘルパーの場合、実働時間と訪問時間が合致せず、「割りに合わない」と感じてしまう人もいるでしょう。
利用者さんの自宅間の移動時間も給与の対象にならないことがあるため、「体力・精神力の消耗に給与が見合っていない」と感じることもあるはずです。
その他にも、職場の同僚や上司との相性が悪いと、働くときに大きな負担になり得ます。
基本的な仕事は利用者さんの自宅で行いますが、事業所に戻れば他の職員と交流することは避けられません。
関係機関と密な連携を取る必要もあるため、事業所以外の人との相性が悪ければ、更なる疲労がのしかかってくるでしょう。
▼訪問介護の悩みに関しては、以下の記事もご参考ください。
>>介護ヘルパーが大変だといわれる4つの理由|気になる仕事内容と悩み
2.訪問介護に疲れたと感じたらすべきこと
訪問介護という仕事に従事するなかで、どうしても心身の疲労感に耐えきれなくなることもあるでしょう。
しかし、その疲労感は、ほんの少しのきっかけさえあれば解決できるかもしれません。
問題を抱えてどうしようもなくなってしまう前に、以下3つの対策を確認してみてください。
- 職場の上司への相談
- 市町村の介護相談員への相談
- 自己範囲での環境改善
上記3つの対策を、具体的に解説します。
対策1.職場の上司へ相談
訪問介護の仕事で身体的・精神的な疲労で悩んだときは、経験豊富な管理者やサービス提供責任者に相談しましょう。
たとえば、身体介護による体力面への負担が大きいなら、身体介護を含まない利用者さんへの担当変更を相談してみてください。
すでに担当している利用者さんに関する問題であれば、事業所全体で共有しておくべき事情かもしれません。
どのような仕事でも、一番身近な上司への相談は問題を解消する第一歩であるといえます。
対策2.市町村の介護相談員への相談
利用者さんや家族の問題行動に悩んでいる場合、身近な上司への相談だけでは解決できないこともあります。
利用者さんは、訪問介護以外のさまざまな福祉サービスを利用していることが多く、1つの事業所では、解決や改善が見込めない可能性があるためです。
このような問題に直面した場合、市町村の介護相談員への相談を検討しましょう。
日頃から相談に対応している人であれば、利用者さんの状況や事情の全体を把握したうえで、広い視点からの改善策を提供してくれる可能性があります。
解決できないと諦めるのではなく、さまざまな立場や視点の人と問題を共有することで解決できるかもしれません。
問題を1人で抱え込まないことは、余計な疲労感を貯めない最善の解決策でしょう。
対策3.自己範囲での環境改善
上司や市区町村の担当者に相談する前に、自分で改善できる悩みもあります。
このような悩みは、放置せずに解消に向けて動くことが大切です。
たとえば、疲労の原因となりやすい利用者さんの自宅間の移動は、移動手段を変更することで疲労軽減に繋がります。
自転車を電動自転車に買い換えるといった、可能な範囲での対策を検討しましょう。
他にも、精神的な疲労感に悩んでいるのであれば、趣味を持つこともよいストレス解消方法です。
もちろん、趣味に凝りすぎて疲れてしまっては本末転倒です。
- 美味しいものを食べる
- 音楽を聴く
- 映画鑑賞をする
上記のような手軽ですぐに楽しめる趣味を、ストレス解消方法として自分なりに見つけておきましょう。
このように、簡単にできる疲労感を溜め込まないための工夫も取り入れてみてください。
▼訪問介護がきついときの解消方法については、以下の記事も参考になります。
>>介護ヘルパーはきついのか?きつい理由と対処法を徹底解説
3.訪問介護が疲れたと感じたら資格取得も考えよう
訪問介護だけでなく、どのような仕事でも心身疲労を感じなくなるということはないでしょう。
仕事で感じる疲労感に耐えきれなくなったときは、資格を取得して選択肢を広げることで、将来を前向きに考えられるはずです。
また、資格の取得が給与アップといった待遇面の改善に繋がる場合もあります。
訪問介護の経験を活かして取得を目指せる資格の中でも、キャリアアップに有利なものは以下の2つです。
- 介護福祉士
- 介護支援専門員(ケアマネージャー)
取得のメリットや、取得方法を具体的に紹介します。
介護福祉士
訪問介護ヘルパーのキャリアアップとしてポピュラーな選択肢は、介護福祉士の資格を取ることです。
介護福祉士とは、介護職唯一の国家資格であり、介護業界での資格の認知度や社会的な信頼性が高い資格です。
資格を取得するメリットとして、給与アップによる待遇面の改善や、対応できる業務の範囲が広がることが挙げられます。
介護福祉士の資格を取得するには、介護職員実務者研修の修了と実務経験3年以上が必要です。
もし実務者研修を持っていないなら、講座を受講しながら継続して実務経験を積むことから考えてみましょう。
▼介護福祉士に関しては、以下の記事をご参考ください。
介護ヘルパーと介護福祉士の違いとは?介護士の仕事内容や資格について
介護支援専門員(ケアマネージャー)
介護支援専門員とは、「利用者さんにはどのような介護が必要か」を利用者さんやその家族と話し合い、実際に介護サービスを受けられるように調整やモニタリングをする役職です。
体力的に介護現場の仕事が厳しくなる年齢になっても、自身の経験を活かして、違う立場から介護に携われるでしょう。
実際の現場に立ち会って介護する機会は減りますが、訪問介護の経験を利用者さんからの相談等に活かすこともできます。
介護支援専門員の資格を取得するには、一定の職種で実務経験5年かつ900日以上の経験を積み受験資格を得て、介護支援専門員実務研修受講試験に合格する必要があります。
訪問介護ヘルパーが働きながら資格を取得するのは、勉強時間の確保が難しい部分もあるかもしれません。
しかし、将来のキャリアアップとして一番確実な方法ともいえるため、検討してみてはいかがでしょうか。
▼その他、資格の取り方については、以下の記事が参考になります。
>>介護ヘルパーの資格の取り方について|費用や年齢制限は?
4.訪問介護の疲れは転職で心機一転する選択肢もある
訪問介護に疲れきってしまうと、さまざまな方法で現状の解決を図っても上手くいかない場合もあります。
このようなときは、仕事自体や職場との相性が悪い可能性も考えられます。
無理に働き続けて心身に不調をきたす前に、以下2つの選択肢を検討しましょう。
- 訪問介護以外で介護に携わる
- 働き方を変える
上記の選択肢を、より具体的に紹介していきます。
選択1.訪問介護以外で介護に携わる
働き方や利用者さんとの向き合い方が合わないと感じた場合、訪問介護以外の介護職を検討するのも1つの選択肢です。
時間の自由は減りますが、介護福祉施設といった職場であれば、常に多くの求人募集が出ています。
また、夜勤のある介護施設も選択肢に入れれば、収入アップを見込めるかもしれません。
収入が働くモチベーションとなるのであれば、検討してみましょう。
▼収入アップの方法が知りたい人は、以下の記事をご参考ください。
>>介護ヘルパーの給料相場はいくら?収入を上げる方法や介護報酬改定も解説!
選択2.働き方を変える
訪問介護を続けたいと思っても、環境が合わずに疲労がたまる場合もあります。
介護現場以外の問題に直面した場合は、他の事業所への転職も考えてみましょう。
事業所によって、職員の働き方や勤務体制は大きく異なってきます。
自分の希望に合う働き方をもとに、事業所を探してみるとよいでしょう。
また、登録ヘルパーとして働くという方法もあります。
訪問介護事業所に登録すれば、勤務する曜日や時間帯を指定できるため、圧倒的に自由な時間を確保しやすくなるはずです。
利用者さんの自宅への直行直帰が認められている場合もあり、事業所のヘルパー同士の人間関係に悩まされることも少なくなります。
キャリアアップのために資格の勉強を希望する場合にも、実務経験を積みながら時間を確保できる働き方といえるでしょう。
訪問介護に疲れてしまったときは、一度冷静になって自分の現状を省みることが大切です。
現状が改善できないのであれば、自分からよい環境に移ることも選択肢として頭に入れておいてください。
▼登録ヘルパーについて知りたい人は、以下の記事をご参考ください。
>>通勤時間に縛られない登録ヘルパーの働き方|メリットやデメリットについて
訪問介護の疲れに関するQ&A
訪問介護で直面しやすい悩みとその対処法について、大まかには理解できたでしょうか。
最後に、訪問介護に疲れる悩みについて、Q&A形式で紹介します。
実際の応対で疲れを感じるシチュエーションとして、以下のような悩みが挙げられます。
- 感染症対策で疲れを感じる場合はどうすればよい?
- コミュニケーションで疲れを感じるときの解決策は?
- 訪問先の利用者さんが喫煙者のときどうすればよい?
具体的な対処法を理解して、介護現場で役立てましょう。
Q1.感染症対策で疲れを感じる場合はどうすればよい?
A.対処法として、主に2つの方法が挙げられます。
- 利用者さんにしっかりと了承を得る
- 利用者さんから離れたときにマスクを外す
1つ目は、利用者さんにあらかじめ確認したうえで、水分補給やマスクを外して汗を拭くタイミングを設けることです。
利用者さんから少し離れた場所で、素早く水分を補給して汗を拭いたら、次の仕事に取り掛かりましょう。
2つ目の対処法は、利用者さんから離れて行う作業の時に少しだけマスクを外すことです。
利用者さんの自宅での掃除や洗濯といった、離れられるタイミングを見計らってマスクを外しましょう。
感染症予防も大切ですが、ヘルパーが熱中症で倒れて救急車を呼ぶ事態になれば、利用者さんにも迷惑を掛けてしまいます。
自分自身の体調と向き合い、無理のない範囲での感染症予防を心がけましょう。
Q2.コミュニケーションで疲れを感じるときの解決策は?
A.対応方法として、2つほど検討できる対策があります。
- サービス提供責任者に担当変更を要望する
- 事業所を変える
1つ目は、サービス提供責任者に担当変更を要望することです。
どうしても合わない利用者さんを担当して、精神的に疲れて退職となる前に、可能な範囲での相談は遠慮せずに行いましょう。
もちろん、事業所の規模によっては、すぐに変更ができない場合もあります。
しかし、こまめに相談をしておくことで、変更可能になったときにはすぐに対応してもらえるかもしれません。
2つ目の対処法は、ローテーション制を採用している事業所や、規模の大きい事業所に転職することです。
ローテーション制であれば、曜日ごとに違う利用者さんを担当するといった体制が取られています。
また、規模の大きな事業所であれば、担当変更の要望が比較的スムーズに通る可能性が高いです。
訪問介護では、利用者さんと信頼関係を築ける反面、慣れが生じて無茶な要望や横柄な態度が生じてしまうこともあります。
仕事だと割り切ってしまうことも有効な手段です。しかし、精神的疲労で疲れきってしまう前に対処すれば、長く働きやすくなるでしょう。
Q3.訪問先の利用者さんが喫煙者のときどうすればよい?
A.換気してもよいか、了承を取ったうえで対策しましょう。
利用者さんのなかには、長年喫煙の習慣がある人もいます。
喫煙習慣の無いヘルパーにとっては、受動喫煙といった健康面にも影響する問題です。
何らかの事情で担当の変更ができない場合には、現場の状況を改善する必要があるでしょう。
こまめな換気は、感染予防の対策にもなります。
喫煙について伝えづらいのであれば、感染予防のためと伝えて、換気させてもらうようにしましょう。
まとめ:疲れの対策は情報共有からはじめよう
訪問介護は、さまざまな側面から疲労や悩みを感じやすい職業です。
利用者さんと接するなかで生じる問題を、他のヘルパーと共有しづらいという問題もあります。
しかし、1人で問題を抱え続けることは心身の不調に繋がりやすいため、最善の解決策とはいえません。
問題に直面して訪問介護に疲れた際には、自分に合った解決策を検討することを忘れないでください。